この記事で分かること

  • 上場企業の非公開化(Take-Private)・MBOに積極的なPEファンドランキング(合計118件)
  • 年次推移で見る非公開化案件の増加傾向と、その背景として考えられる要因
  • 業種別の分布と、EQT・ベインキャピタルなど「全投資に占める比率」が突出して高いファンドの存在
  • 非公開化・MBO特有の実務論点(TOB規制・プレミアム)と関連用語
データ集計日: 2026年8月19日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本国内PE投資案件 2,326件(127ファンド) | 2026年の数値は8月中旬までのYTD(年初来) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:非公開化79件・MBO39件、合計118件の担い手は独立系大手と外資系に集中

大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内案件から、上場企業の非公開化(Take-Private)とMBO(マネジメント・バイアウト)を抽出すると、非公開化79件、MBO39件、合計118件が確認できます。この2つを合算してランキング化すると、アドバンテッジパートナーズ、ポラリス・キャピタル・グループ、日本プライベートエクイティ(JPE)が件数上位に並び、EQT、大和PIパートナーズ、インテグラル、カーライル・ジャパン、日本産業パートナーズが続きます。

件数だけでなく、各ファンドの全投資に占める非公開化・MBOの比率(share)を見ると、まったく異なる構造が見えてきます。ベインキャピタルは全投資の50%、スパークス・アセット・トラスト&マネジメントは67%が非公開化・MBO案件であるのに対し、大和PIパートナーズは14%、日本産業パートナーズは20%にとどまります。外資系・大型ファンドほど非公開化・MBOへの依存度が高く、日系の総合型バイアウトファンドは事業承継など他の投資類型と併用している構造が読み取れます。

年次推移では2025年に20件と大きく増加しており、2026年も8月中旬までに8件を記録しています。増加の背景として、コーポレートガバナンス改革や親子上場解消の流れが影響しているとみられますが、これは公開情報からの解釈であり、断定はできません。

118件
非公開化・MBO案件(市場全体・累計)
非公開化79件+MBO39件
25社
手掛けたファンド数(2件以上)
8件
2026年YTD

非公開化・MBO件数ランキング

非公開化とMBOを合算した件数でファンドを順位付けしたランキングです。全投資に占める比率(share)、直近5年の件数(recent5)、代表的な案件を併記しています。比率が高いファンドほど非公開化・MBOを専業に近い形で手がけていると読めます。

非公開化・MBO件数ランキング(2件以上)
順位ファンド件数全投資比率直近5年主な案件主要業種
1アドバンテッジパートナーズ86%2日本調剤(2025)、スパイラル(2022)不動産・建設3・外食・食品サービス2
1ポラリス・キャピタル・グループ818%3DDグループ(2025)、ウェルビー(2024)ヘルスケア2・消費財・小売2
1日本プライベートエクイティ821%0コミュニティセンター(2020)、北海道鑑定(2017)B2Bサービス1
4EQT747%4豆蔵(2026)、フジテック(2025)ヘルスケア3・製造業2
4大和PIパートナーズ714%0不二電子工業(2009)、MS&Consulting(2009)製造業3・B2Bサービス2
6インテグラル615%3ゴルフダイジェスト・オンライン(2025)、シノケングループ(2022)IT・ソフトウェア1・不動産・建設1
6カーライル・ジャパン(カーライル・グループ 日本バイアウト部門)615%4トライト(2025)、カオナビ(2025)製造業2・メディア・エンタメ1
6日本産業パートナーズ620%0ナルミヤ・インターナショナル(2016)、すかいらーく(現 すかいらーくホールディングス)(2011)外食・食品サービス1・IT・ソフトウェア1
9ユニゾン・キャピタル512%0ゆこゆこ(2016)、旭テック(2012)消費財・小売2・製造業1
10J-STAR46%1日本コンセプト(2025)、paiza(2020)ヘルスケア2・B2Bサービス1
10アイ・シグマ・キャピタル414%2三国商事(2026)、ジャパンフーズ(2024)消費財・小売2・製造業2
10アント・キャピタル・パートナーズ44%0フェニックスインターナショナル(2018)、ムーンスター(2013)消費財・小売1・B2Bサービス1
10ロングリーチグループ417%1ライトワークス(2025)、日本システムズ(2021)IT・ソフトウェア2・製造業1
10KKRジャパン(KKR)422%4太陽ホールディングス(2025)、トプコン(2025)製造業2・IT・ソフトウェア1
15MCPキャピタル37%1互応化学工業(2022)、アイム(旧イマージュホールディングス)(2011)製造業2・IT・ソフトウェア1
15キャス・キャピタル312%0マークテック(2010)、家族亭(2007)外食・食品サービス2・B2Bサービス1
15トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド319%0MARK STYLER(2015)、東山フイルム(2010)消費財・小売2・製造業1
15ベインキャピタル350%2MCJ(2026)、ジャムコ(2025)製造業3
15雄渾キャピタル・パートナーズ325%0日本技術センター(2020)、東信鋼鉄(2017)人材1・製造業1
20丸の内キャピタル28%2サツドラホールディングス(2026)、オリコン(2026)ヘルスケア1・メディア・エンタメ1
20マーキュリアインベストメント250%1ミューチュアル(2022)、ツノダ(2017)不動産・建設1・ヘルスケア1
20刈田・アンド・カンパニー220%0シンプレクス・ホールディングス(2013)、ワークスアプリケーションズ(2011)IT・ソフトウェア2
20JICキャピタル250%2トプコン(2025)、JSR(2024)IT・ソフトウェア1
20スパークス・アセット・トラスト&マネジメント267%2澤藤電機(2026)、シンニッタン(2025)製造業2
20WMパートナーズ23%1ファンくる(2022)、ネットマーケティングIT・ソフトウェア2

表を読む際は件数だけでなく比率(share)を必ず確認してください。件数が同じ8件でも、投資全体の一部として非公開化・MBOを手がけるファンドと、それを主戦場とするファンドでは意味合いが異なります。また代表案件(reps)の年を見ることで、そのファンドが近年も非公開化・MBOに積極的か、過去の実績が中心かを判断できます。

年次推移:非公開化・MBOはなぜ増えているのか

201510503'154'165'173'181'198'205'217'222'237'2420'258'26
図:非公開化(Take-Private)・MBO案件の年次推移(市場全体)(薄色の最終棒は年途中の値)

年次推移を見ると、2015年から2019年までは年間1〜5件で推移していましたが、2020年に8件、2022年に7件、2024年に7件、そして2025年には20件へと急増しています。2026年は8月中旬までに8件が確認できており、前年ほどのペースかは現時点では判断できません。

この増加の背景として、東京証券取引所によるガバナンス改革や資本コストを意識した経営への要請、親子上場の解消を求める動きなどが影響している可能性がありますが、これらはDBの外にある市場環境の解釈であり、本記事の推測にとどまる点にご留意ください。代表的な直近案件としては、EQTによる株式会社豆蔵(2026年)やフジテック株式会社(2025年)、KKRジャパンによる太陽ホールディングス・トプコン・富士ソフト(いずれも2025年)などが確認できます。

業種別に見る非公開化・MBO

製造業 28件(29%)IT・ソフトウェア 13件(14%)不動産・建設 13件(14%)ヘルスケア 12件(13%)消費財・小売 9件(9%)外食・食品サービス 8件(8%)B2Bサービス 7件(7%)その他 5件(5%)
非公開化・MBO案件の業種構成(累計)

業種別では製造業が最多で、IT・ソフトウェア、不動産・建設、ヘルスケアが続きます。製造業では親会社による完全子会社化や大手グループの事業再編に伴う非公開化、IT・ソフトウェアではガバナンス上の独立性確保を目的としたMBOが背景にあるとみられますが、これは業種別の件数からの推測であり、DBは個別案件の目的までは分類していません。業種ごとの投資動向全体はカーブアウト・事業再編の市場データでも扱っています。

分析:比率で見ると外資系・大型ファンドに偏る

件数ランキング上位には日系の独立系バイアウトファンドが多く並びますが、全投資に占める比率で見ると様相が変わります。ベインキャピタル(50%)、スパークス・アセット・トラスト&マネジメント(67%)、マーキュリアインベストメント(50%)、JICキャピタル(50%)、EQT(47%)は、投資の半分前後、あるいはそれ以上を非公開化・MBOが占めています。これらは相対的に大型の案件を中心に手がけるファンドで、経営権を伴う大型ディールへの専門性が高いことを示唆しています。

一方、大和PIパートナーズ(14%)、日本プライベートエクイティ(21%)、日本産業パートナーズ(20%)は、非公開化・MBOの絶対件数では上位にあるものの、比率で見ると事業承継や再生案件など他の投資類型が全体の大半を占めるファンドです。件数の多さが「非公開化・MBO専業」を意味するとは限らない点は、投資件数ランキングを読む際と同様の注意が必要です。

本ランキングも公開情報の開示方針に左右されます。TOB(株式公開買付け)を伴う非公開化は開示規制上、原則として案件が公表されるため比較的捕捉しやすい一方、非上場企業を対象とするMBOは公表が任意であり、DBに反映されていない案件が存在する可能性があります。

直近5年(recent5)の件数を見ると、外資系ファンドの積極姿勢が際立ちます。EQTは7件中4件、カーライル・ジャパンは6件中4件、KKRジャパンは4件すべてが直近5年に集中しており、いずれも過去よりも近年に案件が偏っています。これに対し、日本プライベートエクイティ(8件中0件)や日本産業パートナーズ(6件中0件)は直近5年の実績がなく、非公開化・MBOの実績が過去のものである点も、件数だけでは見えない差です。

実務での使い方

M&A・PE実務家にとって、非公開化・MBOは通常のバイアウトと異なり、少数株主保護やTOB規制、プレミアムの妥当性検証といった論点が加わります。制度面は公開買付制度の開示規制、価格妥当性は買収プレミアム分析を参照してください。株主提案・アクティビストとの関係はアクティビストキャンペーンのデータ分析でも扱っています。

PE志望者にとっては、非公開化・MBO比率の高いファンドは大型ディールの経験を積みやすい環境である可能性があります。ダウンサイドケースの設計など、大型LBO特有のIC(投資委員会)論点はダウンサイドケースの設計で解説しています。

非公開化案件の値付けとレバレッジ構造を、手を動かして理解する

非公開化・MBOは、上場企業の株主に支払うプレミアムをどう正当化し、どこまでレバレッジを効かせられるかがディールの成否を分けます。買収価格の逆算からEquity Valueの設計まで、実際にLBOモデルを組みながら学べます。

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データの定義と限界

本ランキングの母集団は、大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内案件のうち、上場企業の非公開化(Take-Private/TOB等による完全子会社化)およびMBO(経営陣による買収)に分類された案件です。事業承継目的の非上場企業の買収や、上場を維持したままの資本業務提携は含みません。集計の詳細は以下のとおりです。

集計方法・データ定義(大手町プレップPEファンドDB独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBに収録された、日本のPEファンドおよび日本に投資する海外PEファンドによる日本国内企業への投資案件(投資先の国が日本、または国の記載がなく運用会社の本拠が日本の案件)。集計日時点で2,374レコード・重複を除いた2,326案件(127ファンド)。
件数の数え方
市場全体の件数は複数ファンドによる共同投資(クラブディール)を1案件として数え、ファンド別の件数は各ファンドの投資実績として1件ずつ数えます。両者は合計が一致しません。
当年(2026年)の扱い
2026年の数値は8月中旬時点のYTD(年初来)です。通年の数値ではないため、過年度との単純比較はできません。公表済みでもクローズ(実行)前の案件は含めていません。
データソース
各PEファンドの公式サイト・プレスリリース等の公開情報(2026年8月19日時点)。
非公開化・MBOの定義
案件情報のテキストに「非公開化」「TOB」「上場廃止」等を含む案件(Take-Private)と、「MBO」「EBO」等を含む案件(MBO)を合算。上場企業の非公開化とオーナー系MBOの双方を含みます。

本ランキングは公開情報ベースの独自集計であり、日本国内の全PE投資を網羅した市場統計(推計値)ではありません。非公開案件や公式サイトに掲載されていない案件は含まれません。ファンドにより投資先の開示方針が異なるため、件数の差がそのまま実際の投資活動量の差を意味するものではない点にご注意ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 非公開化とMBOはどう違いますか。
A. 非公開化(Take-Private)は上場企業がPEファンド等の主導で株式を非公開化する取引全般を指し、MBOはそのうち経営陣が主体となって買収する形態です。経営陣ではなく外部の第三者が主体となって買収する類似形態にMBI(マネジメント・バイイン)があり、本ランキングのMBO件数には含めていません。

Q. なぜ比率(share)も見る必要があるのですか。
A. 件数だけでは、非公開化・MBOを専業とするファンドと、他の投資類型の中の一部として手がけるファンドを区別できないためです。比率が高いファンドほど、非公開化・MBOに投資戦略上の重心を置いていると読めます。

Q. 2025年に件数が急増したのはなぜですか。
A. ガバナンス改革や親子上場解消の動きが背景にあるとみられますが、これは公開情報からの解釈であり、確定的な因果関係を示すデータではありません。

Q. このランキングに載っていないファンドは非公開化・MBOを手がけていないのですか。
A. 必ずしもそうとは限りません。本DBは公開情報を基礎としているため、非公開でクローズした案件や公表を限定しているファンドの実績は、実際より少なく表れる可能性があります。

まとめ

非公開化・MBOの合計118件を集計すると、件数では日系独立系ファンドが上位に立つ一方、全投資に占める比率では外資系・大型ファンドが突出するという二重の構造が見えてきます。2025年以降の件数増加はガバナンス改革などが背景にあるとみられますが、断定的な結論を出せるデータではありません。件数・比率・年次推移の3つを併せて読むことで、日本の非公開化市場の実像に近づけます。

投資全体でのランキングは投資件数ランキング、Exit実績はExit件数ランキングで確認できます。

出典・データについて

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・企業の評価や投資助言ではありません。

最終データ更新日: 2026年8月19日(DB更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)