この記事で分かること

  • 事業再生・ターンアラウンド型の投資に積極的な日本のPEファンドランキング
  • インテグラル、アドバンテッジパートナーズなど上位ファンドの代表的な再生案件(実名)
  • 年次推移から見える、コロナ禍後の再生ニーズの高まり
  • 事業再生投資特有の性質と、公的再生支援機関との関係
情報確認日: 2026年9月8日(各ファンドの公開情報を確認・再集計した日) | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本国内PE投資案件 2,370件(127ファンド) | 2026年の数値は8月までの年初来(YTD) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:独立系バイアウトファンドと金融機関系ファンドが両輪を担う

大手町プレップのPEファンドDBに収録された事業再生・ターンアラウンド型の投資は88件確認できます。件数トップはインテグラル株式会社で、同社の投資全体のうち事業再生型が占める比率も高い水準です。アドバンテッジパートナーズ、大和PIパートナーズ株式会社が件数で続きます。

顔ぶれを見ると、インテグラルやアドバンテッジパートナーズのような独立系のバイアウトファンドが、通常のバイアウト案件と並行して事業再生型の投資を手掛けている一方、大和PIパートナーズ株式会社や株式会社SMBCキャピタル・パートナーズのような金融機関系のファンドも上位に入ります。メインバンク関係を通じて再生案件の情報にアクセスしやすい立場にあるためとみられます。

各ファンドのExit済み件数を見ると、性格の違いが浮かび上がります。大和PIパートナーズ株式会社は13件の再生案件のうち13件すべてがExit済みで、代表案件も2013〜2015年のものが中心です。対してインテグラル株式会社やグロースパートナーズ株式会社は、直近の2025〜2026年の案件を多く抱え、Exit未了の案件が中心です。「古くから活発だったファンド」と「今まさに動いているファンド」を見分ける手がかりになります。

88件
事業再生型案件(市場全体・累計)
15社
手掛けたファンド数(2件以上)
4.3年
平均保有期間
中央値3.2年(n=23)

事業再生・ターンアラウンド投資ランキング

投資先の状況が事業再生・ターンアラウンド型に分類される案件をファンド別に集計したランキングです。件数に加えて、そのファンドの投資全体に占める再生案件の比率(share)と、Exit済み件数を併記しています。

事業再生・ターンアラウンド投資件数ランキング(2件以上)
順位ファンド件数全投資比率うちExit済主な案件主要業種
1インテグラル1845%7八十島プロシード(2026)、STPR(2026)製造業5・消費財・小売2
2アドバンテッジパートナーズ1713%14東邦亜鉛(2025)、サンマルクホールディングス(2021)製造業8・消費財・小売3
3大和PIパートナーズ1327%13りんかい日産建設(2015)、第一中央汽船(2014)製造業4・消費財・小売3
4SMBCキャピタル・パートナーズ622%1たまご&カンパニー(2023)、三井E&S(2022)製造業2・ホテル・レジャー2
5グロースパートナーズ526%0ヴィレッジヴァンガードコーポレーション(2026)、ビープラッツ(2025)消費財・小売2・IT・ソフトウェア1
6ニューホライズン キャピタル48%3たち吉(2015)、Shade3D(2015)不動産・建設1・製造業1
6名古屋キャピタルパートナーズ427%0非公開(事業再生ファンド第3号案件)(2025)、旭屋工業(2025)製造業1・消費財・小売1
8ユニゾン・キャピタル37%3クラシエホールディングス(2006)、東ハト(2003)消費財・小売2・メディア・エンタメ1
8W&Dインベストメントデザイン343%3KP(2023)、ストラスブルゴ(2021)消費財・小売2
10SBI新生企業投資212%2富士油圧精機(2022)、京商(2018)製造業2
10アスパラントグループ27%2日本海洋掘削(2022)、りんかい日産建設(2015)B2Bサービス2
10ティーキャピタルパートナーズ26%2スイートガーデン、ワンビシアーカイブズ消費財・小売1・物流・運輸1
10トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド212%2アカクラ(2015)、ポリマテック(2012)消費財・小売1・製造業1
10日本みらいキャピタル27%2成幸利根(2009)、テザック(2003)不動産・建設1・製造業1
10日本創生投資222%1共立工業、産機電業エネルギー・環境1・製造業1

表を読む際は、件数だけでなく比率(share)にも注目してください。件数では上位に入らないファンドでも、投資全体に占める再生案件の比率が高い場合があります。たとえば株式会社W&Dインベストメントデザインは件数こそ3件ですが、同社の投資の4割以上を再生案件が占めており、再生投資を軸に据えた運用をしていることがうかがえます。件数の多寡は「再生投資の主戦場」であるかどうかの一つの目安に過ぎません。

上位15社のファンド類型を見ると、インテグラル・アドバンテッジパートナーズ・グロースパートナーズ・ニューホライズン キャピタル・ユニゾン・キャピタルなど独立系が多数を占める一方、大和PIパートナーズ株式会社・株式会社SMBCキャピタル・パートナーズ・SBI新生企業投資株式会社のような金融機関系、株式会社名古屋キャピタルパートナーズのような地域金融機関系も含まれます。独立系バイアウトファンドが再生投資の主な担い手でありつつ、銀行グループ系のファンドも一定の存在感を持つという構図です。

代表的な再生案件

上位ファンドが手掛けた代表的な事業再生案件を、DBに記録された投資先名でいくつか紹介します。インテグラル株式会社は八十島プロシード株式会社(2026年)、株式会社STPR(2026年)、MiraiVets Partners株式会社(2024年)を手掛けています。アドバンテッジパートナーズは東邦亜鉛株式会社(2025年)、株式会社サンマルクホールディングス(2021年)、株式会社スターフライヤー(2021年)と、上場企業の再生案件を複数手掛けている点が特徴です。大和PIパートナーズ株式会社はりんかい日産建設株式会社(2015年)、第一中央汽船株式会社(2014年)、株式会社中山製鋼所(2013年)と、いずれも金融機関系ファンドらしく大型企業の再生に携わってきました。

これらの案件は、いずれも公開情報として確認できるものであり、実際に各ファンドが手掛けた再生案件のすべてではありません。個社ごとの投資先一覧はPEファンドDBの各社ページで確認できます。

やや小規模なファンドにも注目すべき事例があります。株式会社名古屋キャピタルパートナーズの代表案件の一つは「非公開(事業再生ファンド第3号案件)」と記載されており、事業再生専用のファンドビークルを組成して投資していることがうかがえます。ユニゾン・キャピタル株式会社の代表案件はクラシエホールディングス(2006年)、東ハト(2003年)、アスキー(2002年)と、いずれも2000年代前半の案件で、日本の事業再生投資が黎明期にあった時期から活動してきた老舗であることを示しています。

年次推移:コロナ禍後に山があるか

1085302'136'146'152'162'174'181'191'2010'214'224'235'245'253'26
図:事業再生・ターンアラウンド型案件の年次推移(市場全体)(薄色の最終棒は年途中の値)

年次の件数推移を見ると、2021年に突出して件数が多くなっています。コロナ禍による資金繰り悪化や事業環境の急変を受け、2020年に経営が悪化した企業への対応が翌2021年にかけて集中した結果とみられます。その後は年間4〜5件程度で推移し、2023〜2025年にかけては緩やかな増加傾向が見られます。2026年は8月中旬までの年初来(YTD)の値であり、通年の件数とは単純比較できません。

分析:事業再生投資の特殊性

事業再生・ターンアラウンド型の投資は、通常のバイアウトと異なり、デット・リストラクチャリング(債務の株式化・条件変更など)やスポンサー選定プロセスを伴うことが多いのが特徴です。買収価格の算定自体が、継続企業の前提(going concern)が成立するかどうかの判断と一体になる点も、通常のバイアウト案件とは異なります。

公的な再生支援の枠組みとしては、地域経済活性化支援機構(REVIC)のような官民ファンドが企業再生の初期段階で関与するケースがあります。詳しい役割はREVIC・RCCとは何かで解説しています。民間PEファンドは、こうした公的スキームが動いた後の出資受け皿として、あるいは公的機関を介さない私的整理の枠組みの中で投資を実行するケースが中心です。

業種別では製造業が28件、消費財・小売が17件と、この2業種で全体の半分超を占めます。老舗の製造業や地方の小売チェーンなど、事業自体には価値があるものの財務が悪化した企業が再生投資の主な対象になっていることがうかがえます。残りは不動産・建設、メディア・エンタメ、ホテル・レジャーがそれぞれ5件、外食・食品サービス、IT・ソフトウェアが4件と続き、業種の裾野は決して狭くありません。大企業の事業再編という切り口ではカーブアウト投資の市場分析も参考になります。

保有期間データが確認できる23件の平均保有年数は4.3年、中央値は3.2年です。本DB全体の保有期間(平均4.3年・中央値4.0年)と比べると、中央値がやや短いのが特徴で、再生局面を脱した後は比較的早期に売却するケースが一定数あることを示唆しています。一方で平均値は市場全体と同水準であり、一部に長期保有の案件も存在することがうかがえます。

実務での使い方

事業再生案件は通常のM&Aプロセスと異なり、債権者調整やスポンサー選定入札を伴うことが多く、M&A実務家にとっては買収実務の応用パターンとして押さえておく価値があります。買収プロセス全体の流れはBuy-side M&A完全ガイドで解説しています。財務モデリングの観点では、既存の借入をどう扱うか(日本のLBOローン調達実務)を理解した上でLBOの基礎を学ぶと理解が進みます。仕組みの全体像はLBOとはを参照してください。

データの定義と限界

本ランキングの母集団は、大手町プレップPEファンドDBにおいて投資先の状況が事業再生・ターンアラウンド型に分類される案件です。分類は各ファンドの公表資料・報道等をもとにした編集部の判断であり、企業側が「再生」と明言していない案件でも、財務状況の悪化を背景とした資本再構成と確認できる場合は含めています。集計の詳細は以下のとおりです。

集計方法・データ定義(大手町プレップPEファンドDB独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBに収録された、日本のPEファンドおよび日本に投資する海外PEファンドによる日本国内企業への投資案件(投資先の国が日本、または国の記載がなく運用会社の本拠が日本の案件)。集計日時点で2,419レコード・重複を除いた2,370案件(127ファンド)。
件数の数え方
DB全体の件数は複数ファンドによる共同投資(クラブディール)を1案件として数え、ファンド別の件数は各ファンドの投資実績として1件ずつ数えます。両者は合計が一致しません。
当年(2026年)の扱い
2026年の数値は8月までの年初来(YTD)です(情報確認日2026年9月8日までに公開された案件のうち、8月までに実行・Exitしたもの。DBの日付は月単位で保持しています)。通年の数値ではないため、過年度との単純比較はできません。公表済みでもクローズ(実行)前の案件は含めていません。
データソース
各PEファンドの公式サイト・プレスリリース等の公開情報(2026年9月8日に確認)。記事本文の公開日・最終更新日は冒頭の記事情報欄を参照してください。

本ランキングは公開情報ベースの独自集計であり、日本国内の全PE投資を網羅した市場統計(推計値)ではありません。非公開案件や公式サイトに掲載されていない案件は含まれません。ファンドにより投資先の開示方針が異なるため、件数の差がそのまま実際の投資活動量の差を意味するものではない点にご注意ください。

よくある質問(FAQ)

「事業再生・ターンアラウンド投資」とはどのような投資ですか。

財務状況が悪化した企業に対し、デットの株式化や条件変更を伴う形で出資し、事業の立て直しを図る投資です。継続企業の前提が問われる局面での投資である点が、通常のバイアウトと異なります。

なぜ同じファンドが投資件数ランキングにも事業再生ランキングにも登場するのですか。

インテグラルやアドバンテッジパートナーズのような独立系バイアウトファンドは、通常のバイアウト案件と事業再生案件の両方を手掛けているためです。投資件数ランキングは全投資型を対象にした集計、本記事は事業再生型に絞った集計という違いがあります。

Exit済み件数が多いファンドは、再生投資に成功しているということですか。

必ずしもそうとは言えません。Exit済み件数が多いのは、単に古い案件を多く抱えているためである場合があります。大和PIパートナーズ株式会社のExit済み案件が2013〜2015年に集中しているのはその一例です。個別の再生の成否は本DBの集計からは判断できません。

2026年の件数が少ないのは、事業再生案件が減っているからですか。

2026年の値は8月中旬までの年初来(YTD)の件数であり、通年の実績ではありません。過去数年は年間4〜5件程度で推移しており、現時点で明確な減少傾向と判断できるデータはありません。

まとめ

事業再生・ターンアラウンド投資は、独立系のバイアウトファンドと、メインバンク経由で案件情報にアクセスしやすい金融機関系ファンドの両方が担い手となっています。年次推移にはコロナ禍後の2021年に山があり、直近では緩やかな増加傾向が見られます。件数だけでなく、投資全体に占める比率やExit済み件数を合わせて読むことで、各ファンドの再生投資への関わり方の違いが見えてきます。

上場企業の非公開化・MBO案件は非公開化・MBOランキング、投資回転の速さはExit率分析、担い手の系列分類はPE投資の担い手分析で扱っています。

出典・データについて

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・企業の評価や投資助言ではありません。

情報確認日(DB再集計日): 2026年9月8日(DB更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)