この記事で分かること

  • タームローンA(約定返済)とタームローンB(期限一括+任意返済)の2トランシェ構造を白紙から組む手順
  • 期首残高基準の利息計算で循環参照を避けながら、全期間を整数で検算できる設例
  • 3表・LBOモデルへの接続ポイントと、残高ロールのチェックの置き方

STEP 0:完成形と設例の前提

理論編(デットスケジュールキャッシュスイープ)の実装編です。設例:TLA 250(金利4%・毎年50の約定返済)、TLB 150(金利8%・期限一括、ただし余剰現金から毎年25の任意返済)。利息はどちらも期首残高×金利で計算します(循環回避の入門定石。3表チュートリアルと同じ流儀)。

1TLA:約定返済の型(10分)

操作:行構成は「期首残高→約定返済→期末残高→利息」の4行。D列(Y1):期首 =C(期末)…初年度は250を直接参照、約定返済 =-50(またはMIN関数で残高以上に返さない工夫)、期末 =期首+返済、利息 =期首×4%。右へ5年分コピー。
XTLA(単位:百万円・設例)
項目Y1Y2Y3Y4Y5
期首残高25020015010050
約定返済(50)(50)(50)(50)(50)
期末残高200150100500
利息(期首×4%)108642
図1:正解値。残高が階段状に減り、利息も10→2へ逓減します。最終年に期末0で着地——この「きれいに死ぬ」ことを確認するのがTLAの検算です。

2TLB:期限一括+任意返済(スイープ)(10分)

操作:TLBは「期首→任意返済(スイープ)→期末→利息」。任意返済は本来FCFの余剰から計算しますが(スイープの機構)、本章は構造の習得を優先し毎年25と置きます。利息は =期首×8%
XTLB(単位:百万円・設例)
項目Y1Y2Y3Y4Y5
期首残高1501251007550
任意返済(スイープ)(25)(25)(25)(25)(25)
期末残高125100755025
利息(期首×8%)1210864
図2:正解値。TLBは高金利なので、余剰現金があるならここから返すのが合理的(高い順に返す)。Y5期末に25が残り、これが借り換えまたは満期返済の対象になります。

3集計行と3表への接続(10分)

  • 合計利息:Y1=10+12=22、Y2=18、Y3=14、Y4=10、Y5=6。この行がPLの支払利息へつながります。
  • 合計返済:毎年75(50+25)。CF計算書の財務CFへ。
  • 合計期末残高:Y1=325、Y2=250、Y3=175、Y4=100、Y5=25。BSの借入金へ。
  • LBOモデル(構築チュートリアル)では、この「利息減→純利益増→FCF増→返済加速」の好循環がリターンの第3源泉(デット返済)を生みます。

4チェックを置く(5分)

  • ロールチェック:各トランシェで「期首+返済−期末=0」を全期間(検算の設計)。
  • 非負チェック:期末残高がマイナスになっていないか(=返し過ぎ)。実務ではMIN(予定返済, 期首残高)で構造的に防ぎます。
  • 横串チェック:合計期末残高の前期比減少=合計返済額と一致するか。

Q. スイープを「余剰FCFの100%」で自動計算するには?

A. 任意返済=MIN(TLB期首残高, MAX(0, 返済可能FCF−約定返済)) の形にします。返済可能FCFは営業CF−Capex−約定返済後の残り。この接続を入れると利息→FCF→返済の循環が生まれるため、期首残高基準の利息(本章の流儀)を保つのが安全です。

Q. リボルバーはどこに入れますか?

A. 現金が不足する期に自動で借り、余剰が出た期に最優先で返す「現金の緩衝材」として、TLAの上に1ブロック追加します。ロジックは残高ロール+MIN/MAXで同型です。まず本章の2トランシェを完全に手に馴染ませてから足してください。

まとめ

  • 型は4行×トランシェ数:期首→返済→期末→利息(期首残高×金利で循環回避)。
  • 設例の正解値:利息合計22→6へ逓減、期末残高325→25。TLAはY5に0で「きれいに死ぬ」。
  • 高い金利から返す・ロール0チェック・非負チェック。3表接続は利息/返済/残高の3本線。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。