この記事で分かること

  • Debt Scheduleの標準構造(期首→返済→期末→利息)と実装手順
  • 利息計算で循環参照が生まれる理由と、実務的な回避策
  • リボルバー(当座借越枠)を「現金の帳尻合わせ」として組み込む方法

Debt Scheduleの役割と標準構造

Debt Scheduleは、借入金の残高と利息を期ごとに追跡する明細表です。3表モデルでは支払利息(PL)・返済(CF財務)・残高(BS)の3箇所へ数字を供給する「配電盤」の役割を持ちます。

1本の借入につき、行構成は次の4行が標準です:期首残高 → 約定返済 → 期末残高 → 支払利息。トランシェ(借入の種類)ごとにこのブロックを縦に積みます。

設例:タームローンの3年分

期首残高1,000、約定返済が年200、金利3%(期首残高基準)の設例です。

表1:Debt Scheduleの設例(単位:百万円)
項目FY1FY2FY3
期首残高1,000800600
約定返済(−)200200200
期末残高800600400
支払利息(期首残高×3%)302418

期末残高がBSへ、支払利息がPLへ、約定返済がCF財務活動へ流れます。まずこの1本を完全に閉じてから、トランシェを増やすのが正しい順序です。

利息計算と循環参照

利息の計算基準には主に3つの流儀があります。

表2:利息計算の3方式
方式特徴循環参照
期首残高基準シンプルで検算しやすい。本記事・学習用の推奨発生しない
期中平均基準(期首+期末)÷2×金利。精緻だが期末残高が利息に依存発生する
期末残高基準保守的(利息過大)になりやすいリボルバー併用時に発生

循環が生まれる構造は「利息→純利益→FCF→返済額→期末残高→利息」というループです。実務の対処は、①Excelの反復計算を有効化する、②循環部分だけ値貼り付けで切る(コピー&ペーストブレーカー)、③期首基準で設計して循環自体を作らない——の3択で、学習段階では③を推奨します。詳細は循環参照の記事で扱います。

リボルバー:現金の帳尻合わせ役

リボルバー(コミットメントライン等の当座枠)は「現金が足りなければ借り、余れば返す」自動調整弁としてモデル化します。

リボルバー借入額 = MAX( 0 , 最低現金残高 − 返済前の現金残高 )
リボルバー返済額 = MIN( リボルバー期首残高 , MAX( 0 , 返済前の現金残高 − 最低現金残高 ) ) ※「最低現金残高」は事業運営に必要な下限(設例では50など)を前提として置きます。この2式でBSの現金がマイナスに沈むことを構造的に防ぎます。

LBOモデルでは、この上に「余剰現金で任意繰上返済する」Cash Sweepが載ります。クロージング後のキャッシュフローの流れ方の議論であり、LBOモデルの作り方で扱います。

実装チェックリスト

  • 期末残高=期首残高−返済±新規借入が全トランシェ・全期間で成立しているか。
  • PLの支払利息=各トランシェ利息の合計と一致しているか(1本ずつ参照しているか)。
  • CF財務活動の返済合計とスケジュールの返済合計が一致しているか。
  • 残高がマイナスに沈むトランシェがないか(MIN関数で返済を残高までに制限)。
  • リボルバー導入後、BSの現金が最低現金残高を下回っていないか。

無料テンプレート:簡易3表連動モデル(Excel)

本記事の期首基準Debt Scheduleを組み込み済み。数式をたどって構造を確認できます。

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面接・モデルテストでの問われ方

Q. モデルで循環参照が出ました。どう対処しますか?

A. 原因(利息⇄残高ループ)を特定した上で、反復計算・ブレーカー・期首基準の3択と長短を述べます。「とりあえず反復計算ON」だけの回答は浅いと見なされます。

Q. リボルバーはどう機能しますか?

A. 「最低現金を下回れば借り、余剰があれば返す自動調整弁」と一言で定義し、上のMAX/MIN構造に触れられれば十分です。

まとめ

  • Debt Scheduleは期首→返済→期末→利息の4行ブロック。PL・CF・BSへの配電盤。
  • 利息基準は学習段階では期首基準。循環参照を構造から作らない。
  • リボルバーはMAX/MINの2式で現金の下限を守る。LBOではCash Sweepへ拡張。

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マルチトランシェのDebt Schedule・Cash Sweep・コベナンツ管理を完成モデルで実装します。

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設例・出典について

本文の計算例は理解のための設例です(計算検証済み)。金利水準・貸付慣行は一般的傾向として記載しています。