この記事で分かること
- 感応度分析(2変数を振る)とシナリオ分析(前提セットを切り替える)の違い
- Excelデータテーブルの実装手順と、壊れやすいポイント
- Base/Upside/Downsideの前提の置き方——「Downside=Baseの一律▲10%」がダメな理由
感応度とシナリオ:2つは別の道具
| 観点 | 感応度分析 | シナリオ分析 |
|---|---|---|
| 何を動かす | 1〜2個の変数を機械的に振る | 整合した前提の「セット」を切り替える |
| 答える問い | どの前提に結果が敏感か | 世界がこうなったら結果はどうなるか |
| 代表例 | WACC×g、Entry×Exitマルチプル | Base/Upside/Downside/レンダーケース |
| 実装 | データテーブル | CHOOSE/INDEX+スイッチ |
感応度は「診断」、シナリオは「物語」です。実務の資料には両方を載せます——感応度でキードライバーを特定し、シナリオでDownsideの物語を示す、という役割分担です。
データテーブルの実装手順
- ① 出力セルの参照を左上に置く:表の左上隅(行と列の交点)に「=株式価値」のように結果セルを参照。
- ② 行・列に振る値を並べる:行にg(0.5%〜1.5%)、列にWACC(6.5%〜7.5%)など。
- ③ 範囲選択→データ→What-If分析→データテーブル:行の代入セルにgの入力セル、列の代入セルにWACCの入力セルを指定。
- ④ 中央値の一致を確認:表の中央(Base前提の組合せ)がモデル本体の結果と一致していれば正しく組めています。
実装例はDCF記事の表3(株式価値のWACC×g感応度)とTV記事の表1のとおりです。
壊れやすいポイント:データテーブルは「同一シートの入力セル」しか代入できない/再計算が重くなったら計算方法を「データテーブル以外自動」に
※入力セルが別シートにある場合は、同一シートに中継セルを作って参照させるのが定石です。
シナリオ設計:Downsideは「因果」で作る
最悪の設計ミスは「Downside=全項目を一律▲10%」です。それは物語ではなく機械操作であり、ICでもレンダーにも通りません。
| ケース | 置き方 |
|---|---|
| Base | 実績トレンド+確度の高い施策のみ。経営計画より保守が通常 |
| Upside | 施策の上振れを「どの施策が・どの行を・いくら」で特定して積む |
| Downside | 具体的なストレス事象(主要顧客の離脱、価格競争、景気後退)を選び、その因果で売上・マージン・運転資本を連動させる |
Downsideの目的は悲観ではなく検証です——「この事象が起きてもコベナンツは守れるか、エクイティは残るか」(Debt Capacity)。事象→数値の因果が語れるDownsideだけが、意思決定の役に立ちます。
見せ方の作法
- 感応度表はBaseのセルをハイライトし、単位・軸ラベルを明記する(本サイトの表はすべてこの型です)。
- 振り幅は「あり得る範囲」に限定する。WACCを±3ptも振った表は情報がありません。
- シナリオは各ケースの「前提の物語」を1行で添える。数字だけの3列は読まれません。
無料テンプレート:1シートDCFモデル(Excel)
データテーブル実装済み。②〜④の手順を実物で確認できます。そのままダウンロードできます。
面接での問われ方
Q. 感応度分析とシナリオ分析の違いは?
A. 表1の対比(変数を振る診断か、前提セットの物語か)を一言で。データテーブルとスイッチという実装の違いまで添えると実務的です。
Q. Downsideケースはどう作りますか?
A. 「一律▲10%ではなく、具体的なストレス事象から因果で落とす」が骨子。検証目的(コベナンツ・エクイティ毀損)まで言及します。
まとめ
- 感応度=診断、シナリオ=物語。両方を載せるのが実務の標準。
- データテーブルは左上参照→行列指定→中央値一致チェックの順で。
- Downsideは事象の因果で設計する。一律減算は分析ではない。
有料教材:LBOフルモデル(EX-LBO)
3ケース切替スイッチと感応度テーブルを完全実装。ケース設計の実物を確認できます。
本記事について
実装手順はExcelの標準機能に基づきます。ケース設計の考え方は実務の一般的傾向として記載しています。