この記事で分かること
- 月次試算表の構造と、そのまま財務モデルに貼り付けられない理由
- 勘定科目からモデル標準科目へのマッピング表の作り方(粒度・区分の判断基準つき)
- 組替(Reclassification)の典型パターンと、月次PL・BS・間接法CFへの落とし込み方
- 決算整理仕訳による月次と年度のズレの扱い、日本の中堅・中小企業実務、M&A・PEのDDで試算表を受領する場面の勘所
結論:試算表を「構造変換」してHistoricalsにする作業
財務モデルのHistoricals(実績部分)は、経理から受け取った試算表をそのまま貼り付けただけでは完成しません。試算表はあくまで会社の会計システムが吐き出す「生データ」であり、モデルが必要とする形(勘定科目の粒度、PL・BSの表示区分、月次の時系列)とは前提が違うためです。本記事は、この試算表という生データを、モデルに投入できる構造化されたHistoricalsへ変換する作業、具体的には勘定科目マッピング表の設計、組替(Reclassification)、月次PL・BS・間接法CFへの落とし込み、決算整理仕訳による月次と年度のズレの扱いを扱います。
一方で、変換後のデータに残る「中身の乱れ」――非経常項目の見落とし、決算期変更や会計方針変更による断絶、過年度の異常値――をどう正常化するかは、姉妹記事の財務モデルのためのHistorical Data Cleaningで扱います。本記事が「構造を変換する」工程、mod-026が「中身を正常化する」工程という分担です。またExcel上の具体的な操作(重複削除・区切り位置・フラッシュフィル等)はExcelの財務データクリーニング実務、複数月のデータ取込を自動化する手段はPower Query入門(財務実務)が担当します。財務三表の連動そのものの基礎は財務三表のつながり完全ガイド、モデル全体の作り方は財務モデリング完全ガイド、モデルを組む前の設計は財務モデルの設計図(モデリングプラン)を参照してください。
試算表の構造と、そのまま貼れない理由
試算表(残高試算表)は、総勘定元帳の各勘定科目の残高を一覧にしたものです。会計ソフト上では、貸借対照表(BS)科目は期末残高、損益計算書(PL)科目はその月の発生額(当月計上額)と期首からの累計額が並ぶ形式が一般的です。上場企業にとっての決算短信・四半期開示に相当する「社内向けの定期スナップショット」が、非上場の中堅・中小企業では月次試算表だと考えると位置づけが分かりやすくなります。
この試算表を財務モデルにそのまま貼れない理由は、主に3つです。
- 粒度が違う:会計ソフトの勘定科目は数十〜百科目に及ぶ一方、モデルの行は多くても十数行程度に集約されている。
- 区分の考え方が違う:外注費を売上原価に計上するか販管費に計上するかなど、会社ごとの経理慣行が一貫していないことがある。モデルでは分析目的に沿った統一基準が必要。
- 会社ごとに科目体系がバラバラ:勘定科目コード・科目名の付け方は会社の会計ソフトや税理士の慣習に依存し、標準化されていない。複数社を横並びで見るM&A・PEの実務では特に問題になる。
勘定科目マッピング表の作り方
この粒度・区分のズレを吸収するのが勘定科目マッピング表です。試算表の各勘定科目を、モデル側で使う標準科目(売上高・売上原価・人件費・地代家賃・減価償却費・その他販管費…)に対応付ける対照表を、モデルを組む前に固定します。
設計の順序
- モデル側の標準科目リストを先に決める(試算表の科目を後から追いかけない)。
- 過去数期間分の試算表を並べ、登場する勘定科目を洗い出す。
- 各科目を標準科目に1対1、または多対1(複数科目を1行に集約)で対応付ける。
- 次月以降に新規科目が出た場合の割当ルール(デフォルトは「その他」に一旦集約し、金額が一定以上なら独立行を検討)を決めておく。
- マッピング表自体を前提一覧シートのように出典・更新日つきでモデル内に保持し、担当者交代後も追跡できるようにする。
粒度をどこまで合わせるか
すべての科目を独立行にすると行数が膨らみモデルが扱いにくくなり、逆に集約しすぎると分析に必要な内訳が消えます。判断基準は金額の重要性と月次での変動しやすさの2軸です。重要性が高く変動も大きい科目(材料費・外注費など)は独立行として残し、重要性が低く変動も小さい科目(消耗品費など)は迷わず「その他販管費」に集約します。重要性は高いが変動が小さい科目(地代家賃・減価償却費など)は、モデルのドライバー(賃料単価×拠点数、償却スケジュール)と紐づけるためにあえて独立行として残すのが実務上のセオリーです。
組替(Reclassification)の典型パターン
マッピングだけでは吸収しきれない「区分そのものの違い」を揃えるのが組替です。実務でよく出るパターンは次のとおりです。
- 原価・販管費の区分変更:外注費や製造部門の労務費を、会社の会計処理では販管費に計上している場合でも、モデルでは売上原価に寄せて粗利率を業界標準と比較できる形にする。
- 損益区分の異動:固定資産売却益・保険金収入などの特別損益項目を、モデルでは営業損益の外(非経常)に明確に切り出す。
- 相殺・グロス表示の統一:雑収入と雑費を相殺純額で見ている試算表と、総額で計上している試算表が混在する場合、モデル側の表示方針(原則グロス)に統一する。
- 部門間振替・内部取引の除去:複数部門間の付け替え仕訳が試算表に残っている場合、全社PLとしては重複計上になるため除去する。
組替のルールは一度決めたら固定し、月をまたいで一貫させることが重要です。途中でルールを変えると、月次の増減が「事業の変化」なのか「組替ルールの変更」なのか判別できなくなります。
設例:試算表から月次PLへの変換
以下は説明用の仮設例です。実在の企業のものではありません。単位はすべて千円、対象月は2026年8月とします。損益科目のみを抜粋した簡略版の試算表とし、実際の試算表にはBS科目も含めた借方・貸方一致の形式になります。
| 勘定科目 | 借方(千円) | 貸方(千円) |
|---|---|---|
| 売上高 | - | 45,000 |
| 雑収入 | - | 30 |
| 受取利息 | - | 5 |
| 固定資産売却益 | - | 1,200 |
| 材料費 | 18,000 | - |
| 外注費 | 4,500 | - |
| 労務費(製造) | 3,200 | - |
| 給料手当 | 8,200 | - |
| 法定福利費 | 1,150 | - |
| 地代家賃 | 1,800 | - |
| 減価償却費 | 900 | - |
| 旅費交通費 | 320 | - |
| 消耗品費 | 180 | - |
| 支払手数料 | 260 | - |
| 雑費(訴訟和解金80含む) | 140 | - |
| 支払利息 | 210 | - |
この試算表に、s3で説明したマッピング表を適用します。
| 試算表科目 | 性質 | モデル標準科目 | 粒度の扱い | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 貸方 | 売上高 | 独立 | そのまま |
| 雑収入 | 貸方 | 営業外収益(その他) | 集約 | 受取利息と合算 |
| 受取利息 | 貸方 | 営業外収益(その他) | 集約 | 雑収入と合算 |
| 固定資産売却益 | 貸方 | 特別利益(非経常) | 独立・注記 | 経常利益より下に区分 |
| 材料費 | 借方 | 売上原価(変動費) | 独立 | 主要変動費 |
| 外注費 | 借方 | 売上原価(変動費) | 独立 | 組替:販管費計上の会社もあるため統一 |
| 労務費(製造) | 借方 | 売上原価(固定費) | 独立 | 人件費だが原価区分 |
| 給料手当 | 借方 | 販管費:人件費 | 集約 | 法定福利費と合算 |
| 法定福利費 | 借方 | 販管費:人件費 | 集約 | 給料手当と合算 |
| 地代家賃 | 借方 | 販管費:地代家賃 | 独立 | 賃料単価ドライバーに連動 |
| 減価償却費 | 借方 | 販管費:減価償却費 | 独立 | 非資金項目(CFで調整) |
| 旅費交通費/消耗品費/支払手数料/雑費 | 借方 | 販管費:その他販管費 | 集約 | 雑費に非経常の訴訟和解金80が混入 |
| 支払利息 | 借方 | 営業外費用 | 独立 | そのまま |
マッピングと組替を適用した結果、モデル標準科目ベースの月次PLは次のようになります。
| 科目(モデル標準) | 金額(千円) |
|---|---|
| 売上高 | 45,000 |
| 売上原価(材料費+外注費+労務費) | 25,700 |
| 売上総利益(粗利率42.9%) | 19,300 |
| 人件費(給料手当+法定福利費) | 9,350 |
| 地代家賃 | 1,800 |
| 減価償却費 | 900 |
| その他販管費 | 900 |
| 営業利益(営業利益率14.1%) | 6,350 |
| 営業外収益(雑収入+受取利息) | 35 |
| 営業外費用(支払利息) | 210 |
| 経常利益 | 6,175 |
| 特別利益(固定資産売却益・非経常) | 1,200 |
| 税引前当期純利益 | 7,375 |
試算表の科目名だけを見ると気づきにくい落とし穴もあります。この設例では「雑費」140千円の中に、当月一時的に発生した訴訟和解金80千円が含まれています。勘定科目の残高だけを見ていては判別できず、必要に応じて仕訳帳・補助元帳まで遡って中身を確認しないと非経常項目を見落とします。ここから先の非経常項目の識別ルール・正常化の型は財務モデルのためのHistorical Data Cleaningで詳しく扱います。
月次BSと間接法CFの導出
月次BSは、PLほど組替の必要性は高くありません。試算表のBS科目(現預金・売掛金・棚卸資産・有形固定資産・買掛金・借入金・純資産等)を、モデルのBS標準科目にマッピングして並べれば足ります。ただし、仮払金・仮受金といった仮勘定は、内容を精査してモデルの実体科目(前渡金、未払費用等)に振り替える組替が必要になることが多く、中小企業の試算表では特に発生しやすい論点です。
間接法CFは、月次PLとBSの2期間比較から導出します。以下は同じ仮設例の続きで、8月単月の営業活動によるキャッシュフローを簡便に試算したものです(実際には固定資産の増減明細等から資本的支出を分離するなど、より精緻な組み方が必要です)。
| 項目 | 金額(千円) |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 7,375 |
| 減価償却費(非資金項目を足し戻す) | +900 |
| 固定資産売却益(投資CFへ付け替え) | -1,200 |
| 売掛金の増加(資金使用) | -800 |
| 棚卸資産の増加(資金使用) | -300 |
| 買掛金の増加(資金創出) | +200 |
| 営業活動によるキャッシュフロー(簡便試算) | 6,175 |
ここで作っているのはあくまで実績の間接法CF(Historicals用)です。将来の資金繰りを見通す直接法の予測モデルは別の実務であり、資金繰り予測の実務で扱っています。両者を混同すると、実績のトレース目的で作ったCFを予測に流用してしまう、あるいはその逆といった設計ミスにつながります。
LTM算定への接続
月次のHistoricalsが揃うと、直近12か月(LTM)を積み上げて年度をまたいだ実績トレンドやバリュエーションの基準値を作れます。四半期開示のある上場企業のLTM計算とは異なり、月次試算表ベースのLTMは単純に直近12か月分の月次数値を合算するだけで済む点が実務上の利点です。ただし、月によって決算整理仕訳の有無が異なる場合(後述)や、前年同月の数値が組替前の旧フォーマットである場合は、合算前にマッピングを揃える必要があります。LTM・NTMの具体的な計算式や決算期がずれた会社への対応はLTM・NTM・Calendarizationの実装で扱います。
非経常項目の抽出
s5の設例で見たとおり、非経常項目は「特別損益」のように科目として明示されているものだけではありません。固定資産売却益のように区分が明確なものは組替で対応できますが、雑費に紛れた訴訟和解金のように科目名からは判別できないものは、金額の変動履歴(急に増減した月がないか)や補助元帳の内容確認から拾い出す必要があります。本記事では「試算表の段階でどこに紛れ込みやすいか」という構造上の注意点までを扱い、非経常項目の網羅的なチェックリストや正常化EBITDAへの反映方法は財務モデルのためのHistorical Data Cleaning、EBITDAの調整項目の考え方そのものはEBITDAの正常化調整(Adjusted EBITDA)を参照してください。
決算整理仕訳と月次・年度のズレ
日本の中堅・中小企業の月次試算表を扱ううえで最も見落とされやすいのが、決算整理仕訳の多くが年度末にしか計上されないという点です。代表的な項目は次のとおりです。
- 賞与引当金:月次では計上せず、支給月や決算月にまとめて計上する会社が多い。
- 退職給付関連費用:簡便法・中退共掛金であっても、月次では反映されず期末に一括計上されることがある。
- 減価償却費:月次試算表では年間償却額の1/12を按分計上せず、決算月にまとめて計上する運用が中小企業では珍しくない。
- 棚卸資産の評価減・貸倒引当金:実地棚卸や評価判断を伴うため、期中の月次では反映されない。
- 法人税・住民税・事業税:月次では未計上、または概算額のままのことが多い。
この結果、月次試算表を単純に12倍しても年度決算の数値には一致せず、逆に年度決算だけを見ても月次の季節性が分からないという状態になります。モデルでHistoricalsを構築する際は、①決算整理仕訳が計上された月(多くは決算月)を特定してその月に発生額が跳ねている理由を注記する、②月次比較のためには決算整理仕訳を年間で按分し直した「調整後月次」を別途作る、のいずれか(または両方)の対応が必要です。②は正常化の領域であり、詳細な調整ロジックは財務モデルのためのHistorical Data Cleaningで扱います。なお、期中に大きな過年度修正(修正再表示)が入った場合も、同様に「どの月に何が計上されたか」を追跡できる形でHistoricalsに残しておくことが重要です。
Model-readyなデータ形式:縦持ちと横持ち
マッピング・組替を終えたデータをどう保存するかも実務上の論点です。大きく2つの形式があります。
- 縦持ち(Long format):「科目・期間・金額」を1行1レコードとして積み上げる形式。月が増えるたびに行を追加するだけで済み、Power Queryや会計ソフトからのCSVエクスポートとの相性が良い。
- 横持ち(Wide format):科目を行、期間(月)を列に配置する形式。財務モデルのHistoricalsタブは通常この形式で、人間が見て月次推移を追いやすい。
| 科目 | 期間 | 金額(千円) |
|---|---|---|
| 売上高 | 2026-07 | 42,300 |
| 売上高 | 2026-08 | 45,000 |
| 売上原価 | 2026-07 | 24,100 |
| 売上原価 | 2026-08 | 25,700 |
実務では、会計ソフトからの取込・毎月の追加は縦持ちで受け、モデルのHistoricalsタブに反映する直前でピボットして横持ちに変換するという二段構えが扱いやすい設計です。縦持ちのまま蓄積しておけば、後から粒度やマッピングを変更してもピボットし直すだけで対応でき、複数期間・複数会社のデータを同じ仕組みで処理できます。この取込・整形の自動化はPower Query入門(財務実務)で具体的な手順を扱っています。
日本の中堅・中小企業実務での注意点
会計ソフトからのエクスポート
中堅・中小企業の経理では、freee会計・マネーフォワード クラウド会計・弥生会計などのクラウド/パッケージ会計ソフトから試算表をCSV出力して受け渡すケースが大半です。エクスポート形式はソフトによって異なり、勘定科目コードの有無、部門別集計の有無、当月発生額と累計額の並び順などがまちまちです。freee会計では試算表画面からCSV・PDF形式でのエクスポートに対応しており、勘定科目コードを含めるかどうかをオプションで選べます。マネーフォワード クラウド会計では貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書をCSV形式で一括出力する機能が提供されています。弥生会計では残高試算表(月次・期間)を汎用形式のCSVでエクスポートできます。ソフトが変わればマッピング表の左列(試算表科目)を作り直す必要があるため、会社ごとに使用ソフトを記録しておくと後工程がスムーズです。
税務基準寄りの月次
中小企業庁が公表する「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)は、経理人員が限られる中小企業の実態に即した会計処理の考え方を示しています。この背景もあり、多くの中小企業の月次経理は、会計理論上の厳密な発生主義よりも、法人税申告に必要な処理(税務基準)に寄った運用になりがちです。減価償却は税務上の耐用年数・償却方法をそのまま会計上も採用し、引当金は税務上損金算入できないという理由で計上を見送る、といった実務です。モデルを組む側としては、この「税務基準寄り」の運用そのものを問題視する必要はありませんが、会計理論上あるべき費用計上と実際の試算表計上にズレがあり得るという前提でマッピング・組替を設計する必要があります。
締めの遅れ
経理体制が小規模な会社では、月次決算の確定までに数週間を要することが珍しくありません。直近1〜2か月分の試算表は、未払費用の計上漏れや仮勘定の未整理を含んだ「速報値」であることが多く、後日の確定版と数値が変わる可能性があります。Historicalsに取り込む際は、どの月が確定値でどの月が速報値かをモデル上に明記し、速報値の月は後日の差し替えを前提とした運用にしておくことが実務上の安全策です。
M&A・PEデューデリジェンスでの試算表受領
M&A・PEのディールでは、対象会社から月次試算表を受け取る場面が必ず発生します。バーチャルデータルームに格納された過去数期間分の試算表を起点に、財務デューデリジェンスチームやディールチームがマッピング表を組み、Quality of Earnings分析の土台を作るという流れです。ここで本記事の内容がそのまま実務に直結します。
- 対象会社ごとに勘定科目体系が異なるため、案件が変わるたびにマッピング表を作り直す必要がある。過去に扱った類似業種のマッピング表をテンプレートとして流用すると効率化できる。
- データルームに置かれる直近月の試算表は速報値であることが多く、確定後に数値が動く可能性がある前提でモデルの感応度を確認しておく。
- 対象会社の経理担当者しか把握していない組替ルール(例:ある部門の売上を別部門に付け替えている等)は、マネジメントインタビューやQ&Aで確認しないとマッピング表だけでは気づけない。
- マッピング表の設計自体が、後段の正常化EBITDA算定・バリュエーションの精度を左右する。マッピングの粒度が粗いと、非経常項目が他の科目に埋もれて見落とされるリスクが高まる。
マッピング品質のレビューチェックリスト
- 試算表の借方合計と貸方合計が一致しているか(試算表自体が崩れていないか)を確認したか。
- マッピング表の全科目が標準科目のいずれかに対応付けられているか(未割当の科目が残っていないか)。
- 組替ルール(原価/販管費の区分、相殺/総額表示等)が月をまたいで一貫しているか。
- 非経常項目が科目名だけでなく、金額の異常な増減からも点検されているか。
- 決算整理仕訳が計上された月と未計上の月が識別できる状態か。
- マッピング後のPL合計・BS貸借が、組替前の試算表の合計と一致しているか(組替で数字自体が変わっていないか)。
この検算がとれていれば、次の品質チェック工程(財務モデルのクオリティチェック(QC)完全ガイド)にスムーズに引き継げます。
よくある質問(FAQ)
試算表とHistoricalsは何が違うのですか?
試算表は会計ソフトが出力する生の勘定科目別残高です。Historicalsはそれをモデル標準科目にマッピングし、組替・区分統一を済ませた、モデルに投入できる形式のデータを指します。
マッピング表は毎月作り直す必要がありますか?
一度設計すれば固定し、使い回すのが基本です。ただし新規科目の追加や会計処理の変更があった月は、マッピング表側にも反映が必要です。
決算整理仕訳が反映されていない月次数値をそのままモデルに入れてよいですか?
目的次第です。実際の会社の動きをそのまま追う用途であれば速報値のまま入れて構いませんが、月次の粗利率や費用率を比較・分析する用途では、決算整理仕訳の影響が特定の月に偏っていることを注記するか、年間按分し直した調整後数値を別に用意する必要があります。
縦持ちと横持ち、どちらでデータを保存すべきですか?
会計ソフトからの取込・蓄積は縦持ち、モデルのHistoricalsタブとしての表示は横持ちが扱いやすい組み合わせです。縦持ちのまま蓄積し、必要なタイミングでピボットして横持ちに変換する設計を推奨します。
DDで受け取った試算表の勘定科目が会社ごとにバラバラな場合、どうすればよいですか?
案件ごとにマッピング表を作り直すのが基本ですが、業種が近い過去案件のマッピング表をテンプレートとして流用すると効率化できます。判断に迷う科目は経理担当者への確認を挟むことが重要です。
まとめ
試算表から財務モデルのHistoricalsを作る作業は、単なるコピー&ペーストではなく、勘定科目マッピング表の設計、組替、決算整理仕訳による月次と年度のズレの吸収という一連の「構造変換」です。マッピング表を先に固定し、粒度の判断基準を持ち、非経常項目が科目名に隠れているかもしれないという前提で試算表を読む――この型を身につければ、対象企業ごとに科目体系が異なるM&A・PEのDD現場でも、同じ手順で対応できます。構造変換の後に残る「中身の正常化」は財務モデルのためのHistorical Data Cleaningで扱いますので、あわせて参照してください。
出典・参考(2026年8月16日確認)
- 中小企業庁「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」 chusho.meti.go.jp
- freeeヘルプセンター「試算表」 support.freee.co.jp
- マネーフォワード クラウド会計サポート「貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書をCSV形式で一括出力できるようになりました」 biz.moneyforward.com
- 弥生株式会社 弥生会計サポート情報「データのエクスポート」 support.yayoi-kk.co.jp
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。