この記事で分かること

  • 「既存資産の償却」と「新規投資の償却」を分けて積む償却レイヤー方式(設例つき)
  • D&Aが112→124→136と階段状に増える仕組みと、PP&Eロールとの接続
  • 維持Capexと成長Capexの区別、予測とTV(ターミナルバリュー)での整合の取り方

なぜ専用スケジュールが要るのか

入門モデル(3表チュートリアル)ではD&Aを定数40としましたが、実務では毎年の新規投資がそれぞれ償却を生むため、D&Aは投資計画の関数になります。これを表現するのが償却レイヤー方式(ウォーターフォール)——「既存資産の償却」の上に「各年度の新規Capexが生む償却」を1層ずつ重ねる作り方です。

設例:レイヤーを積む

前提(設例):既存PP&E 500は残存5年・定額(年100)。新規Capexは毎年60、耐用5年・定額(年12)、投資年から満額償却の簡便法とします。

表1:償却レイヤー表(単位:百万円・設例)
償却の源泉FY1FY2FY3
既存資産(500・残5年)100100100
FY1投資 60(÷5年)121212
FY2投資 601212
FY3投資 6012
D&A合計112124136

Excelでは「行=投資年度、列=経過年度」の三角形の表を作り、各行に =投資額/耐用年数 を耐用年数分だけ横に走らせ、列ごとに縦計します。IF文で償却期間の内外を判定する形(例:経過年数が耐用年数以内なら償却、超えたら0)が定石です。

PP&Eロールとの接続

表2:PP&Eロールフォワード(単位:百万円・設例)
項目FY1FY2FY3
期首PP&E500448384
+Capex606060
−D&A(表1の合計行)(112)(124)(136)
期末PP&E448384308

この設例ではD&AがCapexを上回り続けるため、PP&Eは縮んでいきます。それは「資産の食い潰し」を意味し、この前提のまま売上成長を続ける計画は自己矛盾です——投資と成長の整合チェック(売上ドライバーの物差し②)がここで効いてきます。

実務の論点

  • 維持Capexと成長Capex:現状維持に必要な投資(更新・修繕)と、能力を増やす投資を分けて持つと、シナリオ操作(不況時は成長Capexだけ止める)が自然にできます。
  • 期央主義:年央に投資すると仮定して初年度は半年分(60÷5÷2=6)だけ償却する方式もあります。精緻ですが、まず満額方式で構造を作ってから切り替えるのが習得の近道です。
  • TVとの整合:予測最終年度でCapex≒D&Aに収束させるのが定常状態の作法(落とし穴#3)。レイヤー表があると、収束させるのに必要なCapex水準が逆算できます。
  • 無形資産・リースの償却も同じレイヤー構造で作れます。ソフトウェア投資が大きい会社では無形償却が主役になることもあります。

Q. 面接で「D&Aはどう予測しますか?」と聞かれたら?

A. 「簡便には売上比や過去水準で置きますが、精緻には償却レイヤー方式です。既存資産の償却スケジュールに、各年度Capexが生む償却を耐用年数で層状に重ね、PP&Eロールと接続します。最終年度はTVとの整合でCapexとD&Aを収束させます」。

Q. 耐用年数はどう決めますか?

A. 実績から逆算するのが実務の第一歩です。過去の「PP&E総額÷年間償却費」でおおよその平均耐用年数が推定できます。資産種類別の内訳が取れるなら、建物・機械・ソフトウェアで層を分けるほど精度が上がります。

まとめ

  • D&Aは投資計画の関数。既存+新規レイヤーの三角形で積む(設例:112→124→136)。
  • PP&Eロール(期首+Capex−D&A)と接続し、資産の食い潰しと成長の矛盾を検出する。
  • 維持と成長の分離、最終年度のCapex≒D&A収束——シナリオとTVの品質はここで決まる。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。