この記事で分かること
- 売掛金・棚卸・買掛金を回転日数で予測する標準手順(設例つき・全整数)
- 「成長するほど現金が減る」をモデルで正しく表現する:ΔWC+18の意味
- 回転日数の置き方(実績分析→改善余地)と、予測でやりがちなミス
回転日数方式が標準である理由
入門編(3表チュートリアル)では簡略化のため売上比・原価比で運転資本を置きました。実務の標準は回転日数方式です。「売掛金が何日分の売上か」という業務の実感(回収サイト・在庫月数・支払サイト)と直結し、改善施策(回収を5日早める)をそのまま前提に翻訳できるからです(概念は運転資本の基礎)。
設例:日数から残高、残高からΔWCへ
日数が全く同じでも、売上が10%伸びればNWCも10%増え、その増分18が現金から消えます。「成長は現金を食う」をモデルが自動で表現する。これが回転日数方式の本質的な利点です。BSにはこの残高が、CF計算書にはΔWCが接続されます(符号の理屈は間接法の読み方)。
日数の置き方
- 実績から出発:過去2〜3年の期末(できれば四半期・月次平均)残高から日数を逆算し、トレンドと異常値を見ます。期末一時点は着地操作で歪むことがあるため、平均残高ベースが望ましい場面もあります。
- 予測は「維持」か「改善」かを明示:改善(DSO短縮等)を置くなら、施策(請求サイクル変更・与信管理・在庫SKU削減)とセットで。根拠なき改善はレビューで最初に削られます。
- 季節性がある事業:年次日数では山が見えません。月次化(展開方法)とセットで考えます。
- その他運転資本:前受金・未払費用・前払費用も同じ発想(対応する売上・費用×日数または比率)で行を立てます。前受金の大きいビジネス(保守・サブスク)は成長が現金を生む逆の構造になり、ここを捉え損ねると価値を誤ります。
やりがちなミス
- 分母の取り違え:棚卸・買掛金の分母は売上でなく原価。売上分母で日数を作ると、マージン変化のたびに意味が変わります。
- 365と360の混在:どちらでも良いが統一する。混在は微妙なズレを生み検算を汚します。
- ΔWCの符号ミス:増加はCFのマイナス。デバッグで最頻出の犯人です(差額2倍の犯人)。
- M&A文脈での正常水準:クロージング調整(価格調整)では「正常NWC」の定義が価格に直結。単純平均でなく季節調整後で議論します。
Q. 面接で「運転資本はどう予測しますか?」と聞かれたら?
A.「回転日数方式です。実績から日数を逆算してトレンドを確認し、予測は維持か改善かを施策と紐づけて明示します。売上が伸びれば日数一定でも残高が増え、その増分がCFのマイナスになる。成長の資金需要を自動で表現できるのが利点です」。
Q. CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)との関係は?
A. CCC=DSO+DIO−DPOで、この設例では36.5+73−36.5=73日。運転資本が「何日分の事業資金か」を1つの数字で示します。CCC短縮=同じ成長をより少ない現金で賄えること、と説明できると実務感が伝わります。
まとめ
- 標準は回転日数方式。業務の実感と施策をそのまま前提に翻訳できる。
- 設例:日数一定でも売上+10%でNWC 180→198、ΔWC▲18が現金から消える。
- 分母(原価系)・日数の根拠・符号・正常水準。4つの定番ミスを潰して仕上げる。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。