この記事で分かること
間接法は「利益と現金のズレの説明書」
間接法のCF計算書は、純利益から出発して「現金が動いていない項目」「タイミングがズレた項目」を調整し、実際の現金増減へたどり着く形式です。つまりこの書類は、利益と現金がなぜズレたのかの説明書として読むのが正しい姿勢です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当期純利益 | 70 |
| +減価償却費(現金の出ない費用) | 40 |
| −運転資本の増加(解説) | (10) |
| 営業CF | 100 |
| 投資CF(設備投資) | (60) |
| (参考)FCF=営業CF+投資CF | 40 |
| 財務CF(借入返済・配当) | (30) |
| 現金の純増減 | +10 |
3区分の符号パターンで会社を診断する
| 営業 | 投資 | 財務 | 読み |
|---|---|---|---|
| + | − | − | 優良の定型。本業で稼ぎ、投資し、借入返済や還元まで回っている |
| + | − | + | 拡大期。本業は黒字だが投資が大きく、外部調達で成長を加速中 |
| − | − | + | 先行投資期または危険水域。調達が止まると資金繰りに直結。事業の中身で判別が必要 |
| − | + | − | 警戒。稼げず資産売却で返済に充てている縮小パターン |
実務者の8つの着眼点
- ①営業CFと純利益のカイ離:利益は出ているのに営業CFが弱い状態が続けば、押し込み販売・在庫積み上がり・回収悪化を疑います(利益の質の問題)。
- ②運転資本の増減の中身:売掛・在庫・買掛のどれが動いたか。成長に伴う自然増か、滞留かを回転日数で確認します。
- ③FCFの水準と推移:営業CF−投資CF。企業価値の源泉であり(DCF)、数年分の推移で見ます。
- ④Capexと減価償却の比率:投資フェーズの判定(Capexの読み方)。
- ⑤利息・税金の支払額:PLの費用でなく実際の支払い。デットの重い会社では特に、支払利息の実額が返済余力の物差しになります。
- ⑥財務CFの構成:借入と返済のグロスの動き、配当・自社株買いの規模。資本政策の実像が出ます。
- ⑦現金の着地とBSとの整合:期末現金がBSと一致しているか(3表整合の基本。つながりの確認)。
- ⑧非資金項目の常連:減損・引当金繰入など、毎期出てくる「現金の出ない損失」は、PLの見た目より実力があるのか、それとも将来の支出予約なのかを個別に判断します。
Q. 面接で「利益が出ているのに倒産するのはなぜ?」と聞かれたら?
A. 「支払いは現金でしか出来ないからです。売上が急拡大すると売掛金と在庫に現金が吸い込まれ(運転資本の増加)、利益は黒字でも手元現金が尽きる——いわゆる黒字倒産です。だから営業CFと運転資本の動きを利益とセットで見ます」。
Q. 直接法と間接法はどちらが良いのですか?
A. 分析目的なら間接法が便利です。利益との差異要因(償却・運転資本)が明示されるため、利益の質の検証にそのまま使えます。実務で目にする開示もほぼ間接法です。直接法は入出金の実額が見える利点がありますが作成負担が大きく採用は少数派です。
まとめ
- 間接法=利益と現金のズレの説明書。純利益→非資金調整→運転資本→営業CFの順に読む。
- 3区分の符号パターンで状態を診断(+−−が定型、−−+は要判別)。
- 8つの着眼点の起点は「営業CFと純利益のカイ離」。利益の質はここに現れる。
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本記事について
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