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  • DCF・LBO・M&Aの3モデルを、同じ設例・同じExcel作法で一気通貫に学ぶためのロードマップです——読む順・作る順・検算の型をここで固めてから各実践編へ進みます
  • 実践編は3本:DCF完全ガイド(15 STEP)LBO完全ガイド(15 STEP)M&A完全ガイド(18 STEP)。合計で投資銀行の新人研修1週間分に相当する演習量です
  • 60分で雰囲気を掴みたい方は各クイック版(3表DCFM&A)から入ってもOK

財務モデリングで、何を作るのか

「財務モデリング」と聞くと難解ですが、作るものは結局4階建ての建物です。1階が3表モデル(会計のエンジン)、2階がオペレーティングモデル(将来予測)、3階に価値評価(Valuation Model=DCFなど)と取引分析(Transaction Model=LBO・M&A)が載ります。土台が共通だから、1階を一度きちんと作れば、上の階は「載せ替え」で済む——これが本ロードマップの設計思想です。

図1:モデルの4階建て——3表の上にすべてが載る 1階 3表モデル(IS・BS・CF連動)複式簿記をExcelに写す。すべての土台 2階 オペレーティングモデル(将来5年の予測エンジン)成長率・マージン・回転日数・投資——前提で駆動 3階A Valuation ModelDCF・マルチプル評価「この事業はいくらか」 3階B Transaction ModelLBO(リターン)・M&A(EPS)「この取引は成立するか」

3つのモデルは何が違うのか——1枚で比較

同じ会社(本シリーズの設例:中堅メーカー「ハルカワ工業」・架空)を見ても、誰の目で見るかで、作る表も結論の単位も変わります。まずこの対応表を頭に入れてください。

表1:DCF・LBO・M&Aモデルの一覧比較(同じ会社を3つの目で見る)
DCFモデルLBOモデルM&Aモデル
答える問いこの事業はいくらかPEファンドはいくら儲かるか買い手のEPSはどうなるか
主語事業そのもの金融投資家(スポンサー)事業会社(買い手)
中心となる出力企業価値→1株価値IRRMOICEPS Accretion/Dilution
価値の源泉将来FCF現在価値デット返済+EBITDA成長+倍率シナジー−支払プレミアム
資本構成の扱いWACCに織り込む(FCFは中立)モデルの主役(Debt Schedule)対価構成で切替(現金/株式)
本設例の結論1株210〜213円(市場160円)MOIC 2.0x・IRR 15.1%株式対価はFY1▲4.0%→FY2+9.2%
主な使い手IBD・FAS・事業会社PEファンド・レバファイIBD・事業会社の経営企画
土台3表オペレーティングモデル同左+買収BS同左×2社+合算

学習ロードマップ——この順番で作る

順番には理由があります。DCFで作るオペレーティングモデルが、LBOでもM&Aでも土台としてそのまま使われるからです。逆順に始めると、土台を3回作り直すことになります。

図2:学習ロードマップ(標準2〜3週間・週10時間目安) 準備(2日)3表の意味クイック版で体験 第1部 DCF(5日)3表エンジン+評価15 STEP・1株213円へ 第2部 LBO(4日)S&U・Sweep・IRR15 STEP・MOIC 2.0x 第3部 M&A(5日)PPA・合算・EPS18 STEP・A/D分析 仕上げ:QCチェックリスト → ペーパーLBO検算 → モデルテスト対策 → 教材のフルモデルへ 各段階で「前提を±1%動かして壊れないか」を確認してから次へ進む
前提知識の目安:簿記3級程度の用語(財務三表)とExcelの基本操作。それ以外はすべて記事内で補完します。急ぐ人の最短ルートは「準備→DCF編→LBO編」の11日間です。

Excelモデリング共通ルール——3記事すべてで守る約束

実践編に入る前に、シリーズ共通の「作法」を4つ固めます。作法はセンスではなく事故防止の技術です——どれも、投資銀行・PEの現場で他人のモデルを開いた瞬間に評価が決まるポイントでもあります。

ルール1 3表はこうつながっている

図3:3表のつながり——矢印は「数式のリンク」そのもの IS(損益計算書) 売上→EBITDA→EBIT→利息→税→純利益 CF(現金の翻訳) 純利益+非資金−ΔWC−投資±財務=現金増減 BS(残高の台帳) 現金・WC・固定資産借入・純資産 純利益 期末現金 残高の増減がCF項目を決める 純利益−配当が純資産へ(利益剰余金)

覚え方は3本の矢印だけ——①純利益はCFの出発点かつBSの純資産へ、②CFの期末現金はBSの現金へ、③BSの残高変化はCFの各行へ。この3本が数式で張れれば、3表モデルは完成したも同然です(手を動かす版:3表クイック)。

ルール2 セルは4種類に色分けする

XModel.xlsx – Excel(全シート共通の色規約)
BCD
2セルの種類見た目ルール
3入力セル(ハードコード)12,000青字。前提・実績値のみ。式は書かない
4計算セル(同一シート内)15,132黒字。式のみ。数字のべた書き禁止
5リンクセル(他シート参照)=Model!C41緑字。どこから来たか一目で分かる
6チェックセル0.0太字。0以外なら異常。ROUNDで丸めて比較
図4:投資銀行・PEの現場共通の色規約。「青だけ動かせば全てが追随する」状態がゴール。この規約が守られたモデルは、他人が開いても3分で構造を掴める。

ルール3 シートは役割で分ける

表2:作り始める前のシート設計(3モデル共通の骨格)
シート役割置くもの
Input前提の一元管理成長率・マージン・回転日数・税率・スイッチ類(すべて青字)
Model3表と支える計算IS/運転資本/固定資産/Debt Schedule/BS/CF
DCF・Returns・EPS各モデルの出力UFCF・WACC・TV/S&U・IRR/合算・Accretion分析
Check検算の集約BS差額・CF整合・S&U一致など「0が並ぶ」行

ルール4 循環参照はスイッチで、検算はチェック行で

利息⇄現金のループ(循環参照)は3モデル共通で現れます。対処も共通——IFスイッチで切断可能にしてから反復計算を有効化(ファイル→オプション→数式)。そして全モデルに「0が並ぶチェック行」を置き、前提を動かすたびに0が保たれることを確認します。詳細は循環参照モデルQC、実装は各実践編のSTEPで手を動かします。

DCF実践編——事業の値段を測る(第1部)

最初の山です。3表エンジンを組み(STEP3-10)、UFCF→WACC→TV→EVと降りて、1株あたり価値で着地する(STEP11-15)。本シリーズの設例では、市場株価160円のハルカワ工業に対して理論値213.3円〜210.3円——「市場に割安放置された会社」という評価が出ます。

XDCF_Model.xlsx – Excel(結論の1枚)
BCD
2予測5年のUFCF現在価値3,721.2
3(+)ターミナルバリューの現在価値11,876.8EVの76.1%
4企業価値(EV)15,598.0EV/EBITDA 8.7x
5(−)ネットデット・非支配持分+事業外資産▲2,800.0
6株式価値12,798.0
71株あたり価値213.3円Exit法では210.3円
図5:DCF編の到達点。市場株価160円に対して理論値210〜213円——「割安に放置された会社」という本ロードマップ全体の前提がここで固まる。単位:百万円。

ここで身につくもの:3表連動・運転資本と回転日数・BASE型ロールフォワード・Debt Schedule・循環参照スイッチ・WACC・ターミナルバリュー2法・感応度表。DCFモデル完全ガイド(15 STEP)を作る/理論の先読み:DCF法の考え方WACCターミナルバリュー

LBO実践編——ファンドの買収リターンを測る(第2部)

同じ会社を今度は「借金で買う」目で見ます。S&U→買収直後BS→5年運転(Cash Sweep)→Exit→IRR/MOIC。オペレーティングモデルはDCF編の流用なので、学習の中心は資本構成の設計に移ります。設例ではエントリー8.0x・レバレッジ5.0xで、MOIC 2.02x・IRR 15.1%に着地します。

XLBO_Model.xlsx – Excel(結論の1枚)
BCD
2買収EV(8.0x × EBITDA 1,800)14,400
3負債調達(TLA+TLB)9,000レバレッジ5.0x
4スポンサーエクイティ6,132手数料・最低現金込み
55年後のExitエクイティ12,402.3Exit 8.0x据え置き
6MOIC2.02x
7IRR15.1%
図6:LBO編の到達点。マルチプル拡大ゼロでもMOIC 2.02x。内訳はEBITDA成長3,118+デット返済3,585(単位:百万円)。

ここで身につくもの:Entry Valuation・トランシェ設計・手数料とOID・S&Uの逆算・のれん(簡易PPA)・EBITDA起点CF・Cash Sweep・安全性分析・リターン源泉分解・ペーパーLBO検算。LBOモデル完全ガイド(15 STEP)を作る/先に仕組みだけ:LBOとは理論6ステップ

M&A実践編——買い手企業への財務インパクトを測る(第3部)

最終章は事業会社の目です。2社のモデルを統一フォーマットで並べ、PPA(のれん・ステップアップ・DTL)を通して合算し、EPS Accretion/Dilutionで審判を下す。設例では現金・株式・混合の3ケースを1つのスイッチで切り替え、株式対価はFY1 ▲4.0%→FY2 +9.2%という「初年度だけ苦しい」典型パターンを再現します。

XMA_Model.xlsx – Excel(結論の1枚・日本基準)
BCD
2ケースFY1FY2(定常)
3①現金対価+7.9%+24.1%
4②株式対価▲4.0%+9.2%
5③混合50:50+1.4%+15.9%
図7:M&A編の到達点=EPS Accretion/Dilution。株式対価は初年度だけ希薄化(統合費用とシナジー未発現のため)し、2年目に増益へ転じる。

ここで身につくもの:2社統合フロー・希薄化調整(TSM)・ケーススイッチ・3ケースS&U・フルPPA・合算3表・シナジーの発現カーブ・交換比率・プレミアム分析・限界プレミアム。M&Aモデル完全ガイド(18 STEP)を作る/制度の周辺:M&AプロセスTOB

3モデルのつながり——1本の価格軸で見る

3記事を終えると、バラバラに見えた数字が1本の軸に載っていることに気づきます。これが本ロードマップの到達点です。

図8:同じ会社に4つの値札——価格軸でつながる3モデル(円/株) 160市場株価(割安放置) 190LBO編:PE提示プレミアム18.8%・IRR 15.1% 200M&A編:TOB価格プレミアム25%+シナジー 210〜213DCF編:理論値レンジ2法のTVでクロスチェック PEは理論値より安く入りリターンを確保、戦略買い手はシナジーでプレミアムを正当化——すべて同じオペレーティングモデルの上で

読み解きのポイントは3つ。①PEファンド(190円)は、DCF理論値より下で買うから財務リターンだけで成立する②戦略買い手(200円)は、シナジーPV 2,625がプレミアム2,400を上回るから200円を正当化できる③どちらの評価も、DCF編で作った同じ予測エンジンの上で動いている——モデルを1つ作れば、3つの意思決定を語れるのです。

よくあるミスと検算方法

3モデルに共通する事故は、実は数種類しかありません。症状→原因→処方箋で覚えます(各モデル固有のミスは実践編の巻末表へ)。

表3:初学者がつまずく順に並べた「あるあるミス」
症状原因処方箋
BSが合わないCFの拾い漏れ(ΔNWCの符号・配当)チェック行を先に作り、期ごとに二分探索
#REF!が連鎖行削除でリンク切断名前付き範囲・シート保護を活用
循環参照の警告利息⇄現金のループスイッチ+反復計算設定(詳細はDCF編)
数字が動かない式の中のべた書き数字入力セルへ退避して青字化
Sweepで現金がマイナス最低現金の下限なし=MAX(0,MIN(余剰, 残高))の型に
EPSが合わない新株数・のれん償却の漏れ分母と税効果を最後に再点検

検算の基本動作は2つだけです。①チェック行(0が並ぶ行)を最初に作る——後から作るチェックは「合うように作った検算」になりがち。②別ルートで同じ答えに着く——TVは2法、CFは2起点、IRRは手計算と関数。詳しくはデバッグ手順モデルQC

モデルQCチェックリスト——提出前の1分

表4:3モデル共通・提出前QCチェックリスト(詳細版は各実践記事の巻末)
#チェックどのモデルで
1BS差額チェック行が全期間0.0共通
2CF期末現金=BS現金共通
3入力セル青・計算セル黒・リンク緑の規約共通
4循環参照スイッチで切断→復帰できるDCF・LBO
5TV2法の乖離±10%以内DCF
6S&Uの左右一致LBO・M&A
7Sweepが最低現金を割っていないLBO
8IRRの手計算検算 (MOIC)^(1/5)−1LBO
9合算BSの貸借一致M&A
10のれん償却に税効果を付けていないM&A
11前提±1%で全表がエラーなく追随共通
12マルチプル・市場価格との常識照合共通

FAQ

Q. 3つ全部やる必要がありますか?志望はIBDです。

IBD志望ならDCF→M&Aの順が優先度高、LBOはレバレッジド・ファイナンスやスポンサーカバレッジで頻出です。PE志望ならDCF→LBOを先に。いずれも土台(DCF編の3表エンジン)は共通なので、第1部だけは飛ばさないでください。

Q. 会計の知識がほぼゼロです。どこから始めれば?

財務三表のつながり3表クイック(60分)の2本で「借方・貸方を使わずに3表を組む」体験をしてから、DCF編へ進むのが最短です。

Q. Excelのバージョンや関数の制約はありますか?

使う関数はSUM・IF・MIN・MAX・CHOOSE・IRR・ROUND程度で、Excel 2016以降なら問題ありません。Googleスプレッドシートでも反復計算設定(ファイル→設定→計算)があれば同じ手順で作れます。

Q. 完成したモデルは実務や投資判断にそのまま使えますか?

使えません——学習用に簡略化した設例です(年央主義・四半期展開・税務の細部などは教材版の領域)。また本サイトは特定銘柄の売買推奨を行いません。モデルは「前提を置いたらこうなる」を示す道具、が一貫したスタンスです。

Q. どれくらいで「モデルテストに出られる」レベルになりますか?

個人差はありますが、本ロードマップ(2〜3週間)+モデルテスト対策で時間制限つき演習を2〜3周、が一つの目安です。保証はできませんが、出題範囲のカバー率という意味では本シリーズで主要論点に届きます。

次の一歩

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本記事の内容は、実務Excel教材(完成版モデル・構築ガイド・白紙演習つき)でさらに深く学べます。中身を確認してから購入できます。

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本ページについて

設例(ハルカワ工業・アオイ電機)は架空であり、実在の企業・案件とは関係ありません。シリーズ3記事と本ページの数値は同一の計算モデルから生成し、Pythonで相互整合を検証しています(BS一致・S&U一致・合算BS一致・IRR恒等式ほか)。構成・図表・文章はすべて当サイトの独自制作です。旧版(LBOクイックチュートリアル)の内容はLBO完全ガイドに発展統合しました。