この記事で分かること
- ターミナルバリュー(TV)の2つの計算法と、相互チェックの作法
- 永久成長率gの置き方と、g・WACCに対するTVの感応度(検証済み)
- 「TVがEVの7〜8割」という現実への実務的な向き合い方
30秒で分かる定義
ターミナルバリュー(継続価値)とは、DCFの明示予測期間より後に生じるキャッシュフローの価値を一括で表したものです。永久成長法とExitマルチプル法で計算してクロスチェックし、企業価値の過半を占めることが多いため、前提の妥当性検証が最重要になります。
TVとは:予測期間の先を1つの値に畳む
DCFでは5〜10年を明示的に予測し、その先の全キャッシュフローをターミナルバリュー(継続価値)としてまとめて評価します。設例はDCF完全ガイドと同じ(最終年度FCF 1,085、WACC 7.0%)を使います。
方法①:永久成長法(Gordon成長モデル)
gの実務的な置き方は「長期インフレ率近傍〜名目GDP成長率以下」が目安です。事業が経済全体より永久に速く成長し続ける前提は、それ自体が強い主張であり、説明責任を伴います。
方法②:Exitマルチプル法
2つの方法は必ず相互チェックします。永久成長法のTV 18,259をEBITDAで割ると含意マルチプル8.3x。Exitマルチプル法の8.0xと近く、両者は整合的です。もし含意が12xのように飛び出したら、gかWACCの前提を疑います。
感応度:TVは前提に最も敏感な塊
| WACC\g | 0.5% | 1.0% | 1.5% |
|---|---|---|---|
| 6.5% | 18,169 | 19,919 | 22,019 |
| 7.0% | 16,771 | 18,259 | 20,018 |
| 7.5% | 15,573 | 16,854 | 18,349 |
gとWACCがそれぞれ0.5pt動くだけでTVは±2割前後動きます。DCF設例ではTVがEVの76.1%を占めるため(§5)、この感応度がほぼそのまま企業価値の振れ幅になります。
実務の作法
- 両方式のクロスチェックを開示する:含意マルチプル(または含意g)を必ず併記します。
- 最終年度を「巡航速度」にしてから畳む:予測最終年の成長・マージン・CAPEX≒D&Aが定常状態に収束していないと、TVが歪みます。
- TV依存度を明示する:TV÷EVを開示し、予測期間の延長(5年→10年)で依存度を下げる選択肢も検討します。
無料テンプレート:1シートDCFモデル(Excel)
gとWACCを動かすとTV・含意マルチプル・TV依存度が連動します。そのままダウンロードできます。
面接での問われ方
Q. ターミナルバリューの求め方を2つ挙げてください。
A. 永久成長法とExitマルチプル法。式に加えて「相互に含意をチェックする」と言えると実務水準です。
Q. g=3%は妥当ですか?
A. 「WACCとの差・長期名目成長との比較で評価する」枠組みで答えます。数字の当否ではなく、検証の観点を示すことが問われています。
まとめ
- TVは2方式で計算し、含意マルチプル/含意gで相互チェックする。
- 設例:永久成長法18,259(含意8.3x)⇄ Exitマルチプル法17,520(8.0x)で整合。
- TVはgとWACCに最も敏感。感応度とTV依存度をセットで開示するのが作法。
有料教材:DCFバリュエーション 完全版(EX-DCF)
TVの2方式・含意チェック・感応度を実装済みの完成モデルで、評価の仕上げを習得します。
設例・出典について
本文の計算例は理解のための設例です(計算検証済み・VAL-002と同一設例)。長期成長率の水準観に言及する際は公的統計等の一次情報を本欄に記載します。