この記事で分かること

  • 減損テストの基本構造——帳簿価額と回収可能価額の比較(設例:減損80)
  • テストの流れ:兆候の識別→回収可能価額の見積り→のれんから先に切る
  • 投資家・買い手として減損の予兆をどこで読むか

減損テストとは何をすることか

のれん(発生の仕組み)は「超過収益力の前払い」です。その前提が崩れた——買収した事業が想定ほど稼がない——と判明したとき、帳簿価額を回収可能な水準まで切り下げるのが減損です。テストの本質は1行で書けます:帳簿価額 > 回収可能価額 なら、差額を損失にする

設例:テストの計算

表1:減損テストの設例(単位:百万円)
項目金額
対象単位(買収した事業のグループ)の帳簿価額
(うち、のれん200/その他資産300)
500
回収可能価額(将来CFの割引現在価値等で見積り)420
減損損失(500−420)80
配分:まず、のれんから → のれん200→120
  • のれんから先に切る:減損はまずのれんに配分されます。のれんは個別に売れない資産なので、最初に犠牲になる設計です。
  • 回収可能価額の見積りは実質DCF:事業計画×割引率——つまり減損テストの信頼性は、その事業計画の信頼性そのものです(DCFの技術がそのまま使われます)。
  • 戻せない:のれんの減損は、後で業績が回復しても戻入れできない(一般的な取扱い)。切る判断は不可逆です。

テストの流れと基準差

  • 日本基準(概要):規則償却を行いつつ、減損の「兆候」(営業損益の継続的マイナス・市場価格の著しい下落・経営環境の悪化等)があれば認識判定→測定という段階を踏みます。
  • IFRS(概要):償却せず、のれんを含む単位について毎期減損テストを実施します。
  • 細部の手順・単位の括り方(資金生成単位)は基準・改正動向の確認が必要な専門領域です。本記事は投資家・実務家が「読む」ための骨格に絞っています(両基準の思想差は日本基準とIFRSの差分(制作中)でも扱います)。

予兆をどこで読むか——減損は突然ではない

表2:減損の先行サイン
サイン読み方
買収事業の業績未達が続くセグメント情報(読み方(制作中))で買収の載る区分を追う
のれん÷純資産が大きい減損が起きた場合の自己資本への打撃を試算。バランスシートの脆さの指標
株価純資産倍率が1倍を下回る市場が簿価の回収可能性を疑っているサイン(機械的な判定ではなく点検の合図)
のれんの帳簿価額と事業計画の距離開示された前提(成長率・割引率)が楽観に寄っていないか。感応度の開示も確認

Q. 面接で「のれんの減損はなぜ起きるのですか?」と聞かれたら?

A.「買収時に織り込んだ超過収益力が実現しないと判明したときです。テストは帳簿価額と回収可能価額(実質は事業計画のDCF)の比較で、下回った差額をまずのれんに配分して損失計上します。つまり減損は『過去の買収価格の答え合わせ』です」。

Q. 減損はキャッシュフローに影響しますか?

A. 減損損失自体は非資金費用で、当期の現金は動きません(CF計算書では足し戻し)。ただし過去に現金は買収時に出ていっており、減損はその回収失敗の宣言です。将来の税務・コベナンツ(純資産系)への波及は別途確認が必要です。

まとめ

  • 減損テスト=帳簿価額と回収可能価額の比較。設例:500対420で減損80、のれんから切る。
  • 回収可能価額の実体は事業計画のDCF。テストの信頼性は計画の信頼性で決まる。
  • 減損は突然ではない。セグメント業績・のれん/純資産比・PBR・開示前提で予兆を読む。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。