この記事で分かること

  • コベナンツ(融資契約の制限条項)の3分類と代表的な財務指標
  • ヘッドルーム(余裕度)の設例計算——EBITDAが2割落ちると何が起きるか
  • 抵触しそうな時・した時に実際は何が起きるか(期限の利益喪失は最後の手段)

コベナンツとは:金利に含まれない「もう一つの値段」

コベナンツは融資契約に付く借り手の約束事です。貸し手は担保だけでなく、事業が壊れていく途中で早期に介入できる仕組みとしてコベナンツを設計します。借り手にとっては金利に表れない実質的なコスト(経営の自由度の制約)であり、「金利が低いがコベナンツが重い調達」と「高いが軽い調達」の比較は資金調達の実務そのものです(デットの種類は優先順位の整理)。

3分類と代表指標

表1:コベナンツの3分類
分類内容・代表例
財務コベナンツ財務指標の維持を約束。代表:レバレッジ比率(ネットデット÷EBITDA)、インタレスト・カバレッジ(EBITDA÷支払利息)、DSCR(元利返済カバー率)、純資産維持
作為義務(〜せよ)財務報告の提出、保険の維持、法令遵守、担保の維持など
不作為義務(〜するな)追加借入の制限、資産売却・担保提供の制限、配当制限、M&Aの事前承諾など

財務コベナンツの測定方式には、常時・定期的に充足を求めるメンテナンス型と、特定の行動(追加借入等)を取る時だけ試験されるインカレンス型があり、ローンは前者、債券は後者が多いという一般的傾向があります。より実務的な契約条項の読み方はローン契約書のコベナンツ条項で解説しています。

設例:ヘッドルームを測る

表2:レバレッジ・コベナンツの余裕度(単位:百万円・設例)
項目
コベナンツ:ネットデット÷EBITDA ≦ 4.5x を維持
現在:ネットデット360÷EBITDA 1003.6x
EBITDAが2割減(100→80)した場合:360÷804.5x(上限ちょうど)

この会社の実質的な安全余地は「EBITDAの2割下振れまで」と読めます。これがヘッドルームです。LBOの資本設計(デットキャパシティ)では、ダウンサイドケース(ICメモの悲観設計)でもヘッドルームが残るかを必ず確認します——コベナンツはベースケースでなくダウンサイドで効いてくる制約だからです。

抵触しそうな時、実際は何が起きるか

  • ①早期の対話:四半期報告で余裕度が薄くなった段階で、貸し手との対話が始まるのが健全な実務です。サプライズが最も嫌われます。
  • ウェイバー(一時的な適用免除)/条件変更:抵触しても直ちに回収とはならず、手数料・金利引き上げ・追加担保などと引き換えに免除・リセットを交渉するのが通常の流れです。
  • エクイティキュア:LBO契約では、スポンサーが追加出資してEBITDA不足やデット超過を計算上補い、抵触を治癒する条項が設計されることがあります(回数制限つきが通例)。
  • ④期限の利益喪失(アクセラレーション):最後の手段。貸し手にとっても回収額を毀損しかねないため、実際には②③の交渉で解決を図るのが一般的傾向です。
  • モデル実装では、コベナンツ指標の行と上限値の行を並べ、余裕度と抵触フラグを自動計算する形にします(チェック設計の応用)。

Q. 面接で「コベナンツとは何ですか?」と聞かれたら?

A.「融資契約上の借り手の約束事で、財務指標の維持・作為・不作為の3類型があります。貸し手が劣化の早期に介入するための装置で、代表はレバレッジ比率とカバレッジ。LBOでは、ダウンサイドでのヘッドルームがどれだけ残るかが資本設計の制約になります」。

Q. コベナンツが緩い調達ばかり選べば良いのでは?

A. 緩さは金利や調達可能額との交換です。コベナンツ・ライトな調達は自由度が高い一方、貸し手はその分のリスクを金利で取るか、そもそも貸出額を絞ります。資金調達は「金利×量×自由度」のパッケージ比較で考えるのが実務です。

まとめ

  • コベナンツは貸し手の早期介入装置で、金利に表れないもう一つの値段。3類型で整理する。
  • 設例:上限4.5xに対し現在3.6x=EBITDA2割減までがヘッドルーム。ダウンサイドで効く制約。
  • 抵触時は対話→ウェイバー→(LBOでは)エクイティキュア。アクセラレーションは最後の手段。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。