この記事で分かること

  • Debt Capacity(借入余力)を決める3つの制約——倍率・カバレッジ・返済可能性
  • レンダーがLBOモデルのどこを見るか、コベナンツの基本形
  • 設例(EBITDA500)でレバレッジ水準→調達力→指標を一気通貫で確認

Debt Capacityは3つの制約の最小値

「いくらまで借りられるか」は1つの式では決まりません。実務では次の3つの制約を同時にかけ、最も厳しい制約が調達額を決めます

表1:Debt Capacityの3つの制約(設例:EBITDA 500)
制約代表指標設例での確認
① 倍率(レバレッジ)Net Debt/EBITDA3.5x→1,750、4.0x→2,000、4.5x→2,250
② 利払い能力ICR=EBITDA÷支払利息負債2,000・金利4%→利息80、ICR 6.25x
③ 返済可能性DSCRCFADS÷元利払いCFADS 340÷(利息80+約定200)=1.21x

CFADS(返済に使えるキャッシュフロー)は、EBITDAからCAPEX・税金等を引いた実力値です(設例:500−100−60=340)。EBITDAが立派でもCAPEXが重い事業はDSCRで縛られる——EBITDAとFCFの乖離(EBITDA記事の図2)が、ここで実務に直結します。

レバレッジ水準は何で決まるか

「何倍まで」という一律の答えはなく、次の要因で案件ごとに変わります(一般的傾向)。

  • FCFの安定性・予測可能性:ストック型収益・高い顧客継続率ほど高いレバレッジに耐えます。
  • 業種・景気感応度:シクリカルな事業はDownsideでの耐性が問われ、水準は保守化します。
  • CAPEX・運転資本の負担:CFADSを圧迫する要素はそのままCapacityを削ります。
  • 金利環境・レンダー市場:調達環境そのものが変動要因です。水準観は常に「その時点の市場」で確認します。

レンダーはモデルのどこを見るか

エクイティ投資家がIRRを見るのに対し、レンダーの関心は「最悪でも返ってくるか」に集中します。具体的には次の順で見られます。

  • ベースではなくDownside Case:EBITDA▲20%等のストレス時にDSCRが1.0xを維持できるか。
  • コベナンツ・ヘッドルーム:財務制限条項(例:Net Debt/EBITDA上限、ICR下限)に対する余裕度の推移。
  • Cash Sweepと返済プロファイル:余剰FCFが返済に向かう設計か(Cash Sweep)。
  • 流動性:リボルバー枠と最低現金で、想定外の月をしのげるか。
コベナンツ・ヘッドルーム = 許容水準 − 実績見込み
例:レバレッジ上限4.5xに対し、Downsideで最大4.1x → ヘッドルーム0.4x ※ヘッドルームが薄い計画は、レンダーとの交渉でも、ICでも通りにくくなります。

エクイティ側の使い方:逆算の道具

買い手にとってDebt Capacityは「いくらまで払えるか」の逆算装置です。調達可能額(例:4.0x=2,000)にエクイティの投入上限を足したものが、支払可能なEVの上限になります。オークションでの価格規律は、この逆算から生まれます。

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面接での問われ方

Q. この会社はいくらまで借りられますか?(ケースの定番)

A. 「倍率・ICR・DSCRの3制約の最小値」という枠組みを先に示し、設例の数字で1つずつ確認する順序で答えます。枠組みなしに倍率だけ答えると浅い回答になります。

Q. レンダーとエクイティで見る指標はどう違いますか?

A. エクイティはIRR/MOIC(アップサイド)、レンダーはDSCR・ヘッドルーム(ダウンサイド)。同じモデルの別の行を見ている、と対比で答えます。

まとめ

  • Debt Capacity=倍率・利払い・返済可能性の3制約の最小値。CFADSが実力値。
  • レンダーはDownsideとヘッドルームを見る。ベースケースの美しさは評価されない。
  • 買い手には支払上限の逆算装置。価格規律はここから生まれる。

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設例・出典について

本文の計算例は理解のための設例です(計算検証済み)。レバレッジ水準・契約条件は市況と案件により大きく異なり、一般的傾向として記載しています。