この記事で分かること
- デットを「返済の優先順位」という1本の軸で整理する見取り図
- シニアローン・社債・劣後・メザニン・ユニトランシェの特徴比較
- LBOの資本スタック設例(シニア3.0x+メザニン1.0x+エクイティ)と設計の考え方
整理の軸は「誰が先に返してもらえるか」
デットの商品名は無数にありますが、本質は1つの軸——倒産・清算時の返済優先順位——で整理できます。優先順位が高いほど安全でリターン(金利)は低く、劣後するほどリスクとリターンが上がり、最劣後のエクイティに近づいていきます。この階段構造を資本スタックと呼びます。
主要な種類の比較
| 種類 | 特徴 | 使われ方 |
|---|---|---|
| シニアローン | 最優先・担保付きが典型。金利は変動基準が多く、財務コベナンツ(キャッシュスイープ等の仕組みと併用)で守られる | 銀行融資・LBOの主力(タームローン)。約定返済ありのA、期限一括中心のB等の設計がある |
| リボルバー(RCF) | 使ったり返したりできる枠。運転資金の変動を吸収 | 常備の流動性バックアップ。LBOでも必ずと言ってよいほど併設 |
| 社債(普通社債) | 市場調達・無担保が典型。コベナンツは緩め、期限一括 | 投資適格企業の長期資金。発行体の信用力(格付)に依存 |
| 劣後債・劣後ローン | シニアより後、株式より先。金利は高い | 資本性を持たせたい調達(金融機関の資本規制対応等でも使われる) |
| メザニン | 劣後の一種で、現金金利+PIK(利息を元本に組み入れ)+エクイティ性(ワラント等)の組み合わせも | LBOでシニアの上限を超えるレバレッジを埋める中2階。少数で高リターンを狙う専門ファンドが担う |
| ユニトランシェ | シニア+メザニンを1本にまとめた私募ローン。1つの金利・1つの契約 | プライベートデットファンドが提供。速さと簡素さが売り。中堅LBOで存在感(市場動向は時点確認) |
設例:LBOの資本スタック
| 調達 | 金額 | EBITDA倍率 | 性格 |
|---|---|---|---|
| シニアローン | 180 | 3.0x | 担保・コベナンツ付き、最優先 |
| メザニン | 60 | 1.0x | 劣後・高金利(PIK併用の設計も) |
| エクイティ(ファンド出資) | 240 | — | 最劣後・残余のすべてを取る |
| 合計=EV | 480 | 計4.0xのレバレッジ |
何倍まで借りられるか(この設例では計4.0x)は、事業のFCFの安定性・担保・市場環境で決まります。考え方の本体はデットキャパシティ、返済の機構はデットスケジュールで扱っています。倍率の水準はあくまで設例であり、時期・案件で大きく変動します。
設計の実務感覚
- 下から積む:まず安いシニアを取れるだけ取り、足りない分を高いメザニンで埋め、残りがエクイティ——調達コストの階段を下から埋めるのが基本動作です。
- コベナンツは値段の一部:金利が低い調達ほど契約上の縛り(レバレッジ比率の維持等)が強い傾向。金利だけ比べて選ぶと、後で経営の自由度で払うことになります。
- PIKの意味:現金利払いを温存できる代わりに元本が膨らむ。成長投資期の資金繰りを守る道具ですが、Exit時の返済総額を確実に増やします。
- 借り換えリスク:期限一括型は満期時の市場環境に依存します。満期の分散(マチュリティ・ラダー)は財務の基本設計です。
Q. 面接で「メザニンとは何ですか?」と聞かれたら?
A. 「シニアと株式の中間に位置する劣後性の資金です。シニアの上限を超えるレバレッジを埋めるために使われ、高い金利に加えPIKやワラントでリターンを補う設計もあります。優先順位の階段で位置づけて説明できることが大事です」。
Q. なぜ全部シニアで借りないのですか?
A. 貸し手が許さないからです。シニアレンダーは自らの回収可能性を守るため、FCFと担保に照らした上限(コベナンツ)を設定します。その上限を超えて買収価格に届かせたい時に、より高いリスクを取れるメザニン等が登場します。
まとめ
- デットは優先順位の1軸で整理:シニア→劣後・メザニン→エクイティの階段(資本スタック)。
- 設例:EV480=シニア180(3.0x)+メザニン60(1.0x)+エクイティ240。下から積むのが基本動作。
- 金利・コベナンツ・PIK・満期は交換条件のセット。金利だけで比較しない。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。