この記事のゴール
はじめに:PEファンドの「計算機」を自作する
LBO(レバレッジド・バイアウト)は「借金で会社を買い、その会社の稼ぎで借金を返し、売却時の差額を取る」投資手法です。PEファンドの投資判断は最終的にこのモデルの上で行われ、PE転職のモデルテストで問われるのも、まさに今日作るものです(モデルテスト対策)。
本記事はシリーズ「財務モデリング完全ロードマップ」の第2部。DCF編で作ったハルカワ工業のオペレーティングモデルを、そのまま買収の器に載せ替えます。DCFで「1株213.3円の価値がある」と評価した会社を、PEファンドは190円で買いに行く——という続き物です。
第1部 リターンの源泉を先に頭に入れる(STEP 1-2)
手を動かす前に、このモデルの答えがどこから来るかを知っておくと、以降の全STEPの意味が変わります。LBOのリターンは3つに分解できます——①デット返済(借金が減った分だけ株主の取り分が増える)、②EBITDA成長(会社の稼ぐ力が伸びる)、③マルチプル変化(買った倍率より高く売れる)。
本設例では③をゼロに固定します(Exit倍率=Entry倍率)。「高く売れる前提」でしか成立しない案件は、モデル上は美しくても投資委員会を通らない——この規律を最初に置くと、感応度分析(第4部)の意味もクリアになります。
第2部 入口:取引を設計する(STEP 3-7)
3Entry Valuation——いくらで買うか
目的:買収価格を「株価×プレミアム→株式対価→EV→倍率」の順に固定します。DCF編と同じ会社なので、DCF理論値213.3円に対してオファー190円——内在価値より安く入る、というPEらしい入口です。
| B | C | D | |
|---|---|---|---|
| 2 | 現在株価 | 160円 | 市場は割安に放置 |
| 3 | 買付プレミアム | 18.8% | PE案件の相場観で設定 |
| 4 | オファー価格 | =C2*(1+C3) | 190円 |
| 5 | 株式取得対価(×60百万株) | 11,400 | |
| 6 | (+)ネットデット引受 | 3,000 | 有利子負債3,600−現金600 |
| 7 | 買収EV | =C5+C6 | 14,400 |
| 8 | EBITDA(FY0実績) | 1,800 | |
| 9 | EV/EBITDA(エントリー倍率) | =C7/C8 | 8.0x |
つながり:買収EV 14,400が、次の資本構成の「調達すべき総額」の出発点になります。ミス注意:EV(事業の値段)と株式対価(株主に払う額)の混同——ネットデット3,000の分だけ違います。チェック:エントリー倍率8.0xが表示されること。
4資本構成——2トランシェのデット設計
目的:買収資金のうち「いくらを借金で・どんな条件で」を決めます。返し方の違う2種類のローンを使うのが本記事の核心です(負債の種類はデットの分類)。
| B | C | D | E | F | |
|---|---|---|---|---|---|
| 11 | トランシェ | 金額 | EBITDA倍率 | 金利 | 約定返済 |
| 12 | タームローンA(TLA) | 5,400 | 3.0x | 2.5% | 年8% |
| 13 | タームローンB(TLB) | 3,600 | 2.0x | 5.5% | 期限一括 |
| 14 | 負債合計 | 9,000 | 5.0x | ||
| 15 | スポンサーエクイティ(逆算) | 6,132 | S&Uで確定 |
式の考え方:「EBITDAの何倍まで借りられるか」がレバレッジド・ファイナンスの共通言語です。合計5.0xは日本のミドルキャップ案件として攻めた水準——だからこそ後の安全性分析(STEP12)が効いてきます。つながり:エクイティはまだ決めません。S&Uの残差で決まります。チェック:デット合計5,400+3,600=9,000。
5手数料——3種類を区別する
目的:買収には取引コストがかかります。費用処理するもの(アドバイザリー)と、資産計上して償却するもの(Debt Financing Fee・OID)を最初から分けておくと、ISとCFが正しく組めます。
| B | C | D | |
|---|---|---|---|
| 17 | アドバイザリー・DD等(EV×1.5%) | 216.0 | 費用の性質:取引費用 |
| 18 | Debt Financing Fee(負債×2.0%) | 180.0 | 資産計上→5年で償却 |
| 19 | OID(TLB×1.0%) | 36.0 | 発行時ディスカウント |
| 20 | 手数料等合計 | 432.0 | Usesに計上 |
つながり:3つの合計432はS&UのUsesに入り、償却分は毎年のISに現れます。ミス注意:Financing Feeを初年度に全額費用化(正しくは期間償却)。チェック:償却額=(180+36)÷5=43.2/年。
6Sources & Uses——資金の出所と使い途
目的:取引の全資金を1枚に集約します。Usesを固めてから、Sourcesの残差でエクイティが決まる——LBOで最も美しい逆算です。
| B | C | D | E | |
|---|---|---|---|---|
| 2 | Sources(調達) | 金額 | Uses(使途) | 金額 |
| 3 | タームローンA | 5,400 | 株式取得対価 | 11,400 |
| 4 | タームローンB | 3,600 | ネットデット借換 | 3,000 |
| 5 | スポンサーエクイティ | 6,132 | 手数料等 | 432.0 |
| 6 | 最低運転現金の積み増し | 300 | ||
| 7 | 合計 | 15,132 | 合計 | 15,132.0 |
式の考え方:エクイティのセルは=Uses合計−TLA−TLB。将来「TLBを0.5x増やしたら?」と聞かれても、エクイティが自動で減ってモデル全体が追随します。つながり:このS&Uが次の買収直後BSの材料一覧になります。ミス注意:最低現金の積み忘れ(買収直後の会社に運転資金ゼロは危険)。チェック:左右一致6,132+9,000=Uses合計。1円でもズレたら先に進まないこと。
7のれんと買収直後BS——旧資本構成を入れ替える
目的:買収が完了した瞬間のBSを作ります。旧株主の純資産と旧借入を消し、新しいデットとスポンサーエクイティを載せ、差額をのれんとして認識します(会計の背景はのれんとPPA)。
| B | C | D | E | |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 科目 | 買収前 | 調整 | 買収直後 |
| 3 | 現金及び預金 | 600 | ▲600+300 | 300 |
| 4 | 運転資本・その他資産 | 3,800.0 | – | 3,800.0 |
| 5 | 固定資産 | 5,200 | – | 5,200 |
| 6 | のれん | 0 | +5,400 | 5,400 |
| 7 | 繰延資金調達費用(Fee+OID) | 0 | +216 | 216 |
| 8 | 旧借入金 | 3,600 | ▲3,600 | 0 |
| 9 | 新TLA/TLB | 0 | +9,000 | 9,000 |
| 10 | 純資産 | 6,000 | 入替 | 5,916 |
つながり:この買収直後BSが、5年間の3表連動のFY0になります。ミス注意:Financing Fee+OIDの資産計上漏れ/旧借入の消し忘れ。チェック:買収直後BSの貸借一致。純資産が「投資額−初日費用化のアドバイザリー費」になっている理由を人に説明できればこのSTEPは合格です。
第3部 5年間のエンジン:稼いで返す(STEP 8-11)
入口が固まったら、保有期間5年の運転です。オペレーティングモデル(DCF編 STEP3-10)と同じエンジンに、LBO専用の改造を3つ加えます——①利息をトランシェ別に、②CFの結論を「返済原資」に、③返済にCash Sweepを実装。
8LBO用IS——利息をトランシェ別の行に分ける
目的:ISの金利部分を組み替えます。TLAとTLBで金利も残高の動きも違うため、支払利息は1行にまとめず、トランシェごとに分けてDebt Scheduleから引きます。
| B | C | D | E | F | G | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4 | EBITDA | 1,890.0 | 1,975.0 | 2,054.1 | 2,125.9 | 2,189.7 |
| 5 | (−)減価償却費 | ▲504.0 | ▲526.7 | ▲547.7 | ▲566.9 | ▲583.9 |
| 6 | EBIT | 1,386.0 | 1,448.4 | 1,506.3 | 1,559.0 | 1,605.8 |
| 7 | (−)支払利息TLA | =-C27*2.5% | ▲119.8 | ▲103.2 | ▲85.3 | ▲66.0 |
| 8 | (−)支払利息TLB | ▲198.0 | ▲198.0 | ▲198.0 | ▲198.0 | ▲198.0 |
| 9 | (−)資金調達費用償却 | ▲43.2 | ▲43.2 | ▲43.2 | ▲43.2 | ▲43.2 |
| 10 | 税引前利益 | 1,009.8 | 1,087.4 | 1,161.9 | 1,232.6 | 1,298.6 |
| 11 | 当期純利益(×70%) | 706.9 | 761.2 | 813.3 | 862.8 | 909.0 |
つながり:純利益はCFの出発点へ。ミス注意:利息を「期末残高」基準にすると、Sweepと循環して不安定になります——期首基準で作り、循環参照スイッチ(解説)を必ず仕込む。チェック:FY1の当期純利益683.7。
9返済前FCF——デットの返済原資
目的:「今年いくら返せるか」を計算します。DCFのUFCFと似ていますが、利息と税は払った後(=デット返済の直前まで来た現金)である点が違います。
| B | C | D | E | F | G | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 13 | 当期純利益 | 706.9 | 761.2 | 813.3 | 862.8 | 909.0 |
| 14 | (+)減価償却費 | 504.0 | 526.7 | 547.7 | 566.9 | 583.9 |
| 15 | (+)資金調達費用償却 | 43.2 | 43.2 | 43.2 | 43.2 | 43.2 |
| 16 | (−)運転資本の増減 | ▲79.3 | ▲75.0 | ▲69.6 | ▲63.4 | ▲56.2 |
| 17 | (−)設備投資 | ▲567.0 | ▲592.5 | ▲616.2 | ▲637.8 | ▲656.9 |
| 18 | 返済前FCF | 607.7 | 663.6 | 718.4 | 771.8 | 823.0 |
| 19 | (参考)EBITDA起点でも同値 | 607.7 | 663.6 | 718.4 | 771.8 | 823.0 |
式の考え方:教材によってはEBITDA起点(EBITDA−利息−税−ΔNWC−Capex)で書きます。どちらの起点でも同じ値に着地する——2起点で作って一致を確認すると、それ自体が強力な検算になります。つながり:このFCFが次のDebt Scheduleの燃料です。チェック:FY1=609.9。
10Debt Schedule——約定返済とCash Sweep
目的:LBOモデルの心臓部。各トランシェを期首→約定返済→Cash Sweep→期末のBASE型で回します(型の基礎はDebt Schedule、Sweepの理屈はCash Sweep)。
| B | C | D | E | F | G | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3 | 【TLA】期首残高 | 5,400.0 | 4,792.3 | 4,128.7 | 3,410.3 | 2,638.5 |
| 4 | (−)約定返済(8%) | =-MIN(432,C3) | ▲432.0 | ▲432.0 | ▲432.0 | ▲432.0 |
| 5 | (−)Cash Sweep | ▲175.7 | ▲231.6 | ▲286.4 | ▲339.8 | ▲391.0 |
| 6 | 期末残高 | =SUM(C3:C5) | 4,128.7 | 3,410.3 | 2,638.5 | 1,815.4 |
| 7 | 【TLB】期首残高 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 |
| 8 | (−)返済 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
| 9 | 期末残高 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 | 3,600.0 |
| 10 | 支払利息TLA(期首×2.5%) | 135.0 | 119.8 | 103.2 | 85.3 | 66.0 |
| 11 | 支払利息TLB(期首×5.5%) | 198.0 | 198.0 | 198.0 | 198.0 | 198.0 |
| 12 | グロス負債(期末) | 8,392.3 | 7,728.7 | 7,010.3 | 6,238.5 | 5,415.4 |
式の考え方:Sweepは「使い道のない現金は1円残らず繰上返済に回す」という契約の写像です。MAXとMINの入れ子は、(あ)余剰がマイナスなら返さない、(い)残高より多くは返さない、の2つの安全装置。つながり:期末残高が翌年の期首利息を決める——ここが循環の入口なので、DCF編と同じスイッチを必ず通します。ミス注意:最低現金の確保を忘れ、現金がマイナスの年が生まれること。チェック:毎期末の現金がちょうど300で並ぶこと(Sweepが正しく動いている証拠)。
11安全性分析——銀行の目で自分のモデルを見る
目的:レバレッジ(ネットデット/EBITDA)とカバレッジ(EBITDA/支払利息)の推移を並べ、この借金は無事に返るのかを確認します。コベナンツ(財務制限条項)の実務はコベナンツとはへ。
| B | C | D | E | F | G | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | ネットデット/EBITDA | 4.28x | 3.76x | 3.27x | 2.79x | 2.34x |
| 3 | EBITDA/支払利息(カバレッジ) | 5.7x | 6.2x | 6.8x | 7.5x | 8.3x |
| 4 | コベナンツ目安:レバレッジ | 6.0x以下 | ||||
| 5 | 同:カバレッジ | 3.0x以上 |
つながり:初年度4.28x→FY5 2.34xへの低下カーブが「LBOは時間とともに安全になる」構造そのもの。ミス注意:リターンばかり見て安全性を出さないモデルは、実務では未完成扱いです。チェック:全期間で目安ラインの内側にいること。
第4部 出口とリターン(STEP 12-15)
12Exit——5年後に売る
目的:保有5年でのExit価値を計算します。Exit EV=FY5 EBITDA×Exit倍率、Exitエクイティ=Exit EV−Exit時ネットデット。
| B | C | D | |
|---|---|---|---|
| 2 | Exit年EBITDA(FY5) | 2,189.7 | |
| 3 | Exit倍率(保守的にエントリーと同じ) | 8.0x | |
| 4 | Exit EV | =C2*C3 | 17,517.8 |
| 5 | (−)Exit時ネットデット | ▲5,115.4 | グロス5,415.4−現金300.0 |
| 6 | Exit時エクイティ価値 | =C4+C5 | 12,402.3 |
| 7 | (参考)投資時エクイティ | 6,132 |
つながり:Exitエクイティ12,402.3と投資額6,132の比較が次のSTEP。ミス注意:Exit時ネットデットに現金300の控除を忘れる。チェック:Exit EV 17,517.8−ネットデット5,115.4=12,402.3。
13IRRとMOIC——2つの物差しで測る
目的:リターンを倍率(MOIC)と年率(IRR)の両方で出します。MOICは「何倍になったか」、IRRは「年に何%で回ったか」——期間の長短で印象が変わるため、必ずセットで見ます(罠はIRRの落とし穴)。
| B | C | D | |
|---|---|---|---|
| 9 | MOIC=回収額÷投資額 | =C6/C7 | 2.02x |
| 10 | IRR(5年・中間CFなし) | =(C6/C7)^(1/5)-1 | 15.1% |
| 11 | (検算)=IRR(範囲) | =IRR(B12:G12) | 15.1% |
| 12 | CF列:▲6,132, 0, 0, 0, 0, +12,402 |
つながり:中間配当(Dividend Recap)を入れると2つの式は一致しなくなる——その時こそIRR関数の出番です。チェック:手計算IRRと=IRR()が一致(15.1%)。
14リターン源泉分解——「なぜ儲かったか」を言語化する
目的:図2で予告した3源泉に、実際の数字を割り付けます。投資委員会・面接で「このリターンのドライバーは?」に即答するための表です。
| B | C | D | |
|---|---|---|---|
| 14 | スタート:エントリー時エクイティ(EV−ND) | 5,700 | |
| 15 | (+)EBITDA成長(ΔEBITDA×8.0x) | +3,117.8 | 価値の伸び |
| 16 | (+)マルチプル変化 | 0.0 | 据え置きのため |
| 17 | (+)デット返済(ネットデット減少) | +3,584.6 | 借金が株主価値に置換 |
| 18 | =Exit時エクイティ | 12,402.3 | |
| 19 | (参考)投資額側:手数料等+最低現金 | +732 | MOICの分母を増やす |
式の考え方:Exitエクイティ=入口の純資産分+ΔEBITDA×倍率+倍率変化分+ネットデット減少分、という恒等式で分解します。本設例は②EBITDA成長3,117.8と①デット返済3,584.6がほぼ拮抗——倍率拡大ゼロでもMOIC 2.02x。健全な絵です。チェック:分解の合計がExitエクイティと一致すること。
15感応度分析——価格規律を数字にする
目的:Entry×Exit倍率のマトリクスでIRRの散らばりを見ます。データテーブルの作り方そのままです。
| Entry\Exit | 7.0x | 7.5x | 8.0x | 8.5x | 9.0x |
|---|---|---|---|---|---|
| 7.0x | 18.9% | 21.3% | 23.6% | 25.7% | 27.7% |
| 7.5x | 14.4% | 16.7% | 18.9% | 20.9% | 22.8% |
| 8.0x | 10.7% | 13.0% | 15.1% | 17.1% | 18.9% |
| 8.5x | 7.7% | 9.9% | 12.0% | 13.9% | 15.7% |
| 9.0x | 5.1% | 7.3% | 9.3% | 11.1% | 12.9% |
対角線(Entry=Exit)上でもIRR 2桁が確保できるか、が案件の地力。左下(高く買って安く売る)でどこまで耐えるかがダウンサイドの会話になります。
ペーパーLBOで検算する——面接の暗算と同じ手順
完成したモデルは、紙と電卓の概算(ペーパーLBO)で検算できます。桁が合わなければどこかが壊れています。
| 手順 | 計算 | 値 |
|---|---|---|
| 1. 投資額 | EV 14,400+費用432+最低現金300−負債9,000 | 6,132 |
| 2. Exit EV | EBITDA 2,190×8.0x | 約17,518 |
| 3. 残債 | 9,000−累計返済(約3,585) | 約5,415 |
| 4. Exit現金 | 最低現金相当 | 300 |
| 5. Exitエクイティ | 17,518−5,415+300 | 約12,402 |
| 6. MOIC | 12,402÷6,132 | 約2.0x |
| 7. IRR | 2.02^(1/5)−1 | 約15% |
提出前QCチェックリスト
| 区分 | チェック項目 | 合格基準 |
|---|---|---|
| 入口 | S&Uの左右一致 | 完全一致(差額0) |
| 入口 | エクイティが逆算になっている | Uses合計−負債=エクイティ |
| 入口 | のれんが正の値 | 対価>純資産簿価を確認 |
| IS | 利息がトランシェ別の行に分かれている | TLA/TLBを別行で管理 |
| IS | 資金調達費用の償却を計上 | 5年定額・非資金費用 |
| CF | 返済前FCFが2起点で一致 | 純利益起点=EBITDA起点 |
| Debt | 約定返済がMINで残高超過を防止 | =MIN(約定額, 期首残高) |
| Debt | Sweepは余剰現金の範囲内 | 最低現金を下回らない |
| Debt | TLB返済がTLA完済後 | 優先順位ロジック確認 |
| 安全性 | レバレッジ・カバレッジの推移 | コベナンツ目安内で推移 |
| 出口 | Exit倍率が保守的 | エントリー以下で検証 |
| 出口 | IRRの手計算検算 | (MOIC)^(1/5)−1と一致 |
| 全体 | 循環参照スイッチが機能 | 0で切断→復帰できる |
つまずきやすいポイントQ&A
Q. レバレッジ5.0xは日本で現実的ですか?
案件・時期・業種によります。安定CFの業種なら5x超も付きますが、シクリカルでは3〜4xが精一杯のことも。本設例は「攻めた資本構成が安全性分析でどう見えるか」を学ぶための設定で、水準そのものは市況で変わる、が正しい答えです。
Q. Sweepを入れたら現金が全然貯まりません。それでいいのですか?
それが契約どおりの姿です。LBO後の会社は「余剰現金=即返済」で運転され、だからこそ最低現金の設定が重要になります。成長投資の余地を残す設計(Sweep率50%等)は教材版で扱う発展形です。
Q. のれんは償却しなくていいのですか?
本設例は連結(IFRS想定)でのれん非償却・減損テスト方式としています。日本基準の個別論点(最長20年償却)はM&A編のEPS分析で正面から扱います——LBOのリターン計算はキャッシュベースなので、償却方針の影響は限定的です。
Q. IRR 15.1%は良い数字ですか?
PEファンドの一般的な目標水準(ネットで15〜20%程度と言われます)に対して合格圏ですが、これは設例の前提の産物です。大事なのは水準の暗記ではなく、「どの前提が1%動くとIRRが何%動くか」を感応度で語れることです。
次のステップ
- 同じ会社を「事業会社が買う」目で見る:M&Aモデル完全ガイド——のれんのフルPPAとEPS分析へ
- 価値評価の原点に戻る:DCFモデル完全ガイド/全体地図:財務モデリング完全ロードマップ
- 理論の穴埋め:デットキャパシティ・IRRとMOIC・Cash Sweep
答え合わせ・さらに実務水準へ
本記事の内容をより実務的な書式で仕上げたExcel教材(完成版モデル・構築ガイド・白紙演習つき)を用意しています。中身を確認してから購入できます。
有料教材:LBOフルモデル(EX-LBO)
3表連動・マルチトランシェ・リボルバ・配当リキャップ・3ケース・感応度自動化の完全版。本記事の次の教材です。
本記事について
設例(ハルカワ工業・架空)はシリーズ共通で、DCF編・M&A編と数値が接続しています。全数値はPythonで再計算済み(S&U一致・買収直後BS一致・Sweep後現金の下限維持・IRR恒等式ほか)。金利・倍率・レバレッジ水準は2026年時点の学習用設定であり、実際の案件条件は市況により異なります。手順・図表・文章は当サイトの独自制作です。