この記事で分かること
- ペーパーLBO(電卓なし・紙で解くLBO)の標準的な解答手順5ステップ
- 実際に手を動かす練習3問(基本→応用→暗算ルール)と、途中式つきの模範解答
- 面接官が見ているポイントと、時間内に解き切るための省略テクニック
ペーパーLBOとは何か
PE面接の定番課題で、Excelなし・メモ用紙1枚でLBOのリターンを概算する口頭試問です。見られているのは計算の速さではなく、①LBOの構造(仕組み)が頭に入っているか、②数字を丸めて本質を掴む感覚、③途中経過を声に出して整理できるか——の3点です。逆に言えば、手順を型として持っていれば怖くありません。
解答手順の型(5ステップ)
- STEP 1:入口 EBITDA×入口倍率=EV。デットとエクイティに割る(S&U、モデルの型)。
- STEP 2:保有中の利益成長 EBITDAの成長を年ごとに(または最終年だけ)概算。
- STEP 3:デット返済 毎年のFCF(≒EBITDA−利息−税−Capex−ΔWC)を概算し、累計返済額を出す。
- STEP 4:出口 出口EBITDA×出口倍率=出口EV。残債を引いて出口エクイティ。
- STEP 5:判定 MOIC=出口÷入口エクイティ。年数からIRRを暗算換算(対応表)。
練習問題1(基本形)
問:EBITDA 100の会社を8.0xで買収。デット5.0x、残りエクイティ。EBITDAは5年間横ばい、毎年のFCF 50を全額返済に充当。5年後に8.0xで売却。MOICとIRRの概算は?(単位:百万円・設例)
| ステップ | 計算 |
|---|---|
| 入口 | EV=100×8.0x=800。デット500・エクイティ300 |
| 返済 | 50×5年=250返済 → 残債 500−250=250 |
| 出口 | EV=100×8.0x=800(横ばい)→ エクイティ=800−250=550 |
| 判定 | MOIC=550÷300≒1.8x。5年1.8x → IRR約13% |
読み:利益が1円も成長しなくても、デット返済だけでエクイティは1.8倍になる——LBOの「借金が生む腕力」を確認する基本問題です。
練習問題2(成長+倍率変化)
問:同じ入口(EV800=EBITDA100×8.0x、デット500/エクイティ300)。EBITDAは毎年10ずつ成長し5年後に150。返済は問1と同じ累計250。ただし出口倍率は7.0xに低下。MOICとIRRは?
| ステップ | 計算 |
|---|---|
| 出口EV | 150×7.0x=1,050 |
| 出口エクイティ | 1,050−残債250=800 |
| 判定 | MOIC=800÷300≒2.7x。5年2.7x → IRR約21〜22% |
| 分解して一言 | 「倍率が1x下がっても、EBITDA成長+50と返済250がそれを上回った」と言えれば満点 |
読み:リターンの3源泉(利益成長・倍率・返済)のトレードオフを1問で体験します。倍率低下を成長で打ち返す——この分解を口頭で言えるかが差になります。
練習問題3(暗算換算ルール)
問:5年でMOIC 2.0xのIRRは? 3.0xなら?
- 2.0x/5年 → 約15%(正確には14.9%)。3.0x/5年 → 約25%(24.6%)。
- 覚え方:5年で「2倍=15%・3倍=25%」を錨として暗記し、間は補間します(2.5xなら約20%)。7年に延びると2.0xは約10%、3.0xは約17%——時間はIRRの敵という感覚もセットで(Exitのタイミング論)。
面接官が見ているポイントと実戦のコツ
- 声に出して構造から:いきなり計算せず「入口→返済→出口→判定の順で解きます」と宣言する。手順の宣言自体が採点対象です。
- 丸めの作法:548→550、13.2%→約13%。「概算です」と断って丸める判断力はプラス評価。逆に細かい端数に固執すると時間切れになります。
- 符号の事故に注意:残債の引き忘れ・エクイティでなくEVでMOICを計算——緊張時の2大事故です。最後に「出口はエクイティベースで」と指差し確認を。
- 簡略化の前提を言う:本問はFCFを一定と置きましたが、実戦では「利息は残高減少で逓減するので返済は後半加速しますが、簡略化のため一定とします」と一言添えると理解の深さが伝わります(精密な機構はデットスケジュール・キャッシュスイープ)。
Q. 電卓は使えますか?
A. 面接形式によりますが、使えない前提で練習すべきです。数字は「割り切れる」ように設計されて出題されることが多く、きれいに割れない時は自分の途中式を疑うのが実戦のコツです。
Q. 税金や運転資本はどこまで考慮すべき?
A. 出題文が与える情報に従うのが原則です。「FCF=50」と与えられたら中身の分解は不要。EBITDAから自分で組む場合は「利息・税・Capexを引いて概算FCFを◯とします」と前提を宣言し、単純化の断りを入れれば十分です。
まとめ
- 型は5ステップ:入口→成長→返済→出口→判定。宣言してから解く。
- 問1=返済だけで1.8x(約13%)、問2=成長が倍率低下を打ち返し2.7x(約21%)。分解の一言が満点条件。
- 暗算の錨:5年で2倍=15%、3倍=25%。出口は必ずエクイティベース——指差し確認を忘れずに。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。