この記事で分かること

  • 「税前利益×一定税率」から一歩進んだ税金行の作り方
  • 繰越欠損金の設例——赤字50の翌年、税金が30でなく15になる仕組み
  • 支払利息のタックスシールドと、LBOモデルでの意味

なぜ税金を精緻化するのか

入門モデル(3表チュートリアル)の「税前利益×25%」で多くの用途は足ります。精緻化が必要になるのは、①赤字年度がある(欠損金)、②レバレッジが重い(利息の節税が大きい)、③実効税率が 法定税率から大きくズレる——の3場面です。順に道具を足します。

繰越欠損金:赤字は将来の節税クーポン

表1:欠損金の設例(税率30%・単位:百万円・繰越控除の上限等は簡略化)
項目Y1Y2
税前利益(50)100
欠損金の使用(50)
課税所得050
税金015(欠損金なしなら30)
  • モデルの実装は欠損金残高のロールフォワードです:期首残高+当期発生(赤字なら)−当期使用=期末残高。残高ものの万能型(固定資産ロールと同型)がここでも使えます。
  • 使用額=MIN(期首残高, 当期の正の税前利益×控除限度割合)。大法人には課税所得の一定割合までという控除上限がある等、制度の細部は改正が続くため必ず一次確認してください(本設例は仕組み理解のため全額控除で単純化しています)。
  • 会計上はこの将来節税がDTA(繰延税金)として資産計上され、回収可能性の議論につながります。

タックスシールド:利息の節税効果

  • 支払利息は損金になるため、利息20・税率30%なら税金が6軽くなります。デットの実質コスト=金利×(1−税率)——WACC(計算式)で負債コストに(1−t)を掛ける理由の実体です。
  • LBO(仕組み)では、高レバレッジ→大きな利息→税金の圧縮が構造的に生じます。モデル上は特別な行は不要で、税金行が「利息控除後の税前利益」を正しく参照していれば自動で織り込まれます——逆に言えば、EBITベースで税金を計算すると節税を取り逃します(FCFF計算のみなし税との違いに注意)。
  • 負債による節税に依存しすぎた資本構成の議論は最適資本構成へ。

実効税率の分析と前提の置き方

  • 過去3〜5年の「税金費用÷税前利益」を並べ、法定実効税率との差の原因(永久差異・海外税率・優遇税制・DTA評価)を注記から特定します。
  • 予測の税率は「過去の実効税率の水準」を基本に、一過性要因を除いて置きます。M&A・組織再編が絡む税務(欠損金の引き継ぎ制限等)は専門家との一次確認が絶対条件です(スキーム選択の重要変数)。
  • チェック:モデルの実効税率行(税金÷税前利益)を出力し、異常年(欠損金使用年の低下等)が意図どおりかを確認します(整合チェック)。

Q. 面接で「LBOはなぜ税務上有利と言われるのですか?」と聞かれたら?

A.「支払利息の損金算入により課税所得が圧縮されるためです。実質的な負債コストは金利×(1−税率)になります。ただし節税はリターン3源泉の主役ではなく、過度なレバレッジの正当化には使えません——という限界までセットで答えます」。

Q. 欠損金がある会社の買収では何に注意しますか?

A. 欠損金の存在自体でなく「引き継げるか・使えるか」です。支配関係の変動や組織再編で利用制限が生じ得るため、価値に織り込む前にストラクチャーごと税務専門家に確認します。DDの定番論点です(財務DD)。

まとめ

  • 精緻化の道具は3つ:欠損金ロール(設例:翌年の税金30→15)・利息の税効果・実効税率分析。
  • 欠損金は残高もの——期首+発生−使用=期末の万能型で組む。制度の上限は一次確認。
  • タックスシールドは正しい参照構造なら自動で乗る。EBITベース課税との混同に注意。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。