この記事で分かること

  • Excelの「What-If分析」3機能の役割分担——面で見る・逆算する・切り替える
  • ゴールシークの実務用途(Reverse DCF・損益分岐・目標達成条件の逆算)
  • シナリオはシナリオマネージャーではなくスイッチ方式で組む理由

3機能の役割分担

表1:What-If分析3兄弟の使い分け
機能問いの形典型用途
データテーブル「前提がこの範囲なら答えはどの範囲?」(面)WACC×成長率の感応度表(構築手順)、金利×レバレッジのIRR表
ゴールシーク「答えをこうしたい。前提はいくつ必要?」(逆算)Reverse DCF(解説)、損益分岐点、目標IRRを満たす買収価格上限
シナリオ「前提セットA/B/Cを丸ごと切り替えたい」(束)ベース/アップサイド/ダウンサイドの一括切替(ただし後述の通りスイッチ方式を推奨)

ゴールシーク:3つの入力だけ覚える

  • データ→What-If分析→ゴールシーク。「数式入力セル」=動かしたい出力(例:NPVのセル)、「目標値」=手打ちの数値(例:0)、「変化させるセル」=1つの入力セル(例:成長率)。
  • 例:DCFの価値を現在のEVに一致させる成長率を解く(Reverse DCF)、NPV=0になる販売数量を解く(損益分岐)、目標IRR20%になる入口価格を解く(LBOの上限価格)。
  • 注意①:結果は入力セルに上書きされ、元の値は消えます。実行前に元の値を控えるか、コピーしたセルで実行します。
  • 注意②:変化させるセルは「数式でなく生の数値」であること。数式セルは動かせません。
  • 注意③:解が複数あり得る式(IRRの複数解問題と同根)では、初期値に近い解しか見つかりません。

シナリオは「スイッチ方式」で組む

Excel標準のシナリオマネージャーは、値の差し替えがダイアログの奥に隠れ、何が変わったか画面上で見えないため、実務のモデルではほぼ使われません。標準はスイッチ方式です。

  • 作り方:前提エリアに「ケース番号」の入力セル(1=ベース/2=強気/3=弱気)を1つ置き、各前提行にケース別の値を3列並べ、=CHOOSE(ケース番号, ベース値, 強気値, 弱気値)(またはINDEX)で現行値を選びます。
  • 利点:どの前提が何に変わるかがシート上に見える・印刷にも残る・感応度テーブル(ケース番号を振る)とも組み合わせられる。
  • 規律:ケースの違いは前提列だけに置き、計算式には一切ケース分岐を書かない。分岐が計算に散らばった瞬間、シナリオの検証可能性が消えます(QCの思想)。

組み合わせ技

  • データテーブル×ケース番号:1変数テーブルの振り幅を「1,2,3」にすれば、3ケースの結果一覧が1枚で出ます。
  • ゴールシーク→感応度で裏取り:逆算した前提値の周辺をデータテーブルで面にし、解の安定性(少しずれたら答えが激変しないか)を確認するのがプロの仕上げです。

Q. ソルバーとゴールシークの違いは?

A. ゴールシークは「1出力=目標値」を「1入力」で解く最小の道具。ソルバーは複数の変数・制約条件つきの最適化(例:制約下の資産配分)に使うアドインです。財務モデルの日常業務の9割はゴールシークで足ります。

Q. ベース/強気/弱気の3ケースはどう作り分けますか?

A. 全項目を一律±10%のような機械的な作り方は避け、ケースごとに「世界観」を言語化してから前提に落とします。弱気ケースは特に、その事業固有のリスク(最大顧客喪失・価格競争)を反映した「本物の弱気」にするのが実務の要諦です(ICメモのダウンサイド設計)。

まとめ

  • 面で見るデータテーブル、逆算するゴールシーク、束で切り替えるシナリオ——問いの形で選ぶ。
  • ゴールシークは出力セル・目標値・変化セルの3点入力。上書きに注意、解いたら感応度で裏取り。
  • シナリオはスイッチ方式(CHOOSE/INDEX)一択。分岐は前提列に集約し、計算式には書かない。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。