この記事で分かること

  • 2026年(8月中旬までの年初来)に日本国内で新規投資件数が多いPEファンドのランキング
  • 件数ランキングと「経営権移転型(コントロール型)だけ」のランキングで顔ぶれが大きく変わる理由
  • 地域金融機関系・サーチファンド型・独立系バイアウトファンドがそれぞれ件数上位に入る構造
  • 集計の定義・データの限界と、ランキングを実務でどう読むべきか
データ集計日: 2026年8月19日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本国内PE投資案件 2,326件(127ファンド) | 2026年の数値は8月中旬までのYTD(年初来) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:件数上位は「地銀系・小口多数型」、バイアウト型ではマラトン・インテグラルなどが上位

大手町プレップが独自に構築・運用しているPEファンドDBに収録された公開情報ベースの日本国内投資案件を集計すると、2026年の新規投資件数ランキングには、はっきりとした二層構造が表れます。

まず総合ランキング(すべての投資型を含む)の上位は、事業承継した企業を売却前提なしに保有し続けるNYCのような長期保有・サーチファンド型と、スモールキャップ承継特化のマラトンキャピタルパートナーズが並び、エンデバー・ユナイテッドやグロースパートナーズ、日本成長投資アライアンスなどの独立系ファンドが続きます。小規模な事業承継・成長出資を数多く積み上げるスタイルのファンドが、件数ベースでは大型案件中心のファンドを上回りやすい構造です。

一方、事業承継・バイアウト・カーブアウトなど経営権の移転を伴う投資(コントロール型)に絞ると、スモールキャップ承継特化のマラトンキャピタルパートナーズが件数トップとなり、長期保有型のNYC、地域金融機関系のいよぎんキャピタルが僅差で続き、インテグラル、クレアシオン・キャピタル、日本成長投資アライアンス(J-GIA)などの独立系バイアウトファンドが並びます。「PEファンドのランキング」として一般にイメージされるのはこちらの表です。

市場全体では、2026年は8月中旬までに121件の新規投資が確認でき、前年同期(131件)をやや下回る水準です。件数の内訳・順位は下の表とグラフですべて確認できます(データはDB更新に合わせて自動で再集計されます)。

121件
2026年YTDの新規投資(市場全体)
クラブディールは1件に集約
131件
前年同期(1〜8月)
2025年通年は224件
60社
2026年に新規投資を公表したファンド
78件
うち経営権移転型(コントロール型)
事業承継・バイアウト等

2026年 新規投資件数ランキング(総合)

投資日が2026年の新規投資レコードをファンド別に数えたランキングです。順位・件数だけでなく、前年同期件数・前年通年件数・ファンドの類型・主要業種を併記しています。件数の多寡は投資スタイル(小口多数か、大型少数か)と開示方針に強く依存するため、必ず類型・業種と合わせて読んでください。

2026年YTD 新規投資件数ランキング(レコード基準・2件以上)
順位ファンド2026年YTD前年同期前年通年類型主要業種直近の主な投資先
1NYC712長期保有・サーチファンド型B2Bサービス3・物流・運輸2政経研究所、たすき
1マラトンキャピタルパートナーズ746独立系消費財・小売2・IT・ソフトウェア1アグレイド、ギャラリー・ド・ポップ
3エンデバー・ユナイテッド625独立系消費財・小売3・製造業1ユニーク、関西フードサービス
4グロースパートナーズ538独立系IT・ソフトウェア1・外食・食品サービス1JALCOホールディングス、ヴィレッジヴァンガードコーポレーション
4日本成長投資アライアンス556独立系IT・ソフトウェア2・ヘルスケア2SPD、エス・エス・ビー
6いよぎんキャピタル412地域金融機関系不動産・建設2・ヘルスケア1白石工業、テクノマジック
6アドバンテッジパートナーズ4612独立系製造業2・消費財・小売1イートアンドホールディングス、リズム・オートモーティブ・グループ
6日本産業推進機構412独立系ホテル・レジャー2・教育1WEWORLD、日栄インテック
9REVA324商社・事業会社系不動産・建設2・IT・ソフトウェア1光洋エンジニアリング、通研エンジニアリング
9YMFGキャピタル347地域金融機関系B2Bサービス1・製造業1平川製作所、丸北北尾商店
9アイ・シグマ・キャピタル312商社・事業会社系不動産・建設1・ヘルスケア1ロングライフ、サニタリーホールディングス
9インテグラル335独立系製造業1・不動産・建設1STPR、アットホームホールディングス
9クレアシオン・キャピタル311独立系外食・食品サービス1・消費財・小売1ケンコーホールディングス、非公開(医療機関向けシステム開発、2026年3月投資)
9ベーシック・キャピタル・マネジメント344独立系ヘルスケア1・製造業1マルゴ・レーベル、総合リハビリ研究所・リボン
9SMBCキャピタル・パートナーズ326金融機関系ヘルスケア1・人材1i-PRO、スターワークス
9アトラスキャピタル335独立系IT・ソフトウェア1・不動産・建設1協栄情報、アクアシステムズ
17D Capital223独立系消費財・小売1・外食・食品サービス1オイシーズ、壮関
17PROSPER256独立系B2Bサービス2ゆとりろ山鹿、牧水荘 土肥館
17カーライル・ジャパン(カーライル・グループ 日本バイアウト部門)222外資系B2Bサービス1・製造業1杉孝、オムロン デバイス&モジュールソリューションズ事業(アラタス株式会社)
17サンライズキャピタル201外資系IT・ソフトウェア1・不動産・建設1JPMC、ソーシャルデータバンクグループ
17ニューホライズン キャピタル224独立系製造業1・外食・食品サービス1ラヴォックス、New Order
17ファミリア・キャピタル222金融機関系不動産・建設1Optical Communication、Belle Lus
17ベインキャピタル211外資系消費財・小売1・製造業1ファイントゥデイホールディングス、MCJ
17ユニゾン・キャピタル211独立系B2Bサービス1・外食・食品サービス1千手ホールディングス、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン
17丸の内キャピタル214商社・事業会社系ヘルスケア1・メディア・エンタメ1サツドラホールディングス、オリコン
17日本プライベートエクイティ200独立系ちきりや、夢菓房たから
17福岡キャピタルパートナーズ211地域金融機関系不動産・建設1・ヘルスケア1トラスト工業、CLAN
17阿波銀キャピタル212地域金融機関系ヘルスケア1・製造業1協立工業、スマイル調剤グループ
17ブルパス・キャピタル200商社・事業会社系IT・ソフトウェア2CyXen、コネクティル

表の読み方として重要なのは、件数は「投資活動の量」の一面でしかないという点です。たとえば1件あたり数億円の少数出資を年10件行うファンドと、数百億円のバイアウトを年3件行うファンドでは、金額ベースの存在感は後者が圧倒的に大きくなります。本DBは投資金額の多くが非開示であるため、金額ランキングはあえて作成していません。

経営権移転型(コントロール型)に絞ったランキング

事業承継・バイアウト・カーブアウト・非公開化事業再生・セカンダリーなど、経営権の移転を伴う案件だけを抽出したランキングです。マイノリティ出資やベンチャー投資が除かれるため、いわゆる「バイアウトファンドの活動量」に近い姿になります。

2026年YTD 経営権移転型(コントロール型)投資件数ランキング
順位ファンド2026年YTD主要業種主な投資先
1マラトンキャピタルパートナーズ7消費財・小売2・IT・ソフトウェア1アグレイド、ギャラリー・ド・ポップ
2NYC4物流・運輸2・製造業1政経研究所、アクト
2いよぎんキャピタル4不動産・建設2・ヘルスケア1白石工業、テクノマジック
4インテグラル3製造業1・不動産・建設1STPR、アットホームホールディングス
4クレアシオン・キャピタル3外食・食品サービス1・消費財・小売1ケンコーホールディングス、非公開(医療機関向けシステム開発、2026年3月投資)
4日本成長投資アライアンス3IT・ソフトウェア1・ヘルスケア1SPD、メディアリンク・アイ
4アトラスキャピタル3IT・ソフトウェア1・不動産・建設1協栄情報、アクアシステムズ
4日本産業推進機構3教育1・製造業1WEWORLD、日栄インテック
9YMFGキャピタル2製造業1・消費財・小売1平川製作所、丸北北尾商店
9カーライル・ジャパン(カーライル・グループ 日本バイアウト部門)2B2Bサービス1・製造業1杉孝、オムロン デバイス&モジュールソリューションズ事業(アラタス株式会社)
9グロースパートナーズ2外食・食品サービス1・消費財・小売1ヴィレッジヴァンガードコーポレーション、SaLaDa
9サンライズキャピタル2IT・ソフトウェア1・不動産・建設1JPMC、ソーシャルデータバンクグループ
9ファミリア・キャピタル2不動産・建設1Optical Communication、Belle Lus
9ベインキャピタル2消費財・小売1・製造業1ファイントゥデイホールディングス、MCJ
9ユニゾン・キャピタル2B2Bサービス1・外食・食品サービス1千手ホールディングス、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン

総合ランキングとの顔ぶれの違いが、そのまま日本のPE市場の構造を表しています。総合上位を占めた少数出資中心のキャピタルはこの表では後退し、承継特化の新興ファンドと独立系バイアウトファンドが前面に出てきます(いよぎんキャピタルのように、地域金融機関系でも経営権取得型の承継投資を積み上げるファンドもあります)。1件のコントロール型投資の検討・実行には通常数か月かかることを踏まえると、年初来7件をクローズしているマラトンのペースは突出しています。

月次ペース:2026年の投資はどう推移しているか

3023158091月172月303月154月135月186月137月58月
図:2026年の月別新規投資件数(市場全体・ユニーク案件ベース)(薄色の最終棒は年途中の値)

月別に見ると、単月の件数には公表タイミングによる振れがあります。決算期の関係で3月・9月前後にクロージングが集中しやすいこと、投資実行から公表まで時間差がある案件が存在することから、単月の増減よりも累計ペースの前年比較で市場の温度感を見るのが実務的です。直近月は公表が出揃っていない可能性があるため、値が小さく見える点にも注意してください。

分析:なぜこの順位になるのか

件数を押し上げる3つの構造

収録データからは、件数上位の背景として次の3つの構造が読み取れます。

第一に、承継案件の裾野の広がりです。地方銀行グループの投資子会社が、取引先の事業承継に対してエクイティで応える動きは、もはや一部の先進行だけのものではありません。いよぎんキャピタル(伊予銀行系)が年初来4件の経営権取得型投資を実行するなど、地域発の承継案件が件数の裾野を支えています。

第二に、承継特化型・小口多数型の新興ファンドの台頭です。マラトンキャピタルパートナーズ(2021年設立)やNYC(自己資金型・長期保有)は、後継者不在の小規模企業を対象に、従来のPEファンドが手掛けにくかった規模の案件を高速に積み上げています。この動きの詳細は投資モメンタム分析で扱っています。

第三に、開示方針の差です。本DBは公式サイト・プレスリリース等の公開情報を基礎としているため、投資先を積極的に公表するファンドほど件数が多く見えます。逆に、投資先を限定的にしか公表しない大型ファンドの活動量は過小に表れます。ランキングの数字は「公開情報で確認できる投資活動量」であり、実際の市場シェアそのものではありません。

前年同期比はやや減速

市場全体の2026年年初来件数は前年同期を1割弱下回る水準です(当年は8月途中までの集計のため、着地は通年で確定します)。前年2025年は通年224件と高水準で、2026年もおおむね月2桁の件数ペースが続いていることは、事業承継需要という構造的なディールソースの厚みを示唆しています。業種別にどこへ投資が向かっているかは2026年の業種別分析で詳しく見られます。

実務での使い方

PE・M&A業界を目指す方にとって、件数ランキングは「いま採用ニーズが生まれやすいファンド」を探す手がかりになります。投資ペースが速いファンドは案件執行の人手が必要になるためです。ファンドごとの特徴比較は日本のPEファンド比較、キャリアパスはPEファンドへの転職ガイドを参照してください。

売却・資本提携を検討する企業オーナーや経営企画部門にとっては、自社の規模・業種・案件タイプ(承継か、成長資金か、カーブアウトか)に近い投資を積み上げているファンドを表から特定し、ファンド名のリンク先(各社の投資先一覧ページ)で実績を確認する、という使い方が実務的です。各ファンドの投資先・Exit実績はPEファンドDBの個社ページにすべて収録しています。

件数の次は、1件のディールの中身を理解する

ランキングで「どのファンドが動いているか」が分かったら、次はPEファンドが1件の投資で何を検討し、どうリターンを設計しているかです。買収価格の逆算、レバレッジ、MOICIRRの関係まで、実際にExcelでLBOモデルを組みながら学べます。

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データの定義と限界

本ランキングの母集団は、大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内のPE投資案件です。「日本のPEファンドの投資」に加え、外資系PEファンドによる日本国内投資も含みます。海外への投資は含みません。集計の詳細は以下のとおりです。

集計方法・データ定義(大手町プレップPEファンドDB独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBに収録された、日本のPEファンドおよび日本に投資する海外PEファンドによる日本国内企業への投資案件(投資先の国が日本、または国の記載がなく運用会社の本拠が日本の案件)。集計日時点で2,374レコード・重複を除いた2,326案件(127ファンド)。
件数の数え方
市場全体の件数は複数ファンドによる共同投資(クラブディール)を1案件として数え、ファンド別の件数は各ファンドの投資実績として1件ずつ数えます。両者は合計が一致しません。
当年(2026年)の扱い
2026年の数値は8月中旬時点のYTD(年初来)です。通年の数値ではないため、過年度との単純比較はできません。公表済みでもクローズ(実行)前の案件は含めていません。
データソース
各PEファンドの公式サイト・プレスリリース等の公開情報(2026年8月19日時点)。
ランキングの基準
投資日(invest_date)の年が2026年の新規投資レコード数。前年同期は前年1月〜8月の件数です。経営権移転型=事業承継・カーブアウト・非公開化・セカンダリー・事業再生・MBO・バイアウトに分類された案件。

本ランキングは公開情報ベースの独自集計であり、日本国内の全PE投資を網羅した市場統計(推計値)ではありません。非公開案件や公式サイトに掲載されていない案件は含まれません。ファンドにより投資先の開示方針が異なるため、件数の差がそのまま実際の投資活動量の差を意味するものではない点にご注意ください。

よくある質問(FAQ)

Q. このランキングは投資金額ベースですか。
A. いいえ、件数ベースです。日本のPE投資は投資金額が非開示の案件が大半のため、金額ランキングは公開情報からは正確に作成できません。件数は投資スタイル(小口多数か大型少数か)に強く影響される点に注意してください。

Q. 大手外資系ファンドの順位が低いのはなぜですか。
A. 外資系大手は1件あたり数百億円以上の大型案件を年数件のペースで行うことが多く、件数ベースでは上位に入りにくい構造です。また投資先の公表が限定的なファンドは、公開情報ベースの本集計では実際より少なく表れます。日系・外資系の投資行動の違いは日系PEと外資系PEの比較分析で詳しく扱っています。

Q. 2026年の件数は前年より少なく見えますが、市場は縮小していますか。
A. 2026年の数値は8月中旬までの年初来(YTD)であり、通年の数値ではありません。前年同期と比べるとほぼ同水準で、現時点で縮小と判断できるデータはありません。

Q. ランキングはいつ更新されますか。
A. 本記事の表・グラフ・集計値はPEファンドDBの更新に合わせて自動的に再集計されます。ページ下部に最終データ更新日を表示しています。

まとめ

2026年の日本PE投資の件数ランキングは、地域金融機関系と長期保有型が総合上位を占め、コントロール型に絞ると独立系バイアウトファンドが上位に来る二層構造でした。件数は「開示された投資活動量」の指標であり、金額・リターンとは別物です。定義を理解した上で、類型・業種・前年比と合わせて読むことで、日本のPE市場の現在地を立体的に把握できます。

累計での実績は累計投資実績ランキング、いま保有している企業数は投資中企業数ランキング、投資と回収の両面から見た活動量はPE Activity Indexで分析しています。

出典・データについて

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・企業の評価や投資助言ではありません。

最終データ更新日: 2026年8月19日(DB更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)