JAPAN PE MARKET DATA

2026年、日本のPEファンドはどの業種に投資しているか

データ集計日: 2026年9月8日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本PE案件 2,370件(127ファンド) | 執筆: 大手町プレップ編集部

2026年、日本のPEファンドはどこに資金を向けているのか。日本PE市場統計の共通データベースから、2026年に公表された新規投資123件(8月中旬時点)を業種別に集計しました。単なるランキングではなく、前年との比較、月別の推移、投資型の内訳から「なぜその業種に資金が向かうのか」まで分析します。

2026年 業種別ランキング:製造業が最多

2026年の新規投資123件のうち業種が判明する案件では、製造業(23件)が最多です。金属加工・産業機械・食品機械など中堅メーカーの事業承継案件が積み重なる構造で、単発の大型案件ではなく「小さく数が多い」のが特徴です。2位の不動産・建設(21件)は、設備工事・専門工事会社の承継が中心で、慢性的な人手不足と後継者難が重なる領域です。ヘルスケア(16件)は調剤薬局・介護・医療関連サービスなど、制度に支えられた安定キャッシュフロー型の業態が対象になっています。

コントロール型(経営権取得)に絞ると

上のランキングには地域金融機関系キャピタルによるマイノリティ出資も含まれます。事業承継・カーブアウト・非公開化など経営権が移転するコントロール型(バイアウト)に絞っても、製造業16件・不動産・建設15件が上位で、傾向は変わりません。つまり2026年の日本のバイアウト市場の中心は、大型のテック案件ではなく「オールドエコノミーの承継と再編」にあります。

前年(2025年)との比較:顔ぶれは不変、注目は構成比

業種2025年(通年)構成比2026年(8月まで)構成比
製造業39件17%23件19%
不動産・建設33件14%21件17%
消費財・小売24件10%16件13%
IT・ソフトウェア24件10%13件11%
ヘルスケア23件10%12件10%
外食・食品サービス8件3%9件7%
B2Bサービス16件7%8件7%
メディア・エンタメ4件2%4件3%
ホテル・レジャー3件1%4件3%
物流・運輸5件2%3件2%

2026年は年央までのデータのため、件数の絶対値ではなく構成比で比較しています。製造業・不動産・建設・ヘルスケア・消費財という上位の顔ぶれは前年と同じで、業種ローテーションよりも「同じ構造要因(承継・人手不足・再編)が継続している」と読むのが適切です。2025年に多かったIT・ソフトウェアの構成比がやや低下していますが、年後半に案件公表が集中する年もあり、通年での評価は年末の更新時に行います。

月別の投資件数

0815233091月182月303月164月135月186月137月58月
図: 2026年の月別新規投資件数(投資月が判明する案件・公表ベース)

3月(年度末)に件数が膨らむのは日本のM&A実務の季節性そのもので、決算期をまたぐ前にクロージングする案件が集中するためです。8月は集計時点で公表が出揃っていないため少なく見えます。

投資型の内訳と2026年の主要ファンド

事業承継 41件(33%)成長・マイノリティ投資 23件(19%)公表情報なし 21件(17%)バイアウト(その他) 16件(13%)非公開化 9件(7%)カーブアウト 6件(5%)セカンダリー(PE間) 4件(3%)事業再生 3件(2%)
図: 2026年新規投資の投資型内訳(123件)

投資型別では事業承継が最大で、成長・マイノリティ投資、バイアウト、ベンチャー投資が続きます。TOBによる非公開化も継続的に発生しています。2026年に投資件数が多いファンドは以下のとおりです(マイノリティ出資を含む収録ベース)。

件数上位は地域銀行系キャピタルが占めます。1件あたりの投資額は小さいものの、地域の事業承継・成長資金の供給者として件数の裾野を支えている構図です。大型案件は外資系・国内大手が担っており、「件数の主役」と「金額の主役」が異なる点は日本のPE市場を読む上で重要です。

2026年の代表的な案件

投資先ファンド時期業種投資型
HUGELキャタルトン(Lキャタルトン・ジャパン)2026外食・食品サービスバイアウト(その他)
原陽祐合同会社NYC株式会社2026-01B2Bサービス成長・マイノリティ投資
牧水荘 土肥館PROSPER2026-01B2Bサービス事業承継
非公開(消費財の製造・販売、2026年1月投資)クレアシオン・キャピタル株式会社2026-01消費財・小売バイアウト(その他)
ソフトブレーン株式会社ポラリス・キャピタル・グループ株式会社2026-01IT・ソフトウェアセカンダリー(PE間)
株式会社Fast Fitness Japan日本成長投資アライアンス株式会社2026-01ヘルスケア成長・マイノリティ投資
シンジーテック株式会社株式会社SMBCキャピタル・パートナーズ2026-01製造業カーブアウト
株式会社オプティマインド株式会社マーキュリアインベストメント2026-01物流・運輸成長・マイノリティ投資
株式会社中建サービス雄渾キャピタル・パートナーズ株式会社2026-01不動産・建設事業承継
スマイル調剤グループ阿波銀キャピタル株式会社2026-01ヘルスケア事業承継
非公開(広島県土木・運送事業者)NYC株式会社2026-02物流・運輸バイアウト(その他)
株式会社山善アドバンテッジパートナーズ2026-02消費財・小売成長・マイノリティ投資

各業種から最大2件を投資公表月順に掲載。案件の詳細・出典は各ファンドページの投資先一覧をご覧ください。

なぜ製造業と建設に資金が向かうのか(編集部分析)

以下はデータに基づく大手町プレップ編集部の分析・示唆です。

第一に供給側の要因です。国内の中堅製造業・建設業は経営者の高齢化が最も進んだ業種群であり、後継者不在の企業がPEにとっての「売り物」として恒常的に供給されます。投資型の内訳で事業承継が最大であることと整合的です。第二に投資対象としての合理性です。ニッチトップの部品メーカーや地域の専門工事会社は、参入障壁と安定した取引基盤を持ちながら足元のバリュエーションが抑えられており、LBOに必要な安定キャッシュフローの条件を満たしやすい業態です。第三に再編余地です。多重下請け構造や地域分散といった業界構造そのものに統合の余地があり、複数社を束ねるロールアップ戦略(ロールアップ戦略の解説)の受け皿にもなっています。

裏を返せば、これらの業種への投資はEBITDAの成長よりも「承継の受け皿+経営の近代化+統合」でリターンを作る投資です。同じ業種ランキングでも、成長期待で買われるITと、構造要因で買われる製造業・建設とでは投資のロジックが異なります。

よくある質問(FAQ)

Q. 2026年に日本のPEファンドが最も投資している業種は何ですか?

当サイト集計(8月中旬までの公表分123件)では製造業が23件で最多、不動産・建設(21件)、ヘルスケア(16件)が続きます。経営権を取得するコントロール型に限定しても製造業が首位です。

Q. 2025年と比べて投資動向は変わりましたか?

構成比で見ると製造業・不動産・建設・ヘルスケアが上位という顔ぶれは2025年と同じで、業種の分散も同水準です。2026年はカーブアウト起点の大型案件や非公開化が引き続き公表されている一方、件数の裾野は事業承継が支えるという二層構造が続いています。

Q. この件数は日本のPE投資の全件数ですか?

いいえ。各ファンドが公式サイト・プレスリリースで公表した案件のみの集計です。非公表の投資は含まれないため、実際の件数はこれより多くなります。市場全体の推計値ではなく「一次情報で確認できた投資動向」としてご覧ください。

集計方法・データ定義

対象ファンド
大手町プレップPEファンドDB(収録492社)のうち、日本企業への投資案件を1件以上収録している127ファンド。国内独立系・銀行系・政府系に加え、日本で投資実績のある外資系ファンドを含みます。
対象案件
投資先企業の所在国が日本の案件、および国内ファンドで所在国の記載がない案件(国内ファンドの公式サイトは国内投資先のみを掲載しているため日本案件として扱う)。合計2,419レコード。複数ファンドによる共同投資(クラブディール)は市場全体の件数では1案件として数え、ファンド別の集計では各ファンドの投資実績として数えます(ユニーク案件数2,370件)。
データソース
各ファンドの公式サイト(投資先一覧・案件ページ・ニュースリリース)を一次情報として収集。投資時期・Exit時期・売却先は公式に公表されている情報のみを収録し、公表がないものは「非開示」「公表情報なし」として集計から明示的に区別しています。
Investment Date / Exit Date
公式発表の投資実行(または公表)年月・Exit年月。月まで確認できない案件は年のみを保持し、保有期間の計算からは除外します。日付が不明な案件に推定日を割り当てることはしません。
業種分類
投資先の公表事業内容から大手町プレップが独自に16の大分類(製造業/IT・ソフトウェア/ヘルスケア/消費財・小売/外食・食品サービス/B2Bサービス/人材/消費者サービス/金融/不動産・建設/物流・運輸/教育/メディア・エンタメ/エネルギー・環境/ホテル・レジャー/その他)へ正規化。全記事で同一の分類を使用します。分類根拠が公表されていない案件は「未分類」とし、業種別集計から除外します。
投資型(Deal Type)
各ファンドの公表資料の記載に基づき、事業承継/カーブアウト/非公開化/セカンダリー(PE間取得)/事業再生/MBO/バイアウト(その他)/成長・マイノリティ投資/ベンチャー投資へ正規化。公表情報から判別できない案件は「公表情報なし」(530件)として扱い、推測で割り当てません。
Exit分類
「事業会社への売却(Strategic Sale)」は公表された売却先が事業会社である案件。「Sponsor-to-Sponsor」は売却先が他のPEファンド(当サイトDB収録ファンドとの照合、および次オーナーの投資記録との突合で判定)。売却先が公表されていないExitは「売却先非開示」として比率計算の分母から除きます。
保有期間(Holding Period)
投資年月からExit年月までの月数を年換算(完全Exit案件のうち両方の年月が判明する705件のみ)。一部売却・継続保有中の案件は含みません。
本記事固有の注意
2026年の件数は8月中旬までに公表された案件のみで、通年では増加します。前年比較は構成比ベースで行い、件数の単純比較はしていません。業種は投資先の主たる事業で1分類のみ付与しています。

本記事の集計・分類は公開情報を基に大手町プレップが独自に行ったものです。各社の公表方針の違いにより、実際の投資件数・Exit件数は収録件数より多い可能性があります。数値は「当サイトが一次情報で確認できた範囲」の集計であり、市場全体の統計(推計値)ではありません。誤りのご指摘はお問い合わせまでお寄せください。

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出典: 各PEファンド公式サイト・プレスリリース(2026年9月8日時点)。個別案件の出典はPEファンドDBの各ページに記載。

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