この記事で分かること

  • 投資済み案件のうちどれだけがExit済みかを示す「Exit済み比率」ランキング
  • 比率の高さはヴィンテージ(投資開始年)と保有スタイルに強く依存し、「比率が高い=優秀」ではないこと
  • 老舗ファンドと新興ファンドで比率がここまで違う理由
  • 保有期間の市場全体の傾向と、この比率を実務でどう解釈すべきか
情報確認日: 2026年9月8日(各ファンドの公開情報を確認・再集計した日) | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本国内PE投資案件 2,370件(127ファンド) | 2026年の数値は8月までの年初来(YTD) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:Exit済み比率は「優秀さ」ではなく「投資開始年と回転速度」を映す

大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内投資案件のうち、投資時期が確認できる案件について、ファンドごとに「投資済み案件のうちExitが確認できた割合」を集計しました。市場全体(DB収録全ファンド)でのExit済み比率は49%です。

ランキング上位は大和PIパートナーズ(94%)、ライジング・ジャパン・エクイティ(91%)、日本みらいキャピタル(85%)など、いずれも投資開始が2000年代前半〜2011年の老舗ファンドです。逆に比率0%のファンドには、NYC・REVA・りそなキャピタルなど、投資開始が2021年以降のファンドが目立ちます。ただし、セレンディップ・ホールディングス(2015年投資開始)のように長期保有を前提としてExitを行っていないファンドもあり、経過年数だけでは説明できないケースも存在します。この対比が示すのは、Exit済み比率は投資を開始してからの経過年数(ヴィンテージ)に強く左右されるという構造です。比率が低いことは、そのファンドが保有先を売却できていない・運用に問題があるということを意味しません。単に投資してからまだ日が浅いだけの場合が大半です。

一方で、投資開始年が比較的新しくても比率が高いファンドも存在します。アスパラントグループ(2014年開始・82%)は、保有期間の平均が3.6年と短く、経過年数だけでなく回転の速さ(保有期間の短さ)も比率を押し上げる要因であることが読み取れます。ヴィンテージと保有期間の両面から見るのが、この指標の正しい読み方です。

49%
市場全体のExit済比率
状況判明分に占めるExit済の割合
状況判明15件以上
最低サンプル基準
対象49ファンド
2026年9月8日
データ集計日

Exit済み比率ランキング

投資件数15件以上のファンドを対象に、Exit済み比率の高い順に並べたランキングです。投資開始年(first_y)と、判明している場合は平均・中央値の保有期間も併記しています。件数が少ないファンドは比率が数件の増減で大きく振れるため、一定の母数があるファンドに絞って集計しています。

Exit済比率ランキング(状況判明15件以上)
順位ファンドExit済比率Exit済投資中状況判明計投資開始年平均保有
1大和PIパートナーズ94%463492001—
2ライジング・ジャパン・エクイティ91%2022220112.9年
3日本みらいキャピタル85%2342720034.1年
4アスパラントグループ82%2352820143.6年
5ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ79%1541920122.8年
5日本産業パートナーズ79%2252820035.6年
7日本プライベートエクイティ77%3093920045.3年
8アント・キャピタル・パートナーズ76%71219320024.2年
9ティーキャピタルパートナーズ74%2593420054.4年
10キャス・キャピタル73%1972620054年
11MCPキャピタル72%3111432000—
12トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド69%115162004—
12ユニゾン・キャピタル69%29134220005年
14ポラリス・キャピタル・グループ68%30144420054.6年
15カーライル・ジャパン(カーライル・グループ 日本バイアウト部門)67%26123920025年
15サンライズキャピタル67%24123620074.2年
15ジャフコ グループ67%46236920105.9年
18アドバンテッジパートナーズ66%894513419985.6年
19ネクスト・キャピタル・パートナーズ60%961520066.3年
20AJキャピタル59%1071720192.2年
21J-STAR57%37286520065.1年
21ロングリーチグループ57%13102320055.4年
21Felicity Capital57%13102320192.7年
24ニューホライズン キャピタル56%23184120083.6年
25アイ・シグマ・キャピタル55%16132920094.3年
26エンデバー・ユナイテッド54%52449720024.2年
27ベーシック・キャピタル・マネジメント51%23224520034.4年
28SBI新生企業投資50%881620134年
29ひろしまイノベーション推進機構47%881720123.8年
30丸の内キャピタル44%11142520095.2年
31WMパートナーズ42%2230522015—
32クレアシオン・キャピタル41%18264420125.3年
33日本投資ファンド40%691520184.8年
33日本産業推進機構40%17264320154年
35インテグラル38%15203920096.2年
36四国アライアンスキャピタル32%7152220184年
36ブルパス・キャピタル32%6131920212.3年
38ベインキャピタル28%13304620064.7年
39日本成長投資アライアンス22%829372017—
40KKRジャパン(KKR)19%313162014—
40日本企業成長投資19%417212018—
42SMBCキャピタル・パートナーズ11%216182021—
43MSD企業投資10%219212016—
44グロースパートナーズ5%115192024—
44日本グロース・キャピタル5%121222016—
46NYC0%015152023—
46REVA0%015152023—
46りそなキャピタル0%018182021—
46セレンディップ・ホールディングス0%015152015—

表を読む際は、比率の数字だけでなく投資開始年(first_y)を必ず見比べてください。同じ比率でも、2000年代から続くファンドと2010年代後半に立ち上がったファンドでは意味合いがまったく異なります。保有期間(hp)が併記されているファンドは、平均・中央値の年数から回転の速さも確認できます。

分析:ヴィンテージ効果と回転速度という2つの要因

収録データを見ると、Exit済み比率の上位には投資開始年が2000年代〜2011年のファンドが集中しています。大和PIパートナーズ(2001年開始・94%)、日本みらいキャピタル(2003年開始・85%)、日本プライベートエクイティ(2004年開始・77%)、アント・キャピタル・パートナーズ(2002年開始・76%)などは、いずれも20年前後の運用期間を経ており、投資先の大半がすでに売却フェーズを通過しています。これは「優れたExit戦略」というより、単純に時間が経過していることによる効果です。

これに対し、ライジング・ジャパン・エクイティ(2011年開始・91%、平均保有2.9年)やジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(2012年開始・79%、平均保有2.8年)、アスパラントグループ(2014年開始・82%、平均保有3.6年)は、投資開始年が相対的に新しいにもかかわらず高い比率を示しています。共通するのは平均保有期間の短さで、事業再生・ターンアラウンド型など、比較的短期間での売却を前提とした投資スタイルが比率を押し上げているとみられます。

逆に、投資開始が2019年以降と新しいファンドは軒並み比率が低く出ます。NYC・REVA(いずれも2023年開始・0%)、りそなキャピタル(2021年開始・0%)はその典型です。これらのファンドが「Exitが下手」なのではなく、まだExitを迎える段階にある投資が少ないだけである可能性が高い点は、繰り返し強調しておきます。インテグラル(2009年開始)が38%にとどまっている点は、開始年だけでは説明しきれない例であり、大型案件を長期で保有する投資戦略の違いも影響している可能性があります。

本比率も他のランキングと同様、公開情報の開示方針に左右されます。Exitを公表しない、あるいは公表が遅れるファンドでは、実際のExit済み比率よりも低く表れる可能性がある点にご留意ください。

投資中の残高が大きいファンドほど比率が低く出やすい点も見逃せません。丸の内キャピタルは2009年に投資を開始した老舗ですが、Exit済み比率は44%と中位にとどまります。2013年開始という比較的長い運用期間を考えると、同時期に立ち上がった他のファンド(日本産業推進機構は2015年開始で40%、日本成長投資アライアンスは2017年開始で22%)と比べても、新規投資の積み増しペースがExitのペースを上回っている可能性がうかがえます。

実務での使い方

売却・資本提携を検討する企業オーナーにとって、Exit済み比率が高いファンドは「売却プロセスの実務経験が豊富」という意味では参考になりますが、投資開始年の古さゆえの数字である場合が多く、直近の実績を見るならExit件数ランキングと合わせて確認することを勧めます。Exitレディネス評価の考え方も、自社の売却準備を検討する際の参考になります。

PE・M&A志望者にとっては、保有期間の短いファンドほど案件の入れ替わりが速く、複数のディールに携わる機会が多い可能性があります。ファンドの運用年数を比較する際はファンド・ビンテージの考え方が基本になり、Exit実績を測る指標としてはTVPI・DPI・RVPIも参照してください。保有期間の市場全体の分布は保有期間の市場データ分析で詳しく扱っています。

データの定義と限界

本ランキングの母集団は、大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内投資案件のうち、投資時期・Exit有無が確認できる案件です。比率は「投資済み案件のうちExitが確認できたものの割合」として算出しており、投資件数15件未満のファンドは母数が小さく数字が不安定になるため対象外としています。集計の詳細は以下のとおりです。

集計方法・データ定義(大手町プレップPEファンドDB独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBに収録された、日本のPEファンドおよび日本に投資する海外PEファンドによる日本国内企業への投資案件(投資先の国が日本、または国の記載がなく運用会社の本拠が日本の案件)。集計日時点で2,419レコード・重複を除いた2,370案件(127ファンド)。
件数の数え方
DB全体の件数は複数ファンドによる共同投資(クラブディール)を1案件として数え、ファンド別の件数は各ファンドの投資実績として1件ずつ数えます。両者は合計が一致しません。
当年(2026年)の扱い
2026年の数値は8月までの年初来(YTD)です(情報確認日2026年9月8日までに公開された案件のうち、8月までに実行・Exitしたもの。DBの日付は月単位で保持しています)。通年の数値ではないため、過年度との単純比較はできません。公表済みでもクローズ(実行)前の案件は含めていません。
データソース
各PEファンドの公式サイト・プレスリリース等の公開情報(2026年9月8日に確認)。記事本文の公開日・最終更新日は冒頭の記事情報欄を参照してください。
Exit済比率の定義
Exit済比率=完全Exit件数÷投資状況が判明している件数(投資中+一部売却+Exit済)。状況未確認の案件は分母から除外。比率は投資開始時期(ヴィンテージ)に強く依存するため、投資開始年を併記しています。最低サンプル基準は状況判明15件。

本ランキングは公開情報ベースの独自集計であり、日本国内の全PE投資を網羅した市場統計(推計値)ではありません。非公開案件や公式サイトに掲載されていない案件は含まれません。ファンドにより投資先の開示方針が異なるため、件数の差がそのまま実際の投資活動量の差を意味するものではない点にご注意ください。

よくある質問(FAQ)

Exit済み比率が高いファンドは優秀なのですか。

必ずしもそうとは言えません。比率は投資開始からの経過年数(ヴィンテージ)に強く依存するため、老舗ファンドほど高くなりやすい構造です。運用成績の優劣を示す指標ではなく、あくまで「投資サイクルのどの段階にあるか」を示す数字として読んでください。

比率が0%のファンドは問題があるのですか。

いいえ。NYCやREVAのように2023年前後に投資を開始したばかりのファンドは、まだExitのタイミングを迎えた投資先が少ないため比率が低くなるのが自然です。投資開始年と合わせて見る必要があります。

なぜ投資件数15件未満のファンドは対象外なのですか。

母数が小さいと、1〜2件のExitの有無だけで比率が大きく変動し、統計として意味を持ちにくくなるためです。一定の母数があるファンドに絞ることで、比較可能な数字にしています。

保有期間の平均・中央値が空欄のファンドがあるのはなぜですか。

Exit時の投資年・売却年の両方が判明している案件が一定数ない場合、保有期間を算出していません。件数自体は集計していても、保有期間データが不足しているケースがある点にご留意ください。

まとめ

Exit済み比率は、市場全体で49%という水準を軸に、老舗ファンドほど高く、新興ファンドほど低いという構造がはっきり表れる指標です。加えて、投資開始年が比較的新しくても保有期間の短いファンドは高い比率を示すことから、ヴィンテージと回転速度の2つが比率を左右する主因だと分かります。「比率が高い=優秀」ではなく、「そのファンドが投資サイクルのどの段階にあるか」を示す数字として読むことが、誤読を避ける最大のポイントです。

直近の売却実績はExit件数ランキング、現在の保有規模は投資中企業数ランキングで確認できます。

出典・データについて

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・企業の評価や投資助言ではありません。

情報確認日(DB再集計日): 2026年9月8日(DB更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)