この記事で分かること

  • 医療・介護・調剤などヘルスケア分野に投資しているPEファンドの件数ランキング
  • 動物病院・訪問看護・調剤薬局などで進む「ロールアップ(多店舗集約)投資」の実態
  • 規制産業であるヘルスケアならではの投資類型の偏り(マイノリティ出資・成長投資が中心)
  • 集計・業種分類の定義と、ランキングを実務でどう読むべきか
データ集計日: 2026年8月19日 | 対象: 大手町プレップPEファンドDB収録の日本国内PE投資案件 2,326件(127ファンド) | 2026年の数値は8月中旬までのYTD(年初来) | 執筆: 大手町プレップ編集部

結論:件数上位はJ-STAR・WMパートナーズ・キャス・キャピタル、ロールアップ特化型が目立つ

大手町プレップが独自に構築・運用しているPEファンドDBに収録された日本国内投資案件のうち、投資先がヘルスケア分野(医療・介護・調剤・バイオなど)に分類される案件を集計すると、J-STAR、WMパートナーズ、キャス・キャピタルが件数上位に並びます。製造業(約19%)と比べるとヘルスケアが投資記録全体に占める比率は約7%とニッチな業種ですが、専業ファンドの厚みという点では独自の存在感があります。

上位ファンドの投資先を見ると、動物病院・訪問看護・調剤薬局といった「多拠点を横展開する事業」のロールアップ投資が目立ちます。キャス・キャピタルはヘルスケア向け投資が全投資の35%を占め、その中心は動物病院グループの持株会社運営を明示した投資を含む動物病院関連です。WMパートナーズも動物病院を中心に投資を積み上げています。日本PMIパートナーズは収録投資の100%がヘルスケア分野で、訪問看護・訪問リハビリなどの在宅医療関連が中心となっており、いずれも単一の施設ではなく多店舗・多拠点を束ねる戦略がうかがえます。

もうひとつの特徴は、調剤薬局のロールアップです。株式会社日本産業推進機構はさくら薬局グループ、阿波銀キャピタルはスマイル調剤グループへの投資が確認でき、アドバンテッジパートナーズの投資先にも日本調剤が含まれます。ヘルスケアは診療報酬・薬価制度など公的な規制の影響を強く受ける業種であるため、投資判断において医療政策の動向を織り込む必要がある点も、他業種とは異なる特徴とみられます。件数の内訳・順位は下の表とグラフですべて確認できます(データはDB更新に合わせて自動で再集計されます)。

171件
ヘルスケアへの投資(市場全体・累計)
全体の7%
96/59件
投資中/Exit済
12件
2026年YTD
4.1年
平均保有期間
中央値4年(n=40)

ヘルスケア投資件数ランキング

投資先の業種がヘルスケア(医療・介護・調剤・バイオ等)に分類される案件を、投資実行ファンド別に集計したランキングです。順位・件数に加えて、share(そのファンドの全投資に占めるヘルスケアの比率)・current(現在保有中の件数)・recent5(直近5年の件数)を併記しています。

ヘルスケア投資件数ランキング(3件以上)
順位ファンド件数ヘルスケア比率投資中直近5年主な投資先細分野の例
1J-STAR1218%54ジオメディ、Dentalホールディングスヘルスケア/ヘルスケア(IPOにより…
2WMパートナーズ1119%74そとぼう動物病院、やぐら動物病院動物病院/介護施設向け宅配
3キャス・キャピタル935%05ノースベッツ、木俣動物病院動物病院グループ運営…/動物病院運営
4ユニゾン・キャピタル819%51CHCPデンタル、CHCPホームナーシングヘルスケア(歯科クリ…/ヘルスケア(訪問看護)
5カーライル・ジャパン(カーライル・グループ 日本バイアウト部門)717%22トライト、CureAppヘルスケア/人材サービス(医療・…
5ポラリス・キャピタル・グループ716%44オスフェリオンバイオマテリアル株式会社(FH Ortho SAS)、ウェルビー医療・ヘルスケア・福祉
7日本成長投資アライアンス616%55あいあい、Fast Fitness Japanヘルスケア
7日本産業推進機構614%33キート、さくら薬局グループ(クラフト株式会社)ヘルスケア
9アドバンテッジパートナーズ54%32日本調剤、ルネサンスヘルスケア / 消費材·…/ヘルスケア / 消費者サ…
9ベーシック・キャピタル・マネジメント511%44総合リハビリ研究所・リボン、めいとケアヘルスケア・介護/介護施設運営
9日本PMIパートナーズ5100%54ホスピタルネット、あわーずヘルスケア/医療(病院…/ヘルスケア(医療経営DX…
12EQT427%22ケアネット、ベネッセホールディングス教育・介護サービス/ヘルスケア(医療従事…
12MBKパートナーズ431%42アリナミン製薬、Soyokaze介護サービス/ヘルスケア(一般用医…
12フロンティア・キャピタル450%34医療法人社団東京ハート会、医療法人社団ピュアホワイト会ヘルスケア(歯科医療)/ヘルスケア
12REVIC復興キャピタル48%03エディットフォース、MabGenesisバイオテクノロジー/バイオテクノロジー(…
16D Capital323%33kukuru、ゆいんちゅ訪問看護
16アイ・シグマ・キャピタル310%22ロングライフ、医療法人大美会/株式会社大津メディカルスキンセンター医療関連アウトソーシ…/美容医療
16アント・キャピタル・パートナーズ33%10メック、株式会社シーメック、APEX医療関連
16ティーキャピタルパートナーズ39%10日本マイクロバイオファーマ、武州製薬医薬品/医薬品製造受託(カー…
16マラトンキャピタルパートナーズ310%03サスケグループ、さわもと犬猫病院福祉(就労継続支援A型…/動物病院
16大和PIパートナーズ36%10リビングプラットフォーム、Spiber新世代バイオ素材開発/介護施設運営
16トライハード・インベストメンツ311%01あさひコモンズ、ほっと・はあと医療機器販売/高齢者介護施設の運営
16日本企業成長投資314%22レイクス21、メディカルサポート歯科医院の経営・運営…/シニア住宅・有料老人…

share列を見ると、日本PMIパートナーズのようにほぼ100%がヘルスケア関連という専業ファンドから、アドバンテッジパートナーズのように投資全体の一部としてヘルスケアを扱う分散型ファンドまで幅があります。件数が同水準でも、専業度によってその会社が持つ業界知識・ネットワークの深さは異なるとみられる点に注意して読んでください。

年次推移:ヘルスケア投資はどう推移してきたか

221711603'1511'163'179'186'1911'2011'2120'2219'2319'2422'2512'26
図:ヘルスケア向けPE投資件数の年次推移(市場全体)(薄色の最終棒は年途中の値)

年次の推移を見ると、件数は2015年から緩やかに増加基調をたどり、2022年以降は年間20件を超える水準まで拡大しています。介護・調剤・動物病院といった生活インフラ寄りの領域で、事業承継や多店舗展開の資金ニーズがPE投資の受け皿として定着してきたことが背景にあるとみられます。2026年は8月中旬までのYTD件数であり、通年の実績と単純比較できない点に注意が必要です。

投資類型の内訳:マイノリティ出資・成長投資が中心

事業承継 40件(24%)成長投資・マイノリティ 39件(24%)公表情報なし 38件(23%)バイアウト 24件(15%)カーブアウト 13件(8%)非公開化 10件(6%)
ヘルスケア向け投資の投資型構成(累計)

ヘルスケア向け投資を類型別に見ると、事業承継型と成長・マイノリティ出資型がほぼ並んで多く、次いで類型不明、バイアウト型と続きます。医療・介護は事業の継続性が重視される業種であるため、承継型の投資と、経営権を移さずに成長資金を供給するマイノリティ出資の双方が使われやすいと考えられます。マジョリティ・マイノリティバイアウトの違いを理解しておくと、この分布の意味がより正確に読み取れます。

分析:なぜこの順位になるのか

ロールアップ戦略とヘルスケアの相性

動物病院・訪問看護・調剤薬局はいずれも、個々の施設・店舗の売上規模は小さい一方、複数拠点を束ねることで管理コストの共通化や仕入れ交渉力の強化が期待できる業態です。こうした「小さく買って束ねる」投資手法はロールアップ戦略と呼ばれ、キャス・キャピタルや日本PMIパートナーズのように投資先の大半が同一業態というファンドの存在は、この戦略がヘルスケア分野で有効に機能していることを裏付けているとみられます。

規制産業ゆえの専門性の壁

医療・介護は診療報酬・介護報酬・薬価制度といった公的な価格規制の影響を強く受ける業種です。一般的な事業会社のM&Aと異なり、規制動向を織り込んだ事業計画の精査や、医療法人特有のガバナンス構造への理解が求められるため、参入障壁が相対的に高いとみられます。ヘルスケア専業ファンドが件数上位に食い込んでいる背景には、こうした専門性を武器にした投資判断があると考えられます。人材の定着が経営の生命線となる医療・介護施設では人事デューデリジェンスの比重も高くなる傾向があります。

地域金融機関系はバイオ・創薬領域にも広がる

ヘルスケア領域への投資は、ロールアップ型の事業運営投資だけにとどまりません。ユニゾン・キャピタルはCHCPデンタル(歯科クリニック運営支援)とCHCPホームナーシング(訪問看護)の双方に投資しており、医療法人グループの運営支援に特化した投資スタイルがうかがえます。

収録データでは、ヘルスケア分野の投資先のうち現在も保有中の件数がExit済みの件数を上回っています。これは、ヘルスケア分野への投資が近年になって本格化した比較的新しい投資群であることを示唆しており、Exit実績はこれから積み上がっていく段階にあるとみられます。

開示方針の差がランキングに与える影響

本ランキングの件数は各社の公式サイト・プレスリリース等で公表された案件の数であり、開示に積極的なファンドほど多く表れる点に注意が必要です。医療法人が関わる案件は個人情報・患者情報への配慮から公表が限定的になりやすく、実際の投資活動量よりも過小に表れている可能性がある点には留意が必要です。ランキングの数字は「公開情報で確認できる投資活動量」であり、ヘルスケア市場全体の投資規模そのものではありません。

実務での使い方

ヘルスケア分野でのPE・M&A業界を目指す方にとって、ロールアップ特化型ファンドは事業運営に近い実務経験を積みやすいという特徴があります。市場全体の業種別動向は業種別ファンドマップで確認でき、ファンドごとの特徴比較は日本のPEファンド比較を参照してください。

調剤薬局・介護施設・動物病院などを経営するオーナーや、医療法人の事業承継を検討する関係者にとっては、自社の業態に近い実績を持つファンドを表から特定し、投資先一覧で運営スタイルを確認することが実務的な出発点になります。各ファンドの投資先・Exit実績はPEファンドDBの個社ページにすべて収録しています。

ロールアップ投資の中身を、モデルで理解する

動物病院や調剤薬局を1店舗ずつ買い増していくロールアップ投資は、初回買収(プラットフォーム)とその後のAdd-on買収を積み上げるLBOモデルで表現されます。買収後のシナジーのれん・レバレッジの変化まで、実際にExcelでモデルを組みながら学べます。

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データの定義と限界

本ランキングの母集団は、大手町プレップPEファンドDBに収録された日本国内のPE投資案件のうち、投資先の主業種が「ヘルスケア」(医療・介護・調剤・バイオ等)に分類されるものです。業種分類は編集部独自の正規化ルールに基づき、投資先の事業内容の記載から機械的に判定しています。業種が特定できない「未分類」の案件はこのランキングの母数に含まれません。集計の詳細は以下のとおりです。

集計方法・データ定義(大手町プレップPEファンドDB独自集計)

対象データ
大手町プレップPEファンドDBに収録された、日本のPEファンドおよび日本に投資する海外PEファンドによる日本国内企業への投資案件(投資先の国が日本、または国の記載がなく運用会社の本拠が日本の案件)。集計日時点で2,374レコード・重複を除いた2,326案件(127ファンド)。
件数の数え方
市場全体の件数は複数ファンドによる共同投資(クラブディール)を1案件として数え、ファンド別の件数は各ファンドの投資実績として1件ずつ数えます。両者は合計が一致しません。
当年(2026年)の扱い
2026年の数値は8月中旬時点のYTD(年初来)です。通年の数値ではないため、過年度との単純比較はできません。公表済みでもクローズ(実行)前の案件は含めていません。
データソース
各PEファンドの公式サイト・プレスリリース等の公開情報(2026年8月19日時点)。
業種分類
投資先の業種・事業内容テキストを16の大分類に正規化した独自分類(表記揺れは正規化ルールで吸収)。「ヘルスケア」の判定基準は本文のデータ定義セクション参照。分類できない案件は「未分類」とし、本記事の集計に含めていません。

本ランキングは公開情報ベースの独自集計であり、日本国内の全PE投資を網羅した市場統計(推計値)ではありません。非公開案件や公式サイトに掲載されていない案件は含まれません。ファンドにより投資先の開示方針が異なるため、件数の差がそのまま実際の投資活動量の差を意味するものではない点にご注意ください。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ動物病院や訪問看護への投資が目立つのですか。
A. これらの業態は個々の施設規模が小さい一方で多拠点化による管理効率化の余地が大きく、いわゆるロールアップ戦略と相性が良いためとみられます。キャス・キャピタルや日本PMIパートナーズなど、投資先の大半が同一業態というファンドが実際に確認できます。

Q. ヘルスケアは他の業種と比べて投資件数が少ないのですか。
A. 本DBの投資記録全体に占めるヘルスケアの比率は約7%で、製造業(約19%)と比べるとニッチな業種です。ただし専業ファンドの数・質という点では独自の厚みがあります。

Q. なぜマイノリティ出資型の投資が多いのですか。
A. 創薬・バイオテック関連の投資では開発期間の長さや失敗リスクの高さから、経営権を取得せずリスクを分散しながら関与するマイノリティ出資が選ばれやすいと考えられます。加えて医療法人特有のガバナンス上の制約も一因とみられます。

Q. 投資金額ではなく件数で比較する理由は何ですか。
A. 日本のPE投資は投資金額が非開示の案件が大半で、公開情報から正確な金額ランキングを作成できないためです。本記事は件数ベースで比較しています。

Q. ヘルスケア分野の投資はExitより保有中の件数の方が多いのですか。
A. はい、収録データでは現在保有中の件数がExit済みの件数を上回っています。ヘルスケアへの投資が本格化したのは比較的最近であるとみられ、Exit実績は今後増えていく段階にあると考えられます。

まとめ

ヘルスケア分野のPE投資件数ランキングは、J-STAR・WMパートナーズ・キャス・キャピタルが上位に並び、動物病院・訪問看護・調剤薬局のロールアップに特化した専業ファンドが目立つ構造でした。規制産業ゆえの専門性の壁が、ヘルスケア専業ファンドの存在感を支えているとみられます。製造業・IT分野の同様の分析は、それぞれ製造業PEファンドランキングIT・ソフトウェアPEファンドランキングで公開しています。

出典・データについて

※本記事は公開情報に基づく教育目的のデータ分析であり、特定のファンド・企業の評価や投資助言ではありません。

最終データ更新日: 2026年8月19日(DB更新に合わせて本記事の数値・表・グラフは再集計されます)