この記事で分かること

  • 戦コン出身者が金融系の選考・実務で典型的に詰まる10論点と、それぞれの最短の潰し方
  • 「戦略の言葉」と「ファイナンスの言葉」の翻訳表——強みを活かしたまま弱点を埋める考え方
  • 選考までの学習順序(本サイト内での最短4週間ルート)

導入:ケースは通る。テクニカルで落ちる

戦略コンサル出身者はPE・FAS・IBDの採用市場で歓迎されます。構造化・仮説思考・資料作成——武器は本物です。ところが選考では「ケースは高評価、テクニカルで見送り」という落ち方が定番です。理由はシンプルで、コンサルの日常業務では三表・バリュエーション・買収会計を「自分の手で」扱う機会が少ないから。埋めるべき溝は能力ではなく、経験の種類です。本記事はその溝を10個に特定し、最短で潰します。

結論:溝は10個に集約される

次の10個を「説明できて・Excelで組める」状態にすれば、戦コンの武器はそのまま金融で通用します。しかも10個のうち7個は、一度自分の手でモデルを組めば消える種類の弱点です。

詰まる論点10選

表1:典型的な10の溝と潰し方
#詰まる論点何が起きるか/最短の潰し方
1発生主義と現金の区別「利益が出ている=現金がある」と無意識に混同する。→CF計算書の読み方で「利益は意見、現金は事実」を体に入れる
2三表連動PL偏重の思考で、BS・CFへの波及が答えられない(「償却が10増えたら?」で沈黙)。→3表モデルを一度自分で組むのが唯一の近道
3EVとEquity Valueの往復「事業の値段」と「株式の値段」の区別が曖昧なままマルチプルを語る。→EVブリッジを紙に描けるまで反復
4割引率の直感WACCを公式としては知っているが、なぜ負債コストに(1−t)を掛けるかを説明できない。→WACCの章
5ターミナルバリューの危うさDCF価値の大半を占めるTVの前提(永久成長率・定常状態)を無警戒に置く。→TVの検証落とし穴20
6運転資本「成長すると現金が減る」が直感に反して見える。→運転資本とCCC。売上ロジックと地続きなので戦コンは習得が速い領域
7Excelの規律「答えが出れば良い」文化の癖。金融は色規約・検算・引き継ぎ耐性まで採点対象。→書式の作法検算設計
8買収会計とEPS希薄化のれん・PPA・A/Dの機構を知らず、M&A議論が戦略論で止まる。→のれんとPPAA/D分析
9レバレッジとリターン「借金でIRRが上がる」の仕組みと限界を数字で示せない。→LBOの仕組みIRRとMOIC
10価値創造の条件「成長すれば価値が増える」と素朴に信じている(ROIC<WACCの成長は価値破壊)。→ROICとスプレッド

翻訳表:戦略の言葉→ファイナンスの言葉

ゼロから学ぶのではなく「翻訳」だと捉えると、習得は一気に速くなります。あなたは既に片方の言語を話せるからです。

表2:思考の翻訳表
戦略コンサルの言葉ファイナンスの言葉
市場規模×シェア×利益率で事業を語るそれをFCFに変換し、リスク(割引率)と時間で現在価値にする(価値の物差し
施策効果を「営業利益+◯億円」で示す税・投資・運転資本を通した後のFCF増分と、その持続性(倍率が付く利益か)で示す
ベンチマーク比較(競合比の利益率)Comps(倍率の相対比較)——ただし分子分母の帰属整合が前提(選定原則
成長戦略の提言その成長はROIC>WACCか——資本を食う成長か、生む成長かの判定
実行計画・KPIツリードライバーツリーとしてモデルに実装(売上ドライバー設計)。ここは戦コンの強みが直結する

選考でどう現れるか

  • PE面接:ケースの筋は良いのに「この会社、EBITDA10億・提示EV80億は高いか?」の瞬間に沈黙する——のが典型です。投資仮説(ICでの問われ方)は戦略仮説と同じ骨格なので、数字の裏付けだけが課題です。
  • FAS面接:手法の選択理由と調整項目(非上場の評価)まで踏み込まれます。
  • モデルテスト:時間内に3表が回るか。知識ではなく練習量の勝負です(知識面の穴は頻出30問で先に確認)。

最短の学習順序(4週間の目安)

  • 週1:三表の理屈(つながり)→3表モデル構築を自分の手で。バランスチェック0を体験する。
  • 週2:評価の全体像(3アプローチ)→DCF構築→EVブリッジ・WACC・TVの3点固め。
  • 週3LBO構築→IRR/MOIC→買収会計とA/D。
  • 週430問で総点検→弱点の本編読み→ペーパーLBO等の演習で仕上げ。
  • 座学で済ませないこと。10論点のうち7つは「一度組めば消える」——逆に言えば、組まない限り消えません。

よくある誤解

  • 「まず簿記の資格勉強から」→ 網羅学習は遠回りになりがちです。金融選考に必要なのは三表連動と評価への接続に絞った理解で、制度の深掘りは後からで間に合います。
  • モデリングはジュニアの作業。戦コン出身者には不要」→ PEの投資判断は「モデルの前提を疑う力」で決まり、それは組んだ経験からしか生まれません。
  • 「ケース対策の延長で乗り切れる」→ ケースとテクニカルは採点軸が別です。両方の準備時間を確保してください(PE転職の全体像)。

まとめ

  • 落ちる理由は能力でなく経験の種類。溝は10個に特定でき、うち7つは「一度組めば消える」。
  • ゼロ学習でなく翻訳。市場×シェア×利益率の言葉を、FCF×リスク×時間の言葉に変換する。
  • 4週間の順序:3表→DCF→LBO・買収会計→30問総点検。手を動かす工程を飛ばさない。

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本記事について

本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。