この記事で分かること

  • RVPIの定義・計算式と、共通設例(コール80億円・残余NAV70億円)での検算
  • RVPIの分子である残存NAVが、どのような評価手法の積み上げで決まっているか
  • 「RVPIが高い=良い運用」と読み替えてはいけない理由と、未実現比率の見方
  • DPI・TVPI・IRR・PMEとの関係整理と、ヴィンテージを揃えて比較する必要性

結論:RVPIは「まだ現金化していない価値」の倍率であり、数字の意味はNAVの信頼性が決める

RVPI(Residual Value to Paid-In Capital、残余価値倍率)とは、PEファンドが保有する残存ポートフォリオの評価額(NAV=Net Asset Value)を、LPが実際に払い込んだ資本(累計払込資本)で割った倍率です。RVPI = 残存NAV ÷ 累計払込資本という式自体は単純な割り算にすぎません。しかし分子のNAVは、上場株式の終値のように市場で観測できる価格ではなく、GPが四半期ごとに見積もる公正価値評価です。RVPIという数字を正しく読むということは、突き詰めればこの見積りの中身と根拠を読むことに等しく、本記事ではその見極め方を扱います。分配実績を測るDPIの読み方はDPIとは|PEファンドの分配実績を測る指標と目安、両者を合算した総合指標であるTVPIの読み方はTVPIとは|計算式・DPI/RVPIとの関係・IRRと何が違うかで扱っています。

計算式と設例での検算

以下は説明用の仮設例です。実在のファンドの実績ではありません。コミットメント総額100億円のPEファンドが、5年目時点で累計80億円をLPからコールし、累計40億円をLPへ分配、残存する投資先ポートフォリオの評価額(NAV)が70億円だったとします。単位は億円です。

式
RVPI = 残存NAV ÷ 累計払込資本 = 70億円 ÷ 80億円 = 0.875x
検算:DPI 0.50x(=40÷80)+ RVPI 0.875x = TVPI 1.375x(=(40+70)÷80 = 110÷80 = 1.375 と一致)

項目金額(億円)倍率
累計払込資本(コール)80—
累計分配40DPI 0.50x
残存NAV70RVPI 0.875x
分配+残存NAV合計110TVPI 1.375x

分母は「コミットメント総額100億円」ではなく「実際にコールされた80億円」である点に注意してください。ファンドの投資期間が終わっていない段階では、コミットメントのうち未コール分(ドライパウダー)は分母に含まれません。この定義・分子分母の取り方はTVPI・DPI・RVPIの用語集で整理しています。

RVPIの分子=残存NAVは何でできているか

RVPIの分子である残存NAVは、単一の観測可能な価格ではなく、GPが投資先ごとに算定した公正価値評価を積み上げた合計です。設例の残存NAV70億円を仮に3社のポートフォリオに分解すると、次のようになります(以下は説明用の仮設例で、評価手法の考え方を示すためのものです)。

RVPI構成(設例):残存ポートフォリオのNAV評価 投資先A 評価手法:マーケットアプローチ (上場類似企業マルチプル) NAV 30億円 投資先B 評価手法:直近増資ラウンド価格を Calibrationで更新 NAV 25億円 投資先C 評価手法:DCF (市場データが乏しい場合の補完) NAV 15億円 残存ポートフォリオNAV合計 = 30+25+15 = 70億円(設例) RVPI = 残存NAV70億円 ÷ 累計払込資本80億円 = 0.875x
図:RVPIの分子は単一の価格ではなく、投資先ごとに異なる評価手法で見積もられたNAVの合計です(設例)。

会計上、未上場株式の評価は観察可能な市場価格を持たない資産として公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類され、レベル1(市場相場価格)やレベル2(間接的に観察可能なインプット)よりもGPの見積りへの依存度が高い区分に位置づけられます。評価手法の優先順位(直近取引価格>マーケットアプローチ>DCF)や、投資時点の水準を基準に市場変動を織り込むCalibrationという考え方の詳細は未上場株式の公正価値評価|IPEVガイドラインとPEの四半期評価実務で扱っています。RVPIを読む際にまず押さえるべきは、その数字が「投資先ごとに独立して見積もられた、根拠の強さが異なる評価の合算」だという一点です。

RVPIは高ければ良いのか:未実現比率の読み方

RVPIが高いこと自体は悪い兆候ではありません。運用開始から日が浅いファンドはExitが進んでいないため、TVPIの大半をRVPIが占めるのが通常のパターンです。問題は、この「高いRVPI」を「良い運用成績」とそのまま読み替えてしまうことです。

TVPIの分解:DPIとRVPIの内訳(設例) TVPI = 1.375x DPI 0.50x 実現・現金分配 RVPI 0.875x 未実現・NAV評価 未実現比率(RVPI÷TVPI)= 0.875 ÷ 1.375 = 63.6% 設例:コミットメント100億円・5年目時点(累計コール80億円)
図:設例のTVPI1.375xのうち63.6%はRVPI=未実現のNAV評価であり、確定した現金分配ではありません。

設例のファンドは、TVPI1.375xのうち6割超がまだ現金化されていないRVPIです。この部分はGPの評価が翌四半期に上方修正されることも、下方修正されることもあります。DPIが1.0xを超え、払込資本を上回る現金がすでにLPへ戻っているかどうかは、TVPIの数字だけでは分かりません。この論点はDPIとは|PEファンドの分配実績を測る指標と目安で詳しく扱っています。

RVPIの信頼性を外部から確認する手がかりの一つが、セカンダリー市場での取引実勢です。セカンダリーと継続ファンド|PE持分の「中古市場」を理解するで扱っているとおり、LP持分の売却やGP主導セカンダリー(継続ビークル)では、買い手がNAVに対してディスカウントまたはプレミアムを提示します。買い手が示す価格がNAVを大きく下回る状態が続くようであれば、市場はGPの評価が楽観的すぎると判断している可能性があります。逆にNAVを上回る価格で成立するなら、評価が保守的だったと読めます。また、残存ポートフォリオのNAVを担保に借り入れるNAVファイナンスを利用しているファンドでは、レンダーが独自にNAVを査定してLTV(掛け目)を決めており、これも一種の外部チェックとして参考になります。

もう一つの注意点は、同一ヴィンテージで比較しないままRVPIやTVPIの高低を論じないことです。ファンド・ビンテージが異なれば、運用開始からの経過年数も市況環境も異なり、RVPIが高い段階のファンドと清算間近のファンドを単純に並べても意味を持ちません。

DPI・TVPI・IRR・PMEとの関係

RVPIは単独ではなく、他の指標と組み合わせて初めて意味を持ちます。

指標測るもの読み方の注意点
RVPI未実現の残存価値倍率NAVの評価根拠次第で変動しうる暫定値
DPI実現済みの分配倍率確定した現金の実績。詳細はDPIとは
TVPIDPI+RVPIの合計倍率実現・未実現の内訳を必ず併記。詳細はTVPIとは
IRR・MOIC時間を考慮した年率/案件倍率ディールレベルの整理はIRRとMOICの計算と使い分け
PME上場株式指数との比較倍率RVPI偏重の段階は暫定値。詳細はPMEとは

特にPMEは、分子の相当部分が未実現NAVである段階では暫定値として扱うべきだとされており、RVPIが高い=DPIが低いファンドのPMEほど、評価前提の変化に敏感になります。ファンド全体のIRRがTVPI・DPI・RVPIの推移からどう生まれるかはファンドリターンとJカーブで扱っています。

よくある質問(FAQ)

RVPIが同業ファンドより高ければ、優れた運用と判断してよいですか。

ヴィンテージを揃えないと判断できません。運用開始から日が浅いファンドほどExitが進んでおらずRVPIが高く出るのが通常のパターンで、単純な高低比較は意味を持ちません。

RVPIはいつゼロになりますか。

ファンドがすべての投資先をExitし清算した時点でRVPIはゼロになり、その時点でTVPIとDPIが一致します。これがファンドの最終成績です。

RVPIがマイナスになることはありますか。

通常はありません。NAVは投資先のエクイティ価値の見積りであり、業績が悪化した投資先はゼロに近づくことはあっても、残存NAVの合計としてマイナスの値を報告することは一般的ではありません。

LPはRVPIの信頼性をどう確認すればよいですか。

評価方針が前四半期から恣意的に変わっていないか、外部評価専門家の関与があるか、DPIとの内訳を確認するのが基本です。加えて、セカンダリー市場でのNAV対比の取引価格や、NAVファイナンス利用時にレンダーが査定したLTVも、外部からの評価チェックとして参考になります。

まとめ

RVPIは残存NAVを累計払込資本で割った未実現価値の倍率であり、設例ではRVPI0.875x、DPI0.50xと合わせてTVPI1.375xを構成します。RVPIの分子であるNAVは投資先ごとに評価手法の異なる見積りの合算であり、高いRVPIをそのまま良い運用成績と読み替えるのは誤りです。DPIとの内訳、ヴィンテージの一致、セカンダリー市場での取引実勢という3つの視点を組み合わせて初めて、RVPIという数字の信頼性を評価できます。

出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。