この記事で分かること

  • ファンドサイズとチェックサイズの定義と、両者の関係
  • 目標保有比率からチェックサイズを逆算する設計ロジック
  • 整数設例でファンドサイズが投資戦略・投資先の数を規定することを確認する
  • Excelでの投資ペース管理シートへの実装方法

30秒で分かる定義

ファンドサイズ(Fund Size)とは、VCファンドがLPから調達する運用資金の総額を指し、チェックサイズ(Check Size)とは、そのファンドが1案件あたりに投資する金額を指します。チェックサイズは適当に決められるのではなく、ファンドサイズ・投資対象ステージ・目標とする出資比率(オーナーシップ)から逆算して設計されます。この2つの数字が決まると、そのファンドが「何社に、どのステージで、いくら投資するファンドか」という投資戦略の骨格がほぼ決まります。

なぜ実務で重要なのか

ファンドレイズの段階でLPに提示する投資戦略(Investment Thesis)には、必ずファンドサイズとチェックサイズのレンジが明記されます。ファンドサイズが小さければ大規模なグロース投資はできず、逆にファンドサイズが大きいのにシード投資中心の小さなチェックサイズしか切れなければ、十分な数の案件に投資できずパワーローのアウトライヤーを取りこぼすリスクが高まります。投資家(GP)は自らの得意領域(ステージ・業種)とファンドサイズの整合性を常に問われます。

計算式(または仕組み)

初期投資チェックサイズ = 目標保有比率(%) × 投資時点のポストマネー評価額
投資可能社数(目安) =(ファンドサイズ × 投資可能比率)÷(初期チェックサイズ + 1社あたりフォローオン想定額)

投資可能比率とは、ファンドサイズのうち管理報酬などの経費を除いた実際に投資に回せる割合です(一般に80〜90%程度とされますが、ファンドごとに異なります)。目標保有比率は、ポストマネー評価額に対してどれだけの持分(オーナーシップ)を確保したいかという投資方針から決まります。

整数設例で確認する

設例(架空数値、単位:百万円)。ファンドサイズ5,000百万円、投資可能比率80%、目標保有比率5%とします。

投資に回せる金額=5,000×80%=4,000百万円。

ある案件のポストマネー評価額が800百万円だとすると、初期チェックサイズ=800×15%=120百万円。

フォローオン用に初期投資と同額(120百万円)を別途リザーブする方針とすると、1社あたりの想定投資額は120+120=240百万円。

このファンドが投資できる社数の目安=4,000÷240=約16.7社となり、実務上は「16〜17社程度に投資するファンド」という設計になります。もし目標保有比率を10%に下げれば、1社あたりの初期チェックサイズは80百万円に減り、より多くの社数に分散投資できる設計に変わります。

投資判断への影響

ファンドサイズとチェックサイズの整合性は、投資委員会での案件承認の前提条件になります。ファンドサイズに対して極端に小さいチェックサイズの案件は、成功してもTVPIへの寄与が限定的なため、優先順位が下がることがあります。逆にファンドサイズに対して過大なチェックサイズは、1社の失敗がファンド全体に与える打撃が大きくなりすぎるため、ポートフォリオの分散度を損ないます。

財務モデル・Excelでの使い方

投資ペース管理シートでは、ファンドサイズ・投資可能比率・目標保有比率をインプットセルとして持ち、案件当たりの想定チェックサイズと投資可能社数を自動計算する設計が基本です。

  • 初期投資とフォローオンを別行に分け、案件ごとの累積投資額をトラッキングする
  • ファンドの投資期間(一般に3〜5年程度が目安とされる)に対して、投資ペースが計画通りかを月次・四半期で確認する
  • 目標保有比率を感度分析(10%/15%/20%等)で振り、投資可能社数がどう変わるかをシミュレーションする

この用語をExcelで「組める」状態にする

ファンドサイズ・目標保有比率からチェックサイズと投資可能社数を逆算し、投資ペース管理シートを設計できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解:「ファンドサイズが大きいほど良いファンド」→ 正しくは、ファンドサイズは投資戦略との整合性で評価されます。シード特化を謙うファンドがファンドサイズだけを大きくすると、チェックサイズを不自然に引き上げるか、極端に多くの社数に投資する必要が生じ、いずれも戦略との矛盾を生みます。

実務家はさらに、①フォローオン用のリザーブが十分に確保された設計か、②目標保有比率が投資対象ステージの市場慣行と乗離していないか、を確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本のVC市場は米国に比べてファンドサイズが小規模なファンドが多いとされますが、近年は大型ファンドの組成も増加傾向にあると業界内で指摘されています。国内のスタートアップ資金調達・VCファンドの動向は経済産業省がスタートアップ育成に関する施策の中で継続的に情報発信しています。目標保有比率の水準や投資社数の設計は個々のファンドの投資方針によって大きく異なり、画一的な「標準値」は存在しない点に留意が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ファンドサイズが決まれば投資戦略の何が決まるか説明してください。
「ファンドサイズと目標保有比率から初期チェックサイズが決まり、フォローオン用のリザーブを見込んだ1社あたりの想定投資額が定まります。ファンドサイズをこの想定投資額で割ることで、投資可能な社数の目安が決まり、これが案件選別の集中度・分散度、ひいては投資対象ステージの選定にまで影響します。」

深掘りでは「目標保有比率を上げると何が起きるか」(チェックサイズが増え投資可能社数が減る、パワーローの取りこぼしリスクとのトレードオフ)が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. チェックサイズはラウンドが進むごとに変わりますか?
A. 変わります。シード・シリーズA・シリーズBと後半のラウンドに進むほど、対象企業のポストマネー評価額が上がるため、同じ目標保有比率でもチェックサイズは大きくなります。ファンドによっては特定のステージに特化し、チェックサイズのレンジをあらかじめ絞り込んでいます。

Q. ファンドサイズが小さいと不利ですか?
A. 一概には言えません。小規模ファンドはシード期など早期段階に集中しやすく、大型ファンドが入りにくい領域で優位性を持つことがあります。重要なのはファンドサイズと投資戦略(ステージ・チェックサイズ・社数)が整合しているかどうかです。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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