この記事で分かること

  • キャップテーブル(capitalization table)が「誰が何株・何%を持つか」を示す資本構成表であること
  • プレマネー/ポストマネーの定義と、投資家持分%=調達額÷ポストマネーという計算式
  • 資金調達ラウンドごとに新株発行で既存株主が希薄化(dilution)する仕組み
  • 整数設例(創業者100万株→シード後80%→シリーズA後64%)とオプションプール(ESOP)の位置づけ

結論:ラウンドごとに「株数と%」を分けて追う

キャップテーブル(cap table=資本構成表)は、株主ごとの保有株数と保有比率(%)を一覧化した表です。資金調達では新株を発行するため、既存株主の株数は変わらなくても保有%は下がります。これが希薄化(dilution)です。ポイントは、投資家の取得%を調達額÷ポストマネーで先に決め、そこから発行株数と既存株主の%を逆算すること。本記事の設例では、創業者100%が、シード後に80%、シリーズA後に64%まで低下します。

図:ラウンドと持分の推移

資金調達ラウンドと持分の推移(設例) 100% 50% 0% 創業者 100% 創業時 創業者 80% シード 20% シード後 創業者 64% シード 16% A 20% シリーズA後 創業者 シード投資家 A投資家 ESOP(本設例は0%)
図:創業者の持分は100%→80%→64%と、ラウンドごとに希薄化していく。本設例ではオプションプール(ESOP)を設定していないため0%。

キャップテーブルとは(定義・英語名)

キャップテーブル(capitalization table、略してcap table)とは、その会社の誰が・どの種類の株式を・何株・何%保有しているかを一覧にした資本構成表です。創業者、共同創業者、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル(VC)、従業員向けオプションなどを行に並べ、株数と持分比率、必要に応じて投資額や優先権の条件を管理します。スタートアップでは調達のたびに更新され、次ラウンドの条件交渉や出口(IPO・M&A)時の分配計算の土台になります。

プレ/ポストマネーと希薄化の計算式

資金調達では、投資家が払い込む金額に対して新株を発行します。ここで登場するのが評価額(バリュエーション)の2つの見方です。

  • プレマネー(pre-money valuation):調達の企業価値。
  • ポストマネー(post-money valuation):調達の企業価値。ポストマネー = プレマネー + 調達額

投資家が取得する持分比率は、次の式で決まります。

投資家の持分% = 調達額 ÷ ポストマネー

既存株主の保有株数は変わりませんが、発行済株式総数が増えるため、既存株主の持分%は下がります。これが希薄化(dilution)です。加えて、従業員向けのオプションプール(ESOP:Employee Stock Ownership Plan/ストックオプション用の未発行枠)を設定・拡大する場合も、その分だけ既存株主が希薄化する要因になります。

整数設例(単位:株・円・%)

創業者が100万株(1,000,000株)=100%を保有する会社を考えます。

シードラウンド:プレマネー4億円、調達額1億円

  • ポストマネー = 4億円 + 1億円 = 5億円
  • 投資家の持分% = 1億円 ÷ 5億円 = 20%、創業者は80%
  • 創業者の100万株が80%にあたるので、発行済株式総数 = 100万株 ÷ 0.8 = 125万株。新株発行は 25万株(250,000株)(=125万株×20%)。

シリーズA:プレマネー8億円、調達額2億円

  • ポストマネー = 8億円 + 2億円 = 10億円
  • A投資家の持分% = 2億円 ÷ 10億円 = 20%。この20%分の新株発行で、既存株主は一律に×80%へ希薄化します。
  • 創業者:80% × 80% = 64%。シード投資家:20% × 80% = 16%。A投資家:20%。合計 64%+16%+20%=100%。

このように、株数は増える一方で創業者の持分%は100%→80%→64%と段階的に下がります。金額(企業価値)は上がっているため、%が下がっても保有価値そのものは増えているのが通常です(例:シリーズA後の創業者64%×ポストマネー10億円=6.4億円相当)。

ESOP・日本実務・間違えやすい点

オプションプールの扱い:実務では、投資家がラウンド前にESOP枠(例:発行済の10〜15%)を設定するよう求めることが多く、この枠はプレマネーの中に含めて(=既存株主の希薄化として)設定されるのが一般的です。本記事の設例はESOPを設定せずに簡略化しています。

日本の会社法との関係:日本では新株発行は会社法の募集株式の発行等の手続で行い、発行価額・数などを株主総会(または取締役会)で決議します。VC投資では議決権・残余財産の優先権などを付した種類株式が使われることが多く、キャップテーブルは普通株・種類株を区別して管理します。用語や実務慣行は米国VCから輸入されたものが多い一方、手続の根拠法は会社法である点に注意します。

間違えやすい点:(1)投資家の持分%はプレマネーではなくポストマネーで割る。(2)ラウンドをまたぐ希薄化は足し算ではなく掛け算(本設例では80%×80%=64%)。(3)希薄化は「%が下がる」ことであって、必ずしも保有価値が下がることを意味しない。

面接での答え方(30秒回答例)

Q:希薄化とプレ/ポストマネーの関係を簡潔に説明してください。
「ポストマネーはプレマネーに調達額を足したもので、投資家の持分%は調達額÷ポストマネーで決まります。新株発行により発行済株式総数が増えるので、既存株主は株数が同じでも持分%が下がり、これが希薄化です。たとえばプレ4億・調達1億ならポスト5億、投資家20%・創業者80%。次のラウンドで投資家が20%取れば既存株主は一律×80%となり、創業者は80%×80%=64%まで低下します。」

よくある質問(FAQ)

Q. 希薄化すると創業者は損をするのですか?
A. 持分%は下がりますが、企業価値が上がっていれば保有株式の価値は増えることが多いです。%の低下と価値の増減は別問題として区別します。

Q. 投資家の持分%はプレマネーとポストマネーどちらで計算しますか?
A. ポストマネーです。持分%=調達額÷(プレマネー+調達額)で求めます。プレマネーで割ると比率を過大に見積もってしまいます。

まとめ

キャップテーブルは株主ごとの株数と持分%を管理する資本構成表で、資金調達のたびに新株発行で既存株主が希薄化します。投資家の持分%=調達額÷ポストマネーを起点に、発行株数と各株主の%を逆算するのが基本動作です。ラウンドをまたぐ希薄化は掛け算で効き、設例では創業者が100%→80%→64%へ。ESOPの設定も希薄化要因になる点、そして%の低下は必ずしも価値の低下ではない点を押さえておきましょう。

出典・参考(2026-07-16確認)

  • 会社法(募集株式の発行等に関する規定)
  • 一般的なVC・スタートアップファイナンス実務(プレ/ポストマネー、キャップテーブル管理、オプションプール設定の慣行)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。