この記事で分かること

  • 希薄化防止条項(アンチダイリューション)が転換価額を調整する基本メカニズムと、転換比率=当初発行価額÷転換価額という関係
  • フルラチェット方式の計算方法と、既存株主にとってなぜ過酷な設計とされるのか
  • 加重平均方式の調整式(NCP=CP×(A+B)/(A+C))の変数の意味と、ブロードベース/ナローベースで分母(A)の範囲がどう変わるか
  • 同一のダウンラウンド設例で3方式を検算し、調整後転換価額・転換比率・持分比率への影響を数値で比較する方法

結論:3方式の違いは「分母に何を含めるか」で説明できる

希薄化防止条項(アンチダイリューション)は、優先株式の発行価格を下回る価格で新株が発行された場合(ダウンラウンド)に、優先株式が普通株式へ転換される際の基準となる転換価額を下方修正し、転換によって受け取れる普通株式数を増やすことで、優先株主の持分の希薄化をある程度食い止める条項です。実務で使われる方式はおおむね2系統に分かれます。一つは、ダウンラウンドの発行価格をそのまま新しい転換価額とするフルラチェット方式で、もう一つは、調整前の転換価額と新規発行価格を一定の重みで平均する加重平均方式です。

加重平均方式の計算式は一つですが、式の中の「調整直前の発行済株式数」という項目(本記事では変数Aと呼びます)に何を含めるかによってブロードベースナローベースの2種類に分かれます。ブロードベースは新株予約権(ストックオプション)等の潜在株式まで含めた完全希薄化ベースの株式数を使い、ナローベースは実際に発行済みの普通株式・優先株式のみを使います。分母となる株式数が大きいブロードベースのほうが調整幅が小さくなり、既存の普通株主(創業者・従業員)にとって有利、投資家保護の観点では弱くなります。以下では、同一のダウンラウンド設例を使って、フルラチェット・ブロードベース加重平均・ナローベース加重平均の3方式を実際に計算し、調整後転換価額・転換比率・ダウンラウンド後の持分比率がどれだけ変わるかを検算します。数値はすべて説明用の仮設例であり、実在の企業のものではありません。

転換価額調整の基本メカニズム

希薄化防止条項を理解する前提として、まず優先株式が普通株式に転換される仕組みを確認します。優先株式には多くの場合、発行時点で「転換価額」が設定されます。転換価額は当初、優先株式の1株当たり発行価格と同額に設定されるのが一般的です。優先株主が保有する優先株式を普通株式に転換する際に受け取れる株式数は、次の式で決まります。

式1:転換比率
転換比率 = 当初発行価額(OCP:Original Conversion Price)÷ 転換価額(CP:Conversion Price、現時点での調整後の値)

転換価額が当初発行価額と同じであれば転換比率は1.0倍で、優先株式1株は普通株式1株に転換されます。ダウンラウンドによって希薄化防止条項が発動し、転換価額が当初発行価額より低い水準に調整されると、転換比率は1.0倍を上回るようになります。つまり優先株式1株から受け取れる普通株式数が増え、優先株主の持分比率の低下がその分だけ緩和される仕組みです。どの方式を採用するかによって、この「調整後の転換価額(NCP:New Conversion Price)」がどこまで下がるかが変わり、結果として転換比率と持分比率への影響も変わります。次の章から、この調整をどう計算するかを、共通の設例で確認していきます。

数値設例の前提:ダウンラウンドを実施したY社

以下は説明用の仮設例です。国内で創業したスタートアップY社を想定します。Y社はシリーズAで優先株式を発行した後、業績の伸び悩みから、シリーズA発行時より低い株価でシリーズBを発行するダウンラウンドを実施しました。ダウンラウンド直前のY社の資本構成は表1のとおりです。

株主区分株式数内訳・備考
普通株式(創業者・従業員)700,000株
ストックオプション・プール100,000株付与済み60,000株/未割当(留保)40,000株
シリーズA優先株式200,000株発行価格(当初転換価額)500円、調達額100,000,000円(1.0億円)
合計(完全希薄化ベース)1,000,000株

この状態でY社は、シリーズBとして次の条件で新株を発行します。

項目
シリーズB発行価格200円(シリーズA発行価格500円の40%水準)
シリーズB調達金額60,000,000円(6,000万円)
新規発行株式数(変数C)300,000株(=60,000,000円÷200円)
調整前転換価額での換算株式数(変数B)120,000株(=60,000,000円÷500円)

発行価格200円は、シリーズAの発行価格500円を下回っているため、シリーズA優先株式の希薄化防止条項が発動します。以下、この同一の前提条件を使って、フルラチェット方式・ブロードベース加重平均方式・ナローベース加重平均方式の3つで、調整後転換価額(NCP)を計算します。

フルラチェット方式:計算とその過酷さ

フルラチェット方式は、調達金額の大小や新規発行株式数を一切考慮せず、ダウンラウンドの発行価格をそのまま新しい転換価額とする方式です。

式2:フルラチェット方式の調整後転換価額
NCP(調整後転換価額)= ダウンラウンドの1株当たり発行価格

Y社の設例に当てはめると、NCP=200円です。式1の転換比率に代入すると、転換比率=500円÷200円=2.5倍になります。シリーズA優先株式200,000株はすべて2.5倍の比率で転換可能になるため、転換後の普通株式数は200,000株×2.5=500,000株となり、調整前の200,000株から300,000株増加します。

フルラチェット方式が過酷とされる理由は、この調整幅が調達金額の規模とまったく連動しない点にあります。極端な例では、シリーズBの調達額がわずか1株分(200円)であっても、フルラチェット方式の下ではシリーズA全体の転換価額が200円まで一律に切り下がり、上記と同じ300,000株分の希薄化がシリーズA以外の株主(普通株主・SOプール)に及びます。調達規模に比例しない調整であるため、既存の普通株主・経営陣・従業員にとって影響が大きく、米国のベンチャー投資では採用例が限定的とされています。国内の解説記事でも、フルラチェット方式は加重平均方式や他の方式と比べて調整幅が最大になり、投資家に最も有利な設計とされる一方で使用例は少ないと説明されています。

加重平均方式の計算式:変数の定義

加重平均方式は、調整前の転換価額と、ダウンラウンドの発行価格を、株式数に応じた重みで平均する方式です。式は次のとおりです。

式3:加重平均方式の調整後転換価額
NCP = CP ×(A+B)÷(A+C)
CP:調整前の転換価額(本設例では当初発行価額と同じ500円)
A:新規発行の直前に発行済みの株式数(分母。範囲の定義がブロードベース/ナローベースで変わる)
B:シリーズBの調達額を、調整前の転換価額(CP)で除して得られる、みなし株式数(=60,000,000円÷500円=120,000株)
C:シリーズBによって実際に新規発行された株式数(=60,000,000円÷200円=300,000株)

この式は、実質的には「調整前の転換価額を基準に会社の資金調達力を評価した場合の株式数(A+B)」と「実際に新株発行後の株式数(A+C)」の比率で、調整前の転換価額を割り引くという構造になっています。ダウンラウンドの発行価格が調整前の転換価額に対して低いほど、CよりBのほうが小さくなり、(A+B)が(A+C)を下回る幅が大きくなるため、NCPはより大きく下方修正されます。逆に、ダウンラウンドの発行価格が調整前の転換価額に近い、あるいは調達額が既存の発行済株式数(A)に対して小さい場合は、NCPの下落幅は小さくなります。フルラチェット方式と異なり、調達規模(CとBの差)が調整幅に直接反映される点が、加重平均方式の設計上の特徴です。

ブロードベースとナローベースの違い:変数Aの範囲

式3の変数Aである「新規発行の直前に発行済みの株式数」をどこまでの範囲で数えるかによって、加重平均方式はさらに2つに分かれます。

方式Aに含める範囲Y社設例でのA
ブロードベース普通株式+全優先株式(転換後)+ストックオプション等の潜在株式(完全希薄化ベース)700,000+200,000+100,000=1,000,000株
ナローベース普通株式+全優先株式(転換後)のみ(潜在株式を含まない)700,000+200,000=900,000株

ブロードベースはナローベースよりもAが大きくなるため、式3の(A+B)と(A+C)の比率の差が相対的に小さくなり、NCPの下落幅も小さくなります。国内の法務系メディアの解説でも、ブロードベース加重平均方式は他の方式(フルラチェット・ナローベース加重平均)と比べて調整幅が小さくなり、既存の普通株主にとって有利(投資家にとっては不利)になると説明されています。なお、日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書では、普通株式以外の種類株式は含めるがストックオプション等の潜在株式は含めないという、ブロードベースとナローベースの中間的な「ミドルベース」と呼べる調整規定も国内で見られると紹介されています。契約書上の「発行済株式数」の定義は各社の投資契約・優先株式の内容によって異なるため、実務では登記事項や種類株式の内容を個別に確認する必要があります。

3方式の比較:調整後転換価額・転換比率・転換後株式数

Y社の同一の設例(表1・表2の前提)に、式2・式3をそれぞれ適用した結果が表4です。ブロードベース・ナローベースの計算過程は次のとおりです。

検算:ブロードベース
NCP=500円×(1,000,000+120,000)÷(1,000,000+300,000)=500円×1,120,000÷1,300,000≒430.77円
検算:ナローベース
NCP=500円×(900,000+120,000)÷(900,000+300,000)=500円×1,020,000÷1,200,000=425.00円

方式調整後転換価額(NCP)転換比率(500円÷NCP)シリーズA転換後株式数調整前比の増加株式数
フルラチェット200.00円2.50倍500,000株+300,000株
ブロードベース加重平均430.77円1.16倍232,143株+32,143株
ナローベース加重平均425.00円1.18倍235,294株+35,294株

転換後株式数は、実務上は端数を切り上げ・切り捨てるなど株式数を整数に丸める処理が入りますが、ここでは計算過程を示すため小数点以下も含めた値を記載しています。表4から分かるとおり、フルラチェット方式の増加株式数(+300,000株)は、加重平均方式2つ(+32,143株・+35,294株)の約8.5〜9.3倍に達します。同じダウンラウンドでも、採用する方式によって既存株主が受ける希薄化の規模がこれだけ変わることが、方式選択が投資契約交渉で重視される理由です。

図1:調整後転換価額(NCP)の方式別比較(設例) 当初転換価額(参考) 500.00円 フルラチェット ブロードベース加重平均 ナローベース加重平均 200.00円 430.77円 425.00円 出所:表4の計算結果を基に大手町プレップ作成(設例)
図:同一のダウンラウンド設例において、方式ごとに調整後転換価額(NCP)がどこまで下がるかを比較したもの。フルラチェットの下落幅が突出して大きい。

持分比率への影響を検算する

調整後転換価額の違いは、最終的にダウンラウンド後の持分比率(オーナーシップ)にどう反映されるでしょうか。シリーズBの新規発行後、完全希薄化ベースの発行済株式総数(普通株式700,000株+SOプール100,000株+シリーズA転換後株式数+シリーズB300,000株)に占める各株主区分の比率を、方式ごとに計算したものが表5です。比較のため、仮に希薄化防止条項が発動しなかった場合(転換比率1.0倍のまま)の数値も参考として併記します。

株主区分(参考)調整なしフルラチェットブロードベースナローベース
普通株式53.85%43.75%52.55%52.42%
SOプール7.69%6.25%7.51%7.49%
シリーズA15.38%31.25%17.43%17.62%
シリーズB23.08%18.75%22.52%22.47%

表5から読み取れる点は3つあります。第一に、フルラチェット方式ではシリーズAの持分比率が31.25%まで押し上げられ、普通株主の持分比率は53.85%(調整なしの場合)から43.75%まで10ポイント以上下がります。第二に、ブロードベース・ナローベースの2つの加重平均方式は、フルラチェットに比べると普通株主への影響がはるかに小さく、調整なしの場合との差はわずか1〜1.4ポイントにとどまります。第三に、ブロードベースとナローベースを比べると、ナローベースのほうがシリーズAの持分比率がわずかに高く(17.62%対17.43%)、普通株主の持分比率はわずかに低くなります(52.42%対52.55%)。分母(変数A)が小さいナローベースのほうが、NCPがより大きく下方修正され、投資家保護がわずかに強くなるという、表4・図1の関係がそのまま持分比率にも反映されています。

図2:ダウンラウンド後の持分比率の方式別比較(設例) (参考)調整なし フルラチェット ブロードベース ナローベース 普通株式 SOプール シリーズA シリーズB 出所:表5の計算結果を基に大手町プレップ作成(設例)
図:4通りのシナリオにおける、ダウンラウンド後の株主区分別の持分比率。フルラチェットだけが顕著にシリーズAの比率を押し上げている。

自社のキャップテーブルで転換価額調整を検算する

本記事の設例はすべて仮の数値です。実際のダウンラウンドで同じ検算をするには、直前の発行済株式数(ブロードベース/ナローベースそれぞれの範囲)と、新規調達額・発行価格を投資契約書・種類株式の内容から確認し、式3に当てはめる作業が必要になります。

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適用除外(カーブアウト):希薄化防止条項が発動しない発行類型

希薄化防止条項は、新株が発行されるたびに機械的に発動するわけではありません。投資契約や種類株式の内容には、一定の発行類型を調整の対象から除外する適用除外(カーブアウト)規定が置かれるのが一般的です。代表的に除外の対象とされやすい発行類型としては、取締役会承認済みの従業員向け株式報酬制度(ESOP)・ストックオプションプールからの新株予約権発行、合併・買収の対価として発行される株式、社債や新株予約権付社債の転換によって発行される株式、株式分割・株式無償割当のように全株主に比例的に影響する発行などが挙げられます。これらを除外する趣旨は、希薄化防止条項がもともと「投資家の想定より著しく低い評価額で第三者から資金調達された場合」の保護を目的とする条項であり、従業員インセンティブの付与や組織再編の対価としての発行、あるいは全株主に一律に影響する株式分割などは、この趣旨と性質が異なると位置付けられているためです。

どの発行類型を適用除外とするかは会社ごとの投資契約・種類株式の内容の定めによって異なり、一律の基準があるわけではありません。特にESOPプールからの発行を除外する範囲(当初合意した留保株式数の範囲内に限るか、増枠分も含めるかなど)は交渉論点になりやすく、ダウンラウンド局面でストックオプションの追加発行を検討する際には、既存の投資契約上の適用除外規定を事前に確認しておく必要があります。

日本の実務での採用状況

日本の会社法には、米国の転換予約権付優先株式(Convertible Preferred Stock)に相当する制度が条文上そのまま存在するわけではありません。実務上は、優先株式の内容(種類株式の発行要項)の中に「普通株式と引換えにする取得請求権」を規定する形で、経済的に同等の仕組みを作り込みます(会社法第108条第1項第5号、取得請求権付株式に関する規定)。日本貿易振興機構(ジェトロ)サンフランシスコ事務所がTMI総合法律事務所の協力を得てまとめた報告書では、この転換比率の調整方法についてフルラチェット方式・ナローベースの調整方式・ブロードベースの調整方式に加え、普通株式以外の種類株式は含めつつストックオプション等の潜在株式は含めない中間的な「ミドルベース」も国内で見られると説明されています。同報告書は、法律事務所が2022年に実施した国内シリーズA資金調達を対象とした調査を引用し、調整方式の内訳として全体の約60%がブロードベース、約9%がナローベース、約30%がミドルベース、フルラチェットは約1%にとどまったと紹介しています。この数字が示すとおり、日本の実務でも、フルラチェット方式は例外的で、加重平均方式(とりわけブロードベース)が主流という傾向は米国と共通しています。

同報告書はもう一点、日本特有の留意点として、米国のデラウェア州会社法上のC-corporationでは、希薄化防止条項の発動によって優先株式の議決権数が転換後の株式数ベースで増加する定款設計が一般的であるのに対し、日本の株式会社では1株1議決権の原則が維持され、転換価額が調整されても実際に普通株式へ転換されない限り議決権数は増えない点を挙げています。一方で、参加型の優先株式における残余財産分配の参加部分など、経済的な持分比率としては転換比率の調整が反映される設計になっているのが通常とされています。個別の投資契約でどの方式・どの適用除外規定を採用するかは、経済産業省が公表しているスタートアップ投資契約に関するガイドライン等も参考にしながら、契約当事者間で個別に交渉・確認する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. フルラチェット方式と加重平均方式、日本の実務ではどちらが多いですか。
A. 日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書が引用する2022年の国内シリーズA調査によれば、調整方式の内訳は約60%がブロードベース加重平均、約9%がナローベース加重平均、約30%が中間的な「ミドルベース」、フルラチェットは約1%にとどまっています。加重平均方式、特にブロードベースが主流という傾向は米国の実務とも共通しています。

Q. ブロードベースとナローベースは、それぞれ誰にとって有利ですか。
A. 表5で見たとおり、ブロードベースは既存の普通株主(創業者・従業員)にとって有利(持分比率の低下が小さい)、ナローベースは既存投資家(シリーズA優先株主)にとって有利(持分比率の低下が緩和される幅が大きい)になります。両者の差はフルラチェットとの差ほど大きくありませんが、ダウンラウンドが繰り返される局面では累積して効いてきます。

Q. 調整後転換価額(NCP)の計算に使う変数A(発行済株式数)は、いつの時点の数字を使いますか。
A. 式3のAは「新規発行の直前」の株式数を使います。本記事の設例では、シリーズBの発行直前、つまりシリーズA発行後・シリーズB発行前の株式数(ブロードベースなら1,000,000株、ナローベースなら900,000株)を用いています。複数回のダウンラウンドが続く場合は、各回ごとに直前の株式数で再計算する必要があります。

Q. ストックオプションの新規発行にも希薄化防止条項は発動しますか。
A. 一般的には発動しません。取締役会承認済みのストックオプションプールからの発行は、適用除外(カーブアウト)の対象とされるのが実務上の通例です。ただし除外される範囲は投資契約・種類株式の内容の定めによって異なるため、個別の契約書での確認が必要です。

Q. 希薄化防止条項が発動すると、優先株主の議決権も自動的に増えますか。
A. 日本の株式会社では、原則として1株1議決権が維持されるため、転換価額が調整されても、実際に普通株式へ転換しない限り議決権数は増えません。米国デラウェア州のC-corporationで見られる、転換後株式数ベースで議決権をカウントする設計とは異なる点です。

まとめ

希薄化防止条項の転換価額調整は、フルラチェット方式(NCP=ダウンラウンドの発行価格)と加重平均方式(NCP=CP×(A+B)/(A+C))のいずれかで計算され、加重平均方式はさらに分母Aの範囲によってブロードベースとナローベースに分かれます。同一のダウンラウンド設例で検算すると、フルラチェット方式の希薄化幅は加重平均方式の8倍を超え、既存の普通株主・SOプールへの影響が桁違いに大きくなります。ブロードベースとナローベースの差は、フルラチェットとの差に比べれば小さいものの、分母に潜在株式を含めるかどうかで既存株主と投資家のどちらに有利かが変わる点は、投資契約の交渉で押さえておく価値があります。日本の実務では加重平均方式、特にブロードベースが主流とされており、実際の投資契約でどの方式・どの適用除外規定が採用されているかは、種類株式の内容と投資契約書を個別に確認する必要があります。

優先株式・清算優先権タームシート全体の基本はVCタームシート完全ガイドで、ラウンドごとの希薄化の考え方はキャップテーブルと希薄化で扱っています。ダウンラウンドの実施プロセス自体(資金調達の進め方・投資家との交渉)は本シリーズの別記事で扱うため、本稿では転換価額調整の計算メカニズムに絞って解説しました。

出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。本記事の記述は2026年8月時点で確認できた公開情報に基づきます。