この記事で分かること

  • DPI・TVPI・RVPIそれぞれの定義と、TVPI=DPI+RVPIという関係
  • グロス(ファンド全体)とネット(LP手取りベース)の違い
  • 整数設例で3指標を手計算し、Jカーブとの関係を確認する
  • Excelでのファンド実績管理シートへの実装方法

30秒で分かる定義

DPI(Distributions to Paid-In Capital、分配倍率、読み方:ディーピーアイ)とは、LP(出資者)が実際に受け取った累積分配額を、LPが払い込んだ累積出資額(Paid-In Capital)で割った指標です。RVPI(Residual Value to Paid-In、残余価値倍率)は、まだ分配されていない保有ポジションの残存評価額を同じ払込資本で割ったもの、TVPI(Total Value to Paid-In、トータルバリュー倍率)はDPIとRVPIの合計で、「投資した1円が現時点で現金化された分と評価額を合わせていくらになっているか」を示します。3つともGP・LP間のファンド実績評価で使われる基本指標です。

なぜ実務で重要なのか

年金基金・金融機関などのLPは、四半期ごとにキャピタルコール・分配の明細とともにこれらの指標を受け取り、ファンドの実績評価や次期ファンドへの再出資判断に使います。3指標を分けて見る理由は、DPIが「確定した実績(現金化済み)」を示すのに対し、RVPIは「まだ評価額に留まっている、実現するかどうか不確実な部分」を示すためです。TVPIだけを見るとこの違いが埋没してしまいます。

計算式

DPI = 累積分配額 ÷ 累積払込資本
RVPI = 残存評価額(NAV) ÷ 累積払込資本
TVPI = DPI + RVPI =(累積分配額+残存評価額)÷ 累積払込資本

実務では「グロス」(ファンド全体の運用成績、キャリーや管理報酬控除前)と「ネット」(LPが実際に手にする、控除後のベース)の2種類が併記されることがあります。同じファンドでもグロスTVPIとネットTVPIには差があるため、比較する際はどちらのベースかを必ず確認する必要があります。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。あるLPがファンドに累積で100百万円を払い込んだとします。単位は百万円。

時点累積分配額残存評価額(NAV)DPIRVPITVPI
3年目5800.05x0.80x0.85x
5年目40900.40x0.90x1.30x

5年目のDPI=40÷100=0.40x、RVPI=90÷100=0.90x、TVPI=0.40+0.90=1.30xと一致します。3年目から5年目にかけて分配額が5から40へ増える一方、NAVも80から90へ伸びており、Exitが進みながら残存ポジションも成長していることが読み取れます。DPIが1.0xを超えれば、LPは払込資本を全額現金で回収した状態になります。

ファンドキャッシュフローへの影響

DPI・RVPI・TVPIはいずれもLP視点のキャッシュフロー(払込=アウトフロー、分配=インフロー)と評価額を対比した指標です。ファンド設立初期はキャピタルコールが先行し、管理報酬も差し引かれるためTVPIは1.0x未満で推移するのが通常で、これをJカーブと呼びます。運用が進みExitが積み上がるとDPIが伸び、TVPIも1.0xを超えていきます。同じTVPIでもDPIの比率が高いファンドほど「実現済みの利益」の割合が高く、評価額の変動リスクが小さいと解釈できます。

財務モデル・Excelでの使い方

LPのポートフォリオ管理シートでは、各ファンドについて累積コール額・累積分配額・時点NAVを別行に持たせ、DPI・RVPI・TVPIを計算式で自動算出するのが基本設計です。

  • 累積分配額は分配明細(キャピタルコール通知と対になるディストリビューション通知)から都度積み上げる
  • NAVはGPが四半期ごとに提示する評価額を使用するため、監査済みか未監査かをコメント欄に記録しておく
  • TVPIは時間の経過を考慮しない指標のため、IRRを並べて表示し、両方で実績を評価できるようにする

この用語をExcelで「組める」状態にする

ファンドごとの払込・分配・NAVの履歴からDPI・RVPI・TVPIを自動計算し、IRRと並べて実績を管理できるシートを設計できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「TVPIが高ければ良いファンド」→ 正しくは、TVPIは運用年数を考慮しない指標です。2倍のTVPIでも10年かけて達成したファンドと、5年で達成したファンドでは、資本効率がまったく異なります。必ずIRRと併せて評価します。

誤解2:「DPIが低い=運用が悪い」→ 正しくは、運用開始から数年はJカーブの影響でDPIが低いのが通常です。vintage yearが近い他ファンドと比較して初めて意味を持ちます。

実務家はさらに、NAVの評価方法とグロス/ネット表記の別を必ず確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本の年金基金・金融機関がPEファンド・VCファンドにLPとして出資する場合、四半期レポートでDPI・TVPI・RVPIの開示を受けるのが一般的です。日本語では「分配倍率」「残余価値倍率」「トータルバリュー倍率」といった訳語が使われることもありますが、実務上は英語の略称がそのまま使われる場面が大半です。国内の機関投資家によるオルタナティブ資産(PE・VC等)への投資動向は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が定期的に情報発信しています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:DPI0.3x、TVPI1.5xのファンドをどう評価しますか。
「まだ実現済みの分配が少なく、実績の多くが未実現の評価額(RVPI=1.2x相当)に依存している状態です。vintage yearを踏まえてJカーブのどの位置にあるかを確認し、NAVの評価根拠(監査済みかGP自己評価か)を確認した上で判断します。TVPIだけでは資本効率が見えないため、IRRも合わせて確認します。」

深掘りでは「グロスとネットの差が大きい場合に何を疑うか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. TVPIとMOICは同じ指標ですか?
A. ほぼ同じ概念を指します。MOIC(Multiple on Invested Capital)はファンドや案件単位の投資倍率全般を指す語として使われ、TVPIはLP視点で払込資本を分母に置いた表現として、LPレポートで定着した呼び方です。

Q. DPIが1.0xを超えたら投資は終わりですか?
A. いいえ、DPI1.0xは「払込資本を全額現金で回収した」ことを意味するだけで、ファンドの残存ポジション(RVPI)がまだ利益を生む余地があります。ファンドの清算はDPIとRVPIが完全に統合される(NAVがゼロになる)タイミングです。

出典・参考(2026-07-21確認)

  • 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA) https://jvca.jp/
  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)オルタナティブ投資関連情報 https://www.gpif.go.jp/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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