「製造業に強い」「医療に強い」——M&A支援会社の得意業界は各社が自由に名乗れるため、うのみにはできません。本記事では大手町プレップFA・M&A仲介会社データベース掲載327社について、公式サイトで得意分野として明示している業種(主張)と公開成約実績から確認できる業種(実績)を区別して集計し、どの会社がどの業界に強いのかを検証可能な形で比較します。

業種別の対応会社数——主張と実績は一致しない

共通の業種分類で327社を集計した結果が図1です。「主張」は公式サイトのサービスページ等で得意業種として明示している会社数、「実績」は公式サイト掲載の成約・支援事例から当該業種の案件が確認できた会社数です。

製造
85社 主張27・実績70
医療
72社 主張45・実績44
小売
66社 主張19・実績52
建設
62社 主張22・実績51
IT・SaaS
57社 主張26・実績46
介護
46社 主張24・実績30
物流
42社 主張16・実績30
不動産
37社 主張16・実績27
飲食
37社 主張15・実績29
調剤薬局
22社 主張15・実績16
人材
20社 主張10・実績12
消費財
19社 主張4・実績17
教育
18社 主張11・実績11
エネルギー
13社 主張3・実績11
金融
12社 主張4・実績8
士業・専門サービス
9社 主張4・実績6

図1: 業種別の対応会社数(主張または実績が確認できた会社・重複あり)。「主張」=公式サイトで得意業種として明示、「実績」=公開成約事例で確認。

興味深いのは、主張と実績のギャップです。「得意」と主張する会社が最も多いのは医療(45社)で、介護(24社)・調剤薬局(15社)を合わせるとヘルスケア領域の主張が突出します。診療報酬制度や許認可など業界固有の論点が多く、専門性を打ち出しやすい領域だからです。一方、公開実績ベースで最も多いのは製造(70社)で、小売(52社)・建設(51社)が続きます。日本の中小企業の産業構造そのままに、実際の案件の中心は製造・建設・小売といった伝統的業種にあることが分かります。

会社×業種ヒートマップ——大手・準大手の専門領域

専従者数上位の会社(業種情報が確認できた25社)について、会社×業種のマトリクスで得意領域を可視化しました。濃紺は「主張・実績の両方」、中間色は「主張のみ」、淡色は「実績のみ」です。

会社(専従者数順)製造IT・SaaS医療介護建設不動産小売飲食物流人材調剤薬局金融
日本M&Aセンター実績実績実績
M&A総合研究所主張・実績主張・実績主張主張主張主張主張主張主張主張主張主張
M&Aキャピタルパートナーズ実績実績実績実績実績実績
M&Aロイヤルアドバイザリー実績実績実績実績
山田コンサルティンググループ実績
ブティックス主張・実績主張・実績主張・実績主張・実績主張
CBヘルスケア主張・実績主張・実績主張・実績
フロンティア・マネジメント主張・実績主張主張・実績
AGSコンサルティング主張・実績実績実績
HCフィナンシャル・アドバイザー実績実績
ACN経営研究所
プレックス実績
船井総研あがたFAS主張・実績主張主張・実績主張主張主張主張・実績主張・実績主張
辻󠄀・本郷実績実績実績実績実績実績
レコフ実績実績実績実績実績実績
インテグループ実績主張・実績主張主張・実績主張・実績主張主張・実績主張・実績主張主張
経営承継支援主張主張主張主張主張主張主張主張主張主張・実績
名南M&A実績実績
オンデック実績実績実績実績実績実績実績実績
信金キャピタル実績実績実績実績実績実績
エス・エム・エス主張・実績主張・実績主張主張
FFGSuccession実績実績実績実績実績
M&A承継機構主張主張主張主張
M&Aベストパートナーズ主張・実績主張主張・実績主張主張・実績実績主張実績実績
ジャパンM&Aソリューション実績実績実績
公式サイトの明示+公開実績の両方公式サイトで得意分野と明示公開成約実績で確認確認できず

図2: 専従者数上位25社(業種データあり)×主要12業種。表は横にスクロールできます。

大手仲介は幅広い業種に実績が分布する「総合型」である一方、CBヘルスケアのようにヘルスケア領域へ特化するプレイヤーや、特定業種で主張と実績が一致する会社も確認できます。主張と実績の両方が揃う業種(濃紺)は、その会社の専門性の裏付けが最も強い領域と読めます。

業種別の主要プレイヤー

主要業種ごとに、主張または実績が確認できた会社を専従者数順に示します。「根拠」列は主張/実績の別です。各業種のより詳しい会社リストは、データベース本体の業種フィルタで絞り込めます。

製造業M&Aに対応する主要会社

IT・SaaS領域に対応する主要会社

会社専従者数根拠
1M&A総合研究所329人主張・実績
2M&Aキャピタルパートナーズ203人実績
3M&Aロイヤルアドバイザリー152人実績
4ブティックス91人主張・実績
5AGSコンサルティング52人実績

医療M&Aに対応する主要会社

会社専従者数根拠
1M&A総合研究所329人主張
2M&Aキャピタルパートナーズ203人実績
3ブティックス91人主張・実績
4CBヘルスケア67人主張・実績
5フロンティア・マネジメント54人主張

介護M&Aに対応する主要会社

会社専従者数根拠
1M&A総合研究所329人主張
2M&Aロイヤルアドバイザリー152人実績
3ブティックス91人主張・実績
4CBヘルスケア67人主張・実績
5船井総研あがたFAS48人主張・実績

建設業M&Aに対応する主要会社

物流M&Aに対応する主要会社

会社専従者数根拠
1M&A総合研究所329人主張
2船井総研あがたFAS48人主張・実績
3レコフ44人実績
4辻󠄀・本郷44人実績
5インテグループ43人主張・実績

※ 表は「当該業種に対応することが公開情報から確認できた会社」を専従者数順に並べたものであり、当該業種での成約件数の多寡を順位付けするものではありません。

「業種特化型」という戦略

業種の軸で見ると、日本のM&A支援会社は2つの戦略に分かれます。ひとつは大手仲介に代表される総合型で、全業種の案件を扱い、規模の経済(案件データベース・買い手ネットワーク)で勝負します。もうひとつは業種特化型で、調剤薬局(主張15社)や医療・介護のように、許認可・業界慣行・バリュエーション実務(例えば調剤薬局の技術料ベースの評価等)に固有の知見が要る領域で専門性を打ち出します。売り手・買い手の立場では、自社の業種で「主張と実績の両方」が確認できる会社を候補に含めることが、ミスマッチを避ける実務的な選定基準になります。

集計方法・定義

業種分類
大手町プレップの共通taxonomy(製造/IT・SaaS/医療/介護/調剤薬局/建設/不動産/小売/飲食/物流/人材/教育/エネルギー/消費財/金融/士業・専門サービス/その他)。
主張(claimed)
各社公式サイトのサービス・得意分野ページ等で当該業種への対応・専門性が明示されている場合。出典URLは各社個別ページに記載。
実績(observed)
各社公式サイトに掲載された成約・支援事例のうち、大手町プレップが業種を分類できた案件がある場合。事例の掲載方針は会社により異なるため、実績なし=経験なしを意味しない。
「強い」の表現
本記事では、主張・実績のいずれかが公開情報で確認できる場合に「対応」とし、両方が確認できる場合に専門性の裏付けが強いと表現。成約件数の全数比較は公開情報では不可能なため行っていない。

本記事は中小企業庁「M&A支援機関登録制度」および各社の公式サイト等の公開情報をもとに、大手町プレップが独自に集計・分類したものです。公開情報で確認できない項目は推測で補完せず「未確認」として扱っています。

よくある質問

製造業のM&Aに強い会社はどこですか?

公開情報で製造業への対応が確認でき、専従者数が多いのは日本M&Aセンター、M&A総合研究所、M&Aキャピタルパートナーズなどです。製造業は公開実績ベースで最も案件が多い業種(70社で実績確認)で、大手総合型・地域プレイヤーとも対応範囲に含めていることが多い領域です。

医療・介護のM&Aに強い会社はどこですか?

医療ではM&A総合研究所、M&Aキャピタルパートナーズ、ブティックスなど、ヘルスケア特化型を含む72社で対応が確認できます。医療法人の持分・許認可など固有論点が多く、業種特化型の存在感が最も強い領域です。

IT・SaaS企業の売却に強い会社はどこですか?

IT・SaaSではM&A総合研究所、M&Aキャピタルパートナーズ、M&Aロイヤルアドバイザリーなどで対応が確認できます。IT・SaaSは事業承継よりも成長戦略・イグジット目的の売却が相対的に多く、バリュエーションもEBITDA倍率だけでなくARR倍率等が使われる点が特徴です。

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