日本のM&A支援市場の中核は、後継者不在に悩む中小企業の事業承継M&Aです。大手町プレップFA・M&A仲介会社データベース掲載327社のうち、公式サイトで事業承継支援を明示する会社は268社(82%)。本記事では、事業承継M&Aが「誰を経由して」「誰に売る」取引なのかという構造から、対応会社の比較、PEファンドとの接点までをデータで解説します。
事業承継M&Aの構造——誰を経由して、誰に売るのか
事業承継M&Aは、次の三層構造で動きます。
Seller売り手企業(後継者不在の中小企業)
親族内・社内に後継者がいない場合、第三者への承継(M&A)が選択肢になります。株価算定・磨き上げ・情報整理から始まります。
AdvisorFA・M&A仲介会社
売り手の相談を受け、企業価値評価・買い手候補の探索・条件交渉・デューデリジェンス対応を支援します。中小企業の事業承継では売り手・買い手双方と契約する仲介方式が主流です。
Buyer買い手——事業会社 または PEファンド
同業・周辺業種の事業会社(ストラテジック・バイヤー)が伝統的な買い手ですが、近年は事業承継バイアウトを手がけるPEファンドの存在感が増しています。経営は現経営陣・後継人材に委ね、資本と経営支援を提供する形です。
図1: 事業承継M&Aの基本構造。案件の全体像はM&Aエコシステム解説で詳しく図解しています。
各社は事業承継の「何を」支援すると言っているのか
事業承継支援を明示する268社の公式サイト記載を分類すると、支援内容の力点が見えてきます。
図2: 事業承継支援の内容タグ別会社数(各社公式サイトの記載を大手町プレップが分類・複数該当あり)
最多は「後継者不在」への対応(140社)で、「第三者承継」(124社)が続きます。注目は「親族内承継」を掲げる会社も32社ある点です。税理士法人系を中心に、M&A(第三者承継)ありきではなく親族内・社内承継を含めた選択肢の比較から入るプレイヤーが一定数存在します。売り手にとっては、最初の相談相手が「M&A専業」か「承継全般の相談窓口」かで提案の幅が変わることを意味します。
事業承継M&Aの主要プレイヤー
事業承継支援を明示する会社のうち、M&A専従者数の上位10社は次のとおりです。
| 会社 | 専従者数 | 支援形態 | 本社 | PE関連 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本M&Aセンター | 649人 | FA・仲介両方 | 東京都 | PE対応 | ||
| 2 | M&A総合研究所 | 329人 | 仲介のみ | 東京都 | — | ||
| 3 | M&Aキャピタルパートナーズ | 203人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — | ||
| 4 | M&Aロイヤルアドバイザリー | 152人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — | ||
| 5 | fundbook | 139人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — | ||
| 6 | 山田コンサルティンググループ | 100人 | FA・仲介両方 | 東京都 | PE対応 | ||
| 7 | ブティックス | 91人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — | ||
| 8 | CBヘルスケア | 67人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — | ||
| 9 | フロンティア・マネジメント | 54人 | FA・仲介両方 | 東京都 | PE対応 | ||
| 10 | AGSコンサルティング | 52人 | FA・仲介両方 | 東京都 | — |
表1: 事業承継支援を明示する会社・専従者数上位10社。「PE対応」はPE関連業務の明示も確認できた会社。
大手仲介が上位を占める一方、社名や事業目的そのものを事業承継に特化させた事業承継支援系の会社も26社あります。また税理士法人系(59社)は、顧問先の相続・株価対策から承継相談に入るという独自の動線を持ちます。規模だけでなく入口(相談経路)の違いが、この領域のプレイヤー分類の本質です。
PEファンドという買い手——事業承継とPEの接点
事業承継支援を明示する会社のうち、PEファンド関連業務(ファンドへの売却支援・MBO支援等)も明示するのは51社。各社の公開実績1,041件のうちPEファンドが買い手等として関与した案件は66件確認できました。PE関連業務の内訳は次のとおりです。
図3: PE関連業務の内容タグ別会社数(PE関連を明示する60社の公式サイト記載を分類)
「PEファンドへの売却」支援が最多で、後継者不在企業をPEに承継し、経営体制を維持したまま成長投資を受ける——という選択肢が仲介・FA側のメニューとして定着しつつあることが分かります。買い手側となるPEファンドはPEファンド一覧・業界マップに492社を収録しており、事業承継・スモールキャップ戦略のファンドも戦略タグで確認できます。PEが買収後にどう価値を高めてExitするのかはM&Aエコシステム解説で扱います。
事業承継でFA・仲介を選ぶときの論点
- 手数料の下限——譲渡価格が数億円以下の場合、レーマン方式の料率よりも最低成功報酬額(FA契約と成功報酬の仕組み)が実質負担を決めます。データベースの料金フィルタで最低成功報酬レンジを比較できます。
- 買い手ネットワーク——事業会社中心か、PEファンドとの接点があるか。51社はPE案件対応を明示しています。
- 地域——地元の金融機関・士業との連携か、全国ネットワークか。地域別分析を参照してください。
- 業種の知見——医療・調剤・建設など許認可業種は、業種別の対応状況を確認する価値があります。
集計方法・定義
- 事業承継支援の判定
- 各社公式サイトで事業承継(後継者不在・第三者承継等)への支援が明示的に記載されている場合のみ「対応」とカウント。記載が確認できない59社は「未確認」であり、非対応を意味しない。
- 支援内容タグ
- 公式サイトの記載文言を大手町プレップが分類(後継者不在/第三者承継/親族外承継/親族内承継等・複数該当あり)。
- PE関連の判定
- PEファンドへの売却支援・MBO支援・ファンド連携等の明示的記載が確認できた場合のみカウント。
- PE関与の公開実績
- 各社公式サイト掲載の成約・支援事例のうち、買い手等としてPEファンドの関与が確認できた件数。
本記事は中小企業庁「M&A支援機関登録制度」および各社の公式サイト等の公開情報をもとに、大手町プレップが独自に集計・分類したものです。公開情報で確認できない項目は推測で補完せず「未確認」として扱っています。
よくある質問
事業承継M&Aとは何ですか?
後継者がいない企業のオーナーが、会社(株式)や事業を第三者に譲渡して経営を承継する取引です。買い手は同業・周辺の事業会社が中心ですが、近年は経営陣を維持したまま資本を引き受けるPEファンド(事業承継バイアウト)も有力な選択肢になっています。
事業承継M&Aに対応する会社は何社ありますか?
大手町プレップ掲載327社のうち、公式サイトで事業承継支援を明示する会社は268社(82%)です(2026年8月15日時点)。日本のM&A支援業の大半が事業承継を主戦場にしています。
PEファンドに会社を売るのは大企業だけの話ではないのですか?
いいえ。中堅・中小企業の事業承継を投資戦略とするPEファンド(スモールキャップ・事業承継ファンド)が多数活動しており、FA・仲介側でも51社が事業承継とPE関連業務の両方を明示しています。ファンド側の顔ぶれはPEファンドDBで確認できます。