日本には、M&Aの売り手・買い手を支援する専門会社——FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とM&A仲介会社——がどれだけ存在し、どのような組織規模・地域分布・専門性で活動しているのでしょうか。本記事は、中小企業庁「M&A支援機関登録制度」と各社公式サイトの公開情報をもとに大手町プレップが独自構築したFA・M&A仲介会社データベース(掲載327社)を集計し、日本のM&A支援市場の構造を2026年の最新データで分析するものです。

日本M&A支援市場 2026 — Key Statistics

掲載企業数327専従者5名以上
M&A専従者総数5,273掲載企業の合計
1社当たり平均専従者数16.1中央値 8人
FA・仲介両方対応28687.5%
FA専業27登録制度ベース
仲介専業14登録制度ベース
東京都所在63%206社
大阪府所在10.4%34社
事業承継支援を明示26882%
クロスボーダー対応60公式サイトで確認
PE関連業務を明示60公式サイトで確認
公開成約・支援実績1,041各社公式サイト掲載分

集計対象は大手町プレップ掲載327社(M&A専従者5名以上)。最終更新 2026年8月15日。

日本にM&A支援会社は何社あるのか

日本のM&A支援会社の全体像を掴むうえで最も信頼できる一次情報は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」です。大手町プレップでは同制度の登録機関のうち、法人としてFA・仲介業務を行いM&A支援業務の専従者数が確認できる会社を調査対象としており、専従者3名以上の会社は587社、そのM&A専従者の合計は6,143人にのぼります(預金取扱金融機関本体は対象外)。このうち専従者5名以上の327社(専従者計5,273人)を個社ページ付きでデータベースに掲載し、本記事の分析対象としています。

まず押さえておきたいのは、この市場が「ごく少数の大手と、非常に多くの小規模プレイヤー」で構成されているという点です。専従者数の分布を見ると、市場の中心的な組織規模がどこにあるかが一目で分かります。

専従者3〜4人の会社が260社、5〜9人が200社と、10人未満の小規模組織が全体の約78%を占める一方、100人以上の大手はわずか6社です。テレビCMや新聞で目にする「M&A仲介大手」は、実はこの市場の極めて例外的な存在であり、市場の実像は少人数のブティック・士業系事務所の集合体に近いといえます。組織規模の詳細はM&A支援業務専従者数ランキングで分析しています。

FA型か、仲介型か——日本市場の構成

M&A支援会社は、売り手・買い手の一方とのみ契約し依頼者の利益最大化を図るFA(ファイナンシャル・アドバイザー)型と、売り手・買い手の双方と契約しマッチングと成約を支援する仲介型に大別されます。中小企業庁の登録情報で支援形態を集計すると、次のようになります。

FA・仲介両方
286社 87.5%
FAのみ
27社 8.3%
仲介のみ
14社 4.3%

図2: 支援形態別の会社数(掲載327社・中小企業庁M&A支援機関登録制度の登録情報ベース)

登録上は約87%の会社が「FA・仲介両方」に対応するとしており、米国のように「セルサイドFA」「バイサイドFA」と役割が固定される市場とは対照的に、日本では案件に応じてFAと仲介を使い分ける会社が圧倒的多数です。これは日本のM&A市場の中核が中小企業の事業承継案件にあり、売り手・買い手双方をマッチングする仲介モデルがそこで機能してきたことの裏返しでもあります。一方、各社公式サイトの記載を精査したベースでは、仲介のみを明示する会社が51社、FAのみを明示する会社が37社存在し、利益相反への考え方や報酬体系(レーマン方式等)にも各社の立場が表れます。FAと仲介の違い・各社の立ち位置はポジショニングマップで詳しく整理しています。

プレイヤーの出自——仲介専業から税理士法人まで

「M&A支援会社」と一口にいっても、その出自は多様です。掲載327社を会社分類別に集計すると、意外なプレイヤーの厚みが見えてきます。

税理士法人系
59社
その他M&A支援会社
51社
M&A仲介・FA複合
39社
FAS・アドバイザリー
37社
コンサルティング会社系
34社
事業承継支援系
26社
独立系M&A仲介
22社
金融グループ系M&A専業会社
21社
独立系FA
13社
M&Aプラットフォーム・マッチング
12社
会計士法人系
6社
法律事務所系
4社
証券会社系
3社

図3: 会社分類別の掲載企業数(大手町プレップによる分類)

最も多いのは税理士法人系(59社)です。中小企業の事業承継M&Aでは、顧問税理士が売り手企業の最初の相談相手になることが多く、税理士法人がM&A支援部門を内製化する動きが広がっています。これにその他M&A支援会社M&A仲介・FA複合が続き、FAS・アドバイザリー、コンサルティング会社系、金融グループ系と続きます。M&A支援業は単一の業界ではなく、士業・コンサル・金融の周辺領域が事業承継需要に向かって収斂してきた市場だと分かります。

大手はどこか——上位企業と上場プレイヤー

M&A専従者数の上位5社は次のとおりです(ランキング全体は専従者数ランキング参照)。

順位会社M&A専従者数支援形態上場区分分類
1日本M&Aセンター649人FA・仲介両方上場グループM&A仲介・FA複合
2M&A総合研究所329人仲介のみ上場グループ独立系M&A仲介
3M&Aキャピタルパートナーズ203人FA・仲介両方上場M&A仲介・FA複合
4M&Aロイヤルアドバイザリー152人FA・仲介両方非上場独立系M&A仲介
5fundbook139人FA・仲介両方上場グループM&A仲介・FA複合

表1: M&A専従者数 上位5社(中小企業庁登録情報・2026年8月15日時点)

また、本体または親会社・グループが上場しているM&A支援会社は29社あり、この29社だけで専従者2,000人——市場全体の約38%を抱えています。1社当たり平均は上場グループ69人に対し非上場11人と、資本市場から成長資金を得た上場プレイヤーへの人員集中が鮮明です。M&A仲介は上場企業が生まれるほどの収益性を持つ一方、その大手ですら市場全体の会社数から見れば1割未満に過ぎません。

地域分布——東京一極集中の実態

本社所在地ベースでは、掲載327社のうち206社(63%)が東京都に集中しています。大阪府34社(10.4%)、愛知県14社と続き、三大都市圏以外の道県は1〜7社にとどまります。

北海道
7社 専従者計 54人
東北
5社 専従者計 37人
関東
220社 専従者計 4,280人
中部
25社 専従者計 240人
近畿
44社 専従者計 396人
中国
6社 専従者計 42人
四国
1社 専従者計 10人
九州・沖縄
19社 専従者計 214人

図4: 地域別の会社数とM&A専従者数(本社所在地ベース)

さらに注目すべきは、人員ベースで見ると集中度が一段と高まる点です。東京都所在206社の専従者合計は4,148人と、市場全体の専従者の約79%を占めます。後継者不在の中小企業は全国に分布しているにもかかわらず、支援側の人材は東京に偏在している——この構造は日本のM&A市場を理解する重要な論点です。地域別ランキング東京集中度の分析で詳しく扱います。

何を支援しているのか——事業承継・PE・クロスボーダー

各社が公式サイトで明示する支援領域を集計すると、日本のM&A支援市場の性格がはっきりします。

事業承継支援を明示
268社 82%
PE関連業務を明示
60社 18.3%
クロスボーダー対応を明示
60社 18.3%

図5: 支援領域の明示状況(各社公式サイトの記載を大手町プレップが確認できた会社数)

事業承継支援を明示する会社は268社(82%)に達し、日本のM&A支援業が実質的に「事業承継産業」であることを示しています。一方、PEファンドとの連携・売却支援を明示する会社は60社、クロスボーダー対応は60社と、専門性で差別化するプレイヤーは限られます。各社の公開成約・支援実績1,041件のうち、PEファンドが関与した案件は66件、クロスボーダー案件は52件確認できました。事業承継M&Aに強い会社の分析、およびPE・FA・仲介から見たM&Aエコシステムもあわせてご覧ください。

手数料体系の傾向

掲載327社のうち、着手金・中間金を取らない完全成功報酬型を明示する会社は77社確認できました。成功報酬はレーマン方式(譲渡価格等に応じた逓減料率)が事実上の業界標準ですが、料率テーブルの算定基準(譲渡価格ベースか移動総資産ベースか)や最低成功報酬額の設定は会社によって大きく異なり、同じ「5%〜」でも実際の手数料額には差が生じます。FA・M&A仲介会社データベースでは、料金体系が確認できた会社について譲渡価格1億・5億・10億・30億円の概算手数料モデルを算出し、料金での絞り込み・並べ替えができます。

集計方法・定義

調査対象
中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録機関のうち、法人としてFA・M&A仲介業務を行う会社。預金取扱金融機関本体・個人事業主は対象外。
掲載企業(327社)
M&A支援業務専従者数5名以上の会社。個社ページ・出典付きでデータベースに掲載。
M&A専従者数
中小企業庁登録制度に登録された「M&A支援業務専従者数」。総従業員数とは異なる。
FA/仲介の分類
登録制度の登録情報(支援形態)を基本とし、各社公式サイトの記載(事業内容・契約形態)を別途確認。両者が異なる場合は本文中で区別して表記。
本社所在地
登録制度および各社会社概要ページ記載の本店所在地。支店・拠点は含まない。
事業承継・PE・クロスボーダー対応
各社公式サイトで支援内容として明示的な記載が確認できた場合のみカウント。記載が確認できない場合は「未確認」とし、非対応とはみなしていない。
公開成約・支援実績
各社公式サイトに掲載された成約事例・支援事例のうち大手町プレップが個別に確認できた件数。実際の成約件数の全体を示すものではない。

本記事は中小企業庁「M&A支援機関登録制度」および各社の公式サイト等の公開情報をもとに、大手町プレップが独自に集計・分類したものです。公開情報で確認できない項目は推測で補完せず「未確認」として扱っています。

よくある質問

日本にM&A仲介会社・FAは何社ありますか?

中小企業庁のM&A支援機関登録制度をベースにした大手町プレップの調査では、法人としてFA・仲介業務を行いM&A専従者3名以上の会社が587社(専従者計6,143人)、うち専従者5名以上は327社です(2026年8月15日時点)。登録制度全体には個人・士業事務所等も含まれるため、登録機関の総数はさらに多くなります。

日本最大のM&A仲介会社はどこですか?

M&A支援業務専従者数では日本M&Aセンター(649人)が最大で、M&A総合研究所(329人)、M&Aキャピタルパートナーズ(203人)が続きます。

FAとM&A仲介の違いは何ですか?

FAは売り手または買い手の一方とのみ契約し、依頼者の利益最大化のために助言する立場です。仲介は売り手・買い手の双方と契約し、マッチングと成約を支援します。仲介は双方から報酬を受け取るため利益相反の論点があり、大型案件・上場会社案件ではFA方式が原則です。詳細はFAとM&A仲介のポジショニングマップで解説しています。

このデータの出典は何ですか?

中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の登録情報と、各社公式サイト(会社概要・料金・実績ページ等)の公開情報です。大手町プレップが個社ごとに一次情報を確認して集計しており、確認できない項目は推測せず未確認として扱っています。個社の出典はデータベースの各社ページに記載しています。

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