M&A支援会社を比較する際に最初に押さえるべき軸は2つあります。FA型か仲介型か(契約構造の軸)と、どの案件規模を主戦場にしているか(マーケットの軸)です。本記事ではまずFAと仲介の違いを整理したうえで、大手町プレップFA・M&A仲介会社データベースの公開情報にもとづき、主要各社のポジショニングをマップ形式で可視化します。

FAとM&A仲介の違い——契約構造がすべてを決める

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)M&A仲介
契約相手売り手または買い手の一方のみ売り手・買い手の双方
ミッション依頼者の利益最大化(価格・条件の追求)両者の合意形成・成約の実現
報酬依頼者の一方から受領双方から受領(両手)
利益相反構造上生じにくい構造上内在(中小企業庁の指針で開示等が求められる)
典型案件大型案件・上場会社関連・クロスボーダー・入札(オークション)中小企業の事業承継・相対取引

表1: FAとM&A仲介の基本的な違い。<a href="https://otemachiprep.com/glossary/buy-side-sell-side/">セルサイド・バイサイド</a>や<a href="https://otemachiprep.com/glossary/engagement-letter/">FA契約と成功報酬</a>の詳細は用語集を参照。

FAは依頼者の代理人として価格・条件を最大限追求するのに対し、仲介は両者の間に立って着地点を探ります。上場会社の売却やTOBでは取締役の善管注意義務の観点からFA方式が原則ですが、中小企業の事業承継では「早く・確実に相手を見つける」ことが優先されやすく、双方の情報を持つ仲介方式が広く使われてきました。どちらが優れているかではなく、案件の性質によって適合する方式が異なる、というのが実務的な理解です。仕事内容・キャリアの観点からの違いはM&A仲介・FAS・IBD・PEの比較記事で解説しています。

日本ではFA専業・仲介専業は少数派

各社の公式サイト記載を精査すると、掲載327社のうちFA・仲介の対応方針が明確に確認できたのは215社で、内訳はFA・仲介両対応127社、仲介のみ51社、FAのみ37社でした(残る112社はサイト上で契約形態を明示していません)。中小企業庁の登録情報ベースでは87%が「両方対応」を掲げており、日本市場では案件に応じてFA・仲介を使い分ける両対応が標準です。だからこそ、個別の案件で「今回はどちらの立場で受けるのか」を確認することが、売り手・買い手双方にとって重要になります。

ポジショニングマップ——支援形態×案件規模

公式サイトで対象とする案件規模(中小企業向け・ミドルマーケット・大型案件等)と支援形態の両方が確認できた会社について、2軸で整理したのが図1です。これは大手町プレップによる参考分類であり、各社の公式サイト記載のみを根拠にしています(記載がない規模帯の案件を扱わないという意味ではありません)。

図1: FA・M&A仲介会社のポジショニングマップ(大手町プレップによる参考分類・37社)。縦軸=公式サイトで明示された対象案件規模、横軸=公式サイトで確認できた支援形態。専従者100人以上は色付き。会社名から個別ページに移動できます。

マップからは、「中小企業×両対応」が日本市場の最も厚い密集地帯であることが分かります。一方、左上(FA×大型案件)に位置するのは投資銀行・大手FAS・独立系FAの領域で、本データベースの掲載対象(中小企業庁登録制度ベース)では該当が少なくなります。つまり日本のM&A市場は、大型案件を担う投資銀行・FAS群と、事業承継を担う仲介・両対応群という二層構造であり、その間のミドルマーケットを両者が取り合う構図です。

マップを使うときの注意

  • 本マップは公式サイトの明示的な記載のみを根拠にした参考分類です。対象案件規模を明示していない会社はマップに含まれません(掲載327社中、マップ収録は専従者数上位のうち規模・形態の両方が確認できた37社)。
  • 「両対応」の会社が実際にどちらの形態を取るかは案件ごとに異なります。契約前に必ず、当該案件での立場(FAか仲介か)と手数料の受領先(片手か両手か)を確認してください。
  • 案件規模の区分(スモール/中小/ミドル/大型)の定義は会社により幅があります。金額基準は各社個別ページの記載を参照してください。

集計方法・定義

支援形態(横軸)
各社公式サイトの事業内容・契約形態の記載から判定(FAのみ/FA・仲介両方/仲介のみ)。確認できない場合は中小企業庁登録制度の登録情報を使用。
案件規模(縦軸)
各社公式サイトで対象として明示された案件規模(スモール/中小企業/ミドルマーケット/大型案件等)。明示のない会社はマップから除外。
参考分類
本マップは大手町プレップによる分類であり、各社の公式な自己定義ではない。分類根拠(出典URL)は各社個別ページに記載。

本記事は中小企業庁「M&A支援機関登録制度」および各社の公式サイト等の公開情報をもとに、大手町プレップが独自に集計・分類したものです。公開情報で確認できない項目は推測で補完せず「未確認」として扱っています。

よくある質問

FAと仲介はどちらに依頼すべきですか?

案件の性質によります。価格の最大化を最優先する大型案件・複数候補の入札が想定できる案件はFA方式、後継者不在で相手探しから始める中小企業の事業承継は仲介方式が使われることが多い、というのが市場の実態です。仲介方式の場合は利益相反が構造上内在するため、手数料の受領先と交渉上の立場を契約前に確認することが重要です。

FA専業の会社は日本に何社ありますか?

大手町プレップ掲載327社のうち、中小企業庁登録制度でFA専業として登録しているのは27社、公式サイトでFAのみと明示しているのは37社です。なお、投資銀行や大手FASの多くは同登録制度に登録していないため、この数字は日本のFA機能の全体を表すものではありません。

仲介の「両手報酬」は問題ではないのですか?

利益相反が構造上内在するのは事実で、中小企業庁「中小M&Aガイドライン」も仲介者に利益相反リスクの説明・開示を求めています。一方で、買い手ネットワークを持つ仲介がいなければ成立しなかった事業承継案件が多いのも実態です。重要なのは仕組みを理解した上で、複数社比較・セカンドオピニオンを使うことです。

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