この記事で分かること

  • 貸借対照表(BS)を作らずに、1枚のシートでEntry EVからIRR・MOICまで通す「Short-form LBOモデル」の組み方
  • 何を省略してよく、何は省略できないか(ネットデットの初期値・最低現金・利息の期首残高基準)の設計判断
  • 約定返済・Cash SweepをIFを使わずMIN/MAXだけで書く実装と、独自の整数設例による全期間の検算
  • Paper LBO(暗算)・本記事(Short-form)・Full LBO(15 STEP)の使い分け

結論:Short-formは「EBITDA→FCF→デット残高」の1本の線だけを厳密に保つモデル

時間が40〜60分しかない、あるいは初期スクリーニングの段階で貸借対照表まで作り込む余裕がない——そういう場面で使うのがShort-form LBOモデルです。フルモデルとの違いは、BS(貸借対照表)を作らないことにあります。ただし「BSを作らない」は「雑に作る」ことと同義ではありません。省略していいのはBSというであって、その中身のうちネットデットの初期値・最低現金・利息の期首残高基準という3つの数字は最後まで手放せません。この3つさえ1シートの中で正確に保てば、Enterprise Value(EV)とEquity Value(株式価値)を混同せずにIRR・MOICまで一気通貫で計算できます。本記事では独自の整数設例を最初から最後まで自分で検算し、S&Uの左右一致・デット残高が全期間で負にならないこと・最低現金を割らないこと・MOICとIRRの整合、の4点を確認しながら組み上げます。LBOの全体像(仕組みとリターンの源泉)をまだ押さえていない方は、先に基礎を掴んでから戻ってくることをおすすめします。

使い分け表:Paper LBO・Short-form・Full LBO

同じ「LBOのリターンを計算する」という作業でも、使う場面によって必要な精度と所要時間はまったく違います。当サイトでは次の3本で役割を分けています。

項目Paper LBO本記事(Short-form)Full LBO
所要時間5〜10分(暗算)40〜60分(Excel1シート)3〜4時間(15 STEP)
道具紙とメモ書き(Excelなし)Excel・電卓(数式は最小限)Excel(3表連動フル実装)
作らないものほぼ全て(丸め計算のみ)貸借対照表(BS)全体なし(BS・のれん・PPAまで実装)
出せる答えMOIC・IRRの概算(丸め前提)MOIC・IRRの実額(BS整合性の裏付けなし)MOIC・IRR+安全性分析・リターン分解
使う場面面接・口頭試問初期スクリーニング・簡易感応度投資委員会提出・モデルテスト本番

何を省略できて、何は省略できないか

Short-formの設計で最初に決めるべきは「何を捨てるか」です。Full LBOが持つ要素のうち、省略してよいものと最後まで残すものを分けます。

省略してよいもの
貸借対照表そのもの(現金・運転資本固定資産のれんの各残高行)/のれんとPPA(取得価額配分)/資金調達費用の期間償却(本記事では一括の取引費用として計上)/複数ケース・複数シナリオの並走。

省略できないもの
ネットデットの初期値(S&Uで確定するデットとエクイティの内訳)/最低現金の水準(Exit時ネットデットの計算に直結)/利息の期首残高基準(期末基準にすると翌期の利息計算が循環参照を起こしやすくなり、1シートでは検証が難しくなります)/運転資本と設備投資はゼロにせず、EBITDA比の一定比率FCF換算率)として必ず織り込むこと。

運転資本と設備投資を別々の行にせず「FCF換算率」としてまとめるのが、Short-formならではの簡略化です。フルモデルでは回転日数から運転資本を、耐用年数から設備投資を個別に計算しますが、Short-formでは「EBITDAのうち何%が手元に残らずキャッシュアウトするか」を一つの比率で置きます。この比率をどこから取るかが唯一の腕の見せどころで、対象企業の実績CFの中央値から逆算するのが実務的です。

この後の設例をすぐ動かせる形で欲しい方へ

本記事と同じ8ブロック構成のShort Form LBO Modelは、無料のExcelスターターパックに収録しています。数式を自分の手で追いながら、前提セルだけを書き換えて挙動を確認できます。

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1シートのレイアウト設計:8ブロックを縦に積む

Short-formの型は、次の8ブロックを上から下へ一直線に積むことです。横に広げず縦に積むのは、参照が全て「上のブロック→下のブロック」の一方向になり、循環参照が生まれにくくなるためです。

1シートの構成:8ブロック ① 前提 EBITDA・成長・税率・金利・最低現金・FCF換算率など全ての入力(青字セル) ② Entry Entry EV=LTM EBITDA×Entry倍率 → Sources & Uses(エクイティは逆算) ③ Debt トランシェ別の初期残高・金利・約定返済率(期首残高基準) ④ FCF EBITDA−D&A−利息=税前 →(1−税率)→ +D&A −Capex/ΔWC(換算率) ⑤ Debt Paydown 約定返済+Cash Sweep(MIN/MAXで実装、最低現金を必ず維持) ⑥ Exit Exit EV(Exit年EBITDA×Exit倍率)− Exit時ネットデット = Exitエクイティ ⑦ Return MOIC=回収額÷投資額、IRR=IRR関数と(MOIC)^(1/n)−1の2通りで検算 ⑧ 感応度 Entry×Exit倍率、EBITDA成長×Exit倍率のマトリクス(データテーブル)
図:Short-formの1シートは①〜⑧を上から下へ一方向に積む。参照が下向きだけになるため循環参照が生まれにくい(唯一の循環候補は利息⇄FCFで、期首残高基準にすることで回避する)。

ここから先は、この8ブロックの順に実際の数値を入れながら組み上げます。設例はすべて本記事オリジナルの整数前提で、以下の数値はPythonで最初から最後まで再計算し、S&U一致・デット残高の非負・最低現金維持・MOICとIRRの整合を確認済みです(単位:百万円)

STEP1 前提とEntry EV

まず①前提ブロックに入力セルを並べます。本設例の前提は次のとおりです。

前提
LTM EBITDA(FY0)1,000.0
EBITDA成長(年間・簡略化のため定額)+80.0/年
Entry倍率6.0x
保有期間5年
D&A(年額・簡略化のため定額)100.0/年
Capex+ΔWC(FCF換算率)EBITDA比35%
実効税率30%
最低現金100.0

以下は説明用の仮設例です。実在の企業・案件とは関係ありません。EBITDA成長を年80.0の定額とするのは、Short-formならではの割り切りです。フルモデルなら成長率%を複利で掛けますが、1シートで暗算チェックをしやすくするため定額成長を採用しています。


Entry EV = LTM EBITDA × Entry倍率 = 1,000.0 × 6.0x = 6,000.0

STEP2 Sources & Uses——エクイティはプラグ

②Entryブロックの下段にSources & Uses(S&U)を置きます。Usesを先に固め、Sourcesのデット調達額を引いた残差をエクイティとして逆算するのがLBOモデルの作法です(LBOモデルの作り方(6ステップ)と同じ考え方です)。本設例のUsesは、株式取得対価(Entry EV)に加えて取引手数料と最低現金の積み増しの2行だけに絞ります。フルモデルのように調達手数料(Financing Fee・OIDを資産計上して期間償却する処理は行わず、Short-formでは1本の「取引手数料」としてUsesに一括計上し、その場で費用化したものとして扱います(BSを作らないため、繰延資産を持ち越す先がないという構造上の理由です)。

Sources(調達)金額Uses(使途)金額
タームローンA(TLA)2,400.0株式取得対価(Entry EV)6,000.0
タームローンB(TLB)1,100.0取引手数料(一括計上)100.0
スポンサーエクイティ(逆算)2,700.0最低現金の積み増し100.0
合計6,200.0合計6,200.0

スポンサーエクイティ=Uses合計6,200.0−デット合計3,500.0=2,700.0。左右がともに6,200.0で一致していることが、このブロックの唯一かつ最重要のチェック項目です。ここが1円でもズレたまま先へ進むと、以降の全ての計算が無意味になります。

STEP3 デットの初期残高と金利——トランシェ別・期首残高基準

③Debtブロックでは、各トランシェの初期残高・金利・約定返済率だけを入力します。フルモデルのようにBS上の負債残高行は作らず、このブロック自体が「今期首時点のデット残高」を保持する唯一の場所になります。だからこそ、ここに置く初期値(ネットデットの出発点)は省略できません。

トランシェ初期残高金利約定返済
タームローンA(TLA)2,400.05.0%初年度元本の10%/年(定額)
タームローンB(TLB)1,100.08.0%期限一括(Cash Sweep対象・TLA完済後)

利息は必ず期首残高×金利で計算します。Debt Scheduleの作り方で解説しているとおり、期末残高基準にすると「利息→純利益→FCF→返済→期末残高→利息」という循環参照を生みます。Short-formは循環参照を検証する仕組み(反復計算のチェック行など)を1シートには持たせにくいため、最初から循環が起きない期首残高基準で設計するのが安全です。

STEP4 FCFの簡易組成——税金は利息控除後に計算する

④FCFブロックが、Short-formで最も間違えやすい箇所です。EBITDAに税率を直接掛けてはいけません。必ず利息を差し引いた後の課税所得に対して税金を計算します。


税前利益 = EBITDA − D&A − 支払利息TLA期首×5.0%+TLB期首×8.0%)
税引後利益 = 税前利益 ×(1−30%)
FCF = 税引後利益 + D&A − (EBITDA × 35%)

D&Aは税金計算のために一度差し引き、非資金費用のため税引後に足し戻します。Capex+ΔWCはEBITDA比35%という一本のFCF換算率にまとめ、税引後利益から直接控除します(この換算率がSTEP3で触れた唯一の簡略化ポイントです)。5年分を計算すると次のとおりです。

項目FY1FY2FY3FY4FY5
EBITDA1,080.01,160.01,240.01,320.01,400.0
(−)D&A100.0100.0100.0100.0100.0
(−)支払利息(期首×金利)208.0194.9179.9163.0144.1
税前利益772.0865.1960.11,057.01,155.9
(−)法人税等(30%)231.6259.5288.0317.1346.8
税引後利益540.4605.6672.1739.9809.1
(+)D&A100.0100.0100.0100.0100.0
(−)Capex/ΔWC(EBITDA比35%)378.0406.0434.0462.0490.0
FCF(返済原資)262.4299.6338.1377.9419.1

STEP5 Debt Paydown——約定返済とCash SweepはMIN/MAXだけで書く

⑤Debt Paydownブロックが1シートの心臓部です。Cash Sweepの作り方で解説している考え方をそのまま持ち込みますが、Short-formでは各トランシェの残高行を直接この1ブロック内に置きます。IFは一切使わず、次の2つのMIN/MAX式だけで組みます。


約定返済 = MIN(初年度元本×10%, 期首残高)
Cash Sweep(TLA) = MAX(0, MIN(FCF−約定返済, 期首残高−約定返済))
Sweep(TLB) = MAX(0, MIN(TLA完済後の残額, TLB期首残高))

MINを二重に使うのは、(1)返済額が残っている元本を超えない、(2)Sweepに回せる現金がマイナスにならない、の2つの安全装置です。もしFCFが約定返済に届かない期があれば、リボルバー当座貸越枠)MAX(0, 最低現金−返済前の現金残高)という式で補うところまで前提を用意しておきますが、本設例はFCFが毎期の約定返済240.0を上回るため、リボルバーの引き出しは発生しません。Sweepは優先順位どおりTLAから充当し、TLAが残っている限りTLBには回りません。

TLAFY1FY2FY3FY4FY5
期首残高2,400.02,137.61,838.01,499.91,122.0
(−)約定返済240.0240.0240.0240.0240.0
(−)Cash Sweep22.459.698.1137.9179.1
期末残高2,137.61,838.01,499.91,122.0702.9

TLBは5年間を通じて1,100.0のまま動きません。FCFが厚い年でも、TLAが完済されない限りSweepの優先権はTLAにあるため、この設例ではTLBへのSweepは一度も発生しないという結果になります(優先順位ロジックが正しく効いている証拠です)。全期間でTLA期末残高は2,137.6→1,838.0→1,499.9→1,122.0→702.9と単調に減少し、一度もマイナスに沈んでいません。最低現金も、Sweepが余剰FCFを全額吸収する設計のため、毎期末ちょうど100.0で着地し、下回ることはありません。

デット残高の推移(設例・単位:百万円) 1,000 2,000 3,000 0 3,500.0 Entry 3,237.6 FY1 2,938.0 FY2 2,599.9 FY3 2,222.0 FY4 1,802.9 FY5 TLA残高(約定返済+Sweepで低下)
図:設例(架空)。TLA(紺)はEntry時2,400.0からFY5に702.9まで低下。TLB(青・下段)は満期一括のため1,100.0のまま5年間変動しない。棒の上の数値はグロス負債合計。単位:百万円。

STEP6 Exit EV・Exit Equity——EVとEquity Valueを混同しない

⑥Exitブロックでは、まずEnterprise Value(EV)を出し、そこからExit時ネットデットを引いて初めてExit時のEquity Value(株主が受け取る額)に到達します。この2段階を1行に潰さないことが、Short-formでも守るべき最後の一線です。


Exit EV = Exit年EBITDA × Exit倍率 = 1,400.0 × 6.0x = 8,400.0
Exit時ネットデット =(TLA期末702.9+TLB期末1,100.0)− 最低現金100.0 = 1,702.9
Exitエクイティ = Exit EV − Exit時ネットデット = 8,400.0 − 1,702.9 = 6,697.1

Exit倍率はEntry倍率と同じ6.0xに据え置いています。マルチプル拡大を前提に置かないのはLBOモデルの作り方でも触れている規律で、「高く売れる前提」に頼らずにリターンが成立するかを見るためです。

STEP7 MOIC・IRR——2通りの計算方法で検算する

⑦Returnブロックで、投資額2,700.0(STEP2のスポンサーエクイティ)に対する回収額6,697.1(STEP6のExitエクイティ)を、倍率と年率の両方で測ります。


MOIC = Exitエクイティ ÷ 投資額 = 6,697.1 ÷ 2,700.0 = 約2.48倍
IRR(手計算) = MOIC^(1/5) − 1 = 2.48^0.2 − 1 = 約19.9%
IRR(関数、検算) = IRR(キャッシュフロー列:▲2,700.0, 0, 0, 0, 0, +6,697.1)= 約19.9%

本設例は保有期間中に配当や追加拠出がなく、投資と回収がそれぞれ1回ずつなので、手計算のMOIC^(1/5)−1とIRR関数の結果は完全に一致します(実際の計算値は19.92%で、四捨五入すると約19.9%です)。IRRとMOICの計算と使い分けで解説しているとおり、この2式が一致するのは「中間キャッシュフローがない」という特殊ケースだからです。途中で配当リキャップを行う場合は、IRR関数側でしか正しい年率を出せなくなるため、Short-formであっても中間キャッシュフローが発生する設計に変える場合はキャッシュフロー列を必ず追加してください。

STEP8 感応度——Entry×Exit倍率、成長×Exit倍率

⑧感応度ブロックは、データテーブル機能を使って1シートの末尾に置きます(実装の詳細は関連記事の感応度分析・シナリオ分析の解説に譲ります)。1つ目はEntry倍率とExit倍率の組み合わせでIRRがどう動くかです(デット・EBITDA成長など他の前提は本設例のまま固定)。

Entry\Exit5.5x6.0x6.5x
5.5x22.2%24.9%27.4%
6.0x(基準)17.3%19.9%22.3%
6.5x13.4%15.9%18.2%

対角線(Entry=Exit)上でIRRが19.9%(基準ケース)から17〜18%台に収まるかを見れば、「同倍率で売れれば十分に成立する案件か」が分かります。2つ目はEBITDA成長ペースとExit倍率の組み合わせです(Entry倍率は6.0xに固定)

成長/年\Exit5.5x6.0x6.5x
+40.011.6%14.3%16.8%
+80.0(基準)17.3%19.9%22.3%
+120.022.1%24.6%27.0%

成長ペースが半分(+40.0/年)に落ちても、Exit倍率が据え置き(6.0x)ならIRRは14.3%まで下がるにとどまり、投資として即座に破綻するわけではないことが分かります。逆に成長・倍率の両方が悪化する左下のセルが、案件のダウンサイド耐性を測る場所です。

検算チェックリスト

チェック項目合格基準本設例の結果
S&Uの左右一致Sources合計=Uses合計6,200.0=6,200.0(一致)
デット残高が全期間で非負TLA・TLBともに0以上最小値はFY5のTLA 702.9(非負)
最低現金を割らない全期間で現金≧100.0毎期末ちょうど100.0で着地
利息が期首残高基準循環参照が発生しない全5期で期首残高×金利のみ参照
EVとEquity Valueの区別Exit EVからネットデットを引いてEquity Valueに変換8,400.0−1,702.9=6,697.1
MOICとIRRの整合IRR関数=MOIC^(1/n)−1(中間CFなしの場合)両者とも19.9%で一致

よくある実装ミス

最も多いのは、Capex/ΔWCの換算率をEBITDA成長後の数値に掛け忘れ、Entry時点のEBITDA1,000.0に固定してしまうミスです。この場合FY5のFCFが本来より過小に出て、デット残高が実態より高く残り、IRRを過小評価します。次に多いのが、Sweepの計算で約定返済を引く前のFCFをそのまま使ってしまい、約定返済とSweepの両方に同じ現金を二重に充当してしまうミスです。MIN/MAX式の中で「約定返済後の残額」を必ず参照するようにしてください。3つ目は、Exit時ネットデットの計算で最低現金の控除を忘れることです。BSを作らないShort-formでは、この控除を忘れても警告してくれるチェック行が存在しないため、STEP6の式を毎回そのまま確認する習慣が重要になります。

よくある質問(FAQ)

Q. Short-formだけで投資委員会に提出できますか?
A. できません。Short-formはBSの整合性(貸借一致・現金とBS残高の一致など)を検証する仕組みを持たないため、初期スクリーニングや感応度の当たりをつける段階に向いています。最終的な提出物にはFull LBO(15 STEP)で作るBS完備のモデルを使ってください。

Q. Cash SweepでTLBに一度も返済が回らないのは設計ミスではないですか?
A. ミスではありません。本設例はTLA優先でSweepを充当する設計のため、5年間でTLAを完済しきれない限りTLBには一切回らないのが正しい挙動です。保有期間を延ばすか、レバレッジを下げればTLBへのSweepが発生する設例に変わります。

Q. FCF換算率(Capex/ΔWC=EBITDA比35%)はどうやって決めればいいですか?
A. 対象企業の過去実績(設備投資と運転資本増減の合計)をEBITDAで割った比率の中央値を使うのが実務的です。業種によって水準は大きく異なるため、35%という数字自体に一般的な相場観はなく、本記事の設例固有の前提です。

Q. IRR関数とMOIC^(1/n)−1が一致しないことはありますか?
A. あります。保有期間中に配当(配当リキャップ)や追加出資があると、投資と回収が1回ずつという前提が崩れるため、両者は一致しなくなります。その場合はIRRとMOICの計算と使い分けで解説しているとおり、キャッシュフロー列全体にIRR関数を当てるのが正しい方法です。

Q. Short-formからFull LBOへはどう拡張すればいいですか?
A. ⑥Exitブロックまでの考え方はそのまま使えます。追加するのは、買収直後BSの構築・のれんの認識・資金調達費用の期間償却・安全性分析(レバレッジ・カバレッジ)の4点で、詳しい手順はExcelでつくるLBOモデル完全ガイドで扱っています。

まとめ

Short-form LBOモデルは、①前提から⑧感応度までの8ブロックを縦に積むだけで、40〜60分でEntry EVからIRR・MOICまで届く型です。省略していいのはBSという器であり、ネットデットの初期値・最低現金・利息の期首残高基準という3つの数字は最後まで手放せません。本記事の設例では、Entry EV 6,000.0・エクイティ2,700.0からスタートし、5年間の約定返済とCash Sweep(すべてMIN/MAX式)を経てExitエクイティ6,697.1に到達、MOIC約2.48倍・IRR約19.9%という結果を、手計算とIRR関数の両方で一致させて検算しました。この型を覚えれば、前提を変えるだけで別の案件のスクリーニングにそのまま転用できます。

次にやること

本記事の8ブロックを実際にExcelへ再現できたら、次はマルチトランシェ・買収直後BS・安全性分析まで含むフルモデルに進む段階です。マルチトランシェのCash Sweepやコベナンツ管理まで作り込んだ実装は、LBOフルモデル教材で体系的に学べます。

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出典・参考(2026年9月確認)

  • 本記事は計算手法・モデル構築手順の解説記事であり、外部の統計データや制度情報は使用していません。
  • 設例のEBITDA・倍率・金利・税率・成長率・最低現金は、いずれも理解のために設定した仮の数値であり、実在の企業・案件・市況とは関係ありません。

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。