この​記事で​分かる​こと

  • 医療法人がなぜ「非営利法人」として株式会社と異なる規律を受けるのか、医療法上の根拠と実務への影響
  • 出資持分あり医療法人と持分なし医療法人(基金拠出型を含む)の違いと、それぞれで使えるM&Aスキームの違い
  • 調剤薬局チェーンのロールアップM&Aで論点になる店舗別EBITDAの正常化と評価の考え方(仮設例つき)
  • 医療法人・調剤薬局それぞれで許認可の承継が論点になる理由と、デューデリジェンスで確認すべき項目

結論:ヘルスケア​M&Aの​実務は​「非営利規制」と​「許認可の帰属単位」で​組み立てが​決まる

ヘルスケア業界のM&Aアドバイザリー実務が他業種と大きく異なる理由は、対象が上場・非上場を問わない一般の株式会社ではなく、医療法という業法によって組織形態そのものが規律される医療法人であることが多い点にあります。医療法人は剰余金の配当が禁止された非営利法人であり、株式や持分を自由に譲渡して対価を受け取るという株式会社型のM&Aの発想がそのままでは成立しません。加えて、調剤薬局や介護事業所についても、事業所単位・法人単位で行政の許認可・指定を受けて初めて収益を上げられる仕組みになっているため、譲渡スキームの選択が許認可の​承継可否に直結します。

本記事は、ヘルスケア業界のM&Aアドバイザリー実務のうち、業界の概観や評価倍率の考え方は扱わず、医療法人の非営利規制・出資持分あり/なしの区分・M&Aスキームの選び方、そしてロールアップM&Aの典型例である調剤薬局チェーンの評価とデューデリジェンス論点に絞って解説します。ヘルスケア業界そのものの構造(製薬・医療機器・サービスの3分類やパイプライン評価の考え方)はヘルスケア​投資銀行とはを、PE投資家目線でのサブセクター別投資仮説はヘルスケア​PE​投資の​見方を参照してください。本記事はこれらの記事では扱っていない、M&Aアドバイザリー実務としての医療法人の非営利規制とスキーム選択、調剤薬局チェーンの評価実務に焦点を当てます。

医療法人の​非営利規制:何が​禁止され、​何が​できるのか

医療法人という法人類型は、医療法第39条により「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団」がこの法律の規定により法人になれる、と定義されています。ここで重要なのは、条文上に列挙された施設に薬局は含まれていない点です。つまり医療法人は原則として調剤薬局を直接開設する主体にはなれず、調剤薬局は通常、株式会社など別の営利法人が運営します。医療法人が関わるM&A(病院・診療所)と、調剤薬局チェーンのM&A(通常は株式会社)は、法人格としては別のトラックにある点を最初に押さえておく必要があります。

医療法人に固有の規律として最も影響が大きいのが、医療法第54条の「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。」という規定です。株式会社であれば株主に利益を配当できますが、医療法人ではこれが明文で禁止されており、実質的に配当とみなされる行為(社員・役員への実質的な利益供与など)も同様に許容されません。この規制があるために、医療法人のM&Aでは「誰が、どのような形で対価を受け取るか」という設計そのものが、株式会社の株式譲渡とは異なる制約を受けます。

もう一つの論点が、出資持分あり医療法人と持分なし医療法人の違いです。平成18年の医療法改正により非営利性の徹底を目的として、出資持分のある医療法人の新規設立は認められなくなりました。改正前から存在していた出資持分あり医療法人は、経過措置として存続が認められている(経過措置型医療法人と呼ばれる)に過ぎず、現在新たに設立される医療法人はすべて持分なし医療法人で、その多くは解散時に拠出額を上限として返還を受けられる基金拠出型医療法人という形態を取ります。持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行には厚生労働大臣の認定を受ける移行計画の仕組みがあり、認定を受けると相続税・贈与税に関する税制上の支援措置が適用されます。この移行を検討する医療法人がある一方、経過措置型として存続する出資持分あり医療法人も一定数残っているため、対象法人がどちらの類型かを確認することが、M&Aスキーム検討の出発点になります。

医療法人​M&Aの​主要​スキームと​選び方

医療法人のM&Aで実務上検討される主なスキームは、出資持分譲渡、社員・理事の交代、事業譲渡、合併・分割の4つに整理できます。株式会社のM&Aスキーム全般(株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割の比較)はM&A​スキーム​比較で解説していますが、医療法人の場合はここに非営利規制が重なるため、選択できるスキームと対価の受け皿がさらに限定されます。

医療法人M&Aスキームの選び方(概念図) 対象法人は出資持分あり医療法人か あり(経過措置型) 出資持分譲渡 対価は出資持分の譲渡代金/簿外債務も承継 なし(基金拠出型等) 事業の一部のみ譲り受けたいか 一部でよい 事業譲渡 資産・負債を選別承継/許認可は原則再取得 法人ごと承継したい 社員・理事の交代/合併 法人格は継続、許認可の再取得は原則不要 合併は都道府県知事の認可が必須 実際には対象法人の負債状況・許認可の種類・関係者の意向によって選択が変わり、この図は典型的な分岐の一例です
図:医療法人​M&Aに​おける​スキーム​選択の​典型的な​分岐​(概念図)。​個別案件では​税務・法務の​専門家に​よる​検討が​別途必要です。

出資持分譲渡は、経過措置型として存続する出資持分あり医療法人でのみ使える方法で、社員が保有する出資持分を譲渡することで実質的な経営権を移転します。法人格が継続するため許認可の再取得は原則不要ですが、簿外債務や偶発債務も含めて包括的に承継する点は株式譲渡と同様のリスクを伴います。持分なし医療法人ではそもそも譲渡できる持分が存在しないため、実務では社員総会での議決権を持つ社員と理事を交代させることで経営権を移転する「社員・理事の交代」が中心的な手法として使われます。この方法は対価を受け取れる法律上の受け皿が限定される点が、株式譲渡と最も異なるところです。

特定の事業・拠点のみを切り出したい場合は事業譲渡が選択されますが、医療法人・調剤薬局のいずれでも、事業譲渡では開設者が変わる扱いとなるため、許認可・指定を原則として新規に取り直す必要があります。法人全体を統合したい場合の合併・分割については、医療法第57条から第62条の3に規定があり、社団たる医療法人の吸収合併・新設合併は総社員の同意を、財団たる医療法人は寄附行為の定めと理事の3分の2以上の同意を要件とした上で、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければ効力を生じません。都道府県知事は認可にあたり、あらかじめ都道府県医療審議会の意見を聴くことが求められており、株式会社の合併に比べて行政関与の度合いが強いプロセスになります。

スキーム使える法人類型対価の受け皿許認可の再取得
出資持分譲渡出資持分あり(経過措置型)のみ出資持分の譲渡代金原則不要(法人格継続)
社員・理事の交代持分なし(基金拠出型含む)が中心退任社員への退職金等に限定されやすい原則不要(法人格継続)
事業譲渡全類型(調剤薬局を含む)事業譲渡対価(法人が受領)原則必要(新規開設・新規指定)
合併(吸収・新設)医療法人同士存続法人への統合(対価という概念は薄い)都道府県知事の認可が効力要件
表:医療法人​M&A​スキームの​比較。​個別法人の​定款・​寄附行為や​負債状況に​よって​実際に​選択できる​範囲は​変わります。

ロールアップ​M&Aの​経済合理性と​実務上の​特徴

ヘルスケア業界、とりわけ調剤薬局や介護事業では、単独では規模の小さい事業者を複数買収・統合して一つの経営体として運営する「ロールアップ」型のM&Aが継続的に行われてきました。ロールアップの基本的な考え方自体はロールアップ​戦略で整理されている通り、複数の小規模事業者を束ねることで本部機能や仕入れ交渉力を集約し、単店舗では負担しきれない固定費(システム投資、人事・労務管理、コンプライアンス体制など)を分散させる効果を狙う手法です。

ヘルスケア領域でロールアップが成立しやすい背景には、後継者不在の中小規模の医療法人・薬局オーナーが一定数存在すること、公的保険制度に基づく診療報酬・調剤報酬という景気に連動しにくい収益構造を持つこと、そして地域医療・地域包括ケアという政策文脈の中で事業承継の受け皿としてのM&Aが行政・業界団体からも一定程度肯定的に見られてきたことが挙げられます。ただし医療法人については、前述の通り出資持分譲渡・社員理事交代のいずれも対価の受け皿が限定的であるため、調剤薬局や介護事業所のように株式譲渡で機動的に統合できる株式会社形態の周辺事業と比べると、M&Aによる統合スピードには構造的な差が生まれやすい点に注意が必要です。実務上は、医療法人本体(病院・診療所)は社員理事交代で経営権を移し、併設の調剤薬局や介護事業所は別法人として株式譲渡でまとめて取得する、という組み合わせが用いられることもあります。

調剤薬局​チェーンの​評価実務:店舗別​EBITDAの​正常化

調剤薬局チェーンの評価では、EV/EBITDA​倍率を用いる考え方自体は他業種のM&Aと共通しますが、マルチプルの選び方の一般論はマルチプルの​選び​方完全​ガイドに委ね、本記事では調剤薬局チェーンに固有の「どのEBITDAを基準にするか」という正常化(ノーマライゼーション)の論点に絞ります。調剤薬局の店舗収益は、処方箋の集中度(大型門前薬局か、複数医療機関からの処方箋を受ける面分業型薬局か)や、後発医薬品の使用促進に関する調剤報酬上の加算(後発医薬品調剤体制加算等)の取得状況によって店舗ごとの収益性に大きなばらつきが生じます。財務DDでの一時的損益の洗い出し方の基本的な考え方は財務DD​(QoE)​入門で解説している通りで、調剤薬局チェーンでも同様に、オーナー経営者への役員報酬が市場水準からかけ離れている場合の調整や、新規出店・システム移行など一時的な費用の除外といった正常化作業が必要になります。

以下は説明用の仮設例です。5店舗を運営する調剤薬局チェーンを想定し、店舗別の年間売上高・報告EBITDAと、一時的な要因を除いた正常化後EBITDAを整理します。

店舗年間売上高(百万円)報告EBITDA(百万円)正常化調整の内容正常化後EBITDA(百万円)
1号店(大型門前)54068調整なし68
2号店(面分業)21018オーナー役員報酬の市場水準への調整(+4)22
3号店(面分業)19014一時的なシステム移行費用の除外(+3)17
4号店(大型門前)47055調整なし55
5号店(新規小型)1206開局初年度の立ち上げ費用の除外(+5)11
合計1,530161173
表:調剤薬局​チェーン5店舗の​EBITDA​正常化​(仮設例)。​店舗名・​数値は​すべて​説明用の​設定であり、​実在の​企業・​店舗とは​無関係です。

式
企業価値(EV)=正常化後EBITDA × EV/EBITDA倍率
正常化後EBITDAは、報告EBITDAに一時的な費用・収益や役員報酬の市場水準からの乖離分を加減算した値。

報告EBITDAの合計は161百万円(68+18+14+55+6)、売上高合計1,530百万円(540+210+190+470+120)に対するEBITDAマージンは10.5%です。正常化調整(2号店+4、3号店+3、5号店+5の合計12)を反映すると、正常化後EBITDAの合計は173百万円(161+12)になります。ここで、説明のためにEV/EBITDA倍率を6.0倍から7.5倍のレンジと仮定すると(このレンジ自体は実勢の相場を示すものではなく、あくまで計算方法を示すための仮設値です)、企業価値は1,038百万円(173×6.0)から1,297.5百万円(173×7.5)のレンジで試算できます。実際の倍率は店舗の立地・処方箋集中率・スイッチングコストの高さ・後発医薬品比率などによって個別に決まるため、この記事の数値をそのまま実務の相場観として扱うことはできません。

許認可の​承継と​デューデリジェンスの​論点

ヘルスケア業界のM&Aで固有のデューデリジェンス項目になりやすいのが、業法上の許認可・指定の帰属です。調剤薬局は、医薬品医療機器等法第4条第1項・第5条に基づき、薬局ごとに都道府県知事(または保健所設置市・特別区の長)から開設許可を受ける必要があります。許可は店舗単位で交付されるため、事業譲渡によって開設者(経営主体)が変わる場合、旧開設者の許可は失効し、新しい開設者が改めて開設許可の申請を行う必要があるのが原則です。加えて、保険調剤を行うためには地方厚生局から保険薬局として別途指定を受ける必要があり、こちらも開設者の変更に伴って新規の指定申請が必要になります。一方で、法人格が変わらない株式譲渡であれば、開設許可・保険薬局指定は法人に紐づいたまま存続するため、この再取得の手間は生じません。この違いは、調剤薬局チェーンのM&Aで事業譲渡ではなく株式譲渡が選好されやすい理由の一つになっています。薬局の管理を行う管理薬剤師についても、常勤・専任が求められ、派遣従業員を管理薬剤師とすることや、他店舗との兼務は原則として認められていない点は、M&A後の人員体制を検討する上で確認しておくべき事項です。

介護事業所についても、介護保険法に基づく指定は「事業所ごと・提供する介護サービスの種類ごと」に受ける仕組みになっており、譲渡・統合の形態によって指定の承継可否が変わり得ます。なお、健康保険法上の保険医療機関・保険薬局として指定・許可を受けた病院・診療所・薬局は、介護保険法上の医療系サービス事業者として指定を受けたものとみなす「みなし指定」の仕組みもあり、事業所の性質によって扱いが分かれるため、対象事業所がどの制度上の位置づけにあるかを個別に確認する必要があります。

これらの許認可論点に加えて、一般的なデューデリジェンス項目(財務・法務・労務・システム)も当然に必要です。医療法人・調剤薬局・介護事業所に共通するヘルスケア​業界の​規制DDの視点、事業譲渡を選ぶ場合の税務・会計上の考え方は事業譲渡、対象法人が抱えるリスクをどこまで表明保証で手当てするかは表明保証の考え方が土台になります。一般的なデューデリジェンスのフレームワークに、業法上の許認可という業界固有のレイヤーを重ねて確認する、という位置づけで理解しておくと実務の全体像を把握しやすくなります。

論点確認事項
薬局開設許可店舗ごとの許可であること、事業譲渡では新規許可が原則必要であること、既存の許可証・更新履歴
保険薬局指定開設者変更に伴い新規指定申請が必要になること、指定切替に伴う調剤報酬請求の空白期間リスク
管理薬剤師常勤・専任要件を満たしているか、派遣・兼務による法令違反がないか
処方箋の集中状況特定の医療機関への処方箋集中度、資本関係のある医療機関への依存度
調剤報酬上の加算後発医薬品調剤体制加算等、収益に占める各種加算の割合と継続取得の見込み
医療法人の非営利規制剰余金配当禁止に抵触する取引(役員への実質的な利益供与等)の有無
表:ヘルスケア​M&Aで​固有に​確認すべき​デューデリジェンス​項目の​例。​個別案件では​専門家に​よる​法令適合性の​確認が​必要です。

病院・​診療所​M&Aとの​住み分け

本記事では医療法人の非営利規制とスキーム選択、調剤薬局チェーンの評価実務に焦点を当てましたが、セルサイドの案件プロセス自体(CIM作成・LOI・最終契約の交渉論点など)は業種を問わず共通する部分が多く、セルサイド​M&A​プロセスと​契約実務で扱っています。病院・診療所の診療報酬制度や薬価制度を踏まえたPE投資家目線でのサブセクター評価はヘルスケア​PE​投資の​見方で、実際にヘルスケア領域への投資実績があるPEファンドの一覧はヘルスケアへの​投資が​多い​PE​ファンドランキングで確認できます。

よく​ある​質問​(FAQ)

医療法人は​なぜ株式会社のように​株式を​発行して​資金調達できないのですか。

医療法人は​医療法上、​非営利性の​徹底を​前提に​制度​設計されており、​株式会社のような​出資者への​利益配当​(剰余金の配当)が​医療法第54条で​明文で​禁止されています。​株式に​相当する​持分自体も、​平成18年の​医療法改正以降に​設立された​医療法人​(持分なし医療法人)には​存在しません。​この​ため資金調達の​手段も、​金融機関からの​借入や​基金拠出型医療法人に​おける​基金の​拠出など、​株式発行とは​異なる​方法が​中心に​なります。

出資持分​あり医療法人と​持分なし​医療法人は​見分けられますか。

定款を​確認すれば、​出資持分に​関する​規定の​有無で​判別できます。​平成19年の​医療法改正施行以降に​新規設立された​医療法人は​すべて​持分なし​医療法人である​ため、​設立時期も​一つの​目安に​なりますが、​改正前から​存続する​医療法人が​持分なしへ​移行している​場合も​ある​ため、​最終的には​定款の​記載内容と、​移行認定を​受けているかどうかを​個別に​確認する​必要が​あります。

調剤薬局​チェーンの​M&Aで​株式譲渡と​事業譲渡の​どちらが​多いですか。

一律に​「どちらが多い」と​断定できる​公的な​統計は​確認できていませんが、​保険薬局指定の​再取得を​避けられる​点から、​法人全体を​承継できる​案件では​株式譲渡が​選好されやすいと​いう​実務上の​傾向が、​M&A​仲介会社等の​解説で​紹介されています。​特定の​店舗のみを​切り出して​譲り​受けたい​場合や、​譲渡側に​承継したくない​負債・契約が​ある​場合には、​資産・負債を​選別できる​事業譲渡が​選択される​こともあります。

医療法人の​M&Aで​社員・理事の​交代と​いう​方法を​使う​場合、​対価は​どう​受け取れば​よいですか。

剰余金配当禁止の​規制が​ある​以上、​対価の​設計は​個別の​事案ごとに​専門家​(弁護士・税理士)に​よる​適法性の​検討が​不可欠であり、​本記事で​特定の​スキームを​推奨する​ものではありません。​実務上は、​退任する​社員・​理事への​退職慰労金の​支払いと​いう​形が​用いられる​ことが​紹介されていますが、​金額の​水準や​支払い​方法に​よっては​配当類似行為と​みな​される​リスクが​ある​ため、​個別に​慎重な​検討が​必要です。

介護事業所の​M&Aでも​許認可の​承継は​同じように​論点に​なりますか。

介護保険法上の​指定居宅​サービス​事業者等の​指定も、​事業所ごと・​サービスの​種類ごとに​行われる​仕組みである​ため、​譲渡の​形態に​よって​指定の​承継可否を​個別に​確認する​必要が​ある​点は​調剤薬局と​共通します。​一方で、​保険医療機関・​保険薬局と​しての​指定を​持つ事業所は​介護保険法上の​指定が​あった​ものと​みな​される​「みなし指定」の​仕組みも​あり、​事業所の​性質に​よって​扱いが​異なる​ため、​対象事業所ごとの​確認が​必要です。

まとめ

ヘルスケア業界のM&Aアドバイザリー実務は、対象が医療法人であれば医療法上の非営利規制(剰余金配当禁止、出資持分あり/なしの区分)がスキーム選択そのものを制約し、調剤薬局や介護事業所であれば業法上の許認可・指定の帰属単位が譲渡形態の選択に直結するという、業界固有の構造を理解しないと成立しません。ロールアップM&Aの経済合理性自体は他業種と共通する部分が多い一方、対価の受け皿や許認可の承継可否という実務上の制約が、案件のスケジュールやストラクチャーに大きく影響します。

評価実務の側では、調剤薬局チェーンのように店舗ごとの収益性のばらつきが大きい対象では、報告EBITDAをそのまま評価に用いるのではなく、一時的な要因や役員報酬の水準を調整した正常化後EBITDAを基準にする発想が欠かせません。本記事で扱った非営利規制・スキーム選択・評価の正常化・許認可DDの4つの論点は、ヘルスケア業界のM&Aに関わる際の最低限のチェックポイントとして押さえておくと、業界特有の落とし穴を避けやすくなります。

出典・参考​(2026年8月確認)

  • 厚生労働省「医療法」条文(第39条:医療法人の設立目的施設、第54条:剰余金配当の禁止、第57条〜第62条の3:合併及び分割)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80090000&dataType=0&pageNo=2 および pageNo=3(WebFetchで各条文本文の到達・内容確認済み)
  • 厚生労働省医政局医療経営支援課「『持分なし医療法人』への移行に関する手引書」令和8年3月改訂 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000940229.pdf (出資持分あり医療法人の新規設立が認められなくなった経緯、基金拠出型医療法人、移行促進税制について、WebFetchでのファイル到達とWebSearchによる内容確認は取れたが、PDF内のフォント埋め込み形式の制約によりWebFetchでの全文テキスト抽出はできていない。内容は複数の独立した検索結果で相互に確認済み)
  • 千葉県「薬局開設許可申請」(医薬品医療機器等法第4条第1項・第5条に基づく手続、標準処理期間・手数料)https://www.pref.chiba.lg.jp/yakumu/tetsuzuki/330/13100-new6.html (WebFetchで到達・内容確認済み)
  • 関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定申請」https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_shitei_shinsei.html (WebFetchで到達確認済み。開設者変更時の新規指定申請の要否については、本ページ自体には明記がなく、M&A仲介会社等の実務解説を参考情報として補った)
  • 大阪市「介護保険居宅サービス事業者に係る指定の特例(みなし指定)について」https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000344482.html (WebSearchで内容確認。指定が事業所ごと・サービス種類ごとであること、みなし指定の仕組みについて参照)
  • 調剤薬局・医療法人のM&Aスキーム(出資持分譲渡・社員理事交代・事業譲渡・合併の使い分け、保険薬局指定の承継実務)に関するM&A仲介会社・法律事務所の実務解説複数件(個別事業者名は本文中に記載せず、実務上の一般的な傾向の裏付けとして参照。到達確認済み)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。