この記事で分かること

  • 新興国投資の株主資本コストを求める際に、なぜ通常のCAPM(資本資産評価モデル)だけでは不十分なのか
  • カントリーリスクプレミアム(CRP)を求める2つの実務手法——ソブリン格付スプレッド法とCDSスプレッド法の違いと使い分け
  • Damodaran(NYUスターン教授)が公表するCRPデータの構造と、デフォルトスプレッドからCRPへ変換する仕組み
  • λ(エクスポージャー)を使って企業ごとにCRPの反映度合いを調整し、株主資本コストへ組み込む計算例

結論:CRPは「ソブリンのデフォルトスプレッド」を「株式のボラティリティ」で割増しした上乗せ幅

カントリーリスクプレミアム(CRP)とは、新興国など相対的に信用力の低い国に投資する際、成熟市場(先進国)のベータだけでは捕捉しきれない「その国固有のリスク」を、株主資本コストに上乗せするための追加プレミアムです。実務でよく使われる出発点は、その国のソブリン格付(Moody’s建てローカル通貨格付、または信用格付の等価換算)から導かれるデフォルトスプレッド(国債利回りと無リスク金利の差)です。ただし、株式市場は債券市場よりも一般に値動きが大きいため、デフォルトスプレッドをそのまま株主資本コストに足すのではなく、株式市場と国債市場のボラティリティ比率で割り増してからCRPとして採用するのが標準的な考え方です。

組み込み方の基本式は、株主資本コスト=Rf+β×成熟国ERP+λ×CRPという2ファクター型のCAPM拡張です。ここでλ(ラムダ、エクスポージャー)は、対象企業がその国のカントリーリスクにどれだけ晒されているかを示す係数で、ベータと同じく1.0を基準に上下します。売上の大半を国内で稼ぐ企業ほどλは大きく、輸出中心で当該国の景気変動から比較的独立している企業ほどλは小さくなります。一律にCRPを全額加算する簡便法は、実務では過大評価・過小評価の両方のリスクを伴う点に注意が必要です。以下、ソブリン格付スプレッド法とCDSスプレッド法の具体的な算出手順、λの推計方法、そして仮設例による計算まで順に整理します(情報は2026年8月時点のものです)。CAPMそのものの基本(β・無リスク金利・エクイティリスクプレミアムの考え方)は理解している前提で、本記事は新興国投資に固有の論点に絞って扱います。

なぜ新興国投資でCAPMをそのまま使えないのか

通常のCAPMは、WACCを構成する株主資本コストの算定において、個別企業固有のリスクは分散投資によって消去できる(非システマティック・リスクは市場で評価されない)という前提に立っています。WACCの計算方法で扱われている標準的なCAPMは、主に米国など単一の成熟市場を前提に設計されたモデルであり、対象企業が事業を展開する国そのものの政治・通貨・流動性・カウンターパーティといったリスクは、βの中に十分に織り込まれていません。特に新興国では、政変・資本規制・急激な通貨切り下げ・ソブリン債のデフォルトといった、先進国株式市場のβでは説明しきれないリスク要因が現実に価格形成へ影響します。

このため、クロスボーダーのM&A・PE投資やDCFバリュエーションの実務では、成熟市場のCAPMで求めた株主資本コストに、投資先の国固有のリスクを表すCRPを追加項として上乗せするアプローチが広く使われています。CRPを求める代表的な方法は、(1)ソブリン格付から国債の利回りスプレッドを求めるソブリン格付スプレッド法と、(2)クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の市場価格を用いるCDSスプレッド法の2つです。両者は情報源が異なるだけで、目指すゴール(その国のデフォルトリスクを金利差として定量化すること)は共通しています。

ソブリン格付スプレッド法——格付からデフォルトスプレッド、そしてCRPへ

ソブリン格付スプレッド法は、対象国のソブリン格付(Moody’s建てローカル通貨格付が入手できない場合はS&P等の格付をMoody’s相当に換算)を出発点とし、同格付の国が発行する米ドル建て国債の利回りと、米国債(無リスク資産の代理変数)の利回り差からデフォルトスプレッドを推定します。NYUスターン大学のAswath Damodaran教授が公開する「Country Default Spreads and Risk Premiums」データセットは、この手法に基づき、世界各国のMoody’s格付・デフォルトスプレッド・CRP・エクイティリスクプレミアム(ERP)を一覧化して無償公開しています。

同データセットの方法論では、デフォルトスプレッドをそのままCRPとして採用するのではなく、「新興国株式指数の変動性 ÷ 新興国国債ETFの変動性」という相対的な株式市場ボラティリティの比率をデフォルトスプレッドに掛け合わせることで、株式投資家がより大きな価格変動リスクを負っている点を反映しています(S&P新興国株式指数と新興国政府債ETFのボラティリティが代理変数として用いられています)。この上でCRPを成熟市場のエクイティリスクプレミアム(成熟国ERP)に加算したものが、各国のエクイティリスクプレミアム(ERP)として示されます。


カントリーリスクプレミアム(CRP)= デフォルトスプレッド × (新興国株式市場のボラティリティ ÷ 新興国国債市場のボラティリティ)
各国のエクイティリスクプレミアム(ERP)= 成熟市場(AAA相当)のインプライドERP + CRP

Damodaran教授が2026年1月5日更新分として公表しているデータ(2026年8月時点で確認)から、実在国の一部を抜粋すると次のとおりです。成熟市場(AAA相当)のインプライドERPは4.23%とされており、各国のCRPはこの基準値に上乗せされる形でERPが決まります。

Moody’s格付相当デフォルトスプレッドCRPエクイティリスクプレミアム(ERP)
米国Aa10.23%0.23%4.46%
日本A10.60%0.91%5.14%
インドネシアBaa21.62%2.46%6.69%
インドBaa31.87%2.85%7.08%
ブラジルBa12.13%3.24%7.47%
ベトナムBa22.56%3.90%8.13%

この表の数値を確認すると、CRPはデフォルトスプレッドのおよそ1.5倍前後の水準になっていることが分かります(例:日本は0.60%→0.91%で約1.52倍、ベトナムは2.56%→3.90%で約1.52倍)。これはDamodaran教授のデータセットが、株式市場と国債市場のボラティリティ比率をほぼ一つの共通倍率として全ての国に適用していることを示唆しています。個別の投資判断でこの比率を自前で推計する場合も、この「デフォルトスプレッドをそのまま使わず、株式相応に割り増す」という考え方自体は踏襲すべきポイントです。

CRPを株主資本コストへ組み込む4ステップ 1 ソブリン格付からデフォルトスプレッドを得る Moody’s建てローカル通貨格付(無ければS&P等を換算)を確認し、 同格付国の米ドル建て国債利回りと米国債利回りの差を推定する 2 株式市場のボラティリティで調整してCRPを求める デフォルトスプレッド ×(新興国株式指数の変動性 ÷ 新興国国債の変動性) = カントリーリスクプレミアム(CRP) 3 CDSスプレッドで補完・検証する 格付が薄い国や社債市場が未成熟な国では、CDSスプレッドの 格付別平均からデフォルトスプレッドを補完・照合する 4 λを掛けて株主資本コストへ組み込む 株主資本コスト=Rf+β×成熟国ERP+λ×CRP(λは企業ごとに推計)
図:Damodaran「Country Default Spreads and Risk Premiums」の方法論説明を基に大手町プレップ作成。

CDSスプレッド法——市場価格でデフォルトスプレッドを補完・検証する

CDSスプレッド法は、対象国のソブリン債に対するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の市場価格(スプレッド)を用いてデフォルトリスクを定量化する方法です。CDSはデフォルト時に保証を受ける対価として買い手が売り手に支払う保険料に相当し、日々の取引を通じてリアルタイムに近い価格が形成されるため、発行残高が薄く流動性の低い国債の利回りスプレッドよりも、市場参加者のその時点での信用不安を反映しやすいという利点があります。Damodaran教授のデータセットでも、CDSが取引されている国についてはCDSスプレッドの格付別平均を算出し、CDSが取引されていない、あるいは格付そのものが存在しない国については、その平均値を用いてデフォルトスプレッドを推計・補完する形でソブリン格付スプレッド法を補っています。

一方でCDSスプレッド法には限界もあります。CDS契約はカウンターパーティ(保証の売り手)自身の信用力にも影響を受けるため、対象国そのものの信用力だけを純粋に反映しているとは限りません。また、取引量が少ない国ではCDSスプレッドの気配値そのものが歪んでいる可能性があり、単独の指標として過度に依存するのは危険です。実務では、ソブリン格付スプレッド法とCDSスプレッド法の双方を突き合わせ、大きな乖離がある場合はその背景(格付機関のレビュー遅延、CDS市場の需給の偏り等)を確認したうえで採用値を決める、という使い方が現実的です。

観点ソブリン格付スプレッド法CDSスプレッド法
情報源ソブリン格付(Moody’s/S&P等)と国債利回りCDS市場の取引価格(スプレッド)
更新頻度・即時性格付見直しのタイミングに依存し、遅行しやすい日次で価格形成され、市場の織り込みが速い
対象国の広さ格付を取得している国であれば幅広く利用可能CDSが活発に取引されている国に限られる
弱点格付会社の判断ラグ、政治的配慮の影響を受けうるカウンターパーティリスクの混入、薄商いによる歪み

以下は説明用の仮設例です。仮に「A国」の5年物ソブリンCDSスプレッドが2.70%、同時点のソブリン格付から推計したデフォルトスプレッドが2.20%だったとします。この場合、CDS市場は格付ベースの推計よりも高い信用リスクを織り込んでいることになり、実務担当者は「格付機関のレビューが市場の警戒感に追いついていない可能性」や「CDS市場特有の需給要因が上乗せされている可能性」の双方を検討したうえで、より保守的な数値(この設例では2.70%)を採用するかどうかを判断します。逆にCDSスプレッドが格付ベースの推計を大きく下回る場合は、CDS市場の流動性の薄さによる歪みを疑い、格付ベースの数値を優先するという判断もあり得ます。

λ(エクスポージャー)——CRPを企業ごとに調整する

CRPを株主資本コストへ組み込む際に見落とされがちなのが、同じ国に投資する企業であっても、その国のカントリーリスクへの晒され方は企業によって大きく異なるという点です。Damodaran教授は、この違いを表す係数としてλ(ラムダ、エクスポージャー)を提唱しています。λはベータと同様に1.0を基準とし、平均的な企業より当該国のリスクに強く晒されている企業はλが1を上回り、逆に売上の大半を海外で稼ぐなど当該国リスクからの独立性が高い企業はλが1を下回ります。λを使わず、進出国のCRPを全ての企業に一律で加算してしまうと、内需型企業のリスクを過小評価し、輸出型企業のリスクを過大評価するというミスマッチが生じます。

λの推計方法として代表的なのは次の2つです。第一に収益ベース法で、対象企業の売上のうちその国から得ている比率を、同じ市場に属する平均的な企業の比率で割ることで求めます。第二に回帰分析法で、対象企業の株式リターンを、その国のソブリン債(あるいは通貨)のリターンに対して回帰し、その回帰係数をλとして用います。Damodaran教授自身が公開している解説では、ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル社と、同国の通信会社エンブラテル社を対比する実例が示されており、エンブラエル社は売上の大半を輸出(自国売上比率は約3%、市場平均は約85%)に依存するためλは収益ベースで約0.04、回帰ベースで約0.27と極めて低い一方、内需型のエンブラテル社は自国売上比率が約95%と高く、λは収益ベースで約1.12、回帰ベースで約2.00と1を大きく上回ります。同じブラジルに拠点を置く企業でも、事業構造次第でカントリーリスクへの実質的な晒され方が大きく異なることが分かります。


λ(収益ベース法)= 対象企業の売上のうち当該国からの比率 ÷ 平均的企業の売上のうち当該国からの比率
株主資本コスト = Rf + β × 成熟国ERP + λ × CRP

計算例:新興国製造拠点への投資案件で株主資本コストを求める

以下は説明用の仮設例です。日系の投資ファンドが、ベトナムに主力生産拠点を持つ現地製造業のマイノリティ出資を検討しているケースを想定します。前提として、無リスク金利(Rf)は米ドル建て長期国債利回りの仮設値として4.00%、対象事業のβは同業種の仮設値として0.90、成熟市場(AAA相当)のインプライドERPは前章で確認したDamodaran公表値の4.23%(2026年1月5日更新・2026年8月時点確認)、ベトナムのCRPは同じくDamodaran公表値の3.90%を用います。λについては、対象企業のベトナム国内売上比率を仮に40%、同業界の平均的な企業のベトナム国内売上比率を仮に35%と置き、収益ベース法で算出します。

λ = 40% ÷ 35% ≒ 1.14(平均的な企業よりベトナム国内売上への依存度がやや高いケース)

株主資本コスト = Rf + β×成熟国ERP + λ×CRP = 4.00% +(0.90×4.23%)+(1.14×3.90%)= 4.00% + 3.81% + 4.45% = 12.26%

比較のため、同じ案件でベトナム国内売上比率が10%しかない輸出型企業(λ=10%÷35%≒0.29)の場合と、λを使わずCRPを一律で全額加算した場合(λ=1.00とみなした簡便法)を並べると、次の表のとおりになります。

項目シナリオA(内需型・λ≒1.14)シナリオB(輸出型・λ≒0.29)簡便法(λ=1.00固定)
Rf4.00%4.00%4.00%
β×成熟国ERP3.81%3.81%3.81%
λ×CRP4.45%1.13%3.90%
株主資本コスト12.26%8.94%11.71%

この設例が示すとおり、λを考慮せずCRPを一律に加算する簡便法(11.71%)は、内需依存度の高いシナリオAでは株主資本コストを過小評価(本来12.26%のところ11.71%)し、輸出依存度の高いシナリオBでは逆に過大評価(本来8.94%のところ11.71%)してしまいます。同じ国・同じ業種のβであっても、事業構造によって適切な割引率には3ポイント以上の差が生じうるという点が、λ調整を行う実務上の意味です。

国別エクイティリスクプレミアム(ERP)の比較 4.46% 5.14% 6.69% 7.08% 7.47% 8.13% 米国 日本 インドネシア インド ブラジル ベトナム (本文の設例国)
図:出所=Damodaran「Country Default Spreads and Risk Premiums」(2026年1月5日更新、2026年8月時点確認)を基に大手町プレップ作成。

実務での注意点

第一に、CRPとβによる二重計上に注意が必要です。対象企業のβを、既に新興国市場を含む指数(現地市場インデックス等)に対して回帰して求めている場合、その中にすでに一定のカントリーリスクが織り込まれている可能性があります。この状態でさらにλ×CRPを加算すると、カントリーリスクを二重に反映してしまいます。βの推計に使った市場インデックスがどこまでの範囲をカバーしているかを必ず確認することが実務上の基本です。

第二に、通貨建ての整合性です。Damodaran教授のCRPデータセットは米ドル建て国債の利回り差を出発点としているため、米ドル建てのフリー・キャッシュ・フローを米ドル建ての株主資本コストで割り引く場合には直接利用しやすい一方、円建てや現地通貨建てのキャッシュフローに同じ割引率を用いる場合は、金利平価やインフレ格差を踏まえた調整が別途必要になります。リスクフリーレートの通貨も含め、分子(キャッシュフロー)と分母(割引率)の通貨単位を一致させることが大前提です。

第三に、λの推計自体に幅があるという点です。収益ベース法は開示情報から比較的簡便に計算できますが、「平均的な企業」の定義(同業種か、同国の上場企業全体か等)によって数値が変わります。回帰分析法はより理論的ですが、対象企業が非上場であったり、上場していても流動性が低い場合は回帰の説明力自体が低くなります。実務では複数の推計方法を試算し、結果に大きな幅が出る場合はその幅自体を投資委員会向けの資料でレンジとして提示するという運用が現実的です。

第四に、格付機関の定義そのものにも留意が必要です。Moody’sやS&Pといった大手格付機関は、ソブリン格付(発行体格付)を独自の評価基準・見直しサイクルに基づいて公表しており、各国のソブリン・シーリング(その国に所在する企業の格付が原則としてソブリン格付を上回れないとする考え方)が、投資先企業自身の資金調達コストにも波及します。CRPの議論はソブリン(国)のリスクが起点になっている点を踏まえ、対象企業固有の信用力(WACCを構成する負債コスト側にも影響する要素)と切り分けて考えることが重要です。

DCF・WACCの計算をExcelで手を動かして確認したい方へ

CRPやλの調整は、最終的にDCFモデルの割引率(WACC)に反映して初めて投資判断に使えます。無料の練習ファイルを使って、割引率の組み立てから企業価値までの一連の流れを実際に手を動かして確認してみてください。

→ DCF・企業価値評価の教材を見る

よくある質問(FAQ)

Q. カントリーリスクプレミアム(CRP)は、新興国への投資であれば必ず加算しなければなりませんか。
A. 実務上の慣行としては広く使われていますが、絶対的なルールではありません。対象企業の事業構造(λが極めて小さい輸出型企業等)や、既にβの推計に現地市場のリスクが織り込まれている場合は、CRPをそのまま加算すると過大評価になる可能性があるため、案件ごとに必要性を検討する必要があります。

Q. λはどのように決めればよいですか。
A. 代表的な方法は、対象企業の当該国売上比率を平均的な企業の比率で割る収益ベース法と、株式リターンをソブリン債リターンに回帰する回帰分析法の2つです。開示情報から比較的簡便に試算できる収益ベース法から始め、可能であれば回帰分析法と突き合わせて妥当性を確認するのが実務的な進め方です。

Q. ソブリン格付スプレッド法とCDSスプレッド法は、どちらを使うべきですか。
A. 対象国の格付が安定しておりCDSの取引が薄い場合は格付スプレッド法が扱いやすく、逆に格付見直しが遅れがちで、かつCDS市場が活発な国であればCDSスプレッド法の方が市場実勢を反映しやすくなります。両者を突き合わせ、大きな乖離があれば背景を確認したうえで採用するという併用が現実的です。

Q. CRPはDCF法だけでなく、EV/EBITDA倍率法などのマルチプル法にも関係しますか。
A. マルチプル法自体は市場で成立している取引倍率を参照する手法のため、CRPを明示的に加算する場面は限られます。ただし、比較対象企業(Comps)を新興国企業と成熟国企業の間で選ぶ際には、両者の株主資本コストの差(=CRPが反映された結果としての倍率差)を暗黙のうちに考慮していることになります。

Q. 日本企業(日本国内の事業)への投資でもCRPは必要ですか。
A. Damodaran教授のデータセットでも、日本はAAA相当(成熟市場基準)を若干下回るA1格付として扱われ、わずかながらCRP(本記事の例では0.91%)が計上されています。ただし実務上、日本国内案件でCRPを別枠計上するかどうかは評価者・案件の性質によって扱いが分かれ、成熟国の一つとして無視できる範囲とみなすケースも少なくありません。

まとめ

カントリーリスクプレミアム(CRP)は、ソブリン格付から導かれるデフォルトスプレッドを、株式市場のボラティリティ比率で割り増すことで算出される、新興国投資特有の追加リスクプレミアムです。ソブリン格付スプレッド法とCDSスプレッド法はいずれもこのデフォルトスプレッドを求めるための情報源の違いであり、実務では両者を突き合わせて使うのが現実的です。CRPをそのまま株主資本コストに加算するのではなく、対象企業のλ(エクスポージャー)を収益ベース法や回帰分析法で推計し、株主資本コスト=Rf+β×成熟国ERP+λ×CRPという形で組み込むことで、同じ国に投資する企業間の事業構造の違いをより適切に反映できます。二重計上や通貨建ての不整合といった実務上の落とし穴にも注意が必要です。

バリュエーションの基礎から体系的に押さえたい方へ

CRPやλの調整は、WACC・DCFの基本的な組み立てを理解していることが前提になります。関連記事とあわせて、無料会員登録のうえで学習コンテンツをご確認ください。

→ 無料会員登録はこちら

出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。国別のCRP・ERPの数値はDamodaran氏が公表する2026年1月5日更新データ(2026年8月時点で確認)に基づく参考値であり、無リスク金利・β・λ等の仮設値は説明のために置いた前提です。