この記事で分かること
- 脱炭素型の指数が排出の多い企業を段階的に外すとき、その企業の資本コストの上昇は、試算の前提によって1〜2bpから40bp台まで変わり、決め手は売りを引き受けるアクティブ投資家に対するグリーン投資家の比率だったこと
- 排出の多い企業ほど気候リスクを強く受けると置くと、グリーン投資家による上昇幅は93〜136bpまで広がる一方、銘柄間の期待リターンのばらつきの大部分は気候リスクへの感応度の違いで説明されるという、別々の2つの結果。いずれも実証ではなくモデルの試算であること
- 発行体の財務・IR担当やアナリストが、割引率に「ESGの上乗せ」を足す前に確かめる指数のルール・前提の違い・キャッシュフローの3点と、bpを企業価値・株主価値に換算する設例
想定読者:排出量の多い業種の上場企業で財務・IR・経営企画を担う人、株式アナリスト、ESG運用やスチュワードシップの担当者、バリュエーションを行うFAS・投資銀行の実務家
前提知識:WACCとCAPM、永久成長モデル、パッシブ運用の仕組み
素材・エネルギー系の上場企業の取締役会で、財務担当がこう問われる場面を考える。「海外の年金や運用会社が脱炭素の方針で当社株を外し始めたら、資本コストはどれだけ上がるのか」。株式アナリストにも同じ問いがある。DCFの割引率に「ESGのリスク分」を足すべきか、足すなら何bpか。ESGインテグレーションの記事では、割引率への一律の上乗せは幅の根拠を説明しにくいと書いた。では、根拠になりうる研究は何を示しているのか。
研究者の答えも割れている。投資撤退の効果は1bpにも満たないという試算がある一方で、本稿で取り上げる論文(2023年に初版を公表し、2025年に学術誌へ受理)は、同じ問いを別の前提で解き直し、条件次第で効果は1桁大きくなると示した。差を生むのは、グリーン投資家が手放した株を誰が買うのか、という一点である。国際決済銀行(BIS)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどに所属する研究者らの論文で、BISの見解ではないと注記されている1。
この記事が主に参照する研究
Gong Cheng, Eric Jondeau, Benoit Mojon, Dimitri Vayanos(2025)「グリーン投資家が株価に与える影響(The Impact of Green Investors on Stock Prices)」Review of Finance(掲載予定)
- 公表:初版 2023年9月(BIS Working Paper No 1127)。NBER Working Paper w32317(2024年4月)を経て、2025年10月に学術誌へ受理。参照した版:著者が公開した受理版(2025年10月12日付)と NBER 版。査読:済(掲載予定。掲載号は未確認)2
- データ:実際の株価を使った推定ではない。米国株500銘柄(S&P500を想定)の収益率の特徴に合わせて数値を設定した理論モデル
- 方法:グリーン・パッシブ・アクティブの3種類の投資家が取引する動学的な均衡モデル。前提を変えて効果の大きさを試算する(因果の識別を伴う実証ではない)
- 位置づけ:投資撤退の理論に、売りを吸収しないパッシブ投資家と、時間をかけた段階的な除外を加えた新しいモデルと試算
株を外すと資本コストが上がる仕組みと、この論文の工夫
発行済みの株式は、誰かが必ず持っていなければならない。グリーン投資家がある銘柄を売ると、残りの投資家が引き取るまで価格が下がる。価格が下がった株は、同じ配当に対して期待リターンが高い。期待リターンは発行体から見た株主資本コストであり、CAPMで推計する値と同じ種類の数字である。株価の下落と資本コストの上昇は、同じ出来事の表と裏になる。
論文が描くのは3種類の投資家だ。グリーン投資家は、排出の多い企業から順に外していく時価加重の指数に連動する。パッシブ投資家は全銘柄の時価加重指数を持つ。アクティブ投資家は、リスクとリターンを見て自由に配分を変える3。試算では500銘柄のうち、毎年1%にあたる5銘柄ずつ10年かけて計50銘柄を指数から外す。欧米で「パリ協定整合」「ネットゼロ」と呼ばれる指数を模した設定である4。
先行研究の多くは、グリーン投資家の反対側に立つのは純粋に収益だけを求める投資家だと置いてきた5。だがパッシブ運用は、割安になったからといって除外銘柄を買い増さない。売りを引き取れるのはアクティブ投資家だけなので、彼らが少ないほど価格は大きく動く。指数組み入れ効果で株価が動くのと同じ需給の話であり、需要の価格弾力性が低い市場ほど影響は大きい。論文の試算では、効果を決めるのはグリーン投資家とアクティブ投資家の相対比率(以下「比率」=グリーン÷(アクティブ+グリーン))で、パッシブ投資家の量そのものはほとんど効かなかった6。
試算の結果:比率次第で数bpから数十bpへ
著者らはグリーン投資家を市場の5〜15%、パッシブをアクティブ+パッシブの50〜90%と置いた。グリーンの幅は、持続可能ファンドの運用資産が世界の運用資産の6.8%(3.56兆ドル)という推計などに基づく7。この範囲で比率が最も低い9.52%のとき、最初に除外される企業の資本コストの上昇は1〜2bp、株価の下落は0.18〜0.50%にとどまる。比率が最も高い63.83%では18〜24bp、株価は2.75〜6.31%の下落になる。グリーン投資家が30%に増えると、41〜49bp、6.01〜12.49%まで広がる8。範囲の幅は、株価の変動率を約13%と置くか約20%と置くかの違いである。
表1 投資家の構成で変わる効果(モデルの試算)
表は横にスクロールできます →
| ケース | グリーン | アクティブ | 比率 | 株価 | 資本コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 比率が最も低い | 5% | 47.5% | 9.52% | −0.18〜−0.50% | +1〜2bp |
| 比率が最も高い | 15% | 8.5% | 63.83% | −2.75〜−6.31% | +18〜24bp |
| グリーンが2倍に増えた場合 | 30% | 7% | 81.08% | −6.01〜−12.49% | +41〜49bp |
| 参考:旧版(NBER WP 2024年4月)の基準ケース | 30% | 20% | 60% | −5.61%(10年後) | 非除外企業比 +20bp |
表1から読み取るべきは、グリーン資金の総額ではなく、売りを引き取る相手との比が効果を決めるという点だ。比率が上がるにつれて効果は加速度的に大きくなる9。10年目に外される企業への効果は最初に外される企業の約70%、外されない企業の株価は逆に上がり、その幅は比率80%までは最初に除外される企業への効果の約10%、それを超えると最大約40%になる10。
時期の面では、除外の予定が発表された時点で大半が織り込まれる。10年後に外される企業でも、最終的な株価効果の約70%は発表時に現れ、残りが除外までに徐々に進む11。旧版(NBER版)の試算では、除外企業は資本コストが上がったにもかかわらず、発表時の下落のために10年間の実現リターンが4.38%と、除外されない企業の4.80%を下回った12。資本コストの上昇は、既存の株主にとってはまず評価損として表れる。
企業の規模でも差が出る。除外対象の中で株数が4倍の大型企業では株価への影響が7.44〜12.57%、4分の1の小型企業では0.79〜2.13%だった。大きなリスクを引き受けさせる必要がある分、大型の排出企業ほど影響は大きい13。
図1の下の2本は、排出の多い企業ほど気候移行リスク(脱炭素政策などで業績が振れるリスク)を強く受けるという要因を加えた場合である。グリーン15%・アクティブ8.5%の構成で、最も排出の多い企業の気候ショックが景気ショックの約7%なら、グリーン投資家による上昇は22〜30bp、約30%なら93〜136bp、株価は10.78〜13.61%の下落になった14。これとは別の数量として、後者の条件で全銘柄の期待リターンのばらつき(標準偏差107〜155bp)を分解すると、グリーン投資家の売りによる部分は11〜14bpで、残りは気候リスクへの感応度の違いで説明された15。著者ら自身は、比率が低ければ影響は無視でき、高くても控えめだが、先行研究の試算より1桁大きいと要約している16。
前提と限界、反対の立場の研究
第一に、これはモデルの試算であり、実際の株価から効果を推定したものではない。数値は米国の大型株を想定した設定に依存し、均衡が一つに定まることも証明されていない17。第二に、グリーン投資家の比率は持続可能ファンド全体の規模から置いている。モデルが想定する段階的除外型(ネットゼロ型)のファンドは729本・約2,890億ドルという推計があり、それよりずっと小さいと著者ら自身が注意している18。
第三に、パッシブ比率の置き方が結果を大きく左右する。著者らは、米国株式ファンドに占めるパッシブ型が53%、指数に追随する投資家の実質的な比率は米国株式市場の33.5%との推計を根拠に、上限を90%まで取った19。ESG株への資金流入1ドルで時価総額が0.7ドル上がるという実証推定と比べると、モデルの値はパッシブ50%で0.039〜0.10、90%で0.20〜0.53であり、上限側の前提のほうが実証に近い20。前提が動けば数値も動くことは、版の変化にも表れている。2023年の初版と2024年の旧版の基準ケースはグリーン30%・パッシブ50%・アクティブ20%で、最も排出の多い企業の資本コストが除外されない企業より20bp高くなるとしていた21。受理版の値はグリーン投資家がいない場合との差なので、比べる基準も違う。前提と基準を確かめずに「答えは何bp」と一つの数字で覚えるべき研究ではない。
第四に、除外の時期と対象を投資家が完全に予見できると仮定している。予見できなければ発表時の効果は小さく、その後の効果が大きくなる。企業が除外を避けるために脱炭素を急ぐ、あるいは株価下落で投資を減らすといった実体面の反応も扱っていない22。
反対の立場の代表が Berk and van Binsbergen の研究だ。グリーン投資家を2%、残りを全員アクティブと置いた試算で、効果は1bp未満とされる23。また、Pastor, Stambaugh and Taylor は、米国でグリーン度の高い株の時価加重ポートフォリオが2012年11月〜2020年12月に低い株を累積174%上回った一方、株価と予想利益から逆算した期待リターン(内在資本コスト)は一貫してグリーンのほうが低く、差は平均で年−1.4%だったと報告した24。過去の実現リターンの好成績から、資本コストが低い・高いを読み取ってはいけないという注意である。
大手町プレップの考察:bpより「い つ、誰に、どの形で」効くか
以下は論文の結果を踏まえた編集部の見方であり、論文が検証したものではない。
一つ目に、数bp〜数十bpという資本コストの差は、株式リスクプレミアムやベータの推計誤差に比べれば小さい。WACCの計算では、この程度の差は前提の置き方で簡単に埋もれる。一方で、価格の水準への影響は数%に及びうる。発行体にとっての実害は、高いハードルレートよりも、除外の発表を機に株価が一段下がり、増資や株式対価のM&Aの条件が悪くなるという形で現れると考えられる(仮説)。
二つ目に、論文の仕組みが強く働くのは、外す基準と時期が事前に分かる「除外型」の指数に資金が集まる場合である。保有比率を少し下げるだけの調整型(ティルト型)の指数は、同じ資金量でも売り圧力は小さいはずだ(仮説)。グリーン資金の総額を見る前に、その資金がどのルールで動くのかを確かめたい。
三つ目に、気候ショックが大きい条件では、排出の多い企業の期待リターンが高いことの多くは、気候移行リスクそのものへの対価で説明されうる。これは割引率に一律のプレミアムを足すより、炭素価格や座礁資産のシナリオでキャッシュフロー側に織り込むほうが説明しやすい。投資撤退による上乗せと気候リスクの対価を、同じ割引率の中で二重に数えないことが要点になる。
日本の実務への応用:国内の大口のグリーン資金は「除 外型」とは限らない
日本で最も大きなESG資金の一つは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)である。GPIFは2023年度末時点で9つのESG指数を選び、連動するパッシブ運用は約17.8兆円とされる25。うち炭素の指数であるカーボン・エフィシェント指数は、2018年に国内株・外国株でそれぞれ採用された26。2018年の採用時の説明では、この指数は同業種の中で炭素効率性の高い企業や排出量を開示する企業の比重を高める方式で、投資撤退の手法によらずに排出量を減らすとされている27。
つまりGPIFのこの資金は、論文がモデル化した段階的な「除外」とは仕組みが違う。日本の排出企業に論文の数値をそのまま当てはめるのは適切でない。一方で、論文が例に挙げるように、海外ではパリ協定整合型の指数やそれに連動するETFが提供されている28。海外の機関投資家の保有が多い国内企業ほど、海外の除外型指数のルールを確認する意味は大きいと編集部は考える。
日本固有の事情もある。編集部の見方では、政策保有株式や長期保有の個人株主など、価格が動いてもほとんど売買しない株主の比率は企業によって大きく異なる。論文は、指数に近い運用を求められる投資家や売買の少ない投資家もパッシブ投資家に含めて解釈しており、そうした株主は売りを引き取らない側に入る29。東証は2023年3月にプライム・スタンダード市場の上場会社へ、自社の資本コストや資本収益性を把握し、改善に向けた計画を開示するよう要請している30。この資本コストを意識した経営の開示でESGを理由にした上乗せに触れるなら、一つの値ではなく、前提を明記した感応度として示すほうが説明しやすい(編集部の見方)。
設例:比率を計算し、bpを価値に換算する
学習用の設例(架空)
- A社:排出量の多い国内の製造業。来期のFCF 100億円、WACC 6.0%、永久成長率1.0%、純有利子負債600億円
- 企業価値=100÷(6.0%−1.0%)=2,000億円、株主価値=2,000−600=1,400億円(株主資本の比率70%)
- 投資家の構成を3通り仮定し、比率だけを計算する(表2。数値はすべて仮定)
まず比率の計算に慣れておく。表2は、論文の前提を読むときに、グリーン投資家の量だけでなくアクティブ投資家の量を必ず見るための練習である。
表2 設例:投資家の構成から比率を計算する(仮定の数値)
表は横にスクロールできます →
| ケース | グリーン | パッシブ | アクティブ | 比率 | パッシブ比 |
|---|---|---|---|---|---|
| ケースa | 5% | 45% | 50% | 9.1% | 47% |
| ケースb | 10% | 60% | 30% | 25.0% | 67% |
| ケースc | 15% | 75% | 10% | 60.0% | 88% |
ケースaとcはグリーン投資家が5%と15%で3倍しか違わないが、比率は9.1%と60.0%で大きく違う。ただし論文の比率は市場全体の投資家構成で定義されており、1社の株主構成から資本コストの変化を求める方法は論文に示されていない。表2の比率をbpの目安に読み替えることはしない。次に、論文の各シナリオの上限値を感応度の例として使い、上乗せ幅を価値に換算する。論文の資本コストは株式の期待リターン、つまり株主資本コストなので、WACCには株主資本の比率70%を掛けて反映させる(負債コストと資本構成は変えない簡略化)。
図2のとおり、株主資本コストが24bp上がると、WACCは16.8bp上がり、企業価値は−3.3%、株主価値は−4.6%変わる。136bpなら企業価値−16.0%、株主価値−22.8%になる。負債がある分、株主価値の変化率は企業価値より大きい(企業価値と株主価値の違い)。永久成長モデルは、上乗せが将来ずっと続くと置くので、変化を大きめに見せる。論文のモデルとは仕組みが違うため、論文の株価下落の値と直接は比べない。
明日から使える確認手順
- 指数のルールを確かめる:自社(分析対象)が、海外のパリ協定整合型など除外型の指数の対象になる基準・時期・発表のタイミングを調べる。調整型(ティルト型)か除外型かを分けて記録する。
- 前提の違いを書き出す:研究のbpを引用するときは、その値がどの投資家構成(グリーン・パッシブ・アクティブの比率)と比較の基準(グリーン投資家がいない場合か、除外されない企業か)から出たかを添える。自社の株主構成から比率を計算しても、それをbpに読み替える方法は論文に無いことを明記する。
- bpを価値に換算する:論文の値は一つの答えではなく感応度として複数置き、株主資本コストへの上乗せを株主資本の比率でWACCに直し、企業価値と株主価値の両方で影響を示す。株価の水準への一度きりの影響か、割引率の恒常的な上乗せかを区別して書く。
- 気候リスクはキャッシュフロー側で:炭素価格・規制・需要の変化をシナリオとしてキャッシュフローに入れ、割引率の上乗せと二重に数えていないかを確認する。
- 会議で問う:「その上乗せ幅は、誰が売り、誰が買うという前提から出たのか」「除外の発表時点でどこまで株価に織り込まれるか」「過去の実現リターンを根拠にしていないか」。
よくある質問
ESG評価の低い企業は、割引率に何bp上乗せすべきですか。
研究から一律の値は出ません。本稿の論文でも、前提によって1bp台から40bp台まで変わり、気候リスクを加えるとさらに広がります。上乗せに触れるなら、前提を明記した複数の値の感応度として示し、気候リスクはキャッシュフロー側で扱うのが説明しやすい方法です。
グリーン株が過去に好成績だったのは、資本コストが低いからではないのですか。
逆の関係になりえます。資金の流入や気候への懸念の高まりで株価が上がると、その期間の実現リターンは高くなりますが、上がった後の期待リターン
まとめ
グリーン投資家による除外が資本コストに与える効果は、資金の総額ではなく、売りを引き取るアクティブ投資家との比で決まる。論文の試算では、その比が低ければ1〜2bp、高ければ18〜24bp、グリーン資金が倍増すれば40bp台になり、株価の水準には発表時点で数%の影響が出うる。ただし実証ではなくモデルの試算で、前提が変われば数値も変わる。日本の大口のグリーン資金には除外型でないものがあるため、数値をそのまま当てはめず、指数のルール・研究の前提・気候リスクを分けて確かめることが実務の出発点になる。
脚注
- R1(Review of Finance 受理版, 2025年10月12日)PDF p.1。著者の所属と、見解は BIS のものではない旨の注記。研究の開始時に Gong Cheng は BIS に在籍していたとも注記されている。↩
- 初版の公表日は BIS の掲載ページ(Working Paper No 1127、Date Published 29 September 2023。控え:papers/P0056/related/bis1127_page.txt)、NBER 版は R2(2024年4月)、受理は LSE Research Online の登録情報(Review of Finance、In Press、Acceptance Date 12 October 2025。控え:related/lse_eprint_129787.txt)で確認。掲載誌の巻号・DOI は2026年10月時点で未確認。↩
- R1 PDF p.3(第1節)、p.9(第2節)。グリーン投資家とパッシブ投資家は指数の比率を、アクティブ投資家は各銘柄の保有を、平均と分散で最適化する。↩
- R1 PDF p.4(第1節)、p.16(第4.1節)、p.22(表1)。100グループ×5社の計500社で、毎年末に最も排出の多いグループから1グループずつ10年間除外する。パリ協定整合型の指数の例として MSCI と S&P の指数ファミリーが挙げられている(p.3 脚注2)。↩
- R1 PDF p.2(第1節)。先行研究ではグリーン投資家の反対側を純粋に金銭的な目的の投資家が担うと置いているが、本論文は非グリーン投資家の多くが指数に連動するパッシブ投資家だと置く点で異なる。↩
- R1 PDF p.19(第4.1節)。厳密な結果ではなく、除外が全体の10%に限られるためパッシブ投資家の持ち高がほぼ変わらないことによる近似(同頁脚注6)。↩
- R1 PDF p.19〜21(第4.1節)。Morgan Stanley(2025)の推計(2024年末)。ほかに Morningstar、US SIF(2024)の推計も挙げ、5〜15%の範囲を置く。パッシブの範囲は p.21。↩
- R1 PDF p.24(第4.2節)。最初に除外される企業(グループ100)。株価は除外発表時(0年目)の平均価格の変化、資本コストは1〜12年目平均の期待リターンの変化(p.21)。範囲の下限・上限はリターン変動率約13%(σs=0.5)と約20%(σs=1.5)の仮定に対応(p.18〜19)。比率は市場全体の投資家構成で、最低ケースはグリーン5%・アクティブ47.5%、最高ケースはグリーン15%・アクティブ8.5%、グリーン30%のケースはアクティブ7%。↩
- R1 PDF p.21(第4.2節・図2)。影響は比率に対して増加かつ凸。↩
- R1 PDF p.24(第4.2節)。グループ91への影響はグループ100の約70%。外されない企業(グループ1〜90)への影響は、比率80%までは約10%で、それを超えると最大約40%まで高まる。期待超過リターンの目標を6%から4%に下げると効果は約30%小さく、CAPMの決定係数を25%から20%に下げると約30%大きい。↩
- R1 PDF p.4(第1節)、p.25(第4.2節・図3)。10年目に除外される企業(グループ91)について、0年目の価格効果は10年目の効果の約70%。↩
- R2(NBER WP 版, 2024年4月)PDF p.24(第5.1節)。旧版の基準ケース(グリーン30%・パッシブ50%・アクティブ20%)での10年間の実現リターン。受理版では同じ値は示されていない。↩
- R1 PDF p.28(第4.2節)。グループ100の5社のうち1社の株数を4倍、残り4社を4分の1にした場合(グリーン15%、アクティブがアクティブ+パッシブの10%)。大型企業ほど影響が大きい理由(アクティブ投資家に大きなリスクを持たせる必要がある)は p.17。↩
- R1 PDF p.28〜32(第5節)。グリーン15%、アクティブがアクティブ+パッシブの10%(市場全体の8.5%)の場合。93〜136bp はグリーン投資家が最も排出の多い企業の期待リターンを押し上げる幅(p.31)。気候ショックの大きさは景気ショックに対する比率で、実証に基づく値がないため2通りを置いたと著者らは説明している(p.28)。↩
- R1 PDF p.33(第6節)。グリーン15%・パッシブがアクティブ+パッシブの90%の場合の、全銘柄の期待リターンの断面標準偏差の分解で、脚注14の上昇幅とは別の数量。気候ショックが小さい場合は、標準偏差11〜22bpのうち5〜6bpが価格影響による。↩
- R1 PDF p.24〜25(第4.2節)。著者らは、グリーン投資家の比率が現在よりかなり大きくなる(例えば想定範囲の上限の2倍)と影響は大きくなるとも述べている。↩
- R1 PDF p.14(第3節)。命題は均衡の一意性を示していないが、数値分析では複数均衡は見られないと著者らは述べる。カリブレーションの対象(S&P500 を想定、無リスク金利3%)は p.16。↩
- R1 PDF p.20(第4.1節)。Phenix Capital(2023)による2023年2月時点のネットゼロ整合ファンドの推計。著者らは、除外完了後の効果は2種類のグリーン投資家を区別したモデルでも同じになると述べる。↩
- R1 PDF p.20〜21(第4.1節)。ICI(2022)は2021年末の米国株式ファンド(アクティブ+パッシブ)に占めるパッシブ型の比率。Chinco and Sammon(2024)の推計は2021年末。↩
- R1 PDF p.32〜33(第6節)。モデルの値は、グリーン株への資金流入に対するグリーン株の時価総額の増加の比(グリーン15%)。実証値0.7は van der Beck(2023)の推定を R1 が引用したもの(原論文は要旨のみ確認)。著者らは、真にアクティブな投資家はアクティブ+パッシブの10%未満かもしれないと述べる(p.33)。↩
- R2 PDF p.5(第1節)。除外完了の10年後に最も排出の多い企業の株価は平均5.61%下落、除外されない企業は0.71%上昇し、最も排出の多い企業の資本コストは除外されない企業と比べて20bp上がる(“compared to the non-excluded firms”)。BIS 版(2023年9月)の掲載ページの要約も、グリーン30%・パッシブ50%・アクティブ20%を基準とし、資本コストの差をより緑の企業と比べて20bpとしている(控え:papers/P0056/related/bis1127_page.txt)。↩
- R1 PDF p.34〜35(第7節)。予見の仮定、および株価と企業の設備投資の相互作用(Hartzmark and Shue(2024)が指摘する、ブラウン企業の脱炭素投資が難しくなる可能性を含む)は今後の課題とされている。↩
- R1 PDF p.2(第1節)、p.24(第4.2節)による Berk and van Binsbergen(2025)の要約。R2 PDF p.24 は同研究の基準ケースの効果を0.5bp未満、グリーン33%でも10.6bpと紹介している。同研究の本文・要旨は本稿では確認していない。↩
- R4(NBER WP 版, 2021年6月・2022年6月改訂)PDF p.4(第1節)、p.14(第4節)、p.16(第5.1節)。グリーン度は MSCI の環境評価に基づく上位・下位3分の1の時価加重ポートフォリオ。内在資本コストの差は期間中−0.4〜−2.4%の範囲。↩
- R5(GPIF『ESG投資』のページ)。2026年10月23日に確認(控え:papers/P0056/jp/gpif_esg.html)。↩
- R6(GPIF『グローバル環境株式指数を選定しました』2018年9月25日)p.1:国内株は S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数、外国株は S&P グローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数(除く日本)。R5 の『GPIFが採用するESG指数一覧(2025年3月末時点)』にも掲載されている。指数別の運用額はこの一覧の図(画像)でのみ示されており、原典のテキストで独立に照合できないため、本稿では掲載しない(2026年10月24日、編集部判断)。↩
- R6(GPIF『グローバル環境株式指数を選定しました』2018年9月25日)p.1。対象は当時の東証1部上場企業全社(一部の低流動性銘柄等を除く)とされている。現行の算出方法の細部は未確認。↩
- R1 PDF p.3 脚注2。MSCI のパリ協定整合型指数、S&P のパリ協定整合・気候移行指数の各ファミリーと、それに基づく ETF・ファンドが挙げられている。↩
- R1 PDF p.20(第4.1節)、p.34(第7節)。パッシブ投資家には、指数からの乖離に明示・暗黙の制約がある投資家や、売買の少ない投資家も含めて解釈できると著者らは述べる。日本の政策保有株主への当てはめは編集部の推論。↩
- R7(日本取引所グループ『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)』)。2023年3月31日の要請。2026年10月23日に確認(控え:papers/P0056/jp/jpx_capital_cost_request.txt)。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Cheng, G., E. Jondeau, B. Mojon and D. Vayanos (2025), “The Impact of Green Investors on Stock Prices,” Review of Finance(掲載予定、In Press). 初版:BIS Working Papers No 1127(2023年9月29日)。参照した版:著者公開の受理版(2025年10月12日付、43頁)。査読:済(掲載号・DOI は未確認)。 personal.lse.ac.uk (参照箇所:PDF p.1〜35(本文)、p.36(参考文献)、p.41〜42(付録)。脚注1・3〜11・13〜20・22・23・28・29の根拠。初版の掲載ページ:https://www.bis.org/publ/work1127.htm 、受理の登録情報:https://researchonline.lse.ac.uk/id/eprint/129787。閲覧日:2026年10月)
- R2 Cheng, G., E. Jondeau, B. Mojon and D. Vayanos (2024), “The Impact of Green Investors on Stock Prices,” NBER Working Paper No. 32317. DOI: 10.3386/w32317. 参照した版:NBER WP 版(2024年4月)。査読:未査読(WP。R1 の旧版)。 nber.org (参照箇所:PDF p.5(第1節)、p.24(第5.1節)。脚注2・12・21・23の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Berk, J. and J. van Binsbergen (2025), “The Impact of Impact Investing,” Journal of Financial Economics 164, 103972. 書誌は R1 の参考文献(PDF p.36)による。参照した版:なし(本文・要旨とも本稿では確認していない)。査読:済(学術誌掲載)。 (参照箇所:記事中の記述は R1・R2 による同研究の紹介のみ(脚注23)。閲覧日:2026年10月)
- R4 Pastor, L., R. F. Stambaugh and L. A. Taylor (2022), “Dissecting Green Returns,” Journal of Financial Economics 146, 403–424. NBER Working Paper No. 28940(2021年6月、2022年6月改訂)。DOI: 10.3386/w28940. 参照した版:NBER WP 版(2022年6月改訂)。査読:済(学術誌版は未読)。 nber.org (参照箇所:PDF p.2・p.4・p.14〜16。脚注24の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「ESG投資」(GPIFが採用するESG指数一覧、2025年3月末時点を含む)。 gpif.go.jp (参照箇所:本文と指数一覧の図。脚注25・26の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「グローバル環境株式指数を選定しました」(2018年9月25日)。 gpif.go.jp (参照箇所:p.1。脚注27の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R7 株式会社日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)」(2026年10月15日更新のページ。要請は2023年3月31日)。 jpx.co.jp (参照箇所:要請の時期・対象・趣旨。脚注30の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。