この記事で分かること

  • アクティブ運用・パッシブ運用の定義と、業界構造上の位置付けの違い
  • 運用資産規模とフィー水準から見た収益構造の整数設例
  • 市場効率性とアルファ獲得の関係、業界内での資金シフトの背景
  • アセットマネジメント業界を目指す人材にとってのキャリア含意

30秒で分かる定義

アクティブ運用とパッシブ運用(Active vs Passive Management、読み方:あくてぃぶうんようとぱっしぶうんよう)とは、資産運用業界における二大運用スタイルの分類です。アクティブ運用は、ファンドマネージャーやアナリストの銘柄選択・売買タイミングの判断によって、ベンチマーク(市場平均)を上回るリターンを狙う運用手法を指します。パッシブ運用は、TOPIXやS&P500といった特定の指数への連動を目指す運用手法で、インデックス運用とも呼ばれます。個々のファンドの巧拙の話ではなく、運用会社のビジネスモデル・報酬体系・必要人材そのものを規定する、業界構造上の分類です。

なぜ実務で重要なのか

アセットマネジメント業界のキャリアを考える上で、この分類は必須の前提知識です。アクティブ運用は、ファンドマネージャー・アナリスト・クオンツリサーチャーといった調査・判断業務に人員と報酬を厚く配分する労働集約的なビジネスであるのに対し、パッシブ運用は、指数への連動精度(トラッキングエラーの最小化)とコスト効率を追求するオペレーション・システム中心のビジネスです。PE・IBとの関係でも、資産運用会社自体がM&A・資本提携の対象になる際、アクティブ運用会社かパッシブ運用会社かでビジネスの評価軸(収益の粘着性・スケールメリットの効き方)が大きく異なります。

仕組み:ビジネスモデルの違い

比較軸アクティブ運用パッシブ運用
目標ベンチマークを上回るリターン(アルファの獲得)ベンチマークへの連動(トラッキングエラーの最小化)
運用報酬(信託報酬)水準相対的に高い相対的に低い
主な必要人材ファンドマネージャー・アナリスト・クオンツリサーチャーポートフォリオ・エンジニア、執行・トレーディング、指数管理オペレーション
規模拡大への感応度運用資産が増えすぎると機動的な売買が難しくなり、戦略のキャパシティに上限が生じやすい運用資産が増えるほど固定費が薄まり、規模の経済が働きやすい

整数設例で確認する

設例(架空数値)。運用資産100,000百万円のアクティブファンドとパッシブファンドを比較します。アクティブファンドの信託報酬率は年1.0%、パッシブファンドは年0.1%とします。

年間の運用報酬収入は、アクティブファンドが100,000×1.0%=1,000百万円、パッシブファンドが100,000×0.1%=100百万円です。同じ運用資産規模でも、アクティブファンドの報酬収入はパッシブファンドの10倍になります。仮にこの報酬収入からアクティブファンドが人件費(ファンドマネージャー・アナリスト)に400百万円、パッシブファンドがシステム・オペレーション費用に30百万円を要するとすれば、アクティブファンドの粗利益は600百万円(報酬収入対比60%)、パッシブファンドの粗利益は70百万円(同70%)となります。粗利率自体はパッシブの方が高いものの、絶対額ではアクティブファンドの方が大きいビジネスであり、「絶対額は大きいが規模拡大には上限があるアクティブ」対「絶対額は小さいが規模の経済が効くパッシブ」という構図が、業界内での競争・人材配分の背景にあります。

投資判断への影響

年金基金等のアセットオーナー(資産の出し手)は、アクティブ運用に対して、その追加的な報酬(アクティブファンドとパッシブファンドの報酬差)に見合うだけの超過収益(アルファ)が過去実績として確認できるかどうかが、厳しい検証の対象です。市場が効率的であるほどアクティブ運用でアルファを継続的に生み出すことは難しくなるとされ、実際に世界的にもパッシブ運用への資金シフトが長期的な潮流として続いてきました。この潮流は、アクティブ運用会社の報酬体系の見直し(成果報酬型フィーの導入等)や、運用会社同士の合併・統合の背景にもなっています。

財務モデル・Excelでの使い方

運用会社のビジネス分析シートでは、次のように組みます。

  • 運用資産残高(AUM)×信託報酬率で運用報酬収入を計算し、アクティブ・パッシブ別に収益構造を分解する
  • アクティブファンドについては、超過収益(アルファ)とアクティブシェアの推移を並べ、報酬水準に見合った付加価値を出せているかを確認する
  • コスト構造(人件費対システム費用の比率)を比較し、AUM成長時の利益率の伸び方(オペレーティングレバレッジ)の違いをシナリオ分析する

この用語をExcelで「組める」状態にする

運用資産規模とフィー体系から、アクティブ・パッシブそれぞれの運用会社の収益構造とコスト構造を分析できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「アクティブ運用は常にパッシブ運用に劣る」→ 正しくは、市場平均的にはアルファの継続的な獲得は難しいとされますが、個別の運用者・戦略単位では長期にわたり超過収益を出し続けている例もあり、一律の優劣ではなく個別評価が必要です。

誤解2:「パッシブ運用には運用者の判断が一切介在しない」→ 正しくは、どの指数に連動させるか、指数の構成銘柄変更にどう追随するか(サンプリング手法等)自体は運用者の設計判断であり、完全に判断を排除しているわけではありません。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

日本でも、確定拠出年金(DC)や新NISA制度の普及を背景に、低コストのインデックスファンド(パッシブ運用)への資金流入が個人投資家の間で拡大してきました(2026年8月時点)。一方、機関投資家の運用委託では、市場の効率性が相対的に低いとされるアセットクラス(新興国株式・中小型株等)でアクティブ運用が選好される傾向が続いています。資産運用業界の人材需要も、この資金シフトの影響を受け、パッシブ運用・インデックス関連のオペレーション人材や、クオンツ・システム運用の人材需要が相対的に拡大してきた点は、業界を目指す人材にとっては見逃せないキャリア上の変化です。具体的な職種とキャリアパスはアセットマネジメントキャリア入門で扱っています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:効率的市場仮説を前提にすると、アクティブ運用のビジネスはなぜ存在し続けるのですか。
「効率的市場仮説は市場全体としての価格形成の効率性を説明する理論ですが、実際の市場には情報の非対称性や流動性の低いセグメントが残り、そこではアクティブな分析が超過収益の機会を生み得ます。また、アセットオーナー側にも、単純な指数連動ではリスク管理上不十分な場面(特定のガバナンス方針の反映等)があり、アクティブ運用への需要自体は市場効率性の議論とは別の理由でも存在します。」(30秒回答例)

深掘りでは「なぜパッシブ運用への資金シフトが長期的に続いてきたか」「アクティブ運用会社が生き残るための差別化戦略」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. アクティブ運用とパッシブ運用のどちらが優れているという結論はありますか?
A. 業界内でも見解は分かれており、一律の結論はありません。市場の効率性が高いアセットクラスではパッシブ運用の優位が指摘されやすい一方、効率性が相対的に低いアセットクラスや局面ではアクティブ運用に優位性が見出されることもあります。

Q. アセットマネジメント業界を目指す場合、アクティブとパッシブどちらのキャリアを検討すべきですか?
A. 志向するスキルセット次第です。企業分析・銘柄選択に関心があればアクティブ運用のアナリスト・ファンドマネージャー職、システム・データ・執行の効率性に関心があればパッシブ運用やクオンツ運用関連の職種が、それぞれの強みを活かしやすいキャリアです。業界の資金シフトを踏まえると、後者の需要が相対的に拡大してきた点も判断材料になります。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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