この記事で分かること

  • アクティブ運用がパッシブ運用(ベンチマーク)に対して超過リターンを上げられているかを、生存者バイアスに気をつけながらどう検証するか(SPIVAの考え方)
  • 信託報酬・売買コスト・税というコスト構造の違いが、長期的にどれだけリターン差として積み上がるか(自己検算した仮設計算例)
  • 日本の投資信託市場でインデックス型ファンドのシェアがどう推移してきたか(資産運用業協会の統計)
  • GPIFに代表される機関投資家が、なぜアクティブとパッシブを併用する「コア・サテライト」型の運用を選んでいるか

結論:平均像では「パッシブが有利」だが、機関投資家は併用を選ぶ

アクティブ運用とパッシブ運用のどちらが優れているかという問いに、単一の正解はありません。ただし実証研究の平均的な傾向としては、コスト控除後のリターンで見た場合、多くのアクティブファンドがベンチマークに継続して勝ち続けることは容易ではなく、パッシブ運用(インデックス運用)の方が長期的には有利になりやすいという結果が繰り返し観測されています。この傾向を測るための代表的な枠組みが、S&P Dow Jones Indicesが公表している「SPIVA」(S&P Indices Versus Active)という調査手法です。一方で、この結論は「アクティブ運用に意味がない」ことを意味しません。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような大規模な機関投資家は、運用資産の大部分をパッシブ運用に置きながら、一部をアクティブ運用に配分する「コア・サテライト」型の構成を採用しています。超過リターンの実証方法、コスト構造の違い、日本の投信市場での両者のシェア推移、そして機関投資家の実際の使い分け方という4つの論点を、一次情報に基づいて以下で順に整理します。

アクティブ運用とパッシブ運用の違い:何を目指す運用なのか

アクティブ運用とパッシブ運用の違いは、ベンチマークとなる市場指数に対してどう向き合うかにあります。GPIFの用語集による定義では、パッシブ運用は「原則として市場を構成する全ての銘柄をその構成比率どおりに保有して、市場平均(インデックス)並みの収益率の確保を目指すインデックス運用」とされています。これに対してアクティブ運用は「ベンチマークとなる各市場のインデックスよりも高い収益(超過収益)を出すことを目指す」運用であり、「市場の非効率な面に着目し、さまざまな要因分析に基づいて投資する銘柄を絞り込むことにより、市場平均とは異なるポートフォリオを構築」する点に特徴があります。つまりパッシブ運用は「市場そのものを買う」運用、アクティブ運用は「市場平均から意図的にずれたポートフォリオを組む」運用だと整理できます。

このポートフォリオが市場平均からどれだけ離れているかを定量化する指標がアクティブシェアです。アクティブシェアが高いファンドほど、保有銘柄の構成比率がベンチマークから大きく乖離しており、ファンドマネージャーの銘柄選択が運用成果に与える影響が大きくなります。逆にアクティブシェアが低いにもかかわらず信託報酬がアクティブファンド並みに高い商品は、実質的にはベンチマークに近い運用をしながら割高な手数料を取っている「クローゼット・インデックス」と呼ばれる状態に近づいている可能性があり、選別の際の着眼点になります。あわせて、ファンドの日々のリターンがベンチマークからどれだけばらついているかを示すトラッキングエラーも、アクティブシェアと並んで運用のスタイルを把握する基本的な指標です。パッシブファンドはトラッキングエラーを可能な限り小さくすることを目指す一方、アクティブファンドは意図的に一定のトラッキングエラーを取りにいく設計になっています。

超過リターンをどう実証するか:SPIVAの考え方と生存者バイアス

「アクティブファンドは市場に勝てるか」という問いを検証する際に最も注意すべき落とし穴が生存者バイアスです。運用成績の振るわないアクティブファンドは、償還されたり他のファンドに吸収合併されたりして、時間の経過とともに市場から姿を消していきます。もし「現時点で存在しているファンドだけ」を対象に過去のリターンを集計すると、途中で消えていった成績の悪いファンドが標本から自動的に除外され、生き残ったファンドの平均リターンだけが集計対象になるため、アクティブ運用全体の実力を実際よりも高く見積もってしまいます。厳密な検証を行うには、調査期間の開始時点で存在していた全てのファンドを対象に、途中で償還・合併されたファンドも「そのファンドを保有し続けていたらどうなっていたか」という形で含めて集計する必要があります。

この生存者バイアスを是正した形でアクティブ運用とベンチマークを比較する代表的な調査枠組みが、S&P Dow Jones Indicesが世界各国で継続的に公表している「SPIVA」(S&P Indices Versus Active)です。SPIVAは、各国のアクティブファンドが各期間(1年・3年・5年・10年など)でベンチマーク指数に対してどれだけの割合で上回れたかを、生存者バイアスを調整した形で集計する調査手法として知られています。個別の年次スコアは調査対象期間や市場環境によって変動するため、本記事では具体的な数値の引用は行わず、名称と考え方の紹介にとどめます。

一方で、日本市場に固有の事情として、金融庁が2023年4月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」は興味深い指摘をしています。同レポートが引用するイボットソン・アソシエイツ・ジャパンの集計(2022年12月末時点、運用費用控除後データ)によれば、日本の自国株式アクティブファンドがベンチマーク(配当込みTOPIX)を上回った本数割合は、3年・5年・10年のいずれの期間で見ても、米国(S&P500)や欧州(MSCI Europe)の自国株式アクティブファンドの同様の集計と比べて高い水準にあったとされています。同レポートはこの背景として、「わが国においては、米国や欧州と比べて、ベンチマークに勝っているファンドの本数割合が高く、アクティブ運用の拡大余地が大きい」との見方を示しており、アクティブ運用が中長期的に成長性の高い企業を発掘・選別する「価格発見機能」を担っている点も指摘しています。市場ごとの効率性や参加者の構成によって、アクティブ運用が超過リターンを上げやすい度合いが異なりうるという点は、「アクティブか、パッシブか」を一律に論じる際の重要な留保です。

コスト構造の比較:信託報酬・売買コスト・税

超過リターンの実証以上に、実務上はっきりと確認できる差がコスト構造です。一般社団法人資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会と日本投資顧問業協会が合併して発足)が2026年3月に公表した最新の統計によれば、公募株式投資信託(追加型)の信託報酬(運用管理費用、税抜・単純平均)は、2026年3月末時点でアクティブ型(インデックス以外)が1.08%であるのに対し、インデックス型は0.56%となっています。同様に販売手数料も、アクティブ型が2.01%であるのに対しインデックス型は0.51%と、大きな差があります。ETF(0.33%)や確定拠出年金(DC)向けファンド(0.27%)はさらに低い水準です。ただしこの信託報酬の数値は単純平均であり、資産残高の大きい低コストのインデックスファンドの影響が薄まる一方、資産残高の小さい古いファンドの影響を相対的に強く受ける点には注意が必要です。

金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート2023」も、QUICKの2022年12月末時点データに基づく別の集計として、日本の自国株式ファンドの総経費率がパッシブ型で0.55%、アクティブ型で1.52%であり、うち販売会社取り分(代行手数料)がパッシブ型で0.19%、アクティブ型で0.63%であると報告しています。同レポートは「投資信託の信託報酬のうち、販売会社取り分に対するサービス内容の説明は同じであることが多いが、資産運用会社と販売会社の取り分は、アクティブ運用もパッシブ運用も、ほぼ半分ずつとなっていることが多い」とも指摘しており、コスト差の内訳を確認する際の一次資料として参考になります。

図:運用スタイル別の信託報酬(2026年3月末・単純平均・税抜) 1.3% 0.65% 0% 1.08% アクティブ型 0.90% 全体平均 0.56% インデックス型 0.33% ETF 0.27% DC向け ファンド
出所:一般社団法人資産運用業協会「投資信託の主要統計(Factbook of Japanese Investment Trusts)」2026年3月を基に大手町プレップ作成。公募株式投資信託(追加型、ETF・DC向けファンドを除く区分は別掲)の信託報酬率(税抜)の単純平均。

信託報酬に加えて見落とされやすいのが売買コストと税です。アクティブ運用はベンチマークとの乖離を作るために保有銘柄を積極的に入れ替える必要があり、パッシブ運用に比べてポートフォリオの回転率(一定期間内にどれだけ銘柄を売買したか)が高くなりやすい構造にあります。回転率が高いほど、信託報酬には表れない売買委託手数料やマーケットインパクト(大口売買が価格に与える影響)といった実質的なコストが積み重なりやすくなります。税については、投資信託の分配金や譲渡益には原則として課税が生じ、NISA口座のように非課税で保有できる制度もありますが、いずれの場合も回転率が高く含み益の実現頻度が上がりやすい運用ほど、課税タイミングが早まりやすいという一般的な傾向があります。個別の税務の取り扱いは口座の種類や個人の状況によって異なるため、本記事では制度の存在と一般的な傾向の説明にとどめます。

コスト差の複利効果:仮設計算で確認する

信託報酬の差は、単年で見ると小さく感じられますが、長期で複利運用すると無視できない差になります。以下は理解のための仮設例です。実在のファンドの実績リターンではなく、両者の値上がり率(グロスリターン)が仮に年率5.0%で同一だったと仮定し、そこから前章のインデックス型(0.56%)とアクティブ型(1.08%)の信託報酬(資産運用業協会統計・2026年3月末・単純平均)だけを控除した場合の比較です。


n年後の資産額=当初投資額 ×(1+グロスリターン-信託報酬)n

当初投資額を100万円とすると、インデックス型の実質リターンは5.0%-0.56%=4.44%、アクティブ型の実質リターンは5.0%-1.08%=3.92%になります。これをそれぞれ複利で計算すると、次のようになります(Pythonで自己検算済み)。

経過年数インデックス型(実質4.44%)アクティブ型(実質3.92%)差額
10年後154.4万円146.9万円7.5万円
20年後238.4万円215.8万円22.7万円
30年後368.1万円316.9万円51.2万円

この設例では信託報酬以外のコスト差(売買コスト・税・アクティブ運用が超過収益を生んだ場合のプラス効果など)を一切考慮していません。実際にはアクティブファンドが超過収益によってこのコスト差を上回るケースもありますが、平均的にはコストの差がそのまま長期のリターン差として累積しやすいことが、この仮設計算からも確認できます。リスク調整後リターンの指標で扱っているように、単純なリターンの比較だけでなくリスクあたりの効率性まで含めて評価することも、この判断を精緻化するうえで有効です。

日本の投信市場でのシェア推移:広がるインデックス型

コスト構造の差は、実際に日本の投資家の選択にも表れています。資産運用業協会の統計によれば、公募株式投資信託(除くETF)の純資産総額に占めるインデックス型ファンドの割合は、2016年末時点の13.0%から一貫して上昇を続け、2026年3月末時点で40.5%に達しています。2020年末(18.4%)から2026年3月末(40.5%)までのわずか5年強で割合が倍以上になっており、直近数年では毎年の上昇幅も拡大しています。

図:インデックス型ファンドの純資産シェア推移 45% 22.5% 0% 13.0% 15.4% 18.4% 26.0% 35.6% 40.5% 2016 2018 2020 2022 2024 2026.3
出所:一般社団法人資産運用業協会「投資信託の主要統計(Factbook of Japanese Investment Trusts)」2026年3月を基に大手町プレップ作成。各年12月末時点(2026年のみ3月末)、公募株式投資信託(除くETF)の純資産総額に占めるインデックス型ファンドの割合。

機関投資家の使い分け:コア・サテライト戦略とGPIFの実際

コストと実証データだけを見ればパッシブ優位に見えますが、多くの機関投資家は「どちらか一方」を選ぶのではなく、両者を組み合わせる設計を採用しています。その代表的な考え方が「コア・サテライト」戦略です。運用資産の中核(コア)部分は低コストのパッシブ運用で市場平均に連動させて安定的に確保し、その周辺(サテライト)部分に、超過収益が期待できると判断した特定の戦略や資産クラスのアクティブ運用を組み合わせる設計です。コアで市場平均相当のリターンとコストの低さを確保しつつ、サテライトで超過収益の余地を追求するという役割分担により、ポートフォリオ全体の運用コストを抑えながら、アクティブ運用が機能する場面での上乗せを狙う考え方だといえます。

この考え方を大規模な実例で確認できるのがGPIFです。GPIFの基本ポートフォリオは、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式をそれぞれ25%ずつとする資産配分を採用しています。そのうえでGPIFが公表している運用受託先ごとのデータ(2025年度末時点)によれば、資産クラスごとのパッシブファンドとアクティブファンドの構成比率は次のとおりです。

資産クラスパッシブファンドアクティブファンド
国内株式94.0%6.0%
外国株式82.7%17.3%
外国債券95.8%4.2%
国内債券(注)47.5%52.5%
合計79.8%20.2%

株式・外国債券では圧倒的にパッシブ運用が中心となっており、コア・サテライトの「コア」の考え方が明確に表れています。一方で国内債券だけはアクティブファンドの比率が過半を占めていますが、これはGPIFの注記によれば、2020年度末以降の国内債券のアクティブファンド区分には円建ての短期資産(現金同等物に近い資産)が含まれているためであり、他の資産クラスと同じ意味でのアクティブ運用(銘柄選択による超過収益追求)の比率とは単純に比較できない点に留意が必要です。GPIFの中期目標では、パッシブ運用とアクティブ運用を原則として併用すること、そしてアクティブ運用については「超過収益が獲得できるとの期待を裏付ける十分な根拠を得ることを前提に行う」ことが定められており、アクティブ運用の採用自体が自己目的化しないよう歯止めがかけられています。金融庁の前掲レポートも「わが国の資本市場では、機関投資家のパッシブ運用の割合が高い」としたうえで、アクティブ運用が中長期的に成長性の高い企業を発掘・選別する価格発見機能を担っている点を評価しており、この2つの視点が併存していることが、コア・サテライトという設計思想の背景にあります。

個人投資家がこの考え方をそのまま応用する場合も、資産の大部分を低コストのインデックス運用で構成し、特定のテーマや戦略に対する見解がある場合に限って一部をアクティブ運用や個別銘柄に配分するという設計は、参考になる整理の仕方です。現代ポートフォリオ理論(MPT)とアセットアロケーション入門で扱っている分散投資の考え方や、行動ファイナンスと市場効率性入門で扱っている市場効率性の議論も、コアをパッシブ運用に置くべき根拠を理解するうえで補助線になります。

よくある質問(FAQ)

Q. アクティブ運用はパッシブ運用に必ず劣るのですか。
A. そうとは言えません。生存者バイアスを調整したうえでの実証研究の平均的な傾向としてはパッシブ運用が有利になりやすいことが繰り返し確認されていますが、市場や期間、個別ファンドによって結果は異なります。金融庁の資料が指摘するように、日本株式市場では他地域と比べてアクティブファンドの対ベンチマーク勝率が相対的に高いとされる集計もあり、市場ごとの違いを踏まえる必要があります。

Q. インデックスファンドを選べば必ず市場平均のリターンが得られますか。
A. 信託報酬などのコストを差し引いた分だけ、厳密には市場平均をわずかに下回ります。また商品によってはトラッキングエラーが生じ、ベンチマークと完全に同じ値動きにはならない場合があります。

Q. アクティブシェアが高いファンドほど良いファンドと言えますか。
A. アクティブシェアの高さは、ベンチマークからの乖離度合いを示す指標であり、それ自体が運用成績の良し悪しを保証するものではありません。ただし、アクティブシェアが低いのに信託報酬が高いファンドは、実質的にベンチマークに近い運用をしながら割高な手数料を取っている可能性があるため、選別の際の着眼点として有効です。

Q. 個人投資家もコア・サテライト戦略を使うべきですか。
A. 必ず使うべきだという性質のものではありませんが、資産の中核を低コストのパッシブ運用に置き、特定のテーマや戦略への確信がある部分だけをアクティブ運用に振り向けるという設計は、GPIFなどの機関投資家の実例からも参考になる考え方です。最終的な資産配分は個々のリスク許容度や投資目的に応じて判断する必要があります。

Q. 信託報酬が低いファンドを選べば、それだけで十分ですか。
A. 信託報酬はコスト構造を比較するうえで最も分かりやすい指標ですが、売買コストや税、ファンドの運用方針がベンチマークと整合しているかといった点も合わせて確認することが望まれます。本記事で扱った複利効果の仮設計算が示すとおり、コストの差は長期では無視できない大きさになりやすい一方、コストの低さだけを理由に運用方針を確認しないまま商品を選ぶことは避けるべきです。

まとめ

アクティブ運用とパッシブ運用の実務論点は、超過リターンの実証・コスト構造・市場でのシェア推移という3つの角度から整理できます。生存者バイアスを調整した実証研究では、平均的にはコスト控除後のパッシブ運用が有利になりやすい傾向が繰り返し確認されており、資産運用業協会の統計が示す信託報酬・販売手数料の差は、複利計算では長期で無視できないリターン差につながります。日本の投信市場でもインデックス型ファンドのシェアは2016年末の13.0%から2026年3月末の40.5%まで一貫して拡大してきました。それでもGPIFのような機関投資家がアクティブ運用を全廃していないのは、コアをパッシブで固めながらサテライトで超過収益の可能性を追求する、コア・サテライトという設計思想があるためです。どちらか一方を選ぶという発想ではなく、コストと実証データを踏まえたうえで自分の運用に何をどう組み込むかという視点を持つことが、この論点を実務で扱ううえでの出発点になります。

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出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例であり、実在のファンド・取引を示すものではありません。