この記事で分かること
「売上比◯%」の一本槍から卒業する
費用行を全部「売上×比率」で置くと、売上が増減してもマージンが一定という嘘のモデルになります。現実の会社は固定費を持つため、売上の増減はマージンを増幅して動かします。この増幅(営業レバレッジ)を表現できるかが、費用予測の分水嶺です(売上側の設計はドライバーの章)。
設例:営業レバレッジを数字で見る
| 項目 | 今期 | 来期(売上+10%) |
|---|---|---|
| 売上 | 1,000 | 1,100 |
| 変動費(売上×40%) | (400) | (440) |
| 固定費 | (300) | (300) |
| 営業利益 | 300 | 360(+20%) |
売上+10%に対し利益は+20%——増収分のうち変動費を引いた60%(限界利益)がそのまま利益に落ち、固定費が動かないためです。逆に売上▲10%なら利益は▲20%。固定費比率が高い事業ほど、良い時は良く、悪い時は悪い。ダウンサイド設計(悲観の作り方)やサイクル業種の評価(正常化)で効いてくる構造です。
分解の実務:どうやって変動と固定に割るか
- 勘定科目から性質分け:材料費・外注費・販売手数料・物流費→変動寄り。人件費・地代・減価償却・システム→固定寄り。人件費は「基本給=固定、残業・賞与=準変動」のように割ることもあります。
- 回帰の目視:過去の四半期データで「売上×総費用」の散布図を作ると、傾き=変動費率、切片=固定費の近似が得られます。精緻な統計より、まず目で構造を掴むのが実務です。
- 階段状の固定費:固定費は永遠に固定ではなく、能力の限界で階段状に増えます(拠点追加・増員)。成長シナリオでは「どの売上水準で次の階段が来るか」を置くと、モデルの説得力が一段上がります。
前提の置き方と妥当性チェック
- 売上原価:変動部分は数量連動(単価×数量の整合)、価格改定・原材料市況は別行で明示。粗利率の予測推移が過去レンジから飛ぶ年には理由を書く。
- 販管費:人員計画×1人あたり人件費のボトムアップが王道。広告費は「売上を作る先行投資」なので売上比でなく施策ベースで。
- チェック①:予測の限界利益率・固定費額を過去実績から逆算した値と比較(整合チェック)。
- チェック②:従業員1人あたり売上・売上比人件費率が業界の常識レンジから外れていないか。
- チェック③:営業レバレッジの向き——増収予測なのにマージン低下(またはその逆)なら、意図した前提かを確認。
Q. 面接で「費用はどう予測しますか?」と聞かれたら?
A.「変動費と固定費に分解します。変動費は売上ドライバー連動、固定費は階段状の増加を能力限界と紐づけて置きます。これで営業レバレッジ——売上±10%が利益±20%に増幅される構造——を表現でき、ダウンサイドの利益感応度も正しく出ます」。
Q. 減価償却は固定費ですか?
A. 短期的には固定費ですが、投資計画の関数として別スケジュール(償却レイヤー)で組むのが正解です。費用分解はPLの見た目でなく「何で動くか」で行う——償却はCapexで動く費用です。
まとめ
- 費用は「売上比」でなく変動・固定に分解。固定費が営業レバレッジを生む。
- 設例:変動費率40%・固定費300 → 売上+10%が営業利益+20%に増幅。
- 分解は科目の性質分け+散布図の目視。固定費の階段と3つの妥当性チェックで仕上げる。
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本記事について
本文中の数値例はすべて理解のための設例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。制度・実務慣行に触れる箇所は一般的傾向の整理です。個別案件への適用時は必ずその時点の一次情報・専門家にご確認ください。