この記事で分かること

  • 大手町プレップVCデータベース817組織(うち日本拠点369組織)の投資先データから見える、VC間の共同投資ネットワークの全体像
  • 日本拠点VCの共同投資ペア・トリオ的な集中先企業のランキングと、ネットワーク上でハブになっているVC
  • 独立系VC・CVC・金融機関系VCがどう結びついているか、そこから読める実務上の含意(起業家・VC転職者・LP向け)
  • この種のデータ分析につきものの限界(未収録投資・ラウンド同一性の未判定など)を隠さず明記

結論:主要VC間の共同投資ネットワークには「島」構造が見える

大手町プレップが保有するVCファンドデータベース(817組織、うち日本拠点369組織)の投資先データを集計すると、日本のVC市場では一部のプレイヤーが繰り返し顔を合わせる「密な島」と、そこから外れた「疎な周辺」がはっきり分かれています。日本拠点VCに限定した場合、共同投資ペアは4,851組検出されましたが、そのうち上位10組だけでみずほキャピタル×SMBCベンチャーキャピタル(46社)やGlobal Brain×SBIインベストメント(46社)のように、突出して頻度の高い組み合わせが存在します。中心にいるのはGlobal Brain・三菱UFJキャピタル・SBIインベストメント・ジャフコ グループといった、投資件数そのものが多い大型プレイヤーです。

本記事は、この「誰と誰が一緒に投資しているか」というシンジケート構造を、大手町プレップDBの実データのみで可視化する分析記事です。ファンドサイズやチェックサイズからポートフォリオ構成を設計する話はVCのPortfolio Construction、投資メモの書き方はVC Investment Memoの作り方、リターン逆算はVCが必要とするExit Valueの逆算で扱っており、本記事では触れません。個別VCの詳細な投資実績・投資先一覧を確認したい場合は、VCファンド・投資家データベースから一次データに直接あたることをおすすめします。

本記事の範囲とデータの前提

分析の母集団は、大手町プレップが独自に構築しているVCファンドデータベース(817組織、うち日本拠点369組織)です。対象は各VCの公表情報・ポートフォリオページなどから収集し、DBに収録・確認できている投資先レコードのみです。データ取得日は2026年8月16日時点です。

本記事でいう「共同投資」とは、同一の投資先企業(社名正規化ベース)に対して、DB上2組織以上の投資記録が存在するケースを指します。この定義には重要な限界があります。

  • 投資ラウンドの同一性までは判定していません。同じ会社への別時期の投資(例:シリーズAとシリーズCで別々に入った2社)も「共同投資」としてカウントされます。
  • どちらがリード投資家でどちらがフォローかは区別できません。
  • DBに未収録の投資は当然反映されません。特に非公開のラウンドや、ポートフォリオページに掲載されていない投資は捕捉できていません。
  • 短い社名(アルファベット数文字など)は誤同定のリスクがあるため、大きな数値ほど目視確認を経ていますが、完全ではありません。

したがって以下の数値は、「このVCとこのVCが本当にシンジケートを組んでいる度合い」の完全な証明ではなく、あくまでDB収録データにおける投資先の重複頻度として読んでください。

分析手法:共同投資ペアの抽出方法

手順はシンプルです。まず各VCの投資先社名をNFKC正規化し、株式会社・Inc.等の法人格表記を除去したうえで名寄せします。次に、同一の正規化済み社名に投資記録を持つVCの組み合わせをすべて洗い出し、その組み合わせが何社で重複しているかを数えます。この重複社数を「共有投資先数(shared)」と呼び、ランキングの基準にしています。

あるVCについて、関わるすべてのペアの共有投資先数を合計した値を「重み付き接続度(weighted degree)」と呼びます。これは、そのVCが他の何社と、延べ何社分の投資先を共有しているかを表す指標で、後述する「ハブとなるVC」ランキングに使っています。

この方法で検出できた重複の規模は、母数に対してどの程度の密度なのかも確認しておきます。日本拠点369組織の総当たりペア数は約67,896通りですが、実際に共有投資先が1社以上あったのは4,851組でした(大手町プレップ算出で密度は約7.1%)。全817組織で見ると総当たり約333,336通りに対し5,080組で、密度は約1.5%です。日本拠点VCに限ったほうがネットワークが密になっているのは、対象となる投資先(日本のスタートアップ)自体が共通しやすいためと考えられます。

上位共同投資ペアランキングとハブとなるVC

日本拠点VCの共同投資ペア トップ10

日本拠点369組織に限定した共有投資先数の多いペアは以下の通りです。1位は僅差で2組が並び、上位は金融機関系VC同士、あるいはGlobal Brainを軸にした独立系×金融機関系の組み合わせが目立ちます。

順位VC AVC B共有投資先数組み合わせのタイプ
1みずほキャピタルSMBCベンチャーキャピタル46社金融機関系×金融機関系
1Global BrainSBIインベストメント46社独立系×金融機関系
331VENTURESGlobal Brain44社CVC×独立系
4Global Brain三菱UFJキャピタル43社独立系×金融機関系
5ジャフコ グループSBIインベストメント35社独立系×金融機関系
6ANRIGlobal Brain34社独立系×独立系
7Global BrainGlobis Capital Partners31社独立系×独立系
8三菱UFJキャピタルSBIインベストメント31社金融機関系×金融機関系
9ジャフコ グループ三菱UFJキャピタル30社独立系×金融機関系
10Global Brainジャフコ グループ28社独立系×独立系

上位10組のうち7組にGlobal Brain・三菱UFJキャピタル・SBIインベストメントのいずれかが含まれています。これは、この3社が投資件数自体が多い(投資先ポートフォリオが大きい)ことの裏返しでもあり、「よく一緒に投資する仲が良い2社」というより「そもそも露出が多いので重複しやすい2社」という読み方も同時に成立する点に注意が必要です。

ハブとなるVC:重み付き接続度ランキング トップ10

次に、個々のVCが関わるすべてのペアの共有投資先数を合計した「重み付き接続度」でランキングすると、日本拠点VCの中心(ハブ)が浮かび上がります。

順位VC名重み付き接続度タイプ
1Global Brain1,068独立系VC
2三菱UFJキャピタル960金融機関系VC
3SBIインベストメント798金融機関系VC
4ジャフコ グループ618独立系VC
5ANRI485独立系VC
6Incubate Fund434独立系VC
7Globis Capital Partners405独立系VC
8Z Venture Capital401CVC・事業会社系VC
9静岡キャピタル397金融機関系VC
10スパークス・アセット・マネジメント367金融機関系VC

下図は、このトップ10に加えFFGベンチャービジネスパートナーズ(359)・ニッセイ・キャピタル(347)を含めた上位12社をノードとし、共有投資先数20社以上のペアをエッジとして描いたネットワーク図です。ノードの大きさは重み付き接続度、線の太さは共有投資先数に対応しています。

図:日本拠点VC 共同投資ネットワーク(上位12社) Global Brain 1,068 三菱UFJキャピタル 960 SBIインベストメント 798 ジャフコ グループ 618 ANRI 485 Incubate Fund 434 Globis Capital Partners 405 Z Venture Capital 401 静岡キャピタル 397 スパークス・アセット・マネジメント 367 FFGベンチャービジネスパートナーズ 359 ニッセイ・キャピタル 347 独立系VC 金融機関系VC CVC・事業会社系VC 円の大きさ=重み付き接続度/線の太さ=共有投資先数
図:日本拠点VC上位12社の共同投資ネットワーク。共有投資先数20社以上のペアのみ表示(それ未満の詳細は本文の表を参照)。2026年8月16日時点のDBデータに基づく。

図から読めるのは、Global Brainが独立系・金融機関系の双方と太い線でつながる中心的なハブになっている一方、静岡キャピタル・スパークス・アセット・マネジメント・FFGベンチャービジネスパートナーズといった金融機関系VCは、三菱UFJキャピタルを介して間接的に結びついている構造です。金融機関系VC同士は直接の太い線が少なく、Global Brainや三菱UFJキャピタルのような「橋渡し役」を経由してネットワークに参加している傾向が見えます。

図:日本拠点VC 重み付き接続度 トップ10 Global Brain 1,068 三菱UFJキャピタル 960 SBIインベストメント 798 ジャフコ グループ 618 ANRI 485 Incubate Fund 434 Globis Capital Partners 405 Z Venture Capital 401 静岡キャピタル 397 スパークス・アセット・マネジメント 367
図:日本拠点VC369組織における重み付き接続度(関わる全ペアの共有投資先数の合計)の上位10社。2026年8月16日時点のDBデータに基づく。

独立系VC・CVC・金融機関系VCの結節構造

日本拠点VC同士の共同投資ペア4,851組のうち、片方がCVC・事業会社系VCでもう片方がそれ以外(独立系VCまたは金融機関系VC)という組み合わせは1,941組(約40.0%)でした。全817組織で見た場合も5,080組中2,026組(約39.9%)とほぼ同じ比率で、日本拠点に絞っても絞らなくても「CVC×非CVC」の組み合わせがペア全体のおよそ4割を占めています。

この比率をどう読むかは慎重さが必要です。「CVCは事業シナジーの観点から独立系・金融機関系VCと積極的に組む」という説明は直感的にはもっともらしいですが、本データだけでは因果関係までは立証できません。CVC自体の投資件数が多い、あるいは大型ラウンドに複数VCが集まりやすく、その中に統計的にCVCが含まれる確率が単純に高い、といった別の説明も同程度に成り立ちます。上位ペアランキングでも、31VENTURES(三井不動産系CVC)×Global Brain(44社)やGV(Alphabet系CVC)×Sequoia Capital(35社、全体集計)のようにCVCが上位に入っていますが、これも「CVCと組みやすい」というより「双方とも投資件数の多いプレイヤー」という要因が効いている可能性があります。

実務的に言えるのは、CVC単体で調達ラウンドを完結させるケースは少なく、独立系・金融機関系VCとの併走がデータ上も一般的な組み方になっているという事実レベルの観察までです。CVCの投資戦略や独立系VCとの違いの基礎は用語集のCVC解説を参照してください。

最多共同投資先企業から見える「多数のVCが入るラウンド」の性質

個社ベースで見ると、DB上もっとも多くのVCが投資記録を持つ企業は以下の通りです(日本拠点VCに限定した集計でも同じ顔ぶれです)。

順位企業名DB収録投資組織数
1newmo16社
2Luup15社
3ElevationSpace14社
4ATOMICA13社
5五常アンドカンパニー12社
6Synspective11社
6LayerX11社
6Sakana AI11社

これらの企業に共通するのは、いずれも大型かつ複数回のラウンドを経ている資金調達額の大きいスタートアップだという点です。例えばnewmoの投資組織リストにはANRI・Global Brain・ジャフコ グループ・SBIインベストメントといった大型独立系・金融機関系VCに加え、広島ベンチャーキャピタル・ほくほくキャピタルのような地域系VCも名を連ねています。Luupの投資組織リストにも三菱UFJキャピタルやPKSHA Technology Capital、ポーラ・オルビスホールディングスなど、業態の異なる投資家が混在しています。

ここから言えるのは、大型ラウンドほど1社で全額を引き受けるのではなく、独立系・金融機関系・地域系・CVCと属性の異なる複数のVCが同じラウンド(または複数時期のラウンド)に分散して入る傾向があるということです。ただし本記事の集計方法ではラウンドの同一性を判定していないため、これらの投資組織すべてが「同じラウンドに同時に入った」とは断定できません。複数回に分けて異なる投資家が参加した結果である可能性も含みます。

グローバル参考値:海外VC・CVCとの共同投資

DB全体(817組織)で共有投資先数を見ると、上位2組は日本拠点を含まない米国メガファンド同士の組み合わせでした。

  • Andreessen Horowitz × GV:51社(独立系×CVC)
  • Andreessen Horowitz × Sequoia Capital:47社(独立系×独立系)
  • Andreessen Horowitz × General Catalyst:44社(独立系×独立系。全体順位では日本の上位ペアが間に入るため、非日本拠点ペアに限った場合の3番目の例)

これらの数値は参考程度にとどめるべきです。理由は単純で、大手町プレップDBはAndreessen Horowitz(投資先ポートフォリオ853件収録)やSequoia Capital(同419件)、Accel(同770件)のような米系メガVCについて、投資先の収録件数自体が非常に厚いためです。共有投資先数が多いのは「よく一緒に投資している」ことの反映であると同時に、「双方の投資先データが大量に収録されているので統計的に重複しやすい」という収録バイアスの反映でもあります。

実際、日本拠点369組織に限定した場合の共同投資ペア数は4,851組で、全817組織のペア数5,080組の95.5%を占めます。つまり、DB上検出される共同投資ペアの大部分は日本拠点VC同士のものであり、海外VC・CVCが関わるペアはごく一部(229組、約4.5%)にとどまります。これは、日本拠点VCの投資先(主に日本のスタートアップ)に複数の日本拠点VCが集まりやすい一方、海外メガVCの投資先(主に米国のスタートアップ)と日本拠点VCの投資先が重なるケースが少ないという、対象市場の違いをそのまま反映した結果と考えられます。日本のスタートアップに投資する海外VC・CVCの動きそのものを扱った記事ではないため、詳細な国際比較は範囲外とします。

実務への示唆:起業家・VC転職者・LPそれぞれにとっての読み方

起業家にとって

資金調達において、リード投資家が決まった後にどのVCへ紹介が回りやすいかを考える際、このようなネットワーク構造は一つの手がかりになります。例えば投資先候補としてGlobal Brainや三菱UFJキャピタルのような接続度の高いVCと接点を持てれば、そこから他の投資家へのつながりが生まれやすい可能性があります。ただし、これはあくまで過去の投資先重複データからの推測であり、特定のVCと組めば紹介が保証されるという意味ではありません。リード投資家とシンジケートの基本的な役割分担も合わせて理解しておくと実務判断がしやすくなります。

VC業界への転職を考える人にとって

ネットワーク上のハブに位置するVCは、投資先が多い=案件のソーシング経路や他VCとの人脈が広いと推測できます。特定のVCへの転職を検討する際、そのVCが業界内でどの程度の位置づけにあるかを補助的に確認する材料として使えます。ただし投資件数の多さは組織規模やファンド設立年数の影響も大きく、優劣を直接示すものではありません。

LP(投資家)にとって

ファンドへの出資を検討する際、そのVCがどのような他VCと繰り返し投資先を共有しているかは、共同投資判断の一貫性やネットワークの厚みを見る一つの視点になります。とりわけコインベストメント(共同投資)の機会がLPに提供される場合、GPがどのVCと組む頻度が高いかを事前に把握しておくと、共同投資機会の質を評価する材料になります。

このデータの読み方の注意点

最後に、本分析の限界を改めて整理します。

  • DB収録範囲の偏り:投資先ポートフォリオの収録件数はVCによって大きく異なります(例:Andreessen Horowitz 853件、Accel 770件に対し、Spiral Capital 87件など)。収録件数が多いVCほど共同投資ペアも検出されやすく、「収録件数が少ない=共同投資が少ない」とは限りません。
  • ラウンド同一性の未判定:同じ会社への別時期の投資も「共同投資」としてカウントしています。同一ラウンドでの真の共同投資か、別ラウンドでの独立した投資かは区別できません。
  • リード/フォローの区別不可:どちらが主導したかは判定していません。
  • 母集団11,494社中、共有投資先は2,755社(約24.0%):DB全体の投資先企業11,494社のうち、2組織以上の投資記録があるのは2,755社(約24.0%、大手町プレップ算出)です。残る約76%は単独のVCしか記録がなく、これは「単独投資が多数派」を意味する場合もあれば、「共同投資家がDBに未収録なだけ」の場合も混在しています。
  • 短い社名の誤同定リスク:社名正規化の過程で、短い社名は別会社を同一視してしまうリスクがあります。上位に登場する数値は目視確認を経ていますが、下位の細かい数値まで完全に保証するものではありません。

これらの限界を踏まえ、本記事のランキング・数値はすべて「大手町プレップVCデータベース(2026年8月16日時点)収録データにおける」ものとして読んでください。個別の投資先の詳細や最新の投資動向は、VCファンド・投資家データベースで一次データを直接確認することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

共同投資ペアの数値は投資額ベースですか、件数ベースですか。

件数ベースです。同一投資先企業に対する投資組織の重複数を数えており、出資額やラウンド規模は考慮していません。

上位に来るVCは「実力がある」と判断してよいですか。

判断できません。重み付き接続度はDB収録投資件数の多さに強く連動する指標であり、投資成績やリターンとは別の軸です。

なぜ米国VCのペアが日本のVCより上位に来ることがあるのですか。

DBにおける投資先ポートフォリオの収録件数がVCごとに異なり、米系メガVCは収録件数自体が多いためです。記事本文の「グローバル参考値」で詳しく説明しています。

このデータで自分が調達すべきVCの組み合わせが分かりますか。

過去の傾向の参考情報にとどまります。実際の資金調達は事業フェーズ・セクター・条件面など多くの要因で決まるため、本データのみで投資家選定を行うことは推奨しません。

まとめ

大手町プレップVCデータベース817組織(うち日本拠点369組織)の投資先データを分析すると、日本のVC市場には一部の大型プレイヤー(Global Brain・三菱UFJキャピタル・SBIインベストメント・ジャフコ グループなど)を中心とした密なネットワークと、そこから外れた周辺プレイヤーという構造が見えます。CVCと独立系・金融機関系VCの共同投資ペアは全体の約4割を占め、大型ラウンドほど属性の異なる複数のVCが分散して入る傾向も確認できました。一方で、ラウンド同一性の未判定・DB収録範囲の偏りなど無視できない限界もあり、本記事の数値は「大手町プレップDB収録データにおける傾向」として理解する必要があります。個別VCの詳細な投資実績はVCファンド・投資家データベースで随時ご確認ください。

出典・参考(2026年8月16日確認)

  • 大手町プレップ VCファンド・投資家データベース(817組織、うち日本拠点369組織収録、各VCの公表ポートフォリオ情報等をもとに収集) https://otemachiprep.com/vc-funds/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための仮設例です。