この記事で分かること
- VC投資プロセスの6段階(ソーシング〜クロージング)
- 各段階でどんなアウトプットが生まれるか
- 整数設例でプロセス全体のスケジュール感を確認する
- VC志望者・資金調達を控える起業家が押さえるべきポイント
30秒で分かる定義
VC投資プロセス(VC Deal Process、読み方:ブイシーとうしプロセス)とは、ソーシング(案件発掘)→初期面談→タームシート提示→デューデリジェンス→最終契約→クロージングという、VCが投資を実行するまでの一連の流れを指します。各段階で関与する担当者・アウトプット・所要期間が異なり、VC志望者にとっても、資金調達を進める起業家にとっても、全体像を把握しておくことが実務上重要です。
なぜ実務で重要なのか
資金調達を控える起業家にとって、プロセス全体の流れと各段階の所要期間を理解していなければ、資金繰り計画(ランウェイの管理)が立てられません。VC側の実務担当者にとっても、案件がどの段階にあるかによって、投資委員会への報告内容や社内での稟議の進め方が変わります。プロセス全体を体系的に理解することは、VCへの転職・インターンを検討する層にとっても、面接での基本的な業界理解を示す材料になります。
仕組み:6段階のプロセス
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| ①ソーシング | 紹介・イベント・ピッチ等を通じた投資対象候補の発掘 |
| ②初期面談 | 事業内容・チーム・市場についてのヒアリング、初期的な投資意欲の確認 |
| ③タームシート提示 | 評価額・優先株式の主要条件を非拘束の書面で提示 |
| ④デューデリジェンス | 市場・チーム・プロダクト・ユニットエコノミクス・法務の審査 |
| ⑤最終契約 | 投資契約・株主間契約・種類株式発行に関する定款変更等の締結 |
| ⑥クロージング | 払込の実行、株式の発行、キャップテーブルへの反映 |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。ある起業家がシリーズAの資金調達を開始してから、次のようなスケジュールで進んだとします。①ソーシング〜初期面談:1か月、②タームシート提示までの交渉:1か月、③DD:1か月、④最終契約・クロージング:1か月、合計で約4か月かかったとします。
この間、月次バーンレートが20百万円だった場合、資金調達活動に4か月を要すると、80百万円(20百万円×4か月)のキャッシュが追加で消費される計算になります。資金調達を開始する時点で、少なくとも6か月以上のランウェイを確保しておくべきとされる実務上の目安は、この所要期間に基づく余裕を見込んだものです。プロセスが計画より長引くリスクを織り込んでおくことが重要です。
案件プロセス上の位置付け
各段階は必ずしも一直線に進むわけではなく、DDの結果によってタームシートの条件が再交渉されたり、複数の投資家候補と並行して交渉が進んだりすることも珍しくありません。リード投資家が決まった後、そのタームシートを他の投資家候補(シンジケート)に共有し、参加を募る形でプロセスが進行するのも典型的なパターンです。プロセスの初期段階から法務・会計の専門家に相談しておくことで、後の契約交渉をスムーズに進められます。
財務モデル・Excelでの使い方
資金調達計画のスケジュール管理シートでは、各段階の想定所要期間と、資金繰り(ランウェイ)を連動させて管理するのが実務的な設計です。
- 各段階の開始・完了予定日をガントチャート形式で管理し、遅延が生じた場合の資金繰りへの影響を試算する
- 複数の投資家候補が同時並行で進んでいる場合、それぞれの進捗段階を一覧管理する
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解:「タームシートに署名すれば資金調達は完了」→ 正しくは、タームシートは非拘束の書面であり、DDと最終契約締結を経て初めてクロージングに至ります。タームシート合意後も、DDの結果次第で条件が変わる、あるいは投資が見送られるリスクは残ります。
実務家はさらに、①各段階の所要期間が資金繰り計画と整合しているか、②複数の投資家候補と並行して交渉する際の情報管理、を確認します。
日本実務での扱い
(2026年7月時点)日本のスタートアップ資金調達実務でも、この6段階のプロセスは概ね共通して見られます。日本の非公開会社では、種類株式の発行に伴う定款変更や、会社法上の募集株式発行手続き(株主総会または取締役会の決議、payment の実行等)が最終契約・クロージング段階で必要になるため、法務専門家との連携が重要です。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:VC投資プロセスの各段階を説明してください。
「ソーシングで投資候補を発掘し、初期面談で事業・チームの概要を確認します。投資意欲が固まればタームシートを提示し、主要条件について非拘束の合意をします。その後デューデリジェンスで市場・チーム・プロダクト・ユニットエコノミクスを審査し、問題がなければ投資契約・株主間契約を締結し、払込を実行してクロージングとなります。全体で数か月かかるのが一般的です。」
深掘りでは「DDで問題が見つかった場合、プロセスはどうなるか」(条件の再交渉、または投資見送りの判断)が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. VC投資プロセス全体にどれくらいの期間がかかりますか?
A. 案件やステージによって異なりますが、ソーシングから初期面談までを除いた、タームシート提示からクロージングまでは、実務上の目安として1〜3か月程度とされることが多いです。DDの複雑さや投資家の意思決定体制によって前後します。
Q. 起業家はプロセスのどの段階から資金調達準備を始めるべきですか?
A. ランウェイに十分な余裕を持たせるため、資金がショートする想定時期の6か月以上前から、資料準備・投資家へのアプローチを始めることが実務上の一般的な目安とされます。
出典・参考(2026-07-21確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(募集株式発行関連規定) https://elaws.e-gov.go.jp/
- 経済産業省 スタートアップ育成関連施策情報 https://www.meti.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。