この記事で分かること
- 1973年のワシントン・ポスト社株の取得について、バークシャー・ハサウェイの株主への手紙が何を述べ、何が独立に確かめられるか
- 本源的価値(将来のキャッシュフローの割引現在価値)で「価格と価値の差」を測る考え方と、前提を変えたときの価値の動き
- β(CAPM)で測るリスクと、事業の確実性と買値で測るリスクの違い。どちらを、どの場面で使うか
想定読者:企業価値評価や株式投資の判断を学んでいる方、DCFやCAPMを実務で使い始めた方
前提知識:現在価値と割引の考え方(βやCAPMは本文で説明します)
バークシャー・ハサウェイの1985年度の株主への手紙で、ウォーレン・バフェットは、ワシントン・ポスト社(以下WPC)の株式を1973年なかばに、当時の1株あたり事業価値の4分の1以下の価格で買ったと書いている1。8年後の1993年度の手紙では、同じ取得を、βでリスクを測る理論への反論の例として持ち出した。
一つの取得が、二つの問いにつながっている。株式の価値をどう見積もるか、そしてリスクを何で測るか。現代の金融の言葉でいえば、前者は本源的価値と市場価値の差の問題であり、後者はCAPMのβと事業リスクの関係の問題である。本稿では、手紙の数字が当事者の説明であることを確かめたうえで、二つの考え方の違いと使い分けを、単純化した設例で整理する。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1971年(逆算) | ワシントン・ポスト社(WPC)が株式を公開。1994年度の手紙の「上場の2年後に取得」からの逆算で、上場の日付・価格は一次資料で未確認 |
| 1973年6月1日 | バークシャー側がWPCのクラスB株についてSECにSchedule 13D(大量保有の報告)を提出(2014年の修正報告書の記載) |
| 1973年なかば | バークシャーがWPC株を取得。原価1,060万ドル(1985年度の手紙) |
| 1974年末 | 保有の時価800万ドル。原価に対し約24.5%の含み損 |
| 1985年 | WPCの比例的な自社株償還(全株主から持株数に応じて同じ割合で買い取る償還)に応じる。償還金と年末時価の合計は2.21億ドル |
| 1986年初め | バフェットがWPCの取締役を退任(キャピタル・シティーズ株の取得のため) |
| 1985〜94年 | 確認した6時点(1985・1987・1989・1991・1993・1994年末)の保有表で、株数1,727,765株・原価9,731千ドルが同じ |
| 1994年3月 | 1993年度の手紙が、βによるリスクの定義を批判し、例にWPCを挙げる |
| 1995年3月 | 1994年度の手紙が、本源的価値を割引現在価値として定義する |
「4 分の1以下」の出どころ——当事者の手紙と、一つの公的記録
取得についての記述は、ほぼすべてバフェット自身の手紙に拠る。バークシャーのウェブサイトに掲載されている手紙は1977年度分からで、1973年当時のWPCの年次報告書や当時の評価資料は、本稿の調査では入手できなかった。独立した記録として確認できたのは、バークシャー側がWPCの2種類の株式のうちのクラスB株についてSECに大量保有の報告(Schedule 13D)を提出した日付が1973年6月1日だったという、2014年の修正報告書の記載である2。これで1973年6月1日に大量保有の報告が提出されていたことは裏付けられるが、取得の具体的な日付や株数・価格は分からない。
「4分の1以下」の根拠として、1985年度の手紙は、WPCの本源的な事業価値を4億〜5億ドルと見積もったこと、株式の時価総額は約1億ドルで毎日公表されていたことを挙げる。比率の計算に特別な洞察は要らず、多くのアナリストやメディア業界の経営者も同じように見積もっただろう、とも付け加えている3。割り算をすれば価格÷価値は約20〜25%で、価値に対する差(安全域)に直すと約75〜80%になる。ただし、この数字は12年後に書かれた回想で、当時の評価メモで確かめたものではない。「多くのアナリストも同様」という部分も当事者の主張である。
取得原価の表記も手紙によって異なる。1985年度の手紙の本文は1,060万ドル、1985年末以降の保有表は9,731千ドル、1993年度の手紙の本文は「約1,000万ドル」とする。1987年度の手紙が挙げる1株5.63ドルは、保有表の原価を保有株数1,727,765株で割った値(約5.63ドル)と一致する4。以下、1974年末との比較には1985年度の手紙の1,060万ドルを使う。
事業は順調、株価は下落——1974年末の含み損
1985年度の手紙によれば、1973年から74年にかけてWPCの事業は順調で、本源的価値は増えた。それでも1974年末のバークシャーの保有は、原価1,060万ドルに対して時価800万ドルとなり、約24.5%の含み損を抱えた。前年に「ばかげたほど安い」と考えた株が、本源的価値の20%を大きく下回る水準まで売られたという5。
なぜ価格は価値から離れたままだったのか。同じ手紙でバフェットは、1970年代前半の機関投資家の多くは事業価値をほとんど重視せず、市場は完全に効率的だとする当時の新しい理論の影響を受けていた、と述べる6。これはバフェット個人の見方で、当時の機関投資家の行動を実証した記述ではない。本稿では、当時の投資家が実際に何を根拠に売買したかは扱わず、手紙が示す二つの物差し、本源的価値とリスクの測り方に絞る。
バフェットは本源的価値を割引現在価値で定義した——ただし「極 めて主観的」
1994年度の手紙は、本源的価値を「事業の残りの存続期間に取り出せる現金の割引現在価値」と定義した。そのうえで、計算する人は誰でも極めて主観的な数字にたどり着き、その数字は将来のキャッシュフローの見積りの修正と金利の変化で動く、と認めている7。現代の実務でいえば、フリーキャッシュフロー(FCF)を予測し、資本コストで割り引くDCF法と、将来の現金を割り引く構造は同じである。違いもある。手紙は割引率の決め方を示しておらず、βによるリスクの測り方を退けている。現代の実務のDCFは、CAPMで株主資本コストやWACCを求めることが多い。
主観的な数字を、判断にどう使うのか。表2は、株主に帰属する来期のFCF(FCFE)が100億円の架空の会社について、割引率(株主資本コスト)と永続成長率の組み合わせを変えた単純化した設例である。株主に帰属するFCFを株主資本コストで割り引いた値は株式価値なので、時価総額とそのまま比べられる。
| 成長率 2% | 成長率 3% | 成長率 4% | |
|---|---|---|---|
| 割引率 8% | 1,667(24%) | 2,000(20%) | 2,500(16%) |
| 割引率 10% | 1,250(32%) | 1,429(28%) | 1,667(24%) |
| 割引率 12% | 1,000(40%) | 1,111(36%) | 1,250(32%) |
前提の置き方しだいで、価値は1,000億円から2,500億円まで2.5倍の幅で動く。どれか一つを「正しい価値」と決めるのは難しい。一方で、時価総額400億円を株式価値で割った比率(価格÷価値)は、最も保守的な組み合わせ(割引率12%・成長率2%)でも40%にとどまる。差がこれだけ大きければ、少なくとも表の範囲の前提では「価格は価値を下回る」という結論は変わらない。ただし、FCF予測そのものの妥当性、前提の範囲の置き方、範囲を超える悪化は別に確かめる必要がある。1985年度の手紙が、比率の計算に特別な洞察は要らなかったと書くのは、この状況を指していると読める(編集部の解釈)。反対に、価格が価値の中央の推定に近いときは、前提の小さな違いで結論が逆転する。リバースDCFは、現在の株価から逆算して市場が織り込む成長率などの前提を求める方法で、この確認を逆から行う。
βで測るリスク、事業で測るリスク
CAPM(資本資産評価モデル)は、Sharpe(1964)らが示した理論で、株式の期待収益率を、β(市場の収益率に対する個別株の収益率の感応度で、系統的リスクの指標)で説明する8。CAPMでは、株主資本コストはリスクフリーレートに、βと市場リスクプレミアムの積を足したものになる。βは通常、過去の株式の収益率を市場の収益率に回帰して推定する。市場が1%動いたとき個別株が平均して何%動いたかを、過去のデータから測るということである(回帰分析によるβの推定)。分散投資をしている投資家にとって、個別企業に固有の変動は打ち消し合うので、残るのは市場と一緒に動く部分だけだ、という考え方である。
1993年度の手紙はこれを批判した。学者は投資のリスクを株価の相対的な変動として定義し、過去の変動であるβを精密に計算するが、「近似的に正しいほうが、精密に間違うよりよい」という原則を忘れている。βに基づく理論では、1973年のWPCのように市場に比べて大きく下落した株は、下がった価格のほうが「よりリスクが高い」ことになってしまう、とバフェットは書く9。手紙は当時のWPCのβの値を示しておらず、本稿も示さない。以下は論理を確かめるための設例である。
図3の設例では、市場と同じ動きをしていた株が、最後の2期間に市場より大きく下げた。1〜4期のデータで推定したβは1.00、急落を含む1〜6期では2.75になり、CAPMの株主資本コストは7.0%から15.8%に上がる。株価が30%下がった後のほうが、この物差しでは「リスクが高い」。この設例では急落期に市場との共分散が市場の分散に比べて大きくなったためで、急落すれば必ずβが上がるわけではない。一方、事業の見通し(1株あたり来期FCF 10円、成長率2%)が変わらないとすると、価格から逆算した期待収益率は7.0%から9.1%に上がる。価格=来期FCF÷(r−g) を r について解くと r=来期FCF÷価格+g で、急落後は 10÷140+2%≒9.1%になる。
手紙は代わりに、保有期間中に受け取る税引後の金額(売却分を含む)が、当初の購買力に控えめな利子を加えた額に届くかどうかをリスクと定義し、評価の要素として、事業の長期的な経済性、経営者の能力と資金の使い方、成果を株主に還元するかどうか、買値、税とインフレの五つを挙げた。そのうえで、これらは工学的な精度では計算できないと認めている10。
| 項目 | βによる見方(CAPM) | 1993年度の手紙の見方 |
|---|---|---|
| リスクとは | 系統的リスク(市場と連動し、分散投資では消えない部分) | 損失や損害の可能性。購買力に控えめな利子を加えた額を回収できないこと |
| 測るもの | β=市場の収益率に対する個別株の収益率の感応度(過去のデータから推定) | 事業の経済性・経営者の能力・株主への還元・買値・税とインフレ |
| 精度 | 統計で数値が出る(推定の誤差はある) | 数値化は難しく、判断に頼る(手紙も工学的な精度は無いと認める) |
| 株価が急落した後 | 推定βは変わりうる。図3の設例では上がったが、必ず上がるわけではない | 見通しが変わらなければ、買値が下がった分だけリスクは下がる |
| 主な使い道 | 要求収益率(株主資本コスト)を決める材料・運用評価 | 個別の事業を丸ごと所有するつもりで買うときの判断 |
ただし、これは一人の投資家の見解であり、学界の合意ではない。編集部の整理では、CAPMの側から見れば、βは系統的リスクの指標で、分散投資をした投資家の要求収益率を決める材料であり、ある株が割安かどうかを判定する道具ではない。図3でも、βの上昇と期待収益率の上昇は同じ方向を向く。ただし、CAPMの要求収益率15.8%と、FCF予測から逆算した期待収益率9.1%は一致しない。前者はβから決まる「求められる収益率」、後者は見通しと価格から決まる「見込める収益率」で、別のものとして扱う必要がある。Fama and French(2004)は、CAPMは株主資本コストの推定や運用成績の評価に2004年時点でも広く使われていると述べつつ、実証上の成績は悪いと論じた11。学界はその後もβを含む多因子モデルを使って研究を続けている。バークシャーの長期の超過収益を、低β・割安・高品質の株式への投資とレバレッジで説明する研究もあるが、これはWPCの取得を説明したものではない12。どちらか一方を正解と決めず、問いに応じて使い分けるのが妥当だろう。
1株あたり価値を押し上げた自社株買い——手紙のいう「三 重の効果」
1985年度の手紙は、その後の成果を「三重の効果」と表現した。会社の事業価値が大きく伸び、自社株買いによって1株あたり事業価値はそれより速く伸び、割引の縮小によって株価は1株あたり事業価値の伸びを上回った13。編集部の整理では、1株あたり株価は「事業価値 ÷ 株数 ×(株価 ÷ 1株あたり価値)」と分解でき、三つの効果はこの三つの項に対応する。三つの項は順に「会社全体の価値」「株数の減少」「価格と価値の差の縮小」に当たる。
手紙によれば、当時のWPCの最高経営責任者キャサリン・グラハムは、安い価格で大量の自社株を買い戻した。バフェット自身の仮定の比較では、1973年なかばに人気だったメディア株6社ほどに同じ1,060万ドルを投じていれば1985年末の価値は4,000万〜6,000万ドル程度で、WPCで得た約1.6億ドルの上乗せは、大部分がグラハムの経営判断によるという。客観的に測った価値の創造ではなく、当事者の見積りによる比較である14。成果を投資家の判断だけに帰していない点は、当事者の説明として押さえておきたい。表4は、自社株買いの価格が1株あたり価値をどう変えるかの設例である。
| 買い戻し価格 | 1株 | 支出 | 買い戻し後の価値 | 1株あたり価値 | 変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| 価値の25% | 125円 | 25億円 | 475億円 | 593.75円 | +18.75% |
| 価値と同じ | 500円 | 100億円 | 400億円 | 500.00円 | ±0.00% |
| 価値の150% | 750円 | 150億円 | 350億円 | 437.50円 | −12.50% |
価値の25%の価格で発行済株式の20%を買い戻すと、残る株主の1株あたり価値は18.75%増える。価値どおりの価格なら変わらず、表4の150%の価格なら12.5%減る。支出しても事業の見通しが変わらない等を前提とした設例である。自社株買いの効果は、買う価格と価値の関係で決まる。
保有を続けた期間の時価も、一本調子では増えていない。保有表の年末時価は、1989年末の486.4百万ドルから1991年末の336.1百万ドルへ、約30.9%減った(図2)15。
現代の実務への応用——価値とリスクを別々の物差しで確かめる
WPCの事例から、株式投資や企業価値評価の場面で使える確認の手順を五つ取り出す。
1. 価値は幅で見積もり、価格がその幅のどこにあるかを見る
DCFで価値を一点に決めず、割引率・成長率・利益率の妥当な範囲で表2のような感応度表を作る(感応度分析の作り方)。そのうえで、現在の価格が最も保守的な前提での価値も下回るのか、中央の推定の近くにあるのかを確かめる。前者なら、表の範囲では結論が変わらないことが分かる。ただし、FCF予測そのもの、前提の範囲の置き方、範囲を超える悪化は別に確かめる。後者なら、どの前提が結論を左右するかを特定してから判断する。
2. 割引率に入れるβと、事業リスクの評価を分けて書く
DCFの資本コストにCAPMを使う場面では、βは分散投資家の要求収益率を決める材料として扱い、リスクフリーレート・市場リスクプレミアム・βの出典と推定期間を明記する(CAPMの実務)。事業そのもののリスク、つまり競争上の地位、負債の大きさ、経営者の資本配分は、βとは別に、キャッシュフローの予測とシナリオで扱う。急落直後のデータで推定したβをそのまま使うと、図3のように資本コストが大きく動くことがある。推定期間を変えた場合の値も並べておく。
3. 下落が「見 通しの変化」か「価 格だけの変化」かを確かめる
価格が下がったとき、まず業績・受注・競争環境・資金繰りなど、キャッシュフローの見通しを変える情報が出ていないかを確認する。見通しが悪化しているなら、価値の見積りも下げる。1985年度の手紙も、1973〜74年にWPCの事業は順調で本源的価値は増えたと書き、株価の下落と事業の変化を分けて説明している(後年の当事者の説明である)。見通しの悪化を見落として「割安」と判断するのが、いわゆるバリュートラップである。
4. 含み損の期間に耐えられる大きさにとどめる
価格と価値の差が大きくても、差がさらに広がる局面はある。WPCでは取得の翌年末に約24.5%、保有を続けた1989〜91年にも約30.9%の時価の減少があった。過去の値は将来の下落の目安や上限ではない。投資額は、これを上回る下落や長期化、途中で資金が必要になる場合も想定して決め、価値の見積りを見直す条件(どの指標がどこまで悪化したら判断を改めるか)を、買う前に書いておく。
5. 経営者の資本配分を、価格と価値の関係で評価する
自社株買いや配当の発表を見たら、買い戻しの価格が1株あたり価値をどれだけ下回るか(または上回るか)を確かめる(配当と自社株買い)。1993年度の手紙は、取得の時点で事業の見通しが良いことに加えて、経営者がすべての株主を誠実に扱うと判断したことが同じく重要だったと述べている16。種類株のある会社や支配株主のいる会社では、還元の方針が少数株主にも公平かどうかが、価値の見積りの前提になる。
限界——後知恵と生存者バイアス
本稿の事実関係は、公的記録で確かめられた大量保有の報告日を除き、成功した投資を後年に振り返った当事者の説明に拠る。1985年の償還金と年末時価の合計2.21億ドルを原価1,060万ドルで割れば約20.8倍になるが、これは配当・税・時間価値を含めた総合的な投資収益率ではなく、結果を知ってから選んだ一事例の数字である。同じ時期に同じ考え方で買い、成果が出なかった投資は、手紙のような形では語られにくい(生存者バイアス)。この事例から、割安な株を買えば報われると一般化することはできない。
βの批判も実際のβ値に基づかない論理上の例示である。1973年当時のWPCの業績や株価、取得株数・持株比率は一次資料で確認できていない。
よくある質問
本源的価値と株価は、なぜ離れることがあるのですか。
株価は売り手と買い手が合意した取引の価格で、本源的価値は将来のキャッシュフローから見積もる値です。見積りは人によって異なり、短期的な需給や悲観・楽観も価格に影響するため、両者は一致するとは限りません。ただし、差があるように見えるのは自分の見積りが誤っているからかもしれない、という点も同時に確かめる必要があります。
βが高い株は避けるべきですか。
βは市場の収益率に対する個別株の収益率の感応度
まとめ——価値は幅で、リスクは二つの物差しで
1973年のWPC株の取得は、バフェットの手紙では、価格が本源的価値の4分の1以下だった事例として、また、βによるリスクの定義がもたらす矛盾の例として語られている。本源的価値は主観的な見積りだが、幅で示し、価格がその幅のどこにあるかを見れば判断に使える。βは系統的リスクの指標で、CAPMでは分散投資家の要求収益率を決める材料になり、個別の事業の確実性や割安さを直接示すものではない。数字の多くは当事者の説明であり、後知恵の成功例であることを差し引いたうえで、二つの物差しを使い分ける考え方は、現代の評価と投資判断にもそのまま当てはまる。
脚注
- 1985年度の手紙(R1)の「Marketable Securities」節、WPCの段落。取得を「1973年なかば」、価格を「当時の1株あたり事業価値の4分の1以下」と書きます。12年後に書かれた当事者の説明で、1973年当時の記録ではありません。↩
- SECのEDGARに収録されたSchedule 13Dの修正報告書(Amendment No. 11、2014年7月1日提出。R7)は、報告者の一部が1973年6月1日に原報告書を提出したと記載しています。原報告書そのものはEDGARに収録されておらず、1973年の持株数・比率はこの資料からは分かりません。修正報告書の持株数は2014年時点のものです。↩
- 1985年度の手紙(R1)の同じ段落。事業価値4億〜5億ドル、時価総額約1億ドル、「比率の計算に特別な洞察は要らなかった」はいずれも当事者の回想です。当時の評価メモや、アナリストの見積りを示す資料は確認できていません。二次資料には当時の時価総額について別の数字を挙げるものがありますが、一次資料で確認できないため本稿では使いません。価格÷価値の約20〜25%は、1億÷5億、1億÷4億による編集部の計算です。↩
- 1,060万ドルは1985年度の手紙(R1)の本文、9,731千ドルは1985〜1994年度の手紙の保有表(R1・R4〜R6・R2・R3)、「約1,000万ドル」は1993年度の手紙(R2)の本文、1株5.63ドルは1987年度の手紙(R4)によります。9,731,000ドル÷1,727,765株≒5.63ドルは編集部の計算です。本文の原価と保有表の原価の差は、1985年に応じた比例償還(自社株の一部の売り戻し)によるものと考えられますが(編集部の推定)、手紙は差額を説明していません。↩
- 1985年度の手紙(R1)。原文は、市場がWPC株を本源的価値1ドルあたり20セントを大きく下回る水準まで引き下げた、という趣旨です。約24.5%は800万÷1,060万−1による編集部の計算で、手紙の「約25%」と整合します。当時のWPCの売上・利益の数値は本稿の調査では取得できていません。↩
- 1985年度の手紙(R1)。バフェットは、当時の機関投資家は有名ビジネススクールの学者が唱える「株式市場は完全に効率的だ」という理論の影響下にあったと書いています。当時の機関投資家の行動を実証した記述ではなく、一人の当事者の見方です。↩
- 1994年度の手紙(R3)の「Book Value and Intrinsic Value」節。同じ節で、本源的価値はあいまいさを伴うが、投資と事業の相対的な魅力を評価する唯一の論理的な方法だとも述べています。↩
- CAPMの原論文はSharpe(1964、R8。本稿では書誌のみ確認)で、Fama and French(2004、R9)の要旨は、SharpeとLintner(1965)のCAPMを資産価格理論の出発点と位置づけています。式とβの推定方法の説明は、標準的な教科書の内容を編集部が要約したものです。↩
- 1993年度の手紙(R2)の「Common Stock Investments」節。「近似的に正しいほうが、精密に間違うよりよい」はこの節の言い回しを要約したものです。手紙はWPCのβの値も、当時の学界や証券会社の推奨も示していません。β批判はバフェット個人の見解です。↩
- 1993年度の手紙(R2)の同じ節。五つの要素の訳は編集部によります。手紙は、これらの要素はどのデータベースからも取り出せないが、数値化が難しいことはその重要性を否定しない、と述べています。↩
- Fama and French(2004、R9)。本稿では要旨を確認し、本文は読んでいません。確認した要旨にはWPCやバフェットへの言及はありません。CAPMの実証上の問題が、モデル自体の欠陥によるのか、市場ポートフォリオの代理変数の問題によるのかについても論じています。↩
- Frazzini, Kabiller and Pedersen(2018、R10)。本稿では要旨のみ確認しました。確認した要旨にはWPCへの言及はありません。低βの株式を選んだ結果として成果を説明する整理は、βそのものを退けるバフェットの主張とは一致しておらず、両者の見解には緊張関係があります。↩
- 1985年度の手紙(R1)。「triple dip」の三つの内容は手紙の記述によりますが、それぞれの寄与の大きさを示す数値はありません。株価の分解式は編集部によるものです。↩
- 1985年度の手紙(R1)。人気メディア株6社ほどに投じた場合の4,000万〜6,000万ドルは、当事者による仮定の比較で、6社の名前や計算の根拠は示されていません。グラハムの自社株買いの規模・価格を示す当時の資料は、本稿の調査では取得できていません。↩
- 1985・1987・1989・1991・1993・1994年度の手紙の保有表(R1・R4・R5・R6・R2・R3)。原典の単位は千ドルで、本文と図2は百万ドルに換算して小数1桁に四捨五入しました。約30.9%は336,050÷486,366−1による編集部の計算です。1985年の比例償還の金額は手紙に明記されていません。↩
- 1993年度の手紙(R2)の「A Few Personal Items」。同じ箇所で、取得は約1,000万ドル、保有は年約700万ドルの配当を生み、価値は4億ドルを超えるとも書いています。取得時点の判断を記した当時の記録は確認できていない、後年の当事者の説明です。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1985年度 株主への手紙(1986年3月4日付) berkshirehathaway.com (参照箇所:「Marketable Securities」節のWPCの段落と保有表、Capital Citiesの節。脚注1・3・4・5・6・13・14・15の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R2 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1993年度 株主への手紙(1994年3月1日付) berkshirehathaway.com (参照箇所:「Common Stock Investments」節(βの批判とリスクの定義、保有表)と「A Few Personal Items」。脚注4・9・10・15・16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1994年度 株主への手紙(1995年3月7日付) berkshirehathaway.com (参照箇所:「Book Value and Intrinsic Value」節と「Common Stock Investments」節(保有表、上場の2年後の取得)。脚注4・7・15の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1987年度 株主への手紙(1988年2月29日付) berkshirehathaway.com (参照箇所:非支配株式の保有に関する段落(1株5.63ドル)と保有表。脚注4・15の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R5 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1989年度 株主への手紙 berkshirehathaway.com (参照箇所:保有表。脚注4・15の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R6 Warren E. Buffett, Berkshire Hathaway Inc. 1991年度 株主への手紙 berkshirehathaway.com (参照箇所:保有表。脚注4・15の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R7 Berkshire Hathaway Inc. ほか, Schedule 13D Amendment No. 11(The Washington Post Company, Class B Common Stock), U.S. Securities and Exchange Commission EDGAR, 2014年7月1日提出 sec.gov (参照箇所:冒頭(原報告書の提出日 1973年6月1日)。脚注2の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R8 William F. Sharpe, “Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk,” Journal of Finance 19(3): 425–442, 1964 doi.org (参照箇所:書誌のみ確認。脚注8の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R9 Eugene F. Fama and Kenneth R. French, “The Capital Asset Pricing Model: Theory and Evidence,” Journal of Economic Perspectives 18(3): 25–46, 2004 aeaweb.org (参照箇所:要旨。脚注8・11の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R10 Andrea Frazzini, David Kabiller and Lasse Heje Pedersen, “Buffett’s Alpha,” Financial Analysts Journal 74(4): 35–55, 2018 doi.org (参照箇所:要旨(NBER Working Paper 19681 の要旨も参照)。脚注12の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言ではありません。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。ワシントン・ポスト社株の取得に関する数値は、大量保有の報告日を除きバークシャー・ハサウェイの株主への手紙(当事者の説明)によるもので、手紙によって表記が異なる場合があります。DCF・β・自社株買いの数値例は単純化した設例で、実在の企業の数値ではありません。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージで、実在の新聞社・施設・人物を再現したものではありません。