この記事で分かること
- 14件の取引と5件の決算整理仕訳を、仕訳→T勘定→残高試算表→PL・BS・間接法CFの順に通して、数字のつながりを電卓で追う手順
- 4つの検算(試算表の貸借一致、資産=負債+純資産、CFの月末現金=BSの現金、PLの純利益=利益剰余金の増加)が、それぞれ何を確かめているか
- 転記漏れ・片側だけの転記・桁の入れ替え・科目の取り違え・借方貸方の逆転記を入れたとき、どの段で見つかり、どれは見つからないか
想定読者:経理未経験の若手、会計を学ぶ学生・社会人、財務モデルを作る前に帳簿から三表までの流れを確かめたい人
前提知識:PL・BS・CFがそれぞれ何を表すかの概観。借方・貸方のルールは本文でも確認します。
結論:仕訳は「勘 定ごとの残高」を経由して三表になり、各段に検算がある
仕訳を並べただけでは、三表になりません。仕訳を勘定ごとに集めて残高を出し(T勘定への転記)、残高を一覧にして借方と貸方を照合し(残高試算表)、そこからPL・BS・CFを組む、という3つの段を通ります。月次決算(月末に帳簿を締めて、その月の損益と財政状態を確定する作業)で試算表の貸借が合わないとき、PLの数字がBSやCFとつながらないときは、どの段で崩れたかを遡って探します。三表の接続点は財務三表のつながりの記事に委ね、本記事は「仕訳から三表まで」を1か月の設例で通します。
結論を先に書きます。学習用の架空事例の部品卸X社(2026年4月、単位は千円)では、14件の取引と5件の決算整理仕訳から、整理後の残高試算表は借方・貸方とも21,500になります。PLの当期純利益は590、BSは資産12,890=負債8,800+純資産4,090、CFの月末現金は4,740でBSの現金と一致します。
なお、T勘定は勘定ごとの増減を左右に書く学習用の図で、帳簿そのものではありません。会社法は株式会社に、適時に正確な会計帳簿を作成することを求めており、企業会計原則も、すべての取引につき正規の簿記の原則に従って正確な会計帳簿を作成するよう求めています1。実際の帳簿は総勘定元帳(勘定ごとの記録の全体)で、会計ソフトを使う場合も、仕訳から元帳、試算表へと集計される構造は同じです。
設例の前提:月初残高と、あらかじめ決めておく処理
以下は学習用の架空事例です。X社(仮称)の月初(2026年4月1日)の貸借対照表は、資産が現金3,000・売掛金2,000・繰越商品1,500・備品1,200の合計7,700、負債・純資産が買掛金1,200・借入金3,000・資本金2,000・利益剰余金1,500の合計7,700で、貸借が一致しています。繰越商品は商品の在庫を表す勘定です。
T勘定は左が借方、右が貸方です。資産と費用は借方に書くと増え、負債・純資産・収益は貸方に書くと増えます2。借方と貸方の金額が常に一致する理由と、2つの仕訳の例は複式簿記の用語ページにあります。
次の処理は、設例を簡単にするための仮定で、実務の標準を示すものではありません。
- 商品売買は三分法(仕入・売上・繰越商品の3つの勘定で記録し、月末に仕入勘定を売上原価に整える方法)で記録します。
- 備品は、減価償却費の分だけ備品勘定を直接減らします。減価償却累計額を別の勘定で持つ方式は使いません。減価償却は備品全体で月50とし、4月15日に買った備品も1か月分とします。
- 期末の商品棚卸高は、実地棚卸で2,100と確認されたものとします。
- 法人税等と消費税は扱いません。そのため税引前の利益と当期純利益は同額です。制度の記述は2026年10月時点の日本基準を前提とし、新しいリース会計基準など基準改正の影響は範囲外です。
仕訳:14件の取引と、月末の5件の決算整理仕訳
図表1は、4月の取引を仕訳にしたものです。取引13だけは借方が2科目の複合仕訳です。借入金の返済500は財務の動き、利息40は損益の費用で、現金から出ていく540を1本にまとめています。三表で入る場所が違う2つの要素が1行に入っている点は、CFを組むときに効きます。
| 番号 | 日付 | 取引の内容 | 借方 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 4/2 | 商品を掛けで仕入 | 仕入 | 買掛金 | 6,000 |
| 2 | 4/3 | 商品を現金で販売 | 現金 | 売上 | 1,800 |
| 3 | 4/6 | 商品を掛けで販売 | 売掛金 | 売上 | 5,000 |
| 4 | 4/9 | 売掛金を現金で回収 | 現金 | 売掛金 | 3,500 |
| 5 | 4/10 | 買掛金を現金で支払 | 買掛金 | 現金 | 5,000 |
| 6 | 4/13 | 銀行から借入れ | 現金 | 借入金 | 2,000 |
| 7 | 4/15 | 備品を現金で購入 | 備品 | 現金 | 800 |
| 8 | 4/20 | 商品を掛けで仕入 | 仕入 | 買掛金 | 2,000 |
| 9 | 4/22 | 商品を掛けで販売 | 売掛金 | 売上 | 2,400 |
| 10 | 4/25 | 給料を現金で支払 | 給料 | 現金 | 700 |
| 11 | 4/26 | 家賃を4・5月分まとめて現金で支払 | 支払家賃 | 現金 | 400 |
| 12 | 4/27 | 水道光熱費を現金で支払 | 水道光熱費 | 現金 | 120 |
| 13 | 4/28 | 借入金の一部返済と利息 | 借入金 500/支払利息 40 | 現金 | 540 |
| 14 | 4/29 | 売掛金を現金で回収 | 現金 | 売掛金 | 2,000 |
| 整1 | 4/30 | 期首の商品を仕入へ振替え | 仕入 | 繰越商品 | 1,500 |
| 整2 | 4/30 | 期末の商品棚卸高を繰越商品へ | 繰越商品 | 仕入 | 2,100 |
| 整3 | 4/30 | 備品の減価償却(月額) | 減価償却費 | 備品 | 50 |
| 整4 | 4/30 | 月末までの給料の未払計上 | 給料 | 未払費用 | 100 |
| 整5 | 4/30 | 5月分の家賃を前払費用へ | 前払費用 | 支払家賃 | 200 |
整1〜整5は、月末に費用と収益を4月の分に整える決算整理仕訳です。整1と整2は売上原価を確定する仕訳で、仕入勘定に期首の在庫1,500を足し、期末の在庫2,100を引きます。企業会計原則は、売上原価を、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示するとしています3。仕入勘定は、取引1と8の8,000に整1の1,500を足し、整2の2,100を引いて7,400になります。在庫の評価方法は在庫の評価方法とCOGSの記事に委ねます。
整3は、備品の減価償却費50です。現金は出ませんが、1か月分の価値の減少を費用として載せます(減価償却とCapex)。整4は、4月分の給料のうち月末までに働いた分100を、まだ払っていないので未払費用として載せる仕訳です。整5は逆に、取引11で払った2か月分の家賃400のうち5月分200を前払費用に移し、4月の費用から外します。企業会計原則は、前払費用を当期の損益計算から除去し、未払費用を当期の損益計算に計上すると定めています4。現金の動きと費用の期間配分がずれる理由は、発生主義と現金主義の記事にあります。
T勘定:仕訳を勘定ごとに集めて、残高を出す
転記は、仕訳の借方の金額を、その勘定の左側へ、貸方の金額を右側へ、取引番号を添えて書き写す作業です。手順は次のとおりです。
- 勘定ごとにT字を書き、月初残高を、増える側に書きます(資産は左、負債・純資産は右)。
- 仕訳を1行ずつ見て、借方の科目の左側と、貸方の科目の右側に、番号と金額を書きます。
- すべて写したら、左右それぞれを合計します。
- 大きいほうから小さいほうを引いた差を残高とし、大きい側に「残高」と書きます。
図表2の現金は、借方が3,000+1,800+3,500+2,000+2,000=12,300、貸方が5,000+800+700+400+120+540=7,560で、残高は12,300-7,560=4,740(借方)です。売掛金は9,400-5,500=3,900、買掛金は貸方9,200-借方5,000=4,200(貸方)、仕入は決算整理を含めて9,500-2,100=7,400です。
ほかの勘定にも同じ作業を行うと、図表3の整理前の残高が得られます(たとえば借入金は3,000+2,000-500=4,500、売上は1,800+5,000+2,400=9,200)。
残高試算表:貸借の一致で何が分かり、何が分からないか
残高試算表は、すべての勘定の残高を借方と貸方に分けて並べ、合計を比べる表です。図表3は、決算整理の前と後を1つの表に並べています。
| 勘定科目 | 整理前 借方 | 整理前 貸方 | 整理記入(残高への加減) | 整理後 借方 | 整理後 貸方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現金 | 4,740 | - | - | 4,740 | - |
| 売掛金 | 3,900 | - | - | 3,900 | - |
| 繰越商品 | 1,500 | - | -1,500/+2,100 | 2,100 | - |
| 前払費用 | - | - | +200 | 200 | - |
| 備品 | 2,000 | - | -50 | 1,950 | - |
| 仕入 | 8,000 | - | +1,500/-2,100 | 7,400 | - |
| 給料 | 700 | - | +100 | 800 | - |
| 支払家賃 | 400 | - | -200 | 200 | - |
| 水道光熱費 | 120 | - | - | 120 | - |
| 減価償却費 | - | - | +50 | 50 | - |
| 支払利息 | 40 | - | - | 40 | - |
| 買掛金 | - | 4,200 | - | - | 4,200 |
| 未払費用 | - | - | +100 | - | 100 |
| 借入金 | - | 4,500 | - | - | 4,500 |
| 資本金 | - | 2,000 | - | - | 2,000 |
| 利益剰余金 | - | 1,500 | - | - | 1,500 |
| 売上 | - | 9,200 | - | - | 9,200 |
| 合計 | 21,400 | 21,400 | - | 21,500 | 21,500 |
整理前の合計は借方・貸方とも21,400で一致します。整理後は21,500で、100増えました。理由は整4です。整1・整2・整3・整5は、借方の勘定の間での付け替え(たとえば繰越商品から仕入へ)で合計が変わらず、整4だけが借方の給料と貸方の未払費用の両方に新しい金額を加えたためです。
ただし、貸借の一致は、写した借方の合計と貸方の合計が等しいという確認にとどまります。仕訳を丸ごと転記し忘れた場合や、科目を取り違えた場合は、借方も貸方も同じ額だけずれるので、一致したままです。この限界は、後の「誤りを入れてみる」で数字を使って確かめます。完成した試算表を財務モデルの科目へ組み替える作業は、月次試算表からHistoricalsを作る方法の記事で扱っています。
三表:整理後の試算表から組み、4つの検算で締める
整理後の試算表の勘定は、収益・費用がPL、資産・負債・資本金がBSに行きます。利益剰余金は月初の1,500に当期純利益590を足した2,090です。本来は損益の勘定を締めて利益剰余金へ振り替える決算振替の仕訳を行いますが、ここではその仕訳を省略し、純利益を直接足しています。
CFは間接法で組みます。間接法は、税金等調整前当期純利益に、非資金損益項目(減価償却費のように現金が動かない損益)と営業活動に係る資産・負債の増減を加減して、営業活動のキャッシュ・フローを表示する方法です5。符号の原則は「資産が増えれば現金は減り、負債が増えれば現金は増える」です。売掛金が1,900増えたことは、売上は立ったが現金が入っていない分なので-1,900、買掛金が3,000増えたことは、仕入は立ったが現金を払っていない分なので+3,000とします。純利益に含まれる支払利息40は、現金でも同額が出ているので、本設例では営業活動の区分に置き、足し戻しと支払額の控除を相殺して1つにまとめています6。
| 項目 | 金額 | 計算・根拠 |
|---|---|---|
| 損益計算書(2026年4月1日〜30日) | ||
| 売上高 | 9,200 | 売上勘定の残高 |
| 売上原価 | 7,400 | 整理後の仕入勘定の残高 |
| 売上総利益 | 1,800 | 9,200-7,400 |
| 販売費及び一般管理費 | 1,170 | 給料800+支払家賃200+水道光熱費120+減価償却費50 |
| 営業利益 | 630 | 1,800-1,170 |
| 営業外費用(支払利息) | 40 | |
| 税引前当期純利益(税金は扱わないため当期純利益と同額) | 590 | 630-40 |
| 貸借対照表(2026年4月30日) | ||
| 現金 | 4,740 | |
| 売掛金 | 3,900 | |
| 商品(繰越商品) | 2,100 | |
| 前払費用 | 200 | |
| 備品(直接控除後) | 1,950 | 1,200+800-50 |
| 資産合計 | 12,890 | |
| 買掛金 | 4,200 | |
| 未払費用 | 100 | |
| 借入金 | 4,500 | |
| 負債合計 | 8,800 | |
| 資本金 | 2,000 | |
| 利益剰余金 | 2,090 | 月初1,500+当期純利益590 |
| 純資産合計 | 4,090 | |
| 負債・純資産合計 | 12,890 | 8,800+4,090 |
| キャッシュ・フロー計算書(間接法) | ||
| 税引前当期純利益 | 590 | |
| 減価償却費(現金の出ない費用) | +50 | 整3 |
| 売上債権(売掛金)の増加 | -1,900 | 3,900-2,000 |
| 棚卸資産(繰越商品)の増加 | -600 | 2,100-1,500 |
| 前払費用の増加 | -200 | 0→200 |
| 仕入債務(買掛金)の増加 | +3,000 | 4,200-1,200 |
| 未払費用の増加 | +100 | 0→100 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,040 | 590+50-1,900-600-200+3,000+100 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー(備品の取得) | -800 | 取引7 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | +1,500 | 借入れ2,000-返済500 |
| 現金の増加額 | 1,740 | 1,040-800+1,500 |
| 月初の現金 | 3,000 | |
| 月末の現金 | 4,740 | 3,000+1,740 |
| 4つの検算 | ||
| 検算1 試算表の貸借一致(整理後) | 差0 | 借方21,500-貸方21,500 |
| 検算2 資産=負債+純資産 | 差0 | 12,890-(8,800+4,090) |
| 検算3 CFの月末現金=BSの現金 | 差0 | 4,740-4,740 |
| 検算4 PLの純利益=利益剰余金の増加 | 差0 | 590-(2,090-1,500) |
図表4のとおり、PLは売上高9,200から売上原価7,400を引いた売上総利益が1,800、販売費及び一般管理費1,170を引いた営業利益が630、支払利息40を引いた当期純利益が590です。BSは資産12,890と、負債8,800・純資産4,090の合計が一致しています。CFは営業活動1,040、投資活動-800、財務活動+1,500で、現金は1,740増えて、月初3,000から月末4,740になります。取引13の複合仕訳の540は、返済500が財務活動、利息40が営業活動(純利益の中)に分かれて入っています。
4つの検算は、見ている場所がそれぞれ違います。検算1は転記の機械的な整合、検算2はBSの恒等式(資産=負債+純資産)、検算3はCFの運転資本の増減と現金の整合(キャッシュフロー調整表の考え方)、検算4はPLと利益剰余金のつながりです。検算3が合うのは、売掛金・繰越商品・前払費用・買掛金・未払費用の増減をCFに漏れなく入れたからで、どれかを入れ忘れると現金が合いません。
誤りを入れてみる:どの段で見つかるか
次に、正しく組めた設例へ誤りを1つずつ入れます。数字は、整理前の試算表(借方・貸方とも21,400)への影響です。
- 転記漏れ(仕訳ごと):取引8(仕入2,000/買掛金2,000)を両側とも転記し忘れると、仕入は6,000、買掛金は2,200になり、試算表は19,400=19,400で一致します。整理後の純利益は590から2,590へ2,000膨らみますが、4つの検算はすべて通ります。見つける手がかりは、仕入先の請求書や残高との照合です。
- 片側だけの転記:取引3の貸方(売上5,000)を転記し忘れると、借方21,400に対して貸方16,400で、差額が5,000になります。差額と同額の取引を探せば見つかります。
- 金額の転記ミス:取引4の現金3,500を3,050と写すと、借方20,950、貸方21,400で差額は450です。経験則として、差額が9で割り切れる(450=9×50)ときは、数字の入れ替えを疑います。
- 科目の取り違え:取引10の給料700を水道光熱費に記入すると、水道光熱費は120でなく820になります。試算表は21,400=21,400のままで、純利益も変わりません。科目別の前月比や予算との比較、証憑との照合で見つけます。
- 借方貸方の逆転記:取引2(現金売上1,800)を現金の貸方、売上の借方に写すと、現金は4,740から1,140、売上は9,200から5,600になりますが、試算表は17,800=17,800で一致します。現金の実査や預金残高の照合で見つけます。
試算表の貸借一致が見つけられるのは、片側だけの転記や金額の食い違いのように、借方と貸方の合計がずれる誤りです。漏れ・科目・逆転記のように両側が同額ずれる誤りは、帳簿の外にある証憑や実際の残高との照合で見つけることになります。検算が通っても、帳簿が正しいとは限りません。
実務チェックリスト
- 仕訳ごとに、借方合計=貸方合計になっているか(複合仕訳も含めて)を確認する。
- 転記後、勘定の残高が正常な側(資産・費用は借方、負債・純資産・収益は貸方)に出ているかを見る。逆側に出た残高は、逆転記か入力ミスの疑いがある。
- 試算表の貸借差額が出たら、差額と同額の取引、差額の半分の取引(片側だけを逆の側に写した誤り)、9で割り切れる差額(桁の入れ替え)の順に探す。
- 貸借が一致しても、現金は実査、預金・売掛金・買掛金は残高の照合で、帳簿の外の数字と突き合わせる。
- 決算整理仕訳(在庫、減価償却、未払・前払)の前後で、試算表の合計がどう動くかを確認する。本設例で合計が増えたのは、貸方に未払費用が新たに入った整4だけである。
- 三表を組んだら、4つの検算(貸借一致、資産=負債+純資産、CFの月末現金=BSの現金、純利益=利益剰余金の増加)を毎回同じ順で行う。
よくある質問(F AQ)
売上原価対立法でも、この設例の結果は同じになりますか。
売上原価対立法は、商品を売るたびに売上原価を記録する方法で、仕訳の形は三分法と異なります。期末の在庫が同じなら売上原価は同額になりますが、月末の整理の仕方が変わります。本設例は三分法で通しています。どちらを使うかを先に決めて一貫させることが前提です。
法人税等を入れると、どこが変わりますか。
PLでは税引前当期純利益から税金を引いた当期純利益になり、利益剰余金の増加額も税引後の額に変わります。税金が未払の間は、BSの負債にも加わります。本設例は税金を扱っていません。
同じ設例を会計ソフトで入力すれば、T勘定は不要ですか。
転記と集計を会計ソフトが行うので、手で書く場面は減ります。ただ、試算表の合計がずれたときに原因の取引を追う見方は、T勘定と同じです。
まとめ
仕訳は、T勘定で勘定ごとの残高になり、試算表で貸借を照合し、整理後の試算表から三表になります。X社の設例では、試算表が21,500=21,500、純利益が590、BSが12,890=8,800+4,090、月末現金が4,740で、4つの検算がすべて合いました。貸借一致が見つけるのは、借方と貸方がずれる誤りだけです。両側が同額ずれる誤りは、帳簿の外の証憑と実際の残高で確かめます。
脚注
- 会社法第432条第1項は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と定める(参考文献 R1)。企業会計原則「第一 一般原則」の二は「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と定める(参考文献 R2)。↩
- Corporate Finance Institute「T Accounts Guide」は、T勘定の左側が借方、右側が貸方であること、資産勘定では借方が増加、負債・資本勘定では貸方が増加することを説明している。収益・費用についても同ページに記載がある(参考文献 R3)。一般的な概念の参考であり、試算表以降の手順は同ページには書かれていない。↩
- 企業会計原則「第二 損益計算書原則」の三C。商業の場合の売上原価は「期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示」するとされる(参考文献 R2)。↩
- 企業会計原則「第二 損益計算書原則」の一A。「前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。」(参考文献 R2)。↩
- 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準「第三 表示方法」の一2は、間接法を、税金等調整前当期純利益に非資金損益項目、営業活動に係る資産及び負債の増減、投資活動・財務活動の区分に含まれる損益項目を加減して表示する方法とする。同基準は、個別ベースのキャッシュ・フロー計算書は連結に準じて作成するものとしている(参考文献 R4)。本記事の三表はこの区分を借りた学習用の組み方であり、特定の会社への適用を判断するものではない。↩
- 同基準「第二 作成基準」の二3は、利息に係るキャッシュ・フローを、受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動に記載する方法((1))か、支払利息を財務活動に記載する方法((2))のいずれかとする。(注6)は、利息の受取額及び支払額は総額で表示するとする(参考文献 R4)。本設例は(1)の区分を採用している。同基準(注7)の標準的な様式(間接法)は、支払利息をいったん足し戻して「利息の支払額」を別行で引く形で、本設例は費用40と支払額40が同額のため、両者を相殺した結果を示している。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 e-Gov法令検索「会社法」(法令番号:平成十七年法律第八十六号。2026年10月の閲覧時点で現行として表示されていた版) laws.e-gov.go.jp (参照箇所:第432条第1項。脚注1の根拠。閲覧日:2026年10月10日)
- R2 企業会計審議会「企業会計原則」(会計基準検索システム ASSET-ASBJ に収録) asb-j.jp (参照箇所:第一 一般原則 二、第二 損益計算書原則 一A・三C。脚注1・3・4の根拠。閲覧日:2026年10月10日)
- R3 Corporate Finance Institute「T Accounts Guide」 corporatefinanceinstitute.com (T勘定の左右と増減の一般的な概念の参考。脚注2の根拠。閲覧日:2026年10月10日)
- R4 企業会計審議会
「連 結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(金 融庁) fsa.go.jp (参照箇所:第二 二1・3、(注6)、第三 一2、個別ベースの扱い。脚注5・6の根拠。閲覧日:2026年10月10日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。