想定読者:製造業の経理・経営企画・FP&A(財務計画・分析)の担当者、製造業の財務デューデリジェンス(買収前の財務調査)や投資先分析で原価を読む方、工業簿記を学ぶ方
前提知識:売上原価・棚卸資産と、BS・PL・CF計算書の基本。仕訳の知識は使いません。

結論:製造原価報告書は3つの在庫勘定をつないだ1枚の表。在庫が増えた年は、売上総利益が増えても営業CFが減りうる

製造業のPLでは売上原価が1行で出ます。その裏で原価は、原材料、仕掛品(製造の途中にあるもの)、製品(完成して未販売のもの)の3つの在庫勘定を順に通ります。製造原価報告書は、原材料から製品の完成までを1枚に並べた表です。財務諸表等規則(金融商品取引法に基づく財務諸表の作成ルール)上は当期製品製造原価の内訳を記載した明細書で、有価証券報告書では「製造原価明細書」などの見出しで載ります1。本記事では製造原価報告書と書きます。原価計算(製品の原価を材料費・労務費・経費に分けて集計する手続)の結果を、財務諸表につなぐ表です。

以下は学習用の架空事例(精密金属部品メーカーW社。日本基準の個別財務諸表、3月決算、年商約50億円)で、単位は百万円です。W社の当期は、当期総製造費用が4,070、当期製品製造原価が3,960、売上原価が3,870でした。3つの金額の違いは、在庫の増減と振替だけで説明できます。棚卸資産(原材料・仕掛品・製品の合計)は770から950へ180増え、売上総利益は前期(仮定)の1,060から1,130へ増えたのに、営業CF(営業活動によるキャッシュ・フロー)は前期(仮定)の430から286へ減りました。営業CFの調整項目で最大のマイナスは棚卸資産の増加180で、これがなければ営業CFは466でした(他の条件は同じと仮定)。

前提として、実際原価で、原価差異(標準や予定と実際の差)・仕損(不良品などによる損失)・評価損(在庫の値下がりによる簿価の切下げ)はなく、期末仕掛品の金額は与えられたものとします。求め方は総合原価計算の記事に、原価差異の期末処理は原価差異の記事に、払出単価は在庫の評価方法の記事に委ねます。

3つの在庫勘定は、どれも期首+受入−払出=期末の式で動く

3つの在庫勘定は、BSでは棚卸資産として「原材料及び貯蔵品」「仕掛品」「商品及び製品」に載ります。3科目を「棚卸資産」の1行にまとめる表示も認められ、その場合は内訳が注記されます2。企業会計基準第9号は、取得原価を購入代価又は製造原価に付随費用を加えたものとし3、原価計算基準も、仕掛品・製品等の製造原価をBSの棚卸資産として計上できるようにすることを原価計算の役割に挙げます4。製造原価は、売れるまではBSの資産で、売れた時にPLの売上原価になります。

在庫勘定の式
払出額 = 期首残高 + 当期の受入額 − 期末残高

原材料は、受入が仕入高、払出が材料費(製造に使った分)です。仕掛品は、受入が当期総製造費用(材料費+労務費+経費)、払出が製品へ移す当期製品製造原価と、試作品の費用など他の勘定へ出す他勘定振替高です。製品は、受入が当期製品製造原価、払出が売上原価です。払出が次の勘定の受入になる流れが図表1です。

図表1:原価の流れ(原材料 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価) 当期仕入高 2,200 労務費 1,020 経費 870 原材料 期首 180 +仕入 2,200 −払出 2,180 =期末 200 仕掛品 期首 260 +受入 4,070 −製品へ 3,960 −他勘定へ 40 =期末 330 製品 期首 330 +受入 3,960 −払出 3,870 =期末 420 材料費 2,180 当期製品 製造原価 3,960 他勘定振替 40 研究開発費へ 売上原価(PL) 3,870 実線の枠は在庫勘定、破線の枠は勘定の外との出入りです。当期総製造費用 4,070 = 2,180 + 1,020 + 870。 各勘定の期末残高が、BSの「原材料及び貯蔵品」「仕掛品」「商品及び製品」に載ります。
単位:百万円。対象期間:W社の当期(3月決算)。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

図表1のとおり、原材料の払出2,180に労務費1,020と経費870を加えた4,070が仕掛品の受入です。仕掛品から製品へ3,960、研究開発費へ40が出て期末は330、製品から3,870が売上原価になり、期末は420です。

材料の消費量は、原価計算基準が原則として継続記録法で計算し、困難な場合や必要のない場合に棚卸計算法を認めています5。継続記録法と棚卸計算法(受け払いごとに帳簿を更新する方法と、期末の実地棚卸から払出を逆算する方法)のどちらでも上の式は成り立ちます。本記事は、帳簿残高と実地棚卸が一致した状態を扱います。

製造原価報告書を組む:W社の当期

図表2がW社の製造原価報告書です。材料費・労務費・経費の分け方は、原価計算基準の形態別分類(原価が発生した形で分ける方法)に従います。経費は「材料費、労務費以外の原価要素」で、減価償却費や電力料を含みます6。減価償却費220は工場設備の分で、販売・管理部門の分は報告書に入れず、PLの販売費及び一般管理費(販管費)に出ます。各行の月次確定は材料費・労務費・経費の月次集計に委ねます。

他勘定振替高40は、W社が試作品の製造に使った費用です。W社は試作品を売らず、研究開発費として販管費に計上する設定です(編集部の仮定)。製品の原価にならないので、仕掛品に集めた費用から差し引きます。この科目名は規則やガイドラインにはなく、実際の有価証券報告書で会社が使っている名称です7。

製造原価報告書の式(図表2の各行)
材料費 = 期首原材料 + 当期仕入高 − 期末原材料  当期総製造費用 = 材料費 + 労務費 + 経費
当期製品製造原価 = 当期総製造費用 + 期首仕掛品 − 期末仕掛品 − 他勘定振替高  売上原価 = 期首製品 + 当期製品製造原価 − 期末製品

図表2:製造原価報告書(W社・当期)(単位:百万円、構成比は%)
項目金額構成比
材料費(原材料勘定の払出)
期首原材料棚卸高180
+当期原材料仕入高2,200
−期末原材料棚卸高△200
材料費2,18053.6
労務費・経費
労務費1,02025.1
経費:外注加工費43010.6
経費:減価償却費(工場分)2205.4
経費:電力料1303.2
経費:その他902.2
経費87021.4
当期総製造費用から当期製品製造原価へ(仕掛品勘定)
当期総製造費用(仕掛品の受入)4,070100.0
+期首仕掛品棚卸高260
合計4,330
−期末仕掛品棚卸高△330
−他勘定振替高(試作品の費用を研究開発費へ)△40
当期製品製造原価(製品の受入)3,960
製品勘定から売上原価へ(PLの売上原価の区分)
+期首製品棚卸高330
合計4,290
−期末製品棚卸高△420
売上原価(PLへ)3,870
対象期間:W社の当期。△は控除。構成比は当期総製造費用4,070に対する割合(小数第2位を四捨五入)で、端数処理のため内訳の合計は100.1%。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表2のとおり、当期総製造費用4,070の構成比は材料費53.6%、労務費25.1%、経費21.4%で、経費では外注加工費(加工を外部に委託した費用)が総製造費用の10.6%と最大です。当期総製造費用と当期製品製造原価の違いは、期首・期末の仕掛品と他勘定振替高の加減です。W社の4,070−3,960=110は、仕掛品の増加70(330−260)と他勘定振替高40の合計です。製品側では、3,960と売上原価3,870の差90が、製品の増加(420−330)に一致します。

Corporate Finance Institute(CFI)の解説も、期首仕掛品+総製造費用−期末仕掛品=当期製品製造原価(COGM)、期首製品+COGM−期末製品=売上原価(COGS)という同じ構造を説明しています8。ただし米国式で、他勘定振替高や日本の明細書の様式には触れていません。

BS・PL・CFに照合する:報告書の数字が三表のどこに出るか

BSでは3勘定の期末残高が棚卸資産の内訳に、PLでは製品勘定の払出が売上原価に当たり、W社の他勘定振替高は販管費の研究開発費になります。CF計算書では、W社のように評価損や固定資産への振替などがなければ、棚卸資産の増減額がBSの増減額の符号を逆にしたものになります。

図表3:3勘定の照合表(期首+受入−払出=期末)とBSの棚卸資産(単位:百万円)
勘定期首受入払出期末増減
原材料1802,2002,180200+20
仕掛品2604,0704,000330+70
製品3303,9603,870420+90
棚卸資産計770——950+180
検算売上原価+他勘定振替高+棚卸資産の増加額:3,870+40+180=4,090。仕入高+労務費+経費:2,200+1,020+870=4,090(一致)
対象期間:W社の当期。BSの科目は、原材料が「原材料及び貯蔵品」(貯蔵品はなしと仮定)、製品が「商品及び製品」。仕掛品の払出4,000は製品へ3,960と他勘定へ40。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表3のとおり、3勘定とも期首+受入−払出=期末が成り立ち、期末残高の合計950がBSの棚卸資産です。期首770との差180が、CF計算書の「棚卸資産の増減額(△は増加)」の△180になります。検算の行のとおり、払出と投入の原価は4,090で一致します。

PLは図表4の上段のとおり、売上総利益が1,130(売上総利益率22.6%。売上総利益を売上高で割った比率)、営業利益が350、税引前当期純利益が330です。CF計算書は、減価償却費を除く労務費・経費・販管費と、支払利息・法人税等を発生額どおり当期に現金で支払い(販管費の研究開発費40は製造費用として支払済みの振替分)、売上は売掛金(800→840)、原材料の仕入だけが買掛金(190→215)を通ると仮定します。営業活動の区分は、規則の様式第九号に沿った間接法(税引前当期純利益から調整して営業CFを求める方式)で作ります9。

図表4:PL(上部)と営業CF(間接法)への照合(単位:百万円)
項目金額計算・出所
PL(上部)
売上高5,000仮定
売上原価3,870図表2
売上総利益1,1305,000−3,870
販売費及び一般管理費780うち研究開発費40、減価償却費30
営業利益3501,130−780
支払利息20仮定
税引前当期純利益330350−20(法人税等は330×30%=99)
営業活動によるキャッシュ・フロー(間接法)
税引前当期純利益330
減価償却費250工場220+販管費30
支払利息20
売上債権の増減額(△は増加)△40売掛金 800→840
棚卸資産の増減額(△は増加)△180770→950(図表3)
仕入債務の増減額(△は減少)25買掛金 190→215
小計405
利息の支払額△20
法人税等の支払額△99
営業活動によるキャッシュ・フロー286405−20−99
対象期間:W社の当期。△はマイナス。CF計算書の項目名は財務諸表等規則の様式第九号(間接法)に沿う。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表4のとおり、営業CFは286です。税引前当期純利益330に、非現金費用の減価償却費250と支払利息の戻し20を足し、売上債権(売掛金)の増加40、棚卸資産の増加180、仕入債務(買掛金)の増加25を調整した小計が405で、利息の支払20と法人税等の支払99を引いた額です。

有価証券報告書の製造原価明細書:添付・省略の扱い

制度の記述は、2026年10月2日にe-Gov法令検索で確認した財務諸表等規則(現行版は2026年8月7日施行)と、金融庁のガイドライン(令和8年3月)に基づく一般的な説明です10。

規則第75条第1項は、売上原価を、製品の期首棚卸高、当期製品製造原価と、控除科目としての期末棚卸高で掲記するよう定めます(図表2の下段と同じ構造)。第2項は、当期製品製造原価の内訳を記載した明細書を損益計算書に添付するよう求めます。ただし書は、連結財務諸表で連結財務諸表規則第15条の2第1項のセグメント情報(事業などの区分ごとの売上高や利益の情報)を注記している場合は、この限りでないとします11。原則は添付で、連結でセグメント情報を注記する会社は添付しなくてよい、という規定です12。このただし書は、2014年3月26日に公布・施行された改正(平成26年内閣府令第19号)で加わり、同年3月31日以後に終了する事業年度の財務諸表から適用されました。金融庁は改正時に、単一事業の場合などセグメント情報を開示していない会社には引き続き添付を求めるとしています13。

条件が連結財務諸表での注記なので、連結財務諸表を作成していない会社は、文言上、省略の条件に当てはまりません(編集部の読み)。個々の会社が添付しているかは、その有価証券報告書で確かめます。本記事はW社の添付義務を判断しません。明細書が省略されていれば、材料費・労務費・経費の内訳は有価証券報告書から読めません。

書き方の目安として、ガイドライン75-2は、明細書を「おおむね」、当期の総製造原価(本記事の当期総製造費用)を材料費・労務費・間接費(又は経費)に区分して期首仕掛品原価に加え、期末仕掛品原価を控除する形で示すとします。外注加工費など金額の大きいものは注記か内書きにし、原価差額を賦課した場合は内訳項目に付加します(要約)14。図表2はこの形に沿っています。製品が販売、生産又は仕入以外の理由(ガイドラインの例は合併、贈与、自家消費等)で増減したときは、規則第76条により別掲されます15。

在庫の増減と構成比から、利益と営業CFのずれを読む

有価証券報告書の明細書と三表を、次の4つの順に読みます。

  1. 明細書の有無と個別か連結かを確かめたうえで、当期総製造費用・当期製品製造原価・売上原価の差を、仕掛品・製品の増減と他勘定振替高に分けます。
  2. 材料費・労務費・経費の構成比と、経費の主な内訳(外注加工費・減価償却費など金額の大きい項目)を、前期と比べます。
  3. 在庫の増加を、営業CFの減少(図表4の△180)と売上の伸びに並べます。W社は売上高が前期(仮定)の4,800から5,000へ4.2%増えたのに、棚卸資産は23.4%増えました。棚卸資産回転日数(DIO)(棚卸資産÷売上原価×365。在庫が売れるまでの平均日数)は、期末残高ベースで75.1日から89.6日へ14.5日延びています(前期の売上原価は売上高4,800−売上総利益1,060=3,740の仮定)。
  4. 在庫に残った固定的な原価を意識します。減価償却費や工場の監督者の給料のように生産量に関係なく発生する原価も製品の原価に含める全部原価計算では、在庫に残った分は当期の費用になりません(編集部の整理)。報告書だけでは、その額は分かりません。

W社は売上総利益が増えても、営業CFは144減りました(430→286)。在庫が増えた理由(受注に備えた先行生産か売れ残りか)は報告書から分からず、受注残や販売計画など報告書の外の資料で確かめます(編集部の見解)。利益と営業CFのずれの一般的な見方はキャッシュフロー計算書(間接法)の読み方で扱っています。

よくある間違いと、この設例の限界

第一に、当期総製造費用をそのまま製品勘定の受入にする誤りです。W社では売上原価が3,980と正しい3,870より110大きくなり、売上総利益は1,020と、正しい1,130より9.7%少なくなります。第二に、他勘定振替高40の差し引き忘れです。当期製品製造原価が4,000、売上原価が3,910になり、試作品の費用が売上原価と研究開発費に二重に載って、営業利益は350でなく310になります。図表3の検算(売上原価+他勘定振替高+棚卸資産の増加額)は、第一が4,200、第二が4,130となり、総投入の4,090と合いません。

この設例は、単一の工場で、未払や前払がないなどの仮定に立ちます。低価法(値下がりした在庫の簿価を切り下げる処理)で評価損が出たときは、企業会計基準第9号第17項により原則として売上原価とし、製造に関連し不可避的に発生すると認められるときは製造原価、臨時の事象に起因し多額なら特別損失とします16。評価損を非現金の調整として別に戻すCF計算書では、棚卸資産の増減額がBSの増減額と一致しません。実在企業の明細書は、科目名や並びが図表2と異なることがあります。

実務チェックリスト

  • 3勘定とも期首+受入−払出=期末が成り立ち、期末残高が総勘定元帳・実地棚卸の評価額と一致している。
  • 材料費を期首+仕入−期末で計算し、総製造費用と当期製品製造原価の差を仕掛品の増減と他勘定振替高で説明できる。
  • 売上原価がPLと、期末残高の合計がBSの棚卸資産と、増加額がCF計算書の棚卸資産の増減額と一致している(評価損や固定資産への振替は別に調整)。
  • 売上原価+他勘定振替高+棚卸資産の増加額が仕入高+労務費+経費に一致し、他勘定振替高の振替先(費用か固定資産か)を確かめている。
  • 有価証券報告書では、明細書の有無・個別か連結か・期間と単位を確かめ、構成比と経費の主な内訳を前期と比べている。
  • 在庫が売上より速く増えているとき、DIOと営業CFを並べ、理由を受注残など報告書の外の資料で確かめている。

よくある質問(FAQ)

連結PLの売上原価と、製造原価明細書の金額が合わないのはなぜですか。

明細書の最終行は当期製品製造原価で、売上原価とは製品在庫の増減などの分だけ違います。加えて明細書は提出会社の個別財務諸表に付くもので、連結の売上原価は子会社を含む範囲で集計されるため、必ずしも一致しません。

工場の電力料や減価償却費は、すべて製造原価報告書に入りますか。

製造に関わる分が入り、本社や営業部門の分は販管費です。原価計算基準は、原価要素を製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類します17。

まとめ

製造原価報告書は、在庫勘定の期首+受入−払出=期末の式を順につなぎ、当期総製造費用から当期製品製造原価を求める表で、製品勘定を経て売上原価につながります。W社では売上原価3,870を、BSの棚卸資産(770→950)とCF計算書の棚卸資産の増減額(△180)に照合でき、営業CFが減った理由を在庫の増減から読めました。有価証券報告書の明細書は、2026年10月時点の規則では原則として添付され、連結でセグメント情報を注記する会社は添付しなくてよいため、まず有無を確かめます。

脚注

  1. 財務諸表等規則第75条第2項は、当期製品製造原価について「その内訳を記載した明細書」の添付を求める。規則と財務諸表等規則ガイドラインの本文に「製造原価明細書」の語はない(2026年10月2日に本文を検索して確認。参考文献 R1・R3)。金融庁は、2014年の規則改正に寄せられたパブリックコメントへの回答で、この明細書を「製造原価明細書」と呼んでいる(「第75条(製造原価明細書)」の項。参考文献 R8)。実際の有価証券報告書の例として、北川精機株式会社の第70期(2025年7月1日〜2026年6月30日)有価証券報告書は、【製造原価明細書】の見出しで明細書を載せている(EDINET掲載PDF 51ページ。参考文献 R9)。↩
  2. 財務諸表等規則第17条第1項は、流動資産を区分して掲記する項目として、第7号「商品及び製品(半製品を含む。)」、第8号「仕掛品」、第9号「原材料及び貯蔵品」を挙げ、第3項は「第一項の規定にかかわらず、同項第七号から第九号までに掲げる項目に属する資産については、棚卸資産の科目をもつて一括して掲記することができる。この場合においては、当該項目に属する資産の科目及びその金額を注記しなければならない。」とする(参考文献 R1)。ガイドライン15-9は「仕掛品とは、製品、半製品又は部分品の生産のため現に仕掛中のものをいい」、15-8は「原料及び材料とは、製品の製造目的で費消される物品で未だその用に供されないもの(ただし、半製品、部分品又は貯蔵品に属するものを除く。)をいい」と説明する(規則第15条第8号・第9号の用語。PDF 21ページ。参考文献 R3)。17-1-7は、規則第17条第1項第9号の原材料及び貯蔵品に購入部分品及び補助材料を含むとする(要約。PDF 22ページ。参考文献 R3)。↩
  3. 企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第3項「棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、」と、第6-2項(棚卸資産は、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算して取得原価とし、選択した評価方法を適用して売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の価額を算定する。要約)(参考文献 R5)。↩
  4. 原価計算基準 第1章6(一)1(1)。原価計算は、原則として「すべての製造原価要素を製品に集計し、損益計算書上売上品の製造原価を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ」るものとされる(参考文献 R4)。↩
  5. 原価計算基準 第2章第2節11(二)。「材料の実際の消費量は、原則として継続記録法によつて計算する。ただし、材料であつて、その消費量を継続記録法によつて計算することが困難なもの又はその必要のないものについては、たな卸計算法を適用することができる。」(参考文献 R4)。↩
  6. 原価計算基準 第2章第1節8(一)(形態別分類)。「材料費とは、物品の消費によつて生ずる原価をいい」、「労務費とは、労働用役の消費によつて生ずる原価をいい」、「経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する」(参考文献 R4)。↩
  7. 「他勘定振替高」の語は、財務諸表等規則とガイドラインの本文にはない(2026年10月2日に本文を検索して確認。参考文献 R1・R3)。実際の有価証券報告書の例として、北川精機株式会社の第70期有価証券報告書の製造原価明細書は、期末仕掛品棚卸高の次に他勘定振替高を置いて当期製品製造原価を示し、注記で他勘定振替高の内訳を販売費及び一般管理費と有形固定資産と示している(EDINET掲載PDF 51ページ。参考文献 R9)。↩
  8. Corporate Finance Institute「Cost of Goods Manufactured (COGM)」の「How to Calculate Cost of Goods Manufactured」「Linking COGM to COGS」の各節。COGM=期首WIP在庫+総製造費用−期末WIP在庫、製品在庫の期首残高+COGM−COGS=期末残高、という米国式の一般形の説明(参考文献 R6)。他勘定振替高や日本の規則が定める明細書の様式の記載はなく、同ページの数値例は使っていない。↩
  9. 財務諸表等規則第113条は、営業活動によるキャッシュ・フローを、主要な取引ごとに総額で示す方法(第1号)か、税引前当期純利益に資金の増減を伴わない損益項目や売上債権・棚卸資産・仕入債務の増減額などを加減して示す方法(第2号)のいずれかで掲記するとする(要約)。様式第九号(キャッシュ・フロー計算書)は第2号の形で、営業活動の区分に、税引前当期純利益に続く調整項目として減価償却費、支払利息、売上債権の増減額(△は増加)、棚卸資産の増減額(△は増加)、仕入債務の増減額(△は減少)などを挙げ、小計の後に利息及び配当金の受取額、利息の支払額、法人税等の支払額を示す(要約)。記載上の注意1は、利息の支払額を財務活動の区分に記載できるとする。W社は営業活動の区分に置いた(参考文献 R1)。↩
  10. 財務諸表等規則第1条第1項。金融商品取引法第5条、第7条第1項、第24条第1項などの規定により提出される財務書類のうち財務諸表について、用語、様式及び作成方法はこの規則の定めるところによる(要約)。確認した版は、e-Gov法令検索のAPIが2026年10月2日時点で現行(2026年8月7日施行)として返した条文(law_revision_id 338M50000040059_20260807_508M60000002070。この版を成立させた改正は令和8年内閣府令第70号)(参考文献 R1)。↩
  11. 財務諸表等規則第75条。第1項「売上原価に属する項目は、第一号及び第二号の項目を示す名称を付した科目並びにこれらの科目に対する控除科目としての第三号の項目を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。」第一号「商品又は製品(半製品、副産物、作業くず等を含む。以下この項及び次条において同じ。)の期首棚卸高」、第二号「当期商品仕入高又は当期製品製造原価」、第三号「商品又は製品の期末棚卸高」。第2項「前項第二号の当期製品製造原価については、その内訳を記載した明細書を損益計算書に添付しなければならない。ただし、連結財務諸表において、連結財務諸表規則第十五条の二第一項に規定するセグメント情報を注記している場合は、この限りでない。」様式第六号(損益計算書)は、売上原価を「商品(又は製品)期首棚卸高」「当期商品仕入高(又は当期製品製造原価)」「合計」「商品(又は製品)期末棚卸高」「商品(又は製品)売上原価」の順に示す(要約)(参考文献 R1)。↩
  12. 連結財務諸表規則第15条の2。第1項「企業を構成する一定の単位(以下「報告セグメント」という。)に関する情報(以下「セグメント情報」という。)については、次に掲げる事項を様式第一号に定めるところにより注記しなければならない。」第4項「前三項の規定にかかわらず、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。」(e-Gov法令検索の2026年8月7日施行版。参考文献 R2)。↩
  13. 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(平成26年内閣府令第19号。2014年3月26日)は、第1条で「第七十五条第二項に次のただし書を加える。」とし、附則第1条で公布の日から施行、附則第2条で改正後の規則を「平成二十六年三月三十一日以後に終了する事業年度に係る財務諸表について適用」するとした(参考文献 R7)。金融庁はパブリックコメントへの回答で、多角的に事業展開する会社の複数事業の原価を合算した明細書は投資情報としての有用性が低いとする一方、「単一事業の場合には、投資情報として製造原価明細書の有用性は低下していないと考えられるため、セグメント情報を開示していない会社については、引き続き製造原価明細書の添付を求めることとしています」と説明している(No.16。参考文献 R8)。↩
  14. 財務諸表等規則ガイドライン75-2(令和8年3月。PDF 28ページ、紙面表記27)。冒頭は「当期製品製造原価に関する明細書又は第77条に規定する売上原価に関する明細書の記載は、おおむね次によるものとする。」。1の一部「当期製品製造原価については、当期の総製造原価を材料費、労務費、間接費(又は経費)に区分して期首仕掛品原価に加え、これから期末仕掛品原価を控除する等の方式により表示し」、「原価差額を仕掛品、製品等に賦課している場合には、総製造原価又は売上原価の内訳項目として当該原価差額を示す科目を付加する等の方式により表示するものとする。」2の一部「間接費(又は経費)のうち外注加工費等金額の大きいものについては、注記又は間接費(又は経費)の項目に内書きするものとする」(参考文献 R3)。↩
  15. 財務諸表等規則第76条「前条第一項の商品又は製品について販売、生産又は仕入以外の理由による増減高がある場合、その他売上原価の項目として付加すべきものがある場合には、同項各号の項目を示す科目のほか、当該項目の内容を示す科目をもつて別に掲記しなければならない。」(参考文献 R1)。ガイドライン76「商品又は製品について合併、営業譲渡、災害、贈与、自家消費等による増減高がある場合又は製造費以外の費用で売上原価に賦課したものがある場合等」(規則第76条の規定により売上原価の項目として付加すべきものがある場合の説明。PDF 28ページ。参考文献 R3)。↩
  16. 企業会計基準第9号第17項。通常の販売目的で保有する棚卸資産の収益性の低下による簿価切下額は売上原価とする(要約)。そのうえで「棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する」、「収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する」とする(参考文献 R5)。↩
  17. 原価計算基準 第2章第1節8。「原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類する。」(参考文献 R4)。↩

参考文献(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。