この記事で分かること

  • 継続記録法と棚卸計算法の違いと、実務での併用の考え方
  • 整数設例で棚卸減耗損の発生とその計算方法を確認
  • 棚卸減耗損がPLのどこに計上されるか
  • 実地棚卸を定期的に行うべき理由

30秒で分かる定義

継続記録法と棚卸計算法(読み方:けいぞくきろくほうとたなおろしけいさんほう)とは、在庫の数量を把握するための2つの記帳方法です。継続記録法(Perpetual Inventory)は、商品の仕入・払出(販売)の都度、帳簿上で在庫数量を記録し続ける方法です。棚卸計算法(Periodic Inventory)は、期末に実地棚卸(実際に数を数える)を行うことで在庫量を把握し、期首在庫と仕入高から差引計算で払出数量(売上原価)を算定する方法です。実務では、日々は継続記録法で管理しつつ、定期的に実地棚卸で検証する併用が一般的です。

なぜ実務で重要なのか

在庫管理・経理にとって、継続記録法の帳簿数値と実地棚卸の実際数値を照合することは、盗難・破損・記帳ミスによる棚卸減耗を発見する唯一の手段です。内部統制・監査では、実地棚卸の実施頻度と手続の適切性が、在庫関連の内部統制評価の重要な確認項目になります。財務DDでは、対象会社が両者をどう併用し、棚卸減耗率がどの水準で推移しているかを確認し、在庫管理の実態を評価します。

計算式(または仕組み)

棚卸減耗損 = 継続記録法による帳簿棚卸数量 − 棚卸計算法(実地棚卸)による実際棚卸数量

継続記録法では、仕入・払出のたびに在庫を加減算して帳簿在庫を更新します。棚卸計算法では、期末の実地棚卸で実際の在庫量を直接数え、期首在庫+仕入高−期末実地棚卸で払出数量(売上原価)を逆算します。両者を併用すると、帳簿在庫と実地棚卸の差として棚卸減耗を検出できます。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。期首在庫100個、期中仕入900個、継続記録法で記録した払出(販売)数量800個とします。単位あたり単価1,000円。

継続記録法による帳簿在庫 = 100 + 900 − 800 = 200個。期末に実地棚卸を行ったところ、実際の在庫は190個しかありませんでした。棚卸減耗 = 200 − 190 = 10個。棚卸減耗損 = 10個 × 1,000円 = 10,000円です。この10,000円は、通常の保管ロスなど原価性が認められる減耗であれば売上原価に算入され、盗難や異常な事故など原価性が認められない減耗であれば営業外費用または特別損失に区分されます。

PL・BS・CFへの影響

棚卸減耗損の計上により、BSの棚卸資産は実地棚卸に基づく実際の数量まで減額され、PLには減耗損(原価性の有無に応じて売上原価または営業外費用・特別損失)が計上されます。現金の動きを伴わない非資金項目であり、キャッシュフロー計算書には在庫の増減額として間接的に反映されます。在庫の評価方法とCOGSの全体像は在庫の評価方法とCOGSで扱っています。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 過去の実地棚卸実績から棚卸減耗率(帳簿在庫に対する減耗の割合)を算出し、予測モデルの在庫評価に一定率で織り込む
  • 在庫管理システムのデータと連動させ、継続記録法の帳簿在庫と定期棚卸の乖離を可視化するダッシュボードを設計する

この用語をExcelで「組める」状態にする

帳簿在庫と実地棚卸の差から棚卸減耗率を計算し、予測モデルの在庫評価に反映できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「継続記録法だけで在庫管理は十分」→ 正しくは、継続記録法の帳簿数値だけでは、盗難・破損等による実際の減耗を把握できません。定期的な実地棚卸と照合して初めて、在庫の実態を正確に把握できます。

誤解2:「棚卸計算法は現代では使われない」→ 正しくは、多くの企業が両者を併用しており、日々の管理は継続記録法、定期検証は棚卸計算法(実地棚卸)という役割分担が一般的です。棚卸計算法単独では期中の在庫水準をリアルタイムに把握できないため、実務上は継続記録法との併用が標準です。

日本実務での扱い(2026年7月時点)

法人税法上も、棚卸資産の評価は実地棚卸の実施を前提としており、期末の実地棚卸によって在庫の実在性・数量を確認することが求められます。棚卸減耗損の会計処理は、原価性の有無によって計上区分が異なり、通常の保管中に生じる程度の減耗は売上原価(または製造原価)に算入され、異常な原因による減耗は営業外費用や特別損失に区分するのが実務上の一般的な取扱いです。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:棚卸減耗損がなぜ発生し、どのように会計処理されるか説明してください。
「棚卸減耗損は、継続記録法による帳簿上の在庫数量と、実地棚卸による実際の在庫数量との差から生じます。仕入・払出の記帳ミス、保管中の自然な目減り、盗難、破損などが原因です。会計処理は原価性の有無で区分され、通常の保管に伴う程度の減耗は売上原価に算入し、異常かつ多額な減耗は営業外費用や特別損失として区分することで、経常的な費用と一過性の損失を分けて表示します。」

深掘りでは「実地棚卸の適切な実施頻度」「棚卸減耗率の異常な上昇が意味するリスク」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 棚卸減耗損は必ず売上原価に算入されますか?
A. 必ずではありません。通常の保管過程で生じる程度の減耗は売上原価に算入するのが一般的ですが、盗難や災害など原価性が認められない異常な減耗は、営業外費用や特別損失として区分することがあります。

Q. 実地棚卸はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. 決算期末には必ず実施するのが原則です。在庫の重要性や管理精度の要求水準に応じて、四半期ごとや月次でのローテーション棚卸(品目を分けて頻繁に確認する方法)を併用する企業も少なくありません。

出典・参考(2026-07-21確認)

  • 国税庁「棚卸資産の評価」に関する法人税法上の取扱い https://www.nta.go.jp/
  • 企業会計基準委員会(ASBJ)「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号) https://www.asb.or.jp/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。