この記事で分かること
- 規模の経済は単位コスト曲線、範囲の経済は費用節約率Sで計算でき、設例ではどちらも共有できる固定費を何で割るかの違いと分かること
- 学習用の架空事例の冷凍弁当メーカーM社で、新工場(案A)と総菜の追加(案B)の損益・投資額・ROIC(投下資本利益率)を比べる手順
- 共有できる固定費の割合・空き能力・需要でどちらが効くかを判定する手順と、結論が変わる境目
想定読者:経営企画・FP&A(予算と計画の管理)、増産や新商品を企画する事業部門、投資先の成長計画を精査するPE(プライベート・エクイティ)・FAS(財務アドバイザリー)の担当者
前提知識:変動費・固定費・営業利益の基本。損益計算書が読めれば足ります。
結論:どちらの経済性が効くかは、共有できる固定費・空き能力・需要で決まる
成長策を「工場を増やして量で効率化する」か「今の工場で扱う商品を増やす」かで迷うとき、規模の経済・範囲の経済という名前だけで選んでいないでしょうか。本記事の設例では、どちらも、設備や配送網のように共有できる固定費(生産量に関係なく発生する費用)を、より多くの生産量や商品で割る話として整理できます。学習用の架空事例の冷凍弁当メーカーM社で、2つの成長策を同じ前提で計算します。
M社は年間生産能力1,000万食の工場を1つ持ち、稼働率(生産能力に対する生産量の割合)70%、つまり700万食で操業しています。第2工場を建てて1,400万食を売る案A(投資25億円)の増分ROIC(増えた税引後利益を増えた投下資本で割った値。ROIIC)は17.7%、既存工場の空き能力と配送網で冷凍総菜を200万食追加する案B(投資6億円)は21.6%で、案Bの費用節約率Sは11.8%でした。案Aの販売量が約1,590万食(稼働率約79%)まで伸びれば案Aが上回り、共有できる固定費の割合が68.6%を下回るか、総菜の約10%が弁当の置き換えになれば、案Bの優位は消えます。ただし増分ROICは投資1円当たりの効率で、資本コストを超える利益の額は投資の大きい案Aが上回ります。数値はすべて本記事の仮定による計算結果で、食品メーカーの実態ではありません。
規模の経済・規模の不経済・範囲の経済の定義と、混同しない点
規模の経済は、生産量が増えるほど1つ当たりの固定費が小さくなり、単位コスト(1食当たりの総費用)が下がることです。大量購入による数量値引きも源泉の一つです。一方、規模が一定を超えると組織が複雑になり、調整や管理の費用が増えて単位コストが上がる規模の不経済も起こります1。範囲の経済は、複数の商品を同じ設備や体制で作ると、別々に作るより総費用が小さくなることで、同じ商品の量を増やす規模の経済とは、別の商品を加える点が違います2。
範囲の経済の費用節約率S
S =(C(qa) + C(qb) - C(qa,qb))÷ C(qa,qb)
C(qa):商品aだけを作る費用 C(qb):商品bだけを作る費用 C(qa,qb):同じ設備・体制で両方を作る費用
S>0なら範囲の経済があります。分母は共同生産の費用C(qa,qb)です3。「別々に作るより何%安いか」という節約率は、分母が別々の費用の合計C(qa)+C(qb)になり、Sとは別の値です。
企業会計審議会の原価計算基準は、操業度を「生産設備を一定とした場合におけるその利用度」、固定費を「操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素」と定めています4。固定費が変わらないのは設備を一定とした場合だけで、工場を増やす案Aでは工場の固定費も増えます(編集部の読み)。稼働率を上げる効果と拠点を増やす効果は別です。同じ期間の生産規模による効果は、累積生産量に応じて作業が習熟する学習効果とも別で、後者は経験曲線によるコスト低下の予測の記事で扱います。
M社の設例と単位コスト曲線:底は1,200万食で、案Aはそれを過ぎた位置
以下は学習用の架空事例です。M社は首都圏で企業・施設向けに冷凍弁当を作って配送します。単位は、金額が百万円、生産量が万食、単価と単位コストが円/食です(万食×円÷100=百万円)。弁当は1食500円、変動費(食材・包材・変動労務費・配送の変動費)は1食300円、固定費は年間で工場400、配送300、品質管理120、管理・営業300の合計1,120とします。営業利益は、限界利益(売上高から変動費を引いた利益)700万食×(500-300)円=1,400から1,120を引いた280(営業利益率8.0%)で、法人企業統計調査(令和7年度)の食料品製造業の売上高営業利益率3.4%より高い仮定です5。
単位コストは、3つの仮定で置きます。第1に、工場の固定費は、稼働率70%を保って工場を増やす限り1食当たり一定です(400÷700×100=57.14円)。第2に、共有固定費(配送・品質管理・管理営業の720)は、工場が増えても増えません。実際は能力の限界を超えると段階的に増える(準固定費)ので、楽観的な置き方です6(段階固定費を織り込んだ損益計画の記事で扱います)。第3に、規模の不経済は管理・調整費で表し、生産量が1,000万食を超えると100万食増えるごとに1食当たり5円増えると置きます(学習用の仮定)。
単位コスト(円/食)
= 57.14 + 72,000 ÷ 生産量(万食) + 300 + 管理・調整費
管理・調整費(円/食)= 0.05 ×(生産量 - 1,000) ※生産量が1,000万食以下なら0
※72,000=共有固定費720百万円×100(百万円÷万食を円/食にそろえる換算)
現状の700万食は、57.14+72,000÷700+300=57.14+102.86+300=460.0円です。案Aの1,400万食は、57.14+72,000÷1,400+300+0.05×(1,400-1,000)=57.14+51.43+300+20.00=428.57、つまり428.6円で、現状より31.4円(現状の460.0円に対して6.8%)低くなります。共有固定費の分散で51.4円下がり、管理・調整費で20.0円戻る内訳です。工場の固定費は1食当たりで変わらないため、この設例の案Aの規模の経済は、共有固定費の分だけです。図表1のとおり、単位コストは1,200万食で最小の427.1円になり、案Aの1,400万食は底を200万食過ぎた位置です。
単位コストが最小の生産量は、利益が最大の生産量とは別です。利益が最大になるのは、1食増やしたときに増える収入と、増える費用(限界費用)が等しい生産量です。価格が一定なら収入は価格の分だけ増えるので、単位コストが上がり始めた後もしばらく利益は増えます。案Aの是非は、増分の利益と投下資本で判断します。
案B:共有できる固定費から、範囲の経済の費用節約率Sを求める
案Bは、既存工場の空き能力(1,000-700=300万食)と、配送網・品質管理・管理営業の体制を使い、冷凍総菜(1食400円、変動費220円)を200万食追加します。専用ラインに6億円を投資し、8年で償却するので償却費が年75増えます。総菜を単独で始める場合の固定費は、設備250、配送150、品質管理80、管理・営業120の合計600と置きます。図表2が計算表です。
| 費目(共有の中身) | C(qa):弁当 | C(qb):総菜 | 別々の合計 | C(qa,qb):共同 | 節約額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 変動費共有できない | 2,100 | 440 | 2,540 | 2,540 | 0 |
| 設備の固定費既存工場を共用(追加は専用ライン償却75) | 400 | 250 | 650 | 475 | 175 |
| 配送の固定費既存の配送網を共用(追加30) | 300 | 150 | 450 | 330 | 120 |
| 品質管理の固定費既存の検査体制を共用(追加20) | 120 | 80 | 200 | 140 | 60 |
| 管理・営業の固定費既存の管理・営業体制を共用(追加25) | 300 | 120 | 420 | 325 | 95 |
| 合計 | 3,220 | 1,040 | 4,260 | 3,810 | 450 |
| 費用節約率S | 節約額450÷共同生産3,810=11.8% | ||||
C(qa)は3,220、C(qb)は1,040で、別々の合計は4,260です。C(qa,qb)は3,810で、差の450はすべて固定費の共有から生じます。S=450÷3,810=11.8%、別々の合計を基準にした節約率は450÷4,260=10.6%です。共有できる固定費の割合(共有割合σ)は、単独で始める場合の固定費600のうち、既存の体制でまかなえる分で、450÷600=75%です。
Sが正でも、案の採算は別に確かめます。総菜の限界利益は200万食×(400-220)円=360で、単独で始める場合の固定費600に届かず240の赤字ですが、共有で追加の固定費が150に収まるので、営業利益の増加額は360-150=210の黒字です。この増加額は、共有固定費を商品へどう割り当てるか(共通費の配賦)に左右されません。共有割合σが40%になると増加額は0で、下回ると減益です。
2つの成長策を同じ前提で比べる:損益・投資額・ROIC
ROIC(投下資本利益率)は、事業に投じた資金に対するNOPAT(税引後営業利益)の割合です。投下資本の範囲は一つに決まっていないため、本記事では次のように定義します。
本記事のROICの定義
NOPAT(税引後営業利益)= 営業利益 ×(1 - 30%) ※実効税率30%は学習用の仮定
投下資本 = 正味固定資産(簿価。新規投資は投資額)+ 正味運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)
ROIC = NOPAT ÷ 投下資本 増分ROIC = 増分NOPAT ÷ 増分投下資本
M社の現状の投下資本は、正味固定資産2,000と、売上高の10%とした正味運転資本350で2,350です。案Aは、第2工場の投資2,500と、売上高の増加3,500の10%の運転資本350で2,850増え、5,200になります。案Bは、専用ラインの投資600と、売上高の増加800の10%の運転資本80で680増え、3,030になります。既存工場の簿価を案Bに含めないのは、空き能力の機会原価を0と置くためです(第6節)。
案Aの営業利益の増加額は、増販による限界利益から、第2工場の固定費と管理・調整費を引いた額で、次の式になります。
案Aの増分(販売量q万食、単位:百万円)
営業利益の増加額 = 2.0 ×(q - 700)- 400 - 0.05 ×(q - 1,000)× q ÷ 100
投下資本の増加 = 2,500 + 0.5 ×(q - 700)
※2.0=限界利益200円×1万食、0.5=売上高の増加5.0(500円×1万食)の10%。最後の項はq>1,000のときだけ
q=1,400では、2.0×700-400-0.05×400×14=720、2,500+0.5×700=2,850です。図表3が比較表です。
| 項目 | 現状 | 案A:第2工場 | 案B:総菜の追加 |
|---|---|---|---|
| 販売量(万食) | 700 | 1,400 | 900(弁当700+総菜200) |
| 売上高 | 3,500 | 7,000 | 4,300 |
| 変動費 | 2,100 | 4,200 | 2,540 |
| 工場の固定費 | 400 | 800 | 475 |
| 配送・品質管理・管理営業の固定費 | 720 | 720 | 795 |
| 管理・調整費(規模の不経済) | 0 | 280 | 0 |
| 営業利益 | 280 | 1,000 | 490 |
| NOPAT(営業利益×0.7) | 196 | 700 | 343 |
| 投資額 | - | 2,500 | 600 |
| 投下資本(正味固定資産+正味運転資本) | 2,350 | 5,200 | 3,030 |
| 全社ROIC(NOPAT÷投下資本) | 8.3 | 13.5 | 11.3 |
| 増分ROIC(増分NOPAT÷増分投下資本) | - | 17.7 | 21.6 |
| 既存工場の稼働率(%) | 70 | 70(2工場計) | 90 |
| 案Bが優位な条件 | 増分ROICが案Aを上回る範囲。①共有割合σが約68.6%以上(基本75%)、②空き能力が必要量(200万食)以上あり、他の使い道がない、③総菜1食が弁当1食を置き換える割合が約10.2%未満 | ||
| 案Aが逆転する条件 | 増分ROICが案Bを上回る範囲。案Aの販売量が約1,590万食(稼働率約79%)以上で、その需要が確実なとき | ||
営業利益は案Aが1,000、案Bが490です。増分NOPATは案Aが720×0.7=504、案Bが210×0.7=147で、増分ROICは案Aが504÷2,850=17.7%、案Bが147÷680=21.6%です。投下資本1円当たりの利益は案Bのほうが大きく、両案とも資本コスト(投資に求める最低限の利回り。学習用の仮定で8%)を上回ります。全社ROICは現状の8.3%から案Aで13.5%、案Bで11.3%になり、案Aが高いのは、既存事業の平均に投資額の大きい増分が混ざるためです。案の優劣は増分で比べます。
ただし、案Aの増分ROICは販売量で大きく動きます。上の式で販売量を1,000・1,200・1,400・1,600・1,800・2,000万食と動かすと、5.3%・12.2%・17.7%・21.8%・24.8%・26.7%で、案Bの21.6%を超えるのは約1,590万食(稼働率約79%)からです。1,000万食では資本コスト8%にも届きません。ROICは効果が満額出た1年の会計上の収益率なので、立ち上がりや耐用年数まで含めた判断は、増分キャッシュフローからNPV(正味現在価値)・IRR(内部収益率)を計算して確かめます。
どちらが効くかを判定する手順:空き能力、共有割合、需要の順に確かめる
- 空き能力:新商品の必要量が既存工場の空き能力に収まるかを見ます。M社は必要200万食に対し空き300万食で、稼働率は70%から90%になります。収まらない分は設備投資が要り、案Aと同じ判断になります。
- 共有割合:単独で始める場合の固定費を費目別に出し、既存の体制でまかなえる割合σとSを求めます。σの境目(図表3)は、案Bの営業利益の増加額360-600×(1-σ)に0.7を掛けて増分投下資本680で割った値が、案Aの17.68%に並ぶ68.6%と、資本コスト8%に並ぶ約53%です。
- 需要:案Aは新工場の稼働率が上がるまで固定費が重く、案Bを上回る販売量(図表3)に届くかが分かれ目です。その需要を顧客の引き合いで裏づけられるかを確かめます。
- 補正:機会原価とカニバリゼーションを差し引き、結論が変わらないかを確かめます。
機会原価は、ある資源を別の使い道に回せば得られたはずの利益です。空き能力の200万食を弁当の増販に使えるなら、失う限界利益は200万食×200円=400百万円で、案Bの営業利益の増加額は210-400=▲190百万円になります。案Bの優位は、空き能力の機会原価がごく小さい場合に限られます(差額原価・増分分析)。カニバリゼーション(新商品が既存商品の売上を奪うこと)も同じ扱いで、総菜1食が弁当1食を置き換える割合をkとすると、増加額は210-400k、増分投下資本は弁当の運転資本が減る分だけ小さい680-100kです。増分ROICが案Aに並ぶのはk=10.2%で、k=15%なら増加額は150、増分ROICは15.8%と案Aを下回ります。置き換えの見積り方は新商品のカニバリゼーションは比較対象で決まるの記事で扱います。
両案を順に行うなら、案Bで既存工場の空きが100万食に減る分、案Aの前提を置き直します。
統計の読み方と、この設例の限界
法人企業統計調査(令和7年度)の売上高営業利益率は、資本金10億円以上が8.4%、1,000万円未満が2.3%などと、資本金が大きい階層ほど高く出ます7。ただし、業種の構成や価格決定力など規模以外の要因も含む相関で、規模を増やせば利益率が上がるという規模の経済の証拠にはなりません(編集部の見解)。
この設例は、共有固定費が増えず、仕入れの数量値引きや増販の値引き・販促費、商品が増える段取りの増加(範囲の不経済)もなく、工場の数を連続的に変えられると置いています。いずれも実績で確かめる前提です。規模を同業の買収で得る場合のシナジーの見積りはシナジーの定量化の記事と用語解説の水平統合で、多角化が企業価値を生むかの判定は事業の多角化は企業価値を生むかの記事で扱います。
実務チェックリスト
- 固定費を費目別に分けて共有割合を数字で書き、費用節約率Sの分母が共同生産の費用であることを確認したか。
- 単位コスト曲線に、規模の不経済が始まる点(仮定か実績からの推定か)を書き、案の生産量が底の手前か後かを見たか。
- 既存拠点の空き能力に新商品の必要量が収まるか、空き能力に他の使い道(機会原価)がないかを確認したか。
- ROICの投下資本の範囲を明記し、案ごとの増分ROICと、資本コストを超える利益の額を並べたか。
- 案Aの販売量を動かして逆転する水準を求め、それを裏づける需要があるかを確かめたか。
- 新商品が既存商品の売上を奪う分を差し引いても、結論が変わらないかを確かめたか。
よくある質問(FAQ)
範囲の経済は、商品を増やせば必ず生じますか。
必ずしも生じません。商品どうしで共有できる設備や体制がない、または切替や調整の費用が共有による節約を上回る場合は、Sが0以下になり、負の場合を範囲の不経済と呼びます8。S>0かどうかは、共同生産の費用の見積りで確かめます。
規模の不経済が始まる生産量は、どう見積もりますか。
設例の1,000万食は仮定です。拠点別・期間別の管理・調整の費用を生産量に対して並べ、1食当たりの費用が増え始める点を探します。実績が足りないときは、その点を前後に動かして、案の優劣が変わるかを見ます。
増分ROICが高い案のほうが、企業価値も多く生みますか。
そうとは限りません。増分NOPATから増分投下資本の8%(資本コスト)を引いた額は、案Aが504-2,850×8%=276、案Bが147-680×8%=92.6で、販売量1,400万食が確かなら投資の大きい案Aが上回ります。資金に限りがあるときは投資1円当たりの効率で選び、そうでなければ増分キャッシュフローのNPVで比べます。
まとめ
規模の経済と範囲の経済は、設例ではどちらも共有できる固定費を何で割るかの違いとして計算でき、同じ前提で損益・投資額・増分ROICに並べて初めて比べられます。M社では、案Aの1,400万食は単位コストの底(1,200万食)を過ぎており、増分ROICは案Bが上回る一方、資本コストを超える利益の額は案Aが上回りました。結論は、案Bでは共有割合・空き能力・機会原価・カニバリゼーションに、案Aでは販売量に左右されます。
脚注
- Corporate Finance Institute(CFI)「Economies of Scale」の冒頭と各節に、規模の経済は生産量が増えるほど1単位当たりの固定費が小さくなる関係から生じる費用面の優位であること、源泉の一つに購買(大量購入や専門卸からの購入、供給者との数量値引きの交渉)があること、産出量がある水準を超えると平均費用が上昇する規模の不経済があり、企業が大きくなるほど複雑になって規模の経済と不経済の均衡が必要になることが記載されている。一般的な概念の参考であり、日本の統計・制度に関する記述の根拠ではない(参考文献 R1)。↩
- CFI「Economies of Scope」に、範囲の経済は複数の商品を別々ではなく一緒に生産すると総生産費用が下がることで、費用節約率Sが0より大きければ範囲の経済があること、同じ製造設備や投入物で複数の商品を作る柔軟な製造などが実現方法として挙げられていること、規模の経済は単一の商品の生産規模を増やすことによる費用の節約として区別されていることが記載されている。同ページの設例の計算は、分子を(別々に生産する費用の合計-一緒に生産する費用)、分母を一緒に生産する費用としている(参考文献 R2)。↩
- Molinos-Senante・Maziotis「Productivity growth, economies of scale and scope in the water and sewerage industry: The Chilean case」(PLOS ONE 16巻5号、2021年)の「2. Methodology」の式(2a)(2b)に、範囲の経済は C(yN) < C(yK)+C(yN-K)(全体の産出物を一緒に生産する費用が、別々に生産する費用の合計より小さい)で定義され、百分率では[C(yK)+C(yN-K)-C(yN)]÷C(yN) と表せることが記載されている。チリの水道・下水道事業を対象とした研究論文で、同じ式の形(分母は一緒に生産する費用)の確認に用いた(参考文献 R3)。↩
- 企業会計審議会「原価計算基準」(昭和37年11月8日)第2章第1節8(四)「操業度との関連における分類」に、「ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。」とある(原文の引用)。同基準は制度としての原価計算の基準であり、本記事の単位コスト曲線やROICは管理会計上の分析で、同基準が定めるものではない(参考文献 R4)。↩
- 財務省「年次別法人企業統計調査(令和7年度)」(令和8年9月1日)の第4表「売上高利益率の推移」(p.6)に、令和7年度(2025年度)の食料品の売上高営業利益率は3.4%と記載されている。第1表(売上高、p.3)と第2表(営業利益、p.4)の金額(食料品は売上高573,921億円、営業利益19,718億円)から再計算すると一致する。食料品製造業全体の合計から計算した比率で、個社の水準ではない(参考文献 R5)。↩
- 原価計算基準 第2章第1節8(四)の第2段落は、「ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等」と、操業度が零でも一定額が発生し操業度に比例して増える原価要素(電力料等)を、「準固定費又は準変動費となづける」としている。前者が準固定費にあたる(鉤括弧内は原文の引用。参考文献 R4)。↩
- R5 の第4表(p.6)の「資本金別」に、令和7年度の売上高営業利益率が、10億円以上8.4%、1億円〜10億円5.1%、1,000万円〜1億円3.4%、1,000万円未満2.3%と記載されている。第1表・第2表の金額から再計算すると一致し、資本金別の売上高・営業利益の合計は、全産業(同表の注により金融業、保険業を含まない)の合計に一致する(参考文献 R5)。↩
- R3 の式(2b)の説明に、範囲の経済の値は正・負・0のいずれもとり得ること、負の値は、別々に生産するほうが費用が小さい範囲の不経済を意味することが記載されている(参考文献 R3)。↩
参考文献(2026年10月確認)
- R1 Corporate Finance Institute「Economies of Scale」(2019年11月16日公開) corporatefinanceinstitute.com (参照箇所:「What are Economies of Scale?」「Sources of Economies of Scale」「Diseconomies of Scale」。規模の経済・規模の不経済の一般的な定義の参考。脚注1 の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R2 Corporate Finance Institute「Economies of Scope」(2019年12月8日公開) corporatefinanceinstitute.com (参照箇所:「What are Economies of Scope?」「Formula for Economies of Scope」「Example of Economies of Scope」「How to Achieve Economies of Scope?」「Economies of Scope vs. Economies of Scale」。範囲の経済の一般的な定義・式の参考。脚注2 の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R3 Maria Molinos-Senante, Alexandros Maziotis「Productivity growth, economies of scale and scope in the water and sewerage industry: The Chilean case」PLOS ONE 16(5): e0251874(2021年5月28日) pmc.ncbi.nlm.nih.gov (参照箇所:「2. Methodology」の式(2a)(2b)とその説明。範囲の経済の式の形の確認。脚注3・8 の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R4 企業会計審議会「原価計算基準」(昭和37年11月8日。会計基準検索システム ASSET-ASBJ 掲載、最終更新日 2026年7月17日) asb-j.jp (参照箇所:第2章 実際原価の計算 第1節 8(四)。脚注4・6 の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
- R5 財務省「年次別法人企業統計調査(令和7年度)」報道発表(2026年9月1日) mof.go.jp (参照箇所:第1表(p.3)、第2表(p.4)、第4表(p.6)。脚注5・7 の根拠。閲覧日:2026年10月2日)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。