想定読者:大口顧客から年次の値下げ要求を受ける製造業の経営企画・営業企画・FP&A(予算と計画の管理)の担当者
前提知識:損益計算書の基本(売上高・変動費・固定費・営業利益)。四則演算ができれば追えます。

結論:値下げと数量喪失を同じ営業利益の物差しで比べ、顧客の交渉力から喪失数量を見立てる

大口顧客から値下げ要求を受けると、「応じなければ取引を失う」という感覚で受けてしまいがちです。しかし値下げは変動費が変わらないため、ほぼ全額が営業利益の減少になります。一方、数量を失ったときに減るのは限界利益(売上高から変動費を引いた利益)だけで、短期には削れない固定費(売上にかかわらず一定額かかる費用)が残ります。両者を同じ物差しで比べ、顧客の交渉力から「どれだけの数量を移しそうか」を見立てます。

学習用の架空事例の自動車部品メーカーF社(売上高6,000百万円、営業利益400百万円)では、最大顧客X社の年3%の値下げ要求を受諾すると営業利益は337百万円(15.8%減)です。拒否してX社向けの数量が30%減ると短期は211百万円、50%減ると85百万円まで下がり、受諾と拒否が等しくなる喪失数量は短期10%、1年後15%でした(喪失数量はいずれも仮定)。

5つの力の全体像は5フォース分析を利益率予測につなげる記事に譲り、本記事は買い手の力に絞ります。

買い手の交渉力を、顧客ごとに4つの観測項目で判定する

買い手の交渉力は、Corporate Finance Institute(CFI)の解説では、売り手に対する買い手の数、特定の売り手への購入の依存、切替費用、後方統合(買い手が供給者の事業を自社に取り込むこと。ここでは内製化)の可能性の4要因で判定されます1。本記事はこれを顧客1社ごとに観測できる次の4項目に置き換え(編集部の整理)、当てはまる数で判定します。

  • 売上構成比:その顧客向けの売上高÷自社の売上高が20%以上
  • 代替の供給者:同等品を供給できる他社が2社以上
  • 切替費用:買い手が供給者を替えるときの再認定・金型移管などの期間が半年以内
  • 内製化:買い手が自社で作れる

当てはまる項目は買い手に有利で、3〜4項目で「強」、2項目で「中」、0〜1項目で「弱」とします。20%・2社・半年は編集部の仮の目安です。CFIの解説は切替費用を代替の供給者の少なさと結びつけていますが、「何社いるか」と「替えるのにかかる費用と期間」は別の事実なので、項目を分けます。

図表1:顧客別の交渉力判定表(上位5顧客、単位:百万円・%)
顧客売上高(構成比)代替の供給者切替費用(再認定等の期間)内製化契約・単価改定(参考)判定
X社2,100(35.0%)●2社●小(約6か月)●一部は可●基本契約・年1回の協議強(4/4)
Y社900(15.0%)2社●小(約3か月)●不可基本契約・年1回の協議中(2/4)
Z社720(12.0%)1社大(約18か月)不可2年間の単価固定弱(0/4)
W社480(8.0%)2社●小(約3か月)●不可都度発注中(2/4)
V社360(6.0%)1社大(約24か月)不可基本契約・原価連動あり弱(0/4)
対象:F社(学習用の架空事例)の20X1年度。売上高6,000のうち上位5社計4,560(76.0%)、その他1,440(24.0%)。●は買い手に有利な項目で、強=3〜4項目、中=2項目、弱=0〜1項目。契約・単価改定の欄は判定に使いません。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表1のとおり、X社は4項目すべてに当てはまり「強」、Z社とV社は0項目で「弱」です。W社は構成比が8%でも代替2社と短い切替期間で「中」になり、構成比だけでは交渉力は決まりません。顧客集中度(上位顧客への売上依存度)の計算は用語集に、契約の実査は顧客集中リスクの評価に、切替費用の金額化はスイッチングコストを金額で測る記事に譲ります。

公正取引委員会の「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」は、優越的地位の判断で、取引依存度(供給側の売上高に占める当該顧客向けの割合)や取引先変更の可能性などを総合的に考慮すると説明しています2。これはF社側の事情で、図表1のX社側の事情と表裏の関係にあります。ただし図表1は交渉の見立てで、法的な優越的地位の判断ではありません。

X社向けの値下げ1%は、営業利益の5.25%に当たる

F社の20X1年度(学習用の仮定)は、売上高6,000、限界利益率30.0%(限界利益1,800)、固定費1,400、営業利益400で、単位は百万円です。X社向けの売上高は6,000×35%=2,100、限界利益率は全社平均と同じ30.0%と仮定します(顧客別の限界利益は事業別・製品別・顧客別収益性分析で扱います)。受諾してもX社の数量は変わらないものとします。

値下げの営業利益への影響
減少額 = X社向け売上高 × 値下げ率(変動費は変わらず、売上の減少がそのまま営業利益の減少)
減少率 = 減少額 ÷ 現状の営業利益

値下げ3%なら、減少額は2,100×3%=63、営業利益は400−63=337、減少率は63÷400=15.75%(表示は15.8%)です。値下げ率1%ごとに、営業利益は2,100×1%÷400=5.25%動きます。図表2のとおり、売上高は63÷6,000=1.05%しか減らないのに、営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)は6.7%から5.7%に下がります。同じ63の売上高を数量減で失うなら、変動費も減るので営業利益の減少は63×30%=18.9で済みます。

図表2:X社向けの値下げ率別の営業利益感応度(単位:百万円・%)
値下げ率売上高の減少額=営業利益の減少額営業利益営業利益の減少率(%)全社の売上高営業利益率(%)参考:同額を数量減で失った場合の営業利益の減少額
0%(現状)-400-6,0006.7-
1%213795.35,9796.36.3
2%4235810.55,9586.012.6
3%6333715.85,9375.718.9
4%8431621.05,9165.325.2
5%10529526.35,8955.031.5
対象:F社(学習用の架空事例)の20X1年度、X社向け売上高2,100(数量は不変)。率は小数第2位を四捨五入。参考列は減少額×限界利益率30.0%。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

受諾と拒否の営業利益を、短期と1年後に分けて比べる

拒否した場合の損失は、X社が移す数量で決まります。F社の仮定では、X社は代替の供給者に数量の一部を移し、X社向けの数量が30%または50%減り、残りは現行価格で続きます。競合が値引きで受注を取りに来るかの見方は寡占市場で競合の価格反応を事業計画に入れる記事が扱います。

拒否した場合の営業利益
営業利益 = 現状の営業利益 - 喪失数量割合 × X社向けの限界利益 + 削減できた固定費

固定費は短期には減らせません。数量が30%減ると、失う売上高は2,100×30%=630、失う限界利益は630×30.0%=189で、固定費は1,400のままなので営業利益は400−189=211です。50%減なら失う売上高は1,050、失う限界利益は315で、営業利益は85です。1年後は、専用工程の人員配置や外注契約の見直しなどで、失った売上高の10%に当たる固定費を削減できると仮定します。30%減は630×10%=63、50%減は1,050×10%=105を削減でき、営業利益は274と190です。受諾・拒否・条件付き受諾(後述)を並べたのが図表3です。

図表3:受諾・拒否・条件付き受諾の営業利益の比較(単位:百万円)
項目現状①3%受諾②拒否→数量30%減③拒否→数量50%減④条件付き受諾
短期(固定費は変えない)
X社向けの売上高2,1002,0371,4701,0501,995
全社の売上高6,0005,9375,3704,9505,895
限界利益1,8001,7371,6111,4851,779
固定費1,4001,4001,4001,4001,420
営業利益40033721185359
現状との差-▲63▲189▲315▲41
1年後(固定費の一部を削減)
固定費の削減額-0631050
固定費1,4001,4001,3371,2951,420
営業利益400337274190359
現状との差-▲63▲126▲210▲41
対象:F社(学習用の架空事例)の20X1年度を基準にした1年分。拒否は残りの数量を現行価格で継続すると仮定し、固定費の削減額は失った売上高の10%(仮定)。④は価格が105下がり、変動費が84下がる設定で、VA/VEの実施費用20を固定費に含む(1年後も同額)。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表3のとおり、拒否はどちらの時間軸でも受諾(337)を下回ります。拒否が受諾に追いつくには、固定費を30%減で337−211=126(固定費1,400の9.0%)、50%減で337−85=252(18.0%)削る必要があり、仮定した削減額(63・105)では足りません。ただし、これは喪失数量を30〜50%と置いた場合の結論です。

受諾と拒否が等しくなる値下げ率と喪失数量の分岐線

拒否の損失が値下げの損失と等しくなるのは、短期なら「値下げ率×X社向け売上高=喪失数量割合×X社向け売上高×限界利益率」のときです。1年後は、失った売上高に対する固定費の削減率k(仮定で10%)が、限界利益率を実質的に下げます。

受諾と拒否が等しくなる喪失数量割合
短期:喪失数量割合 = 値下げ率 ÷ 限界利益率
1年後:喪失数量割合 = 値下げ率 ÷(限界利益率 - k)

F社は、短期が3%÷30%=10%、1年後が3%÷(30%−10%)=15%です。X社が移す数量がこれより多いなら受諾、少ないなら拒否が有利です。逆に、X社が数量の30%を移すと見るなら、受けてよい値下げ率の上限は短期で30%×30%=9.0%、1年後で30%×20%=6.0%です。図表4のとおり、F社の想定(値下げ3%、喪失30%と50%)は両方の線より上、つまり受諾が有利な側にあります。値下げ3%で喪失が10〜15%の間なら、短期は受諾が有利でも、1年後は拒否が有利になります。

図表4:受諾と拒否の営業利益が等しくなる分岐線 縦軸:X社向けの喪失数量割合(%) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 0% 1% 2% 3% 4% 5% 横軸:X社向けの値下げ率(%) 想定A:喪失30% 想定B:喪失50% 受諾が有利 (線より上) 拒否が有利 (線より下) 凡例(d:値下げ率) 短期 固定費は変えない L=d÷30% 3%のとき 10% 1年後 固定費を一部削減 L=d÷20% 3%のとき 15% F社の想定 値下げ3%、喪失30・50%
対象:F社(学習用の架空事例)の20X1年度、X社向け売上高2,100・限界利益率30.0%。単位:値下げ率dと喪失数量割合Lはともに%。1年後は失った売上高の10%の固定費を削減できる仮定。白抜きの丸は値下げ3%での分岐点(10%・15%)。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

値上げ側の許容できる数量減はPE投資先のPricing改善で、値引き後に限界利益を保つのに必要な数量増は損益分岐点分析(CVP分析)の実務で扱っています。

条件付き受諾:数量保証・VA/VE提案・材料費連動を営業利益で評価する

受諾と拒否の間に、条件を付けて受ける選択肢があります。F社が検討する3つの条件を、営業利益で評価します。

  • 数量保証:X社が年間購入数量の下限(現行の90%)を約束する条件です。受諾しても数量が保たれる保証はなく、3%の値下げを受けた後に数量が30%減ると営業利益は166.9、保証下限の90%まで減る場合は280.3です(X社以外の限界利益1,170+X社向け売上2,100×0.97×数量比−変動費1,470×数量比−固定費1,400)。保証は、受諾した後の下振れに床を作ります。
  • VA/VE提案:VA/VE(価値分析・価値工学。機能を保ったまま設計・材料・工程を見直して原価を下げる活動)で、X社向けの変動費を84(X社向け売上の4.0%)下げる提案です。仕様変更にX社の承認が要るため、成果の50%(42)をX社に還元します(学習用の設定。成果は当期から全額出ると仮定)。価格は値下げ63と還元42で105下がり、限界利益は1,800−105+84=1,779、実施費用20(試作・評価)を固定費に加えて営業利益は1,779−1,420=359です(図表3の右端)。成果が出なければ337−20=317で、還元率が1−20÷84=76.2%以下なら受諾(337)以上です。
  • 材料費連動条項:材料費の変動を単価に反映する取り決めです。設計はコスト価格転嫁に譲り、本記事の比較には材料費の変動を置いていません。値下げ幅の合意と同時に、材料費の上昇分の扱いも決めておきます。

受諾は翌年以降の前例にもなります。同じ3%が3年続き原価低減がなければ、3年目のX社向け売上高は2,100×0.97³=1,916.6、営業利益は400−183.4=216.6です(仮定。翌年以降の要求が確定しているわけではありません)。

取適法・独占禁止法の下で、交渉の記録を残す

以下は2026年10月時点の一般的な説明で、F社とX社の取引が取適法の対象かは判断しません。下請法を改正した取適法(中小受託取引適正化法)は2026年1月1日に施行されました3。物品の製造委託では、発注者(委託事業者)の資本金が3億円超なら受注者(中小受託事業者)は資本金3億円以下、発注者が1千万円超3億円以下なら受注者は1千万円以下が対象で、資本金基準に当たらない場合は従業員基準(発注者300人超・受注者300人以下)が使われます4。対象かどうかは、取引の内容と両者の規模で決まります。対象取引での整理は次のとおりです。

  • 発注後に代金を減ずることは、受注者の責めに帰すべき理由がなければ減額として問題になります。新単価は合意後に発注する分から適用し、合意前の発注分へ遡って適用すると減額(遡及適用)になります5。
  • 「一律に一定比率で単価を引き下げて代金の額を定めること」は、買いたたき(通常の対価より著しく低い代金を不当に定めること)に該当するおそれがある方法として公正取引委員会の運用基準に挙がります6。年3%の要求が買いたたきに当たるかは、協議の方法や通常の対価との乖離などから総合的に判断されます。
  • 発注者が代金の引下げを要請し、受注者が説明を求めたのに、理由や根拠資料を示さず引き下げた額を提示することは、必要な説明をしない方法の例とされ、これで一方的に決めれば協議に応じない一方的な代金決定に当たります。要請に応じなければ取引を減らすと示唆し、説明をせずに引き下げた額を代金と定めた例も、違反の想定事例に挙がります7。

独占禁止法の優越的地位の濫用では、取引上優越した事業者が一方的に著しく低い対価を要請し、相手方が今後の取引への影響を懸念して受け入れざるを得ない場合は問題になる一方、同業者が他にいること等を理由とする要請が対価の交渉の一環で需給関係を反映していると認められる場合は、問題にならないと整理されています(要約)8。要請自体が直ちに問題になるわけではなく、協議・説明の仕方と対価の水準が問われます(編集部の理解)。

F社が実務で取り組めるのは、例えば①要請の理由と根拠資料を求める、②新単価の適用開始を「合意後の発注分から」と確認する、③協議の経過を議事録に残すことです。協議の求めと経過は、書面・電子メール等の形に残る方法で記録することが望ましいとされています9。なお、代替の供給者の価格や受注状況を同業者から聞き出す、X社への回答を同業者と申し合わせる、といった行為は避けます。価格などの申合せは価格カルテルとして独占禁止法上の問題となります10。

中長期の打ち手:顧客分散には年単位の時間がかかる

交渉力の根本は、X社への依存を下げることです。X社向けが横ばいで、X社以外の売上3,900が年8%(仮定)伸びると、X社の構成比は35.0%から、1年後に33.3%、2年後に31.6%、3年後に29.9%となり、図表1の目安の20%を下回るのは10年後です。新規顧客は、営業・試作・認定対応の費用が先に出て、売上が立つのは認定の後です。費用と期間は自社の開拓実績で置いてください。顧客ごとのサービスコストを含めた採算は顧客別のサービスコストを積み上げる記事が扱います。

実務チェックリスト

  • 顧客ごとに、売上構成比・代替の供給者の数・切替費用(金額と期間)・内製化の可否を記録し、強・中・弱を判定したか。
  • 拒否した場合の喪失数量を複数の水準(例:10%・30%・50%)で置き、分岐点(値下げ率÷限界利益率)と比べたか。
  • 固定費の削減額を、短期は0、1年後は人員配置や契約の見直しなど根拠のある額に分けて置いたか。
  • 条件付き受諾の各条件(数量保証・VA/VE・材料費連動)に、営業利益への効果と、実現しなかった場合の損失を書いたか。
  • 要請の理由と根拠資料を書面で求め、新単価の適用開始日(合意後の発注分から)と協議の経過を記録したか。
  • 受諾後は、PVM分析(売上の増減を価格・数量・ミックスに分ける差異分析)で、価格要因と数量要因を分けて追っているか。

よくある質問(FAQ)

X社が「他社はもっと安い価格を出している」と言ってきたら、その価格に合わせるべきですか。

合わせる前に、その見積が同じ条件か(数量・仕様・納期・品質・認定済みか)をX社に確認します。条件が違えば比較になりません。X社が数量を移せるかは、代替先の認定状況と切替費用で決まり、価格だけでは決まりません。根拠資料を求めたうえで、喪失数量の見立てを更新します。

X社向けの限界利益率が全社平均と違う場合は、どう直しますか。

分岐点の式の限界利益率を、X社向けの値に置き換えます。X社向けが25%なら、短期の分岐点は3%÷25%=12%です。X社向けの限界利益率が低いほど、数量を失っても失う利益が小さいので、拒否が有利になる範囲が広がります。

まとめ

値下げ要求への判断は、顧客の交渉力を観測項目で判定し、受諾・拒否・条件付き受諾を同じ営業利益の物差しで比べることです。F社では値下げ3%で営業利益が15.8%減り、受諾が有利になる喪失数量の分岐点は短期10%、1年後15%でした。喪失数量は仮定なので、分岐点との距離で結論の堅さを見ます。条件付き受諾では、VA/VEの成果を分け合えば受諾の営業利益を上回る余地があり、数量保証は受諾後の下振れに床を作ります。取適法の対象取引かは取引ごとに確認し、要請の理由・根拠・協議の経過を記録に残します。

脚注

  1. Corporate Finance Institute「Bargaining Power of Buyers」の「Determining Factors」に、買い手の交渉力を判断する4要因(売り手に対する買い手の数、特定の売り手への購入の依存、切替費用、後方統合の可能性)が、「What is the Bargaining Power of Buyers?」に分析は売り手(企業)の立場から行うとの記載がある。一般的な枠組みの参考であり、日本の制度・統計の根拠ではない(参考文献 R1)。↩
  2. 公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(PDF p.4〜5)の第2の2と注7(1)〜(3)に、優越的地位の判断で、乙(取引上弱い側)の甲に対する取引依存度(乙の甲に対する売上高÷乙全体の売上高)、甲の市場における地位、乙にとっての取引先変更の可能性(他の事業者との取引開始・拡大の可能性、甲との取引に関連して行った投資等)などを総合的に考慮するとの記載がある(参考文献 R2)。↩
  3. 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」のページ冒頭に、改正により法律名の「下請代金支払遅延等防止法」が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)となること、改正法が令和8年1月1日から施行されることが記載されている(参考文献 R3)。↩
  4. 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)p.5「委託事業者・中小受託事業者の定義(第2条第8項及び第9項)」に、物品の製造委託等について、委託事業者の資本金3億円超・中小受託事業者の資本金3億円以下(個人を含む)、委託事業者の資本金1千万円超3億円以下・中小受託事業者の資本金1千万円以下(個人を含む)の区分と、従業員基準(委託事業者300人超・中小受託事業者300人以下)があり、従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されること、取引の内容と規模の両方を満たす取引に適用されることが記載されている(参考文献 R4)。↩
  5. 公正取引委員会「委託事業者の禁止行為」に、製造委託等代金の減額(第5条第1項第3号)は、発注時に決定した代金を中小受託事業者の責に帰すべき理由がないのに発注後に減額することとの記載がある(参考文献 R6)。同「よくある質問コーナー(取適法)」のQ97は、単価引下げの合意前に発注済みの分へ新単価を適用すると新単価の遡及適用として代金の減額が問題となるとし、Q101は新単価を適用できるのは協議により単価改定が行われた時点以降に発注する分からとしている(参考文献 R5)。↩
  6. 「中小受託取引適正化法テキスト」p.85に買いたたきの禁止(第5条第1項第5号。通常支払われる対価に比し著しく低い代金の額を不当に定めること)の条文がある。p.190(運用基準第4の5)には、買いたたきに該当するか否かは十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、決定内容、通常の対価との乖離状況、原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断すること(同(1))、「一律に一定比率で単価を引き下げて代金の額を定めること」が買いたたきに該当するおそれのある方法であること(同(2)オ)が記載され、p.191に事例5-4(主要な部品を一律に一定率引き下げた単価とした例)・5-5(半年ごとに加工費の原価低減を要求し、十分な協議をせずに一方的に代金の額を定めた例)がある。p.86には、買いたたきは発注時に生じ、減額は一旦決定された代金を事後に減ずるものとの整理がある(参考文献 R4)。↩
  7. 「中小受託取引適正化法テキスト」p.112に協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号)の条文があり、p.200〜202(運用基準第4の9(2)・(7)エ、事例9-3(2))に、第5条第2項第4号の「費用の変動その他の事情」に委託事業者から従前の代金の引下げを求められた場合が含まれること、委託事業者が代金の引下げを要請し中小受託事業者が説明を求めたのに具体的な理由の説明や根拠資料の提供をせず引き下げた額を提示することが必要な説明をしない方法の例で、これによって一方的に代金を決定した場合は第5条第2項第4号に該当するとされていること、原価低減要請に応じなければ取引を減らす・打ち切ると示唆したうえ説明をせず従前の代金から引き下げた額を定めた場合が想定される違反行為事例に挙がっていることの記載がある。運用基準(p.171、令和7年10月1日全部改正の公正取引委員会事務総長通達)は令和8年1月1日から施行されている(参考文献 R4)。↩
  8. 「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」第4の3(5)ア(PDF p.21〜22)に、優越した事業者が一方的に著しく低い対価での取引を要請し相手方が今後の取引への影響を懸念して受け入れざるを得ない場合は優越的地位の濫用として問題となること、他方、要請のあった対価で取引を行おうとする同業者が他に存在すること等を理由とする低い対価の要請が、対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものと認められる場合は問題とならないことの記載がある。本文は要約で、訳ではない(参考文献 R2)。↩
  9. 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」のQ137に、協議を求める際は書面・電子メール等の形に残る方法で行い記録を作成・保存することが望ましく、委託事業者も必要な説明をする際に協議経過を議事録に残すなど記録化しておくことが望ましいとの記載がある。「中小受託取引適正化法テキスト」p.115に同旨のQ&A(Q136)がある(参考文献 R5・R4)。↩
  10. 公正取引委員会「物価高の局面におけるカルテルに対する公正取引委員会の取組」に、事業者間で価格や値上げの時期などを申し合わせる行為は価格カルテルとして独占禁止法上の問題となること、各事業者は自らのコストや事業戦略などを踏まえて独立して価格決定を行うよう留意が求められることの記載がある(参考文献 R7)。↩

参考文献(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。