想定読者:定期購入・定期配送型の事業で継続率の前提を置く経営企画・FP&A(予算と計画の管理)の担当者、投資先の収益の質を点検するPE(プライベート・エクイティ)・VC(ベンチャーキャピタル)の担当者
前提知識:継続率=1-解約率の関係と、売上高=契約世帯数×月額料金の計算。

結論:継続率は過去平均で置かず、切替費用を金額にして競合の便益と比べ、解約率を置き直す

継続率を過去の平均のまま事業計画に置いていないでしょうか。競合が値引きや乗り換え補助を始めると、その便益に比べて切替費用の低い層から先に動きますが、全体の平均では、どの層がどの水準で動くのか分かりません。スイッチングコストは「高い・低い」の判断で止めず、顧客層ごとに金額へ分解し、競合の便益と並べて初めて継続率の前提に使えます。

学習用の架空事例の定期配送事業J社(契約10万世帯、月額料金4,000円)で試すと、過去の年間解約率(期首の世帯のうち1年間に解約した世帯の割合。以下、率は特に断らない限り年間で、月次の率には「月次」と書きます)12.5%(年間継続率87.5%)は、競合が月500円の値引きを12か月続けるだけなら13.4%(同86.6%)、解約金相当の補助を加えると20.5%(同79.5%)になりました。このときの年末の年換算売上(年末の契約世帯の月額料金の12か月分)は、施策がない場合より382.9百万円(9.1%)低くなります。値引きだけでは小幅な上昇にとどまり、解約金を肩代わりされると大きく動く形です。数字は本記事の仮定によるもので、業界の水準ではありません。

スイッチングコストの定義と、顧客にとっての乗り換えの純便益

Corporate Finance Institute(CFI)の解説では、スイッチングコスト(切替費用)は、顧客がブランド・製品・サービス・供給者を変えるときに負う費用です。解約金のような金銭的な費用が代表的ですが、時間、心理、労力の費用も含み、費用が高いほど顧客は乗り換えにくくなります1。この乗り換えにくさは、競合の参入や模倣から高い収益性を守る構造的な優位である経済的な堀の源泉の1つです。

企業は解約料などで切替費用を高められますが、競合は費用の一部を肩代わりして下げることもできます。たとえば、解約料を競合が代わりに払う申し出です2。顧客の判断は、「純便益=競合で得られる便益(値引きなどの節約額+競合が肩代わりする額)-切替費用」で整理し、純便益がプラスの世帯は乗り換えると単純化します(編集部の整理で、CFIの式ではありません)。切替費用は、金銭(解約金と機器の返却費用)、時間(手続の時間×時間単価)、リスク(乗り換え先の品質が期待を下回る確率×そのときの損失額)の3つで金額にし、心理や労力の費用は時間とリスクに寄せます(編集部の整理)。

設例:J社の顧客層別に切替費用を金額へ分解する

以下は学習用の架空事例です。J社は家庭向けウォーターサーバーの定期配送サービスを営み、契約は10万世帯、月額料金は4,000円で、1世帯あたりの月間売上であるARPUと同額とし、消費税は考慮しません。顧客は契約年数で3層に分かれ、競合の施策がなかった年の年間解約率は、契約1年未満のA層(25,000世帯)が20%、1〜3年のB層(45,000世帯)が12%、3年超のC層(30,000世帯)が7%で、全体は(5,000+5,400+2,100)÷100,000=12.5%です。

切替費用は次のように置きます(すべて学習用の仮定)。解約金はA層11,000円、B層6,000円、C層0円、機器の返却費用(梱包・送料)は全層2,000円です。解約・返却・新規設置の手続はA層2.0時間、B層2.5時間、C層3.0時間かかるとして、時間単価1,500円をかけます。リスクは、水の品質や配送が期待を下回る確率をA層10%、B層15%、C層20%とし、そのときの損失を月額料金3か月分の12,000円とします。長く使う世帯ほど、手間と乗り換え先への不安を大きく見積もる置き方です。

図表1:J社の顧客層別の切替費用分解表(単位:円/世帯。ただし世帯数は世帯、割合は%)
顧客層世帯数解約金返却費用時間(時間数×1,500円)リスク(確率×12,000円)切替費用の合計金銭の割合
A 契約1年未満25,00011,0002,0003,000(2.0時間)1,200(10%)17,20076%
B 契約1〜3年45,0006,0002,0003,750(2.5時間)1,800(15%)13,55059%
C 契約3年超30,00002,0004,500(3.0時間)2,400(20%)8,90022%
対象:J社(学習用の架空事例)の契約世帯の層別の代表値。金銭の割合は(解約金+返却費用)÷合計を整数%に四捨五入。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表1のとおり、切替費用の代表値は契約初期ほど大きく、A層17,200円、B層13,550円、C層8,900円です。差を生むのは解約金で、金銭の割合はA層76%、B層59%、C層22%と下がります。解約金のないC層でも、時間とリスクの6,900円が合計の78%を占めます。

競合の便益を離反の閾値と比べ、閾値を超える世帯の割合を求める

競合は通常料金も平均的な品質もJ社と同じとみなし、施策を2つ置きます。「値引きのみ」は月500円の値引きを入会後12か月続けるもので、便益は500×12=6,000円、「値引き+補助」はこれに競合がJ社への解約金を肩代わりする分を加えた、6,000円+解約金です。

切替費用が図表1どおりの代表世帯の純便益は、値引きのみでA層▲11,200円、B層▲7,550円、C層▲2,900円、値引き+補助でA層▲200円、B層▲1,550円、C層▲2,900円で、すべてマイナスです。代表世帯だけで判定すると、解約率は変わらないと結論してしまいます。

しかし同じ層でも、時間の価値や品質への不安は世帯ごとに違います。解約金と返却費用は契約で決まるので全員同じですが、時間とリスクの合計は、層の代表値の0.5〜1.5倍に、どの倍率の世帯も同じ割合で(一様に)分布すると置きます(学習用の仮定。実際の形は乗り換え実績や調査で確かめます)。世帯の切替費用は「解約金+返却費用+倍率×(時間+リスク)」で、これがその世帯の離反の閾値です。

閾値を超える世帯の割合(層ごと)
閾値の倍率 =(競合の便益 - 解約金 - 返却費用)÷(時間 + リスク)
割合 =(閾値の倍率 - 0.5)÷(1.5 - 0.5) ※0%〜100%に収め、小数第1位を四捨五入して整数%にする

値引き+補助のA層は、便益が6,000+11,000=17,000円、時間+リスクが3,000+1,200=4,200円なので、倍率は(17,000-11,000-2,000)÷4,200=0.952、割合は0.952-0.5=0.452の45%です。B層は(12,000-6,000-2,000)÷5,550=0.721で22%、C層は(6,000-0-2,000)÷6,900=0.580で8%です。値引きのみは、A層・B層の倍率が(6,000-11,000-2,000)÷4,200=▲1.667、(6,000-6,000-2,000)÷5,550=▲0.360で0.5を下回るため0%、C層は8%です。

図表2:顧客層別の切替費用の範囲と、競合の便益(12か月分) 金額(円) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 A 契約1年未満 代表値 17,200円 範囲 15,100〜19,300円 補助込みの純便益 ▲200円 値引き+補助 17,000円 斜線の世帯 45% B 契約1〜3年 代表値 13,550円 範囲 10,775〜16,325円 補助込みの純便益 ▲1,550円 値引き+補助 12,000円 斜線の世帯 22% C 契約3年超 代表値 8,900円 範囲 5,450〜12,350円 補助込みの純便益 ▲2,900円 値引き+補助も6,000円(解約金0円) 斜線の世帯 8% 値引きのみ 6,000円 棒:世帯ごとの切替費用の範囲(時間とリスクの合計が代表値の0.5〜1.5倍。解約金と返却費用は全員同じ) 斜線:競合の便益が切替費用を上回る範囲(棒の幅に占める割合が、閾値を超える世帯の割合) 破線:値引きのみの便益(6,000円) 実線:値引き+補助の便益(6,000円+解約金)
単位:円(1世帯あたり)。対象:J社(学習用の架空事例)の契約世帯。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは図を横にスクロールできます)

図表2のとおり、値引きのみの便益(破線)はA層・B層の切替費用の範囲に届きません。補助が加わると便益は解約金の分だけ右へ動き、A層・B層は範囲の中に入ります。

割合から年間解約率・継続率のシナリオを作り、売上への影響を示す

閾値を超える世帯がすべて乗り換えるわけではありません。競合の提案を知って乗り換えを比べる世帯の割合(到達率)を40%と置きます(学習用の仮定)。引っ越しなど施策と関係のない解約は施策がなくても起きるので、二重に数えないよう、その解約で抜けた世帯を除いた分に到達率を掛けます。

年間解約率と月次解約率
年間解約率(層ごと)= 過去の年間解約率 +(1-過去の年間解約率)× 到達率 × 閾値を超える割合
年間継続率 = 1 - 年間解約率 / 月次解約率 = 1 -(年間継続率)の12分の1乗

値引き+補助のA層は20%+(1-0.20)×0.40×0.45=34.40%、B層は12%+0.88×0.40×0.22=19.74%、C層は7%+0.93×0.40×0.08=9.98%で、離反世帯数は25,000×34.40%=8,600、45,000×19.74%=8,883、30,000×9.98%=2,994、合計20,477世帯です。年末の契約世帯数は100,000-20,477=79,523、年換算売上(年末の世帯数×月額4,000円×12か月)は3,817.1百万円です。値引きのみの離反は5,000+5,400+2,994=13,394世帯です。率は、閾値を超える割合を整数%、層別の年間解約率を小数第2位(%)に四捨五入して以降の計算に使い、世帯数は整数、売上は小数第1位に丸めます。

図表3:継続率シナリオ表(競合の施策別。期首10万世帯の1年間。単位:%、世帯、百万円)
項目(率はすべて年間)施策なし値引きのみ(月500円×12か月)値引き+補助(解約金相当を肩代わり)
閾値を超える割合:A層-0%45%
閾値を超える割合:B層-0%22%
閾値を超える割合:C層-8%8%
年間解約率:A層20.00%20.00%34.40%
年間解約率:B層12.00%12.00%19.74%
年間解約率:C層7.00%9.98%9.98%
全体の年間解約率12.5%13.4%20.5%
年間継続率(全体)87.5%86.6%79.5%
月次解約率に換算(全体)1.11%1.19%1.89%
年末の契約世帯数87,50086,60679,523
年換算売上(年末の世帯数×4,000円×12)4,200.04,157.13,817.1
施策なしとの差(年換算売上)-▲42.9▲382.9
対象:J社(学習用の架空事例)の20X1年度末の契約10万世帯を期首とする20X2年度の1年間(新規獲得は含めない)。A層は契約1年未満、B層は1〜3年、C層は3年超。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

図表3のとおり、全体の年間解約率の上昇は、値引きのみでは0.9ポイントですが、補助が加わると8.0ポイントです。年換算売上の差は、増える離反7,977世帯(20,477-12,500)×48,000円(月額4,000円×12か月)=382.9百万円の減少で、施策なしの4,200.0に対して9.1%です。値引き+補助と値引きのみの差(7.1ポイント、売上340.0百万円)が、値引きだけの競合に対して解約金が守っている部分の目安です。当年度の売上への影響は、期首と期末の世帯数の平均で近似すると約191.4百万円(年換算の半分)で、満額は翌年度に表れます。

月次で管理する場合は換算に注意します。年間継続率79.523%の月次解約率は1-0.79523^(1/12)=1.89%で、月次1.89%を12倍した22.7%は、年間解約率20.5%と2.2ポイント食い違います(毎月の継続率を12回かけ合わせるため)。月次解約率の逆数は、その率が続く場合の平均継続期間の目安で、施策なしの1.11%なら約90か月、値引き+補助の1.89%なら約53か月と約4割短く、LTV(顧客が取引期間に生む粗利の合計)に直結します。

前提の幅:時間単価・リスクの換算・ばらつきで結果は大きく動く

時間単価と品質への不安の金額換算は学習用の仮定で、割合は閾値の近くで大きく動きます。値引き+補助の年間解約率を、時間単価1,000・1,500・2,000円と、リスクの損失額(月額料金の1.5・3・4.5か月分)の組み合わせで試したのが図表4です。

図表4:値引き+補助のときの全体の年間解約率の感応度(単位:%)
時間単価\リスクの損失額6,000円(月額の1.5か月分)12,000円(3か月分)18,000円(4.5か月分)
1,000円36.3%28.0%22.4%
1,500円(基準)25.3%20.5% ◆基準17.0%
2,000円19.0%16.1%14.3%
対象:図表3の値引き+補助。時間単価とリスクの損失額以外の前提と丸め方は図表3と同じ。出所:学習用の仮定に基づき大手町プレップ作成。(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)

結果は14.3%から36.3%まで広がり、年換算売上の差は▲88.1百万円から▲1,142.2百万円まで動きます。A層は代表世帯の純便益が▲200円と閾値の近くにあるため、時間単価を1,000円にするだけで割合は45%から75%になります。到達率を30%・50%にすると18.5%・22.5%、ばらつきを0.7〜1.3倍に狭めると16.3%、0.3〜1.7倍に広げると23.2%です。

継続率を過大評価しやすい典型と、契約年数別・更新月・獲得チャネル別の点検

  • 平均値だけを見る:全体の12.5%は、A層20%・B層12%・C層7%を世帯数で加重した平均です。構成がA層35%・B層45%・C層20%になるだけで、競合の施策がなくても全体は13.8%(+1.3ポイント)に上がります。
  • 更新月の解約を見落とす:解約金のかからない更新月がある契約では、更新月に解約が集まりやすく、その月の切替費用は解約金の分だけ下がります(B層なら13,550-6,000=7,550円で、閾値を超える割合は値引きのみでも22%)。月次と年次の換算は毎月同じ率で解約が起きる前提で、更新月に集中する事業では月々の落ち込みを平らにならします。獲得月別のコホート(契約開始の時期が同じ世帯群)で、経過月ごとの解約を見ます。
  • 獲得チャネルを混ぜる:値引き目的で入会した世帯は、同じ契約年数でも切替費用の中身が違うという仮説を、チャネル別の継続率で確かめます。
  • 定義の違う数字を並べる:ラクスの2026年3月期の決算説明資料は、月次解約率を件数ベースとMRR(月間経常収益)ベースの直近12か月平均で併記し(楽楽精算は0.47%と0.17%)、四半期解約率は別の定義で示しています3。期間と、件数か金額かを、数字とセットで読みます。
  • 相関を因果と読む:層ごとの継続率の差には、満足度や入会の動機の違いも混ざります(J社では解約金の最も大きいA層の解約率が最も高い)。切替費用の効果は仮説で、競合の施策があった時期の実績で検証します。

解約金や手続で切替費用を高める手段には、分野ごとの法規制がある

以下は2026年10月時点の一般的な説明で、J社の契約が各規制の対象かどうかは判断しません。設例の解約金も説明用の仮定で、適法性の判断ではありません。

電気通信事業法は、指定を受けた携帯電話サービスなどの事業者が、契約の解除を不当に妨げて事業者間の競争を阻害するおそれのある提供条件を約することを禁じ、省令は、違約金等の定めの期間が2年を超えることや、違約金等と特定経済的利益(期間内に契約を変更・解除すると受けられなくなる経済的利益)の合計額が千円を超えることなどを挙げています4。総務省の資料は、改正法の施行を2019年10月1日、上限を1,000円(税抜)とし、乗り換えのスイッチングコストを下げて事業者間の競争を促すには違約金の抜本的な引き下げが必要だと説明しています5。

通信販売では、2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正で、申込みの書面や画面に価格や解除に関する事項などを表示する義務と、申込みの撤回・解除を妨げるために不実のことを告げる行為の禁止が設けられました6。消費者契約法第9条第1項第1号は、解約に伴う違約金などの合計額が、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします7。

CFIが切替費用を高める手段に挙げる解約料や複雑な手続は、分野によっては上のような規制があるため、本記事は解約金や手続の負担を増やして継続率を守る施策を推奨しません。切替費用の分解は、肩代わりされたときの弱さを測り、顧客に選ばれる理由(品質や利便性)で守るべき層を見つけるために使います(編集部の見解)。

実務チェックリスト

  • 顧客層(契約年数、獲得チャネル、更新月の前後)ごとに、切替費用を金銭・時間・リスクに分け、各要素の根拠を書いたか。
  • 時間単価とリスクの金額換算を仮定と明示し、変えたときの年間解約率と売上の幅を示したか。
  • 代表世帯だけで判定せず、同じ層のばらつきを分布で置き、純便益がプラスになる世帯の割合を求めたか。
  • 競合の便益(値引きの総額、肩代わりの有無と額)を層ごとに計算し、肩代わりされる場合を別のシナリオにしたか。
  • 率の期間(年間・月次)と定義(件数か金額か)を取り違えず、月次と年次の換算に12乗を使い、離反世帯数・年末の世帯数・年換算売上が一致することを検算したか。
  • 過去平均の解約率を、契約年数別・更新月別・獲得チャネル別の実績で点検したか。
  • 解約金や手続の負担を高める施策では、対象となる法規制を原文と施行日で確認したか。

よくある質問(FAQ)

大口の法人顧客にも、層の割合で置くこの手順を使えますか。

そのままは使えません。この手順は、同じ性質の世帯が多数いる個人向けの事業を想定しています。数社が売上の大半を占める法人顧客は1社ごとの契約の調査が要り、値下げ要求への対応は大口顧客の値下げ要求にどう応じるか、契約書の実査はCustomer Concentration(顧客集中)リスクの評価で扱っています。

自社が値上げする場合も、同じ表で読めますか。

読めます。値上げで広がる料金差に、世帯が比べる期間(たとえば12か月)をかけた額を、便益の欄に入れます。どこまでの離反なら利益が増えるかという損益分岐は、PE投資先のPricing改善で扱っています。

まとめ

継続率は、過去平均のまま置かず、顧客層ごとに切替費用を金銭・時間・リスクに分け、競合の便益と比べて閾値を超える世帯の割合から置き直します。J社では、月500円の値引きだけでは小幅な上昇にとどまり、解約金を肩代わりされると年間解約率が大きく動きました。前提は仮定が多いので結果は幅で示し、過大評価の典型を点検します。解約金や手続で切替費用を高める手段には法規制があるため、守る理由は顧客に選ばれる側に求めます。

脚注

  1. Corporate Finance Institute(CFI)「Switching Costs」の「What are Switching Costs?」「Understanding Switching Costs」に、スイッチングコストは消費者がブランド・製品・サービス・供給者を変えるときに負う費用で、通常は金銭的な費用を指すが、心理的・時間・労力の費用も含むこと、費用が高いほど乗り換える可能性が低くなることが記載されている。一般的な概念の参考であり、日本の統計・制度や、本記事の金額への分解・解約率への換算(独自設計)の根拠ではない(参考文献 R1)。↩
  2. R1 の「Strategies Employed by Companies」に、企業が切替費用を高める戦略の例として、高い解約料、長く複雑な解約手続、多くの書類の要求が挙げられ、競合が費用の一部を負担して緩和できる例として、競合が解約料を代わりに払う申し出が記載されている。同ページの設例は使用していない(参考文献 R1)。↩
  3. 株式会社ラクス「2026年3月期 決算説明資料」(2026年5月14日)のp.57「クラウド事業サービス別 月次解約率の推移」に、件数ベース(解約に伴い減少した契約数の割合)とMRRベース(解約に伴い減少したMRRの割合)がそれぞれ直近12か月平均で示され、楽楽精算の2026年3月期は件数ベース0.47%、MRRベース0.17%と記載されている。p.21〜23の注記には、四半期解約率は「四半期の解約数合計÷直前四半期末のアクティブユーザー」と記載されている。同社の開示の例であり、他社の定義を代表するものではない(参考文献 R2)。↩
  4. 電気通信事業法第27条の3第2項第2号は、同条第1項で指定された電気通信事業者が、契約の解除を行うことを不当に妨げることにより電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれがあるものとして総務省令で定める料金その他の提供条件を約することを禁じている(要約。参考文献 R3)。電気通信事業法施行規則第22条の2の17は、その提供条件として、違約金等の定めに係る期間が2年を超えること(第1号)、違約金等の額と特定経済的利益(違約金等の定めに係る期間における期間内変更等を理由として受けることができないこととする経済的利益)の額との合計額が千円を超えること(第4号)などを定めている(要約。参考文献 R4)。いずれも2026年10月2日にe-Gov法令検索のAPIで取得した現行の条文による。↩
  5. 総務省「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備」(2019年10月1日)に、改正法が5月17日公布・10月1日施行であること(p.4)、規律の対象となる移動電気通信役務が携帯電話サービスと全国BWAサービスであること(p.9)、契約期間の上限が2年(違約金の定めがない場合を除く)、違約金等の額の上限が1,000円(税抜)であること(p.32・33)が記載されている(参考文献 R5)。総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」(令和元年6月)のスライド12(PDF13ページ目)に、「移行に係るスイッチングコストを低下させ、事業者間の競争を促進させるには、期間拘束のある契約の解除に要する違約金の額を抜本的に引き下げる必要がある」とあり、上限を1,000円とする考え方が示されている(原文のまま引用。参考文献 R6)。↩
  6. 特定商取引に関する法律第12条の6は、通信販売で顧客が申込みを行う書面や画面に、商品・役務の分量と、第11条第1号から第5号までの事項(販売価格、支払の時期・方法、引渡時期、申込みの期間、申込みの撤回又は解除に関する事項)を表示することを求め、第13条の2は、通信販売に係る契約の申込みの撤回又は解除を妨げるため、解除に関する事項などにつき不実のことを告げる行為を禁じている(要約。2026年10月2日にe-Gov法令検索のAPIで取得した現行の条文。参考文献 R7)。消費者庁「令和3年特定商取引法・預託法等改正に係る令和4年6月1日施行に向けた事業者説明会」(令和4年3月)は、通信販売に関する規定の新設を令和4年6月に施行される改正のポイントの1つとし(スライド2。PDF3ページ目)、不実告知の例として、事実に反して「定期購入契約になっているので残りの分の代金を支払わなければ解約はできない」と告げることを挙げている(スライド36。PDF37ページ目。参考文献 R8)。↩
  7. 消費者契約法第9条第1項第1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項で、これらを合算した額が、条項で設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについて、その超える部分を無効とする(要約。2026年10月2日にe-Gov法令検索のAPIで取得した現行の条文。参考文献 R9)。消費者庁「逐条解説(令和5年9月)」第9条のp.155(掲載PDFの2ページ目)は、「平均的な損害の額」を、「当該消費者契約の当事者たる個々の事業者に生ずべき損害の額について、契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値であり、当該業種における業界の水準を指すものではない」としている(原文のまま引用。参考文献 R10)。↩

参考文献(2026年10月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための学習用の架空事例であり、実在の企業・案件とは関係ありません。