この記事で分かること
- 国際金融公社(IFC)が60年間に新興国・途上国のインフラ企業へ出資した266件の実績では、米国株(S&P 500)と比べた PME が1.17倍だったこと。著者の簡便換算(PME の8乗根−1)では年約2.0%に当たるが、実際の年率リターンの差を測った値ではないこと
- その平均は出資時期・国・個別案件で大きくばらつき、2010〜2020年の出資は0.68倍、全期間で S&P 500を上回った案件は約4割にとどまること。手数料・リスク調整・IFC 特有の条件も差し引いて読む必要があること
- 案件のハードルレートに置く国別の上乗せ幅を「必要な PME」に換算し、過去の実績と並べて点検する手順(架空の設例で示す)
想定読者:総合商社・電力会社・インフラファンドで海外の発電・通信・交通案件の出資を審査する担当者、機関投資家のオルタナティブ投資の担当者、プロジェクトファイナンスに関わる金融機関の担当者
前提知識:IRR と投資倍率の違い、株主資本コストとカントリーリスクプレミアムの考え方
東南アジアの送電会社や南米の空港運営会社に少数出資する案件を審査すると、どこかで「この国にいくら上乗せするか」という議論になる。米国株の期待リターンに3%を足すのか5%を足すのか。上乗せの根拠には、ソブリン格付けのスプレッドや株式市場の変動性がよく使われるが、新興国のインフラに株式で出資した場合に実際どれだけ稼げたのかという実績は、ほとんど手元にない。
この空白を埋めようとするのが、IFC が自らの出資の記録を集計した2025年の研究である。著者らは、途上国の投資実績の情報が乏しいことが民間投資家の参加をためらわせていると考え、過去のリターンを示すことで、見通せない「不確実性」を測れる「リスク」に変えることを狙ったと述べている1。本稿は、その数字が「リスクに見合ったか」という問いにどこまで答えているかを確かめ、案件のハードルレートを置くときの使い方を考える。
この記事が主に参照する研究
Anusha Chari、Peter Blair Henry、Paolo Mauro(2025)「新興国・途上国のインフラへの株式投資の財務リターン(Financial Returns on Equity Investments in Infrastructure in Emerging Markets and Developing Economies)」IFC Research Note
- 公表:初版 2025年11月(IFC Research Note)。2025年12月に4名の NBER WP w34537。参照した版:IFC Research Note(8ページ)。NBER 版と後の改訂版は本文未確認。査読:未査読
- データ:IFC の株式出資(主に非上場企業への少数出資)のうち、電力・情報・運輸倉庫・公益の266件。出資開始は1961年〜2020年3月。比較用に全セクター1,968件
- 方法:出資の実際のキャッシュフローから PME を計算する記述的な集計。因果の識別はなく、リスク(ベータ)の調整もない
- 位置づけ:新しい理論ではなく、開発金融機関の自己データの開示。同じ IFC のデータで全セクターを分析した先行研究のインフラ版に当たる
以下ではこの研究を R1、同じ IFC のデータを使った先行研究(Shawn Cole らによる全セクターの分析)を R2 と呼ぶ2。R1 の著者の1人は IFC の調査部門の責任者で、自機関の実績を分析した研究である点も念頭に置いておきたい。
PME とは何を測る物差しか
R1 の中心の指標は PME(Public Market Equivalent)である。出資額(拠出)と回収額(配当・売却代金)を、同じ期間の株価指数のリターンで割り引いて比べる。PME が1を上回れば、同じタイミングで同じ金額を株価指数に投じるより多く稼いだことになる3。R1 は Kaplan と Schoar の定式を使い、キャッシュフローは月次・米ドル建て、指数は配当込みのトータルリターンで、リターンはすべて名目米ドルで表している。まだ売却していない出資は、2023年6月時点の評価額で売却したとみなして分配に加える。
PME の読み方について、PEファンドの成績を上場株式と比較する PME の解説で扱った点を三つだけ確認しておく。第一に、PME は「期間全体で指数より何割多く稼いだか」を表す倍率で、年率ではない。R1 は典型的な保有期間を8年と置き、PME の8乗根から1を引く簡便な換算で年当たりの目安を示している。これは指数に対する年率の倍率の超過分で、二つの年率リターンの差そのものではない。第二に、PME は比べる指数の選び方で変わる。第三に、PME は暗黙にベータ(市場との連動の強さ)を1と置いた比較で、リスクの違いそのものを調整した指標ではない。TVPI(総価値÷拠出額)も併記されているが、こちらは時間の価値を含まない。
平均では米国株を上回り、時期・国・案件で大きく割れた
中心の結果は単純である。コア・インフラ266件をまとめた PME は、S&P 500 を基準にすると1.17、MSCI 新興国株指数(1988年以降)を基準にすると1.26、投資先と同じ国の MSCI 指数を基準にした国平均では1.31だった4。著者の簡便換算(8年保有と置いた PME の8乗根−1)では、S&P 500 に対して年約2.0%、MSCI 新興国株指数に対して年約2.9%になる。期間全体の倍率を年当たりに均した目安で、実際の年率リターンの差を直接測った値ではない5。全期間の TVPI は1.80倍である。
ただし、この平均は出資時期によってまったく違う顔を見せる(図1)。1996〜2009年に始めた91件の PME は2.75と大きく、2010〜2020年に始めた130件は0.68にとどまった6。後者の TVPI は1.12倍で、元本は上回ったものの、同じ時期に米国株を持っていた場合には遠く及ばない。MSCI 新興国株指数を基準にすると同じ時期でも0.98で、ほぼ指数並みである。
2010年代の落ち込みについて、著者らは三つの要因を挙げている。2010年以降の S&P 500 のリターンが大きかったこと、途上国の経済が振るわなかったこと、そして程度は小さいが、投資先の国の通貨に対して米ドルが実質的に上昇したことである7。要因ごとの寄与は計算されておらず、これは著者の解釈である。著者らは、この10年の不振が資産クラスとしての先行きを示すのか、平均への回帰で元に戻るのかは開いた問いだとしている。
個々の案件に目を移すと、ばらつきはさらに大きい。全期間で S&P 500 を上回った案件は40.6%で、約6割は上回らなかった8。案件ごとの PME の単純平均は2.03、標準偏差は6.54で、少数の大当たりが平均を押し上げる分布である。R1 が紹介する IFC の別の分析も、全セクター2,000件超の出資のうち約1,000件は狭い意味の財務成績では振るわず、約100件が指数の数倍を稼いだと整理している9。
国・地域で分けると、平均の裏がさらに見える(図2)。下位中所得国は1.65、高所得国は1.67だったのに対し、上位中所得国は0.77で S&P 500 を下回った。地域では東アジア・太平洋が1.34、中南米・カリブは0.80、中東・北アフリカは0.88である。サブサハラ・アフリカの5.07は、24件のうち2件の大当たりに引っ張られた数字で、著者ら自身が両端の4件を除いた1.12の方が実態に近いと注意している10。
インフラが他分野より有利だったかは、慎重に読む必要がある。全セクター1,968件の PME は1.04で、インフラの1.17は金融機関(1.16)や石油・ガス・鉱業(1.17)と同程度だった。案件ごとの PME の平均の差を検定すると、インフラと統計的に有意な差があったのは不動産・社会インフラ(0.59)だけで、金融機関や製造・農業・サービスとの差は有意でなかった11。「インフラは特に儲かった」とまでは言えない。
「リ スクに見合った」と言う前に差し引くもの
PME1.17は、問いにそのまま答える数字ではない。少なくとも四つの留保が要る。
一つ目はリスクの調整である。R1 はベータを推定していない。著者らは、途上国の株式出資は世界の市場に対するベータが1未満である可能性が高く、その場合 PME はリスク調整後のリターンを過小評価すると述べるが、推定値は示されていない12。逆方向の材料もある。R2 はベータを織り込んだ一般化 PME(GPME)も推定しており、点推定は市場を上回る値でも、統計的には「市場並み」と区別できなかった13。「リスクに見合ったか」は、この研究の数字からは決着しない。
二つ目は手数料である。IFC の直接出資の数字は、運用者への報酬を差し引く前の値である。R2 は全セクターの直接出資について、手数料控除前の PME1.19から、管理報酬2%・成功報酬20%(年8%を超えた部分)という一般的なファンドの報酬を仮に差し引くと0.96に下がり、IFC が LP として出資したファンドの実績(報酬控除後0.96)とほぼ同じになると試算した14。R2 の試算は全セクターの数字だが、インフラの PME1.17も、一般的なファンドの報酬を差し引けば上回り分の大半が消える程度の大きさだとみられる(編集部の推論)。
三つ目は IFC という出資者の特殊性である。R2 は、IFC が通常は民間の共同出資者と組み、案件の25%を超えて持つことはまれだとしたうえで、世界銀行グループの一員であることが収用などからの追加的な保護になっている可能性を認めている15。共同出資した民間投資家が同じ条件を得ていたかは、データからは分からない。
四つ目は評価額への依存である。R1 は未実現出資を2023年6月の評価額で計上するが、実現済み割合は示していない。対象・時点の異なる参考値では、R2 の2010〜19年の直接出資(全セクター)は2019年6月時点で33%が実現済みだった16。R1 自身も、全セクターの PME が R2 より低い理由として、評価時点の違い(2023年6月と2019年6月)と、その間の S&P 500 の強さを挙げている17。
別の研究も挙げる。Aleksandar Andonov らは、年金基金などの機関投資家が投じたクローズド型のインフラ・ファンドの平均 PME が0.93で、バイアウトや不動産のファンドより低かったと報告している18。こちらはファンド単位の数字で(報酬控除の扱いは未確認)、R1 の手数料控除前・案件単位の数字とは直接比べられないが、「インフラだから安定して稼げる」という見方には、どちらの研究も慎重な材料を与えている。
大手町プレップの考察:設例の条件では、PME1.17は「上 乗せ年2%」程度に当たる
ここからは編集部の推論である。後の設例(米国株の期待リターン年8%、8年保有、1回出資・1回回収。すべて架空)の条件に当てはめると、R1 の全期間の PME1.17は、ハードルレートに国別の上乗せを年約2.1%置いた案件の必要水準に当たる。ただし R1 の数字は、出資時期も保有期間もキャッシュフローの形も異なる266件を、報酬控除前・リスク調整なしで合計した過去の結果である。個々の案件にどれだけ上乗せすべきかを裏付けるものではない。
上乗せを年4〜5%置く案件は、同じ設例の条件では8年で1.34〜1.44の PME を求めており、R1 の平均よりかなり高い成績を前提にしている。それ自体は誤りではない。単一案件に集中する投資家は分散した IFC よりも大きなばらつきを負い、為替や流動性の負担も違うからである。ただ、その上乗せは「過去の平均がそうだった」からではなく、「平均より上の案件を選べる」か「平均では足りない分を何で補うか」という判断の上に立っている、と自覚しておく価値がある。平均の PME だけを見ると、図1・図2が示す出資時期別・国別の大きなばらつきを見落とす点にも注意が要る。
なお、R1 の著者らは、途上国企業への株式出資は長期平均で上場株と少なくとも同程度に収益的だったと結論し、他の開発金融機関にもデータの開示を求めている19。
日本の出資者が読むときの注意
日本では、政府が2024年12月に「インフラシステム海外展開戦略2030」を決め、2030年のインフラシステムの受注額45兆円を目標に掲げた。内閣官房の資料によれば、2025年の受注額は36兆円(見込み)、JBIC・NEXI・JOIN などの政府機関が支援した案件への民間と合わせた資金供給は369億ドル(約5.6兆円)だった20。受注は機器・工事の売上で、株式出資のリターンとは別物である。
日本の出資者が R1 の数字を使うときの違いは三つある。第一に通貨である。R1 は名目米ドルで測っており、円建てで成績を見る投資家には、ドル円の変動が別に加わる。第二に出資の形である。R1 は数百件に分散した少数出資の合計で、一つの案件に大口で出資する事業会社の成績の分布とは違う。第三に案件の選び方である。IFC は開発目的と自らの審査で案件を選んでおり、日本の出資者が同じ案件群に入れるとは限らない。いずれも、R1 の数字をそのまま社内のハードルレートの根拠にしない理由になる。
国別の上乗せの考え方そのものは、カントリーリスクプレミアム
設例:上乗せ幅を「必 要な PME」に直して実績と比べる
学習用の設例(架空)
- 日本の事業会社が、新興国の電力会社の株式に米ドルで出資する。1回出資し、8年後に1回売却する単純な案件とする
- 社内のハードルレートは「米国株の期待リターン 年8%+国別の上乗せ」とする。上乗せは年2〜5%の4通り
- 米国株が期待どおり年8%で増えたとき、ちょうどハードルレートを達成する案件の PME を「必要な PME」と呼ぶ。計算は(1+ハードルレート)÷(1+8%)の8乗
上乗せ年2%の案件に必要な PME は1.16、年3%なら1.25、年4%なら1.34、年5%なら1.44になる(図3)。この設例の条件に当てはめると、R1 のインフラ全期間の実績1.17は上乗せ年2%の必要水準とほぼ同じで、逆算すると年約2.1%ポイントの上乗せに当たる。前節のとおり条件付きの目安である。上位中所得国の0.77や2010〜2020年の出資の0.68は1を下回っており、上乗せどころか米国株にも届いていない。R2 の手数料控除後の試算0.96(全セクター)も1を下回る。
保有期間を変えると、同じ上乗せ幅でも必要な PME は大きく動く(表1)。上乗せ年4%を12年続けるには1.55が要る。PME は期間全体の倍率なので、長く持つ案件ほど、年率では小さな上乗せでも累積の要求は重くなる。同じハードルレートをちょうど満たす案件でも、配当で回収の一部が前倒しされれば必要な PME は小さくなるので、実際の配当日程で計算し直す。
表1 設例:上乗せ幅と保有期間ごとの必要なPME(倍)
表は横にスクロールできます →
| 上乗せ幅 | 5年 | 8年 | 12年 |
|---|---|---|---|
| 年2% | 1.10 | 1.16 | 1.25 |
| 年3% | 1.15 | 1.25 | 1.39 |
| 年4% | 1.20 | 1.34 | 1.55 |
| 年5% | 1.25 | 1.44 | 1.72 |
この換算は、指数が期待どおりに増えることを前提にした単純化である。実際の PME は指数の実績で割り引くので、米国株が予想以上に上がった時期の出資は、案件自体が計画どおりでも PME が下がる。2010年代の数字の低さには、この効果が含まれている。社内の審査では、案件の IRR がハードルレートを上回るかという通常の判断に加えて、「同じ時期に指数へ投じていたら」という PME の見方を投資案件の事後評価に使うと、成績の原因を案件と相場に分けやすくなる。
明日から使える確認項目
- 上乗せ幅を必要な PME に換算する:審査資料のハードルレート(基準の期待リターン+国別の上乗せ)と保有期間から、(1+ハードルレート)÷(1+基準の期待リターン)の保有年数乗を計算し、R1 の全期間1.17・2010年代0.68と並べる。必要な PME が1.17を大きく超える案件では、「この案件が過去の平均より良い理由」を1行で書けるかを問う(判断の目安は編集部の仮の基準で、研究で検証されたものではない)。
- 比べる指数をそろえる:自社の過去の海外出資の成績を、IRR だけでなく S&P 500 と現地の MSCI 指数の両方を基準にした PME で出す。指数によって結論が逆になる案件は、相場の影響が大きいとみる。
- 手数料を差し引いて読む:ファンド経由で新興国インフラに投資する場合、報酬控除前の数字(R1 のような直接出資の実績)と提案書の想定リターンを比べていないかを確かめる。R2 の試算では、報酬で PME が1.19から0.96へ下がった。
- ビンテージを分ける:実績を示す資料が出資時期ごとの成績を出しているかを確かめる。ビンテージをまとめた平均だけの資料は、2010年代のような不振の時期を隠しうる。
- 為替を分ける:米ドル建ての PME と、円建てで見た成績を分けて記録する。為替の影響を除いた成績が、案件の実力に近い。
- 「勝った案件の割合」を聞く:平均の PME とあわせて、指数を上回った案件の割合(R1 では約40.6%)を確認する。単一案件に集中する出資者にとっては、平均よりこちらの方が身近なリスクを表す。
よくある質問
PME が1を上回っていれば、リスクに見合ったリターンだったと言えますか。
言えません。PME は株価指数と同じリスクを暗黙に前提にした比較で、ベータの違いや流動性の低さ、為替の負担を調整していません。R1 もリスク調整は行っておらず、ベータを考慮した R2 の指標では市場並みと統計的に区別できませんでした。
新興国インフラは他の分野より有利だったのですか。
R1 の検定では、インフラと金融機関・製造業などとの平均の差は統計的に有意ではありませんでした。有意に下回ったのは不動産・社会インフラだけです。インフラが特に有利だったとは示されていません。
まとめ
IFC のインフラ株式266件は、60年の平均で米国株を上回り、PME は1.17だった。著者の簡便換算では年約2.0%に当たるが、実際の年率リターンの差を測った値ではない。しかもそれは、時期と国を広く分散し、報酬を払わず、リスク調整をしない前提での数字で、2010年代の出資や上位中所得国では米国株を下回った。案件のハードルレートに置く上乗せ幅は、必要な PME に直すと過去の実績と並べられる。ただし設例の条件付きの目安にすぎず、案件ごとの上乗せ幅は案件固有の根拠で支える必要がある。
脚注
- R1(IFC Research Note 版, 2025年11月)p.1〜2(導入)。著者らは Frank Knight のリスクと不確実性の区別を引いて、過去のリターンの情報がリスクの数量化を助けると述べる。↩
- R1 p.6(著者紹介)。Paolo Mauro は IFC の経済・市場調査部門の Director。NBER 版(w34537、2025年12月)は Yanru Lee を共著者に加えた4名で、要旨の数値(266件、PME 1.17・1.26)は IFC 版と同じ。NBER 版の本文は確認していない。R2 は R1 p.2 が先行の取り組みとして挙げる Cole, Melecky, Mölders and Reed(初版 World Bank PRWP 9366、2020年8月)。↩
- R1 p.3(本文・注4)・p.7(付録A)。PME はベータを1と置いた比較に当たり、ベータが1を超える投資ではアルファがゼロでも1を上回りうる点は R2(World Bank OKR 掲載の改訂版 PDF)p.16 の一般化 PME の説明による。↩
- R1 p.3〜4・表1。国別 MSCI 基準は、国ごとの PME の国平均(MSCI のデータがある国のみ、1988年以降)。↩
- R1 p.3・注5・注6。著者の計算式は(PME の8乗根−1)×100 で、記載値は1.98%ポイントと2.93%ポイント。本文は R1 本文の丸め(2.0・2.9)に合わせ、R1 の「%ポイント」の表記は避けた。この換算は期間全体の倍率を8年で均した簡便な目安で、指数に対する年率の倍率の超過分であり、二つの年率リターンの差そのものではない(指数が年8%なら PME 1.17 は約2.1%ポイントの差に当たる。大手町プレップの計算)。8年は著者が置いた典型的な保有期間で、実際の保有期間は案件ごとに異なる。↩
- R1 p.3・表1。1961〜1995年は45件で PME 1.03。1996〜2009年の TVPI は3.71倍。↩
- R1 p.4(本文)。注7で、民間コンサルティング会社が公表する新興国 PE の TVPI(2000年代初め以降)でもこの20年は成績がやや劣ると補足している。↩
- R1 p.3・表1(S&P 500 を上回った案件の割合)。期間別は1996〜2009年53.8%、2010〜2020年30.8%。割合は件数ベース。「約6割は上回らなかった」は 100−40.6=59.4%で、PME がちょうど1の案件を含みうるため「下回った」とはしていない(大手町プレップの計算)。↩
- R1 p.2〜3。Mölders and Salgado(2025、World Bank Policy Research Working Paper 11025)の紹介で、原論文は本稿では確認していない。↩
- R1 p.4・表2、p.5・表3と本文。所得グループは世界銀行の2026年度の分類。サブサハラの1996〜2009年の PME は27.86。両端4件を除いた値は期間別に1.51・1.47・1.08。↩
- R1 p.6・表4、p.7・付録C(案件別 PME の単純平均の両側 t 検定)。インフラとの差の p 値は、不動産・社会インフラ0.00、金融・保険0.35、石油・ガス・鉱業0.25、製造・農業・サービス0.41。表4のプールした PME(1.17)と付録Cの案件別の単純平均(2.03)は計算の単位が違う。↩
- R1 p.4・注8。↩
- R2 p.18(4.1節)。一般化 PME は Korteweg and Nagel の方法。R2 は全セクターの分析で、2010年以降を除く期間の点推定は正だが、ゼロ(市場並み)との差は通常の有意水準で棄却できないとしている。↩
- R2 p.12〜13(直接出資は報酬控除前、ファンド出資は報酬控除後)、p.19(4.1節・注15)。報酬は四半期ごとに拠出額の2%÷4、実現済みの出資について年8%の成長を超える利益の20%を差し引く仮定。↩
- R2 p.12(External Validity)。R2 は、IFC が資本規制について特別な地位を持たないとも述べている。↩
- R2 p.13(3.2節)。R1 は2020年3月までの出資を2023年6月時点の評価額で評価しており(R1 p.7)、R1 の時点での実現済みの割合は示されていない。↩
- R1 p.6・表4の注。↩
- R3(Andonov, Kräussl and Rauh(2021)を紹介した SIEPR の政策ブリーフ、2021年10月。ブリーフの執筆者は Aleksandar Andonov・Joshua Rauh・Mels de Zeeuw で、原論文の共著者 Kräussl は含まれない)。原論文(Review of Financial Studies 2021年)の本文は確認しておらず、平均 PME 0.93 が報酬控除後かどうかはブリーフの記述からは確認できなかった。↩
- R1 p.6(本文)。↩
- R4(内閣官房、令和8年3月)p.1。受注額は英調査会社のデータを基にした野村総合研究所の試算による。資金供給の対象機関は JICA・JBIC・NEXI・JOGMEC・JOIN・JICT。↩
参考文献(2 026年10月確認)
- R1 Chari, A., P. B. Henry and P. Mauro (2025), “Financial Returns on Equity Investments in Infrastructure in Emerging Markets and Developing Economies,” IFC Research Note, International Finance Corporation, November 2025. 同じ研究の NBER 版:Chari, A., P. B. Henry, Y. Lee and P. Mauro (2025), “Financial Returns to Equity Investments in Infrastructure in Emerging-Market and Developing Economies,” NBER Working Paper No. 34537. DOI: 10.3386/w34537. 参照した版:IFC Research Note(2025年11月、8ページ)。NBER 版は要旨のみ確認。査読:未査読 ifc.org (参照箇所:IFC 版 PDF p.1〜8(本文・表1〜4・注4〜8・付録A〜C)。脚注1〜12・17・19の根拠。図1・図2は表1〜3の数値を大手町プレップが再構成したもので、原表・原図の転載ではない。閲覧日:2026年10月)
- R2 Cole, S., M. Melecky, F. Mölders and T. Reed (2026), “Long-Run Returns to Private Equity in Emerging Markets,” Management Science 72(3): 2041-2063. DOI: 10.1287/mnsc.2023.03313. 初出:World Bank Policy Research Working Paper No. 9366(2020年8月、DOI: 10.1596/1813-9450-9366)。参照した版:World Bank Open Knowledge Repository 掲載の PDF(表紙は2020年8月、本文に2023〜2024年の文献を含む改訂版)。査読:掲載誌に掲載済み(参照した WP 版は未査読) openknowledge.worldbank.org (参照箇所:PDF の物理ページ p.12〜19(3.1〜4.1節)。脚注2・3・13〜16の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R3 Andonov, A., R. Kräussl and J. Rauh (2021), “Institutional Investors and Infrastructure Investing,” Review of Financial Studies 34(8): 3880-3934. DOI: 10.1093/rfs/hhab048. 参照した資料:原論文の共著者2名を含む執筆陣(Andonov, A., J. Rauh and M. de Zeeuw)による Stanford Institute for Economic Policy Research(SIEPR)の政策ブリーフ(2021年10月) “Private Investigations: Can Institutional Investors Fill the Infrastructure Gap?”。論文本文は未確認。査読:掲載誌に掲載済み siepr.stanford.edu (参照箇所:政策ブリーフの本文(インフラ・ファンドの平均 PME)。脚注18の根拠。閲覧日:2026年10月)
- R4 内閣官房
「イ ンフラシステム海外展開戦略2030」概要資料(令 和8年3月) cas.go.jp (参照箇所:p.1(政府の戦略・2025年の状況)。脚注20の根拠。閲覧日:2026年10月)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、投資助言・法務・税務の助言ではありません。研究結果は各論文の対象・期間・方法の範囲で得られたもので、日本の個別企業・案件にそのまま当てはまるとは限りません。設例は学習用の架空の数値です。アイキャッチ画像は生成AIによるイメージです。